花香るバレンタイン
〜After Valentine〜(金蔵)

金太郎×白石

金太郎が買い物から帰ってくると、白石はタイミングを合わせ、合宿所内のカフェで待ち
合わせをする。金太郎がカフェに入ると入口の近くで白石が待っていた。
「あ、白石!」
「おかえり金ちゃん。」
「白石へのお返し、買ってきたで!」
「おおきに。ほんなら、ドリンク頼んで見せてもらおうかな。」
カフェ内であるので、白石は自分と金太郎の分のドリンクを頼み、空いている席に座る。
金太郎がお返しを買ってくるということだったので、白石も事前に準備していた金太郎へ
のプレゼントを持って来ていた。
「とりあえずここに座ろか。」
「おん!はあー、急いで帰ってきたから喉渇いてしもたわ。」
早く白石に買ってきたものを見せたいと、金太郎はかなり急いで帰ってきた。白石が頼ん
でくれたドリンクをごくごくと飲むと、買ってきたものをテーブルの上に置く。
「それが買ってきてくれたやつ?」
「せやで。ホンマオモロイから開けて見てみぃ!」
「そりゃ楽しみやな。」
早く見て欲しいと金太郎が急かすので、白石はテーブルに置かれた箱を開けてみる。
「わっ・・・」
箱の中にはなかなかリアルな質感のカブトムシのケーキが入っていた。
「どや?オモロイやろー?白石、カブトムシ好きやから買ってってやろー思て買うて来た
んや!」
「ホンマすごいな。これケーキなん?へぇ、よく出来とるわ。」
「後でフォーク借りてきて、一緒に食べような!」
「ああ。これ、食べる前に写真撮っといてもええ?」
「もちろんええで!あっ!せや!これも渡しとかんと!」
白石がカブトムシのケーキの写真を撮っている間に、金太郎は鞄から何かを取り出す。特
にラッピングなどされていないが、リボンのついた小さな布の袋を金太郎は白石に手渡し
た。
「これ、白石にプレゼントする言うとった花の袋やで。」
「ああ、作っとるって言うとったもんな。ホンマに俺がもらってええの?」
「当たり前やん。白石のために作ったんやで!」
「おおきにな。」
金太郎から手作りサシェを受け取ると、白石はその香りを嗅いでみる。
「メッチャええ匂いやん。」
「せやろ?結構上手に出来たと思うで。」
「ホンマおおきに。あ、俺も金ちゃんに渡そうと思ってたプレゼントがあるんや。」
金太郎のために用意していたプレゼントを白石は出し、金太郎に渡す。白石が用意したプ
レゼントは風邪予防のアロマスプレーとマルシェで買ったエキナセア茶であった。
「スプレーとお茶?」
「せやで。アロマスプレーなんやけど、風邪予防の効果があるアロマを混ぜてみたんや。こ
っちのお茶も風邪予防の効果があるんやで。まあ、口に合わなかったら返してくれてもええ
から。」
「何でそないに風邪予防のもんくれるん?」
バレンタインらしくはない効果のあるプレゼントに金太郎は首を傾げて尋ねる。
「悩みがないか聞いたときに、元気でおれたらええって言うとったやろ?せやから、風邪と
か引かんようにと思て、用意してみたんや。」
自分が元気でいるためにこれらを用意してくれたということを聞いて、金太郎の顔はパアっ
と笑顔になる。それは自分にピッタリのものであると気づいたのだ。
「おおきに!部屋戻ったら早速使ってみるな!お茶も飲んでみる!」
「試してみて。俺も金ちゃんが元気でいてくれたら嬉しいからな。」
「白石はいつもワイのこと考えとってくれて、こんなええプレゼントもくれて、ホンマのホ
ンマに大好きやで!」
満面の笑みでそんなことを言ってくる金太郎に、白石はきゅんとしてしまう。
「せや!白石からプレゼントももろたし、ちょっとフォーク借りてくるな。」
「あ、ああ。」
買って来たケーキを食べようと、金太郎はフォークを借りに行く。フォークを借りて白石の
もとへ戻って来ると、カブトムシの角のあたりを小さく切って刺し、白石の口元にそれを持
って行く。
「はい、食べてや!」
「え、えっと、いただきます。」
金太郎の勢いに押され、白石は口を開け、差し出されたケーキを食べる。口に広がる味に白
石は驚いたような反応を見せる。
「うわ、これメッチャ美味い!」
「ホンマに!?ほんならワイも食べてみよ。」
白石の反応を見て、金太郎も試しに一口食べてみる。見た目がネタ的な感じだったので、そ
れほど味は期待していなかったが、想像以上の美味しさに金太郎も驚く。
「ホンマや!!このカブトムシ、メッチャ美味いな!」
「カブトムシ言うかケーキがって話やけどな。えー、すごいな。見た目とのギャップが半端
ないわ。」
「白石が美味しい言うなら、白石がお腹いっぱいになるまで食べさせてやるな!」
「えー、自分で食べれるけど。」
「ワイが食べさせたいんや。フォークも一つしか借りてないし。」
「しゃーないなあ。」
少し困惑するような態度を見せているが、白石としては金太郎にカブトムシケーキを食べさ
せてもらうことが嬉しくて仕方なかった。
「へへ、白石からプレゼントももろたし、白石に買って来たケーキも美味くて、今日はええ
日やな。」
「せやな。ホンマ幸せなバレンタインや。」
美味しいケーキを分け合いながら、金太郎と白石は甘く幸せな時間を過ごす。甘いケーキと
大好きな相手がくれた優しい香り。想いの込められたプレゼントが二人を笑顔にさせていた。

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