花香るバレンタイン
〜After Valentine〜(月寿)

越知×毛利

「あっ、月光さんおかえりなさい。」
買い物に行っていた越知が部屋へ帰って来ると、毛利は越知からもらったチョコレートを
食べながらそう声をかける。
「ただいま。」
「これ、月光さんからもろたチョコなんですけど、メッチャ美味くて手が止まらないです。」
「そうか。口に合ったようでよかった。」
コートを脱ぎ、ハンガーにかけると、越知は買ってきたものを手にして、毛利の前へ移動
する。
「フッ、チョコが口についているぞ。」
「えっ!?ホンマですか?恥ずかしいとこ見られてしもた。」
恥ずかしそうに笑っている毛利の口を軽く拭い、チョコのついた指をぺろっと舐める。さ
も当然のように、そんなことをしてくる越知に毛利はドキドキしてしまう。
「つ、月光さんも帰ってきたことやし、チョコ食べるのは一旦やめときますわ。」
「別に食べていても構わないぞ?」
「大丈夫です。チョコ以外にも月光さんに渡したいものがあるんで。」
そう言いながら、毛利は机の引き出しの中から用意していたプレゼントを出す。それはま
るで宝箱のような形をしていた。
「宝箱?」
「はい!やっぱり外身にもこだわりたくて、こんな感じにしてみました。中身も月光さん
が好きそうなのを選んでみたつもりなんですけど・・・」
宝箱のようなプレゼントを毛利は越知に渡す。受け取った宝箱をしばらく眺めた後、越知
はそれを開ける。
「これは・・・ライトか?」
「はい、アロマランプです。最近、アロマにちょっと触れましたし、月光さん猫好きやか
ら、ええかなあと思て。」
「とても可愛らしいな。ありがとう。今日の夜から早速使ってみようと思う。」
ランプにはシルエットのような形で可愛らしい猫が描かれていた。その部分から光が漏れ、
ランプとしての役割を果たすようになっている。
「俺も毛利に渡したいものがあるのだが・・・」
「もしかして、防寒具ですか?」
「ああ。受け取ってもらえるだろうか。」
「もちろんです!ありがとうございます!」
今日買ってきた防寒具を越知は毛利に渡す。一応、プレゼントするということで、簡単な
ラッピングが施されていた。
「月光さんほどやないけど、俺も結構手は大きい方なんで、手袋とか合うの探すの大変な
んですよね。だから、ついつい後回しになってもうて。」
「一応、大きめのものを選んでおいた。」
「月光さんが選んでくれたもんなら、どんなものでも嬉しいです。」
そう口にしながら、毛利は越知からもらった袋を開ける。中にオレンジ色の手袋とニット
帽が入っていた。
「わー、オレンジ色の手袋や!ええ色ですね!」
「せっかくならばお前の好きな色がよいと思ってな。」
「ちょっとつけてみてもええですか?」
「ああ、もちろんだ。」
越知からもらった手袋を試しにつけてみる。実際につけてみたことで、毛利はあることに
気づいた。
「あ、この手袋、手の平のところに肉球の模様があるんですね。」
「お前になら似合うかと思って・・・」
「どうです?似合います?」
手の平を越知に見せるようにしながら、毛利は尋ねる。猫の手のようになっている毛利の
手を見て、越知は素直に思ったことを呟いてしまう。
「可愛いな。」
「えっ?」
「あ、いや・・・とても似合っているぞ。」
「えへへ、暖かくて可愛くてホンマ嬉しいです!ありがとうございます、月光さん!」
猫のような手を頬にくっつけ、毛利は嬉しそうにお礼を言う。そんな毛利を心の底から可
愛らしいと越知は思っていた。
「その手袋に合わせて、ニット帽も買ってみた。せっかくだからつけてみてくれないだろ
うか。」
「手袋だけやなくて、帽子まで買ってくれたんですね。」
ちょっと申し訳ないと思いつつ、毛利はニット帽を被る。手袋と同じオレンジ色で、ほん
の少し変わったデザインであった。ニット帽を被り、何気なく窓の方を見ると、ニット帽
をかぶっている自分の姿が映っている。
「この帽子、猫耳みたいなデザインになっとるんですね。」
「嫌だっただろうか?」
「いえ、全然ありやと思いますよ。俺に似合うかどうかはさておき・・・」
「とても似合っている。」
猫耳ニット帽が似合っているかは分からないと毛利が口にしたのを遮るように越知はそう
答える。猫耳ニット帽と肉球模様の手袋をつけた毛利は、それはもう越知好みの容姿にな
っていた。
「月光さんに比べたら全然ですけど、こんなデカイ猫ちゃん可愛くないのとちゃいます?」
「可愛いに決まっているだろう。可愛すぎて、平常心でいるのが難しいくらいだ。」
「はは、月光さんでもそないなこと言うんやね。ていうか、そないに可愛いと思ってくれ
とるんですね。」
あまりに越知が真剣に可愛いと言ってくるので、毛利は少し恥ずかしくなってしまう。し
かし、自分がこれを身につけることで越知が喜んでくれているのは間違いない。それが嬉
しくて、毛利の顔は自然と緩む。
「俺、この手袋もニット帽もメッチャ気に入りました!ありがとうございます!」
「それならよかった。ところで、1つ相談なんだが・・・その格好のまま、抱き締めたり
キスしてもよいだろうか?」
「ちょっと恥ずかしいですけど、月光さんがそうしたいなら全然構わないですよ。今日は
バレンタインやしね。」
あまりの毛利の可愛さに越知は我慢ならなくなる。バレンタインらしくイチャイチャしよ
うと、毛利は恥ずかしそうに笑いながら頷いた。

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