花香るバレンタイン
〜After Valentine〜(甲斐凛)

甲斐×平古場

バレンタイン後の休日、甲斐と平古場は遊園地に遊びに来ていた。ジェットコースターや
お化け屋敷など、遊園地らしいアトラクションを遊び尽くし、日が傾く時間帯になると、
観覧車の前にやってくる。
「やっぱ最後はこれに乗らんとだよな。」
「だぁるなー。しばらく二人っきりになれるし、中でプレゼント交換しようぜ。」
「やさやさ。凛からのプレゼント、でーじ楽しみさー。」
観覧車の中でバレンタインに用意したプレゼントを渡そうと二人は話す。しばらく並んだ
後、二人の乗るゴンドラが目の前に来る。
「乗ろうぜ。」
「おー、とりあえずは向かい合わせに座っとけばいいか?」
「そうだな。俺はこっちに座るから、凛はそっちな。」
ゴンドラに乗り込むと二人は向かい合わせに座る。しばらく窓の外を見て、ゆっくりとゴ
ンドラがのぼっていく様子を楽しんだ後、内側を向いて向かい合う。
「そろそろプレゼント渡してもいいかや?」
「もちろんいいさー。」
「なら、これ。裕次郎にやるさ。」
鞄からプレゼントを出し、平古場は甲斐に渡す。平古場からプレゼントを受け取ると、甲
斐は断ることもなくすぐに開けようとする。
「おいおい、そんなすぐ開けんのかよ?」
「ダメだった?」
「いや、ダメではないけどよ。」
包みを開けて出てきたのは、シルバーの球体の中に白い玉のようなものが入っているペン
ダントトップがついたネックレスであった。
「でーじカッコイイやっし!だけど、この白いボールみたいなのは何か?」
「それはアロマボールさー。それに好きな匂いをつけて、ネックレスに出来るってやつ。
替えのボールもいくつかあるだろ?」
「確かにボールだけのもいくつか入ってる。ここに入ってるのは何か匂いがついてるんば?」
そのように使うものなら、今ここに入っているものも匂いがするかもしれないと、甲斐は
ペンダントトップのあたりを嗅いでみる。そこまで強い匂いではないが、よく知った匂い
がふわりと香る。
「・・・凛の匂い。」
「俺っていうか、俺の香水の匂いだけどな。」
「えー、でーじこれいいやっし!凛の香水つけてて身につけてたら、いつでも凛を感じら
れるってことだろ?」
「まあ、だいたい一緒にいるけどな。裕次郎が俺の匂いが好きだって言うからよ、結構頑
張って考えて選んださー。」
「にふぇーやー。しに嬉しいさー!」
「そこまで喜んでもらえるなら、よかったさー。」
甲斐が全力で喜びを表してくるので、平古場は苦笑しつつもホッとする。せっかくもらっ
たのだからと、甲斐はそのネックレスをつけてみる。
「どうか?」
「いいんじゃねぇ?似合ってるし。」
「へへ、ならこのままつけとこう。じゃあ、次は俺の番だな。」
そう言いながら、甲斐は平古場の隣へと移動する。
「マルシェでも結構お菓子買って食べたけどよ、そんときは食べなかったお菓子を凛用に
買ってみたんばぁよ。」
「へぇ。そりゃちょっと気になるし。」
「はい、凛へのプレゼントさー。」
お菓子ということで、バレンタインを思わせるような可愛らしいラッピングがされている。
「気になるし、開けてみてもいいか?」
「いいぜ。せっかくなら食べて感想聞かせてくれよ。」
甲斐からもらったプレゼントを開けると、中には大きなイチゴにピンク色のチョコレート
がかけられているパッケージのお菓子が入っていた。
「イチゴ・・・にチョコがかかってるみたいな感じか?」
「乾燥イチゴにストロベリーチョコレートを染み込ませたって書いてあったさ。凛、イチ
ゴ好きだからいいかなーと思ったんだけど。」
「とりあえず食べてみるか。」
食べてみないことに始まらないと、そのお菓子の袋を開け、一つ取り出してみる。
「見た目はかなりイチゴ寄りだな。匂いもでーじイチゴやし。」
「確かにイチゴの匂いすごいな。」
とりあえず食べてみようと平古場はパクっとそれを口に入れる。カリッとした食感の後、
イチゴの甘酸っぱさとイチゴチョコレートの風味が口いっぱいに広がる。
「んん、チョコ風味のイチゴって感じだな。イチゴが強い。俺、結構これ好きかも。」
「へぇ、俺も一つもらってもいい?」
「おー、食ってみ。」
袋から取り出したそれを平古場は甲斐の口に入れる。
「あー、確かに。結構酸味強いな。」
「けど、チョコが染み込んでるから後味はいいよな。もうちょっと食べとこう。」
平古場としてはそのお菓子がかなり気に入ったようで、パクパクと食べる。気に入っても
らえたならよかったと甲斐は嬉しそうに笑う。
(今、凛にキスしたらきっとイチゴ味なんだろうなー。)
そんなことを考えながら、甲斐は平古場の顔を眺める。そんな甲斐の視線に気づき、平古
場はイチゴを口に咥えながら首を傾げる。
(ちょっ、それはずるいさー!)
あまりの平古場の可愛さに耐えられなくなり、甲斐は唇にあるイチゴを奪うかのように平
古場にキスをする。
「っ!?」
「凛が可愛すぎて、我慢出来なかったさー。」
「はは、ま、そろそろ頂上だし、もう少しちゃんとしてくれてもいいやし。」
それも観覧車の醍醐味だろと言わんばかりに、平古場は少し顔を赤く染めながらそんなこ
とを言う。そんなことを言われたら余計に我慢が出来なくなってしまうと甲斐は平古場の
肩を掴む。夕日が差し込むゴンドラの中で、二人はしばらくイチゴ味の口づけを楽しんだ。

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