花香るバレンタイン
〜After Valentine〜(曲種)

大曲×種ヶ島

二人の予定が空いている休日、大曲と種ヶ島はアロマカフェにやってきた。落ち着いたア
ロマの香りに癒やされながら二人はお茶を飲む。
「ホンマええ香りで癒やされるなあ。」
「そうだな。ここでしばらく読書したいくらいだし。」
「ええー、そしたら俺寂しくなってまうやん!」
「本当にするとは言ってねぇだろうが。」
わざとらしく文句を言う種ヶ島に、大曲は呆れた様子でそう返す。
「竜次がそうしたくならんように、俺がちょっとサプライズしてやるわ。」
「サプライズ?他の客に迷惑になるようなことはすんなよ。」
「大丈夫やって。ほい、これ。竜次にプレゼントや。」
どこからか包みを出し、種ヶ島はそれを大曲に差し出す。
「プレゼントって、バレンタインのときに唐辛子チョコもらったし。」
「それはそれ、これはこれや。受け取ってや。」
くれるなら断る理由もないと、大曲はそれを受け取る。
「開けてみて。」
「ああ。」
種ヶ島からもらった包みを開けると、中には自分では選ばないようなデザインのヘアバン
ドが入っていた。
「へぇ、ヘアバンドか。」
「俺が心を込めて選んだんやで☆」
「俺が自分で買うとしたら選ばないデザインだけど、悪くねぇな。やっぱお前、センスい
いし。」
「褒めてくれておおきに。それ、絶対竜次に似合うと思うねん。」
種ヶ島にそう言われ、大曲は今しているヘアバンドを外し、種ヶ島からもらったヘアバン
ドをつけてみる。
「どうよ?」
「やっぱ思った通り、メッチャ似合うわ!」
「今、鏡はねぇけど、お前がそう言うんならそうなんだろうな。ありがとよ。」
「どういたしまして。あー、また竜次がカッコよくなってしもて、他の人にもモテてまう。
どないしよ〜。」
「うるせーし。」
冗談っぽくそんなことを言ってくる種ヶ島を大曲は軽くあしらう。もともとこのカフェで
奢る予定であったが、種ヶ島からプレゼントをもらったことで、大曲は自分も何か残るも
のを贈りたくなる。
「修二。」
「ん?どないしたん?」
「俺もお前に何か贈りたくてよ。ここで買えそうなもので欲しいものがあるなら買ってや
る。」
「えー、でも、ここの代金奢ってくれるんやろ?俺的にはそれで十分やで。」
「俺が贈りてぇんだから気にするな。」
「さよか。ほんならちょっと選んでくるわ。」
このカフェにはカフェで軽食が食べられる他に、アロマ関連の精油やディフューザー、ア
クセサリーなどが売っていた。大曲が何かを買ってくれるというので、種ヶ島はそれらを
見に行く。
(何がええやろなあ。アロマ的なのもええけど、どっちかっちゅーとアクセサリーのがえ
えかな。)
ネックレスやリング、ピアスなどが並ぶアクセサリーの棚を見ていると、種ヶ島の目にあ
るものがとまる。
(おっ、これ、ええな!色味も竜次にあげたヘアバンドに似とるし。)
そのアクセサリーを手に取ると、種ヶ島は大曲の待つ席に戻る。
「お待たせ、竜次。いいの見つけたったで!」
「おう、何にしたんだ?」
「これやで☆デザインも悪ないし、色味が竜次にあげたヘアバンドに似ててええなーと思
て。」
種ヶ島が選んで持ってきたのは、好きな匂いをつけることが出来るアロマブレスレットで
あった。
「へぇ、いいんじゃねぇか。デザイン的にもお前に似合いそうだし。」
「ほんなら、これに決めるわ。せやけど、ホンマに買ってもらってもええの?バレンタイ
ンには超美味いチョコももろてるし。」
「それを言うならお前だって同じだろーが。さっきも言ったが、俺がしたくてするんだか
ら気にしなくていいし。」
「おおきにな、竜次。」
そこまで言うならと種ヶ島はそのブレスレットを大曲に買ってもらうことにする。
「ホンマに竜次は優しいなあ。」
「急に何だし?」
「バレンタインに美味しいチョコくれて、俺が送ったチョコのお返しや言うてこんなええ
とこ連れて来てくれるし、その上、こないにオシャレなブレスレットも買ってくれるんや
で?俺、ちょっと恵まれすぎとちゃう?」
「俺だってお前からもらいすぎなくらいもらってるし。どう考えてもおあいこだろ。」
お互いにプレゼントを惜しみなく与えている状況に、二人はクスッと笑う。
「俺、竜次のこと好きすぎるからなー。プレゼントあげて竜次が嬉しそうにしとったら、
こっちまで嬉しくなるから、ついついあげてしまうんよ。」
「あー、まあその気持ちは分かるな。お前が嬉しそうにしてたら、こっちまで嬉しくなる
し。」
「はは、俺らちょっと相手への愛が溢れすぎやな☆」
「ふっ、勘弁しろし。」
種ヶ島の言葉に同意しつつ、大曲はいつもの言葉を返す。しかし、その声色は呆れている
というよりは、嬉しさが滲み出ている。
「まだちょっと先だけどよ、ホワイトデーにもここに来ようぜ。」
「そりゃええな。ホワイトデーにも竜次にプレゼント用意しなきゃやな☆何か欲しいもん
ある?」
「お前が一緒にいれば十分だし。」
「ほんなら、ホワイトデーには俺の愛をいーっぱいやるわ。」
「そりゃ楽しみだな。」
「楽しみにしとってな!」
このカフェの居心地がいいと大曲はそんな提案をする。ホワイトデーにも一緒に出かける
約束をし、二人の胸はうきうきとした気分でいっぱいになる。心地よいアロマの香りが漂
うこの場所で、二人は幸せな時間を満喫するのであった。

戻る