跡部×宍戸
お返しあげる:跡部→お返しもらう:宍戸
電話
跡部「おい、今日が何の日だか分かってんだろうな?」
宍戸「いきなり電話してきて何だよ?今日?うーん、ホワイトデーか?」
跡部「そう、ホワイトデーだ。」
宍戸「ああ、確かにバレンタインにチョコ渡したしな。」
跡部「そろそろそっちにプレゼントが届くはずだぜ。」
宍戸「本当か?跡部からのお返しなら楽しみだぜ。」
跡部「ハッピー・ホワイトデー。」
宍戸「お、おう。」
跡部「俺様からのプレゼントに酔いな。」
ホワイトデーSS
ピンポーン
跡部との電話を終えて少しすると、家のチャイムがなる。
「おっ、さっき跡部が言ってたプレゼントが届いたのか?」
先程、電話で跡部から聞いた言葉を思い出し、宍戸は玄関へと向かう。
「はーい。」
「プレゼント、届けに来てやったぜ。」
「跡部!?」
玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは荷物の配達員ではなく、跡部自身であった。
予想外の出来事に宍戸は固まってしまう。
「何そんな驚いた顔してやがる。」
「いや、跡部自身が来るとは思ってなかったからよ。」
「まあ、いい。少し上がってもいいか?」
「べ、別に構わねぇけどよ。」
玄関で立ち話も何なので、宍戸は自分の部屋へ跡部を通す。
「相変わらず散らかってんなあ。」
「う、うるせー!まさか跡部が来るなんて思わなかったから・・・」
「まあ、お前の部屋って感じがして、嫌いじゃねぇけどな。」
着ていたコートを脱ぎ、跡部は持ってきたホワイトデーのお返しをテーブルの上に置く。
跡部のコートをその辺に放置は出来ないので、宍戸はハンガーにコートをかけ、壁にかけ
た。
「ホワイトデーのお返しは、うちのシェフに作らせたミントチョコレートのケーキと最高
級のチーズケーキだ。」
「・・・すげぇな。」
しれっとそんなことを言ってくる跡部に、宍戸はそんな言葉を返す。何だかんだで自分の
好きなものを意識したプレゼントを用意してくれているのだなあと、宍戸は嬉しくなる。
「それは、まあ、後で食っとけ。」
「は?今、食う流れじゃねぇの?」
「ケーキはおまけだ。」
「まだ他にあるってことかよ?」
そんな豪華なケーキをもらえるなら十分だろうと、宍戸は首を傾げる。そんな反応を見せ
る宍戸が実に可愛らしいと思いながら、跡部は宍戸をベッドの上に押し倒した。
「ちょっ、跡部!」
「メインのお返しは、俺様がお前を悦ばせてやるってことだぜ。」
「待て待て待て!ちょっとまだ心の準備が・・・」
いきなり押し倒され、今からそういうことをしますというようなことを宣言され、宍戸は
顔を真っ赤にして、跡部を制止しようとする。
「どうせすぐその気になるんだから、別に心の準備なんていらねぇだろうが。」
「けどよ!」
「さっきも電話で言ったが、やっぱり直接言わねぇとなあ。」
「何を?」
意味ありげな笑みを浮かべながら、跡部は宍戸を見下ろす。一体何を言われるんだと、宍
戸はドキドキしながら身構えた。
「ハッピー・ホワイトデー。俺様のプレゼントに酔いな。」
「っ!!」
電話も聞いたセリフと全く同じセリフを跡部は宍戸に囁く。この状況でそのセリフは反則
だと、宍戸の心臓は壊れそうな程高鳴った。
「あー、もー、勝手にしろ!」
「そうこなくちゃな。」
跡部から自分だけがもらえるホワイトデーのプレゼント。そう考えると、これから跡部に
されることへの期待感が一気に高まってしまう。その気にさせられたのが少し悔しくて、
宍戸は赤く染まる顔を腕で隠そうとする。
「顔隠すんじゃねぇよ。キス出来ないだろうが。」
真っ赤になる顔を腕で隠そうとする宍戸の手首をしっかりと捉え、ベッドの上に押さえつ
ける。そうされると、宍戸はもう抵抗することを諦めた。
「本当可愛いぜ、宍戸。俺様からのプレゼント、ちゃんと受け取れよ?」
「ウルセー。するんなら、さっさとしろよ。」
「だいぶ素直になったじゃねぇか。」
「べ、別に俺がしたくなったとか、そういうわけじゃねぇんだからな!」
実に宍戸らしい返しに跡部はふっと笑う。そんな宍戸にバレンタインチョコのお返しを存
分にしてやろうと、跡部は想いを込めて宍戸の唇にキスをした。
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お返しあげる:宍戸→お返しもらう:跡部
電話
宍戸「もしもし、宍戸だけど・・・今出て来られるか?」
跡部「アーン?唐突だな。別に構わねぇぜ。」
宍戸「あんなに美味いチョコをもらったんだ。俺もそれに見合うものを返したくてよ。」
跡部「なるほど。バレンタインのお返しってわけか。」
宍戸「一応、お前が気に入りそうなものを用意したから、渡しに行く!楽しみに待ってて
くれよな!」
跡部「ああ、楽しみにしてるぜ。」
ホワイトデーSS
ホワイトデーのプレゼントを持ち、急いで跡部の家に行くと、大きな門の前で跡部が立っ
ていた。
「随分、早いじゃねーか。」
「外で待ってたのかよ?寒いんだから中で待ってりゃいいのに。」
「お前が来るのが待ちきれなくてな。」
冗談か本気か分からないが、跡部のそんな言葉に宍戸はキュンとしてしまう。
「それで、チョコのお返しとやらは何だ?」
「あっ、えーっと・・・これ、なんだけどよ。」
鞄の中から紙の袋を出し、宍戸はおずおずと跡部にそれを渡す。
「開けてもいいか?」
「お、おう。」
丁寧に紙袋を開き、跡部はその中身を出す。中から出てきたのは、跡部の飼い犬のマルガ
レーテそっくりな飴細工であった。
「マルガレーテじゃねぇか。」
「結構頑張って作ったんだけどよ、なかなか難しくて・・・何回も失敗して、やっとあげ
れるレベルなのがそれで・・・」
「お前が作ったのか?」
「一応な。き、気に入らなかったら、全然捨てても・・・」
「捨てるわけねぇだろ。」
宍戸の言葉が言い終わる前に跡部はきっぱりと言い放つ。そして、宍戸のくれた飴細工を
まじまじと眺めながら、言葉を続ける
「お前が心を込めて作ったもんだし、一目見てマルガレーテって分かるくらいの出来なん
だぜ?むしろ、食うのがもったいねぇくらいだ。」
「本当か!?・・・よかった。」
ホッとしたような笑みを浮かべる宍戸を見て、跡部はどうしようもない愛しさを覚える。
宍戸に手を触れようとした瞬間、思い出したかのように宍戸は顔を上げ、跡部の顔を見据
えた。
「跡部っ!!」
「どうした?宍・・・」
名前を言い終える前に胸ぐらを掴まれ、突然キスをされる。何が起こったか分からず、目
をパチクリさせていると、目の前にいる宍戸が顔を真っ赤に染め、その理由を話し始める。
「こ、これは、跡部が、いつも無駄に俺にキスしてくるから・・・俺からしたら喜ぶかな
と思って・・・せっかくのホワイトデーだから、跡部の喜ぶことしてやりたいと思ったん
だけどよ・・・そんなことなかったら、悪ぃ・・・」
「やるじゃねーの。今のは結構効いたぜ。お前からキスしてくることなんてあんまりねぇ
からな。」
「なら、今の・・・嬉しいのか?」
「当然だろ?」
「そっか。」
跡部の言葉を聞いて、宍戸は嬉しそうに笑う。宍戸の一連の言動が可愛すぎると跡部は顔
が緩むのを抑えられなかった。今すぐ宍戸を持ち帰りたいと、跡部は宍戸の腕を掴んだ。
「今日は俺の家に泊まれ。」
「えっ!?そんなつもりで家出てきてねぇし。」
「電話しとけばいいだろ。」
「でも・・・」
「俺様の喜ぶことをしてくれるんだろ?さっきのキスだけじゃ足りねぇ。」
「いや、その・・・」
ドギマギと困惑した表情の宍戸の顔を両手で掴み、跡部はニヤリと笑う。
「さっきのキスを考えると、お前からのプレゼントはマルガレーテの飴とお前自身なんだ
ろ?」
「そ、それは・・・えっと・・・」
素直に頷くことは出来ないが、否定することも出来ない。跡部の青い瞳に射抜かれ、宍戸
の心臓はドキドキと高鳴る。宍戸が否定しないことを肯定とみなし、跡部はさらに言葉を
続ける。
「お前がくれたプレゼント、たーんと味わってやるよ。」
跡部の言わんとしていることを理解し、宍戸の顔はさらに赤くなる。
「今日は・・・特別だからな!ホワイトデーだし、跡部がどうしてもって言うんなら、泊
まってやるよ。」
「なら、一緒に来い。お楽しみはこれからだろ?」
上機嫌な跡部の言葉に、宍戸は小さく頷いた。跡部に手を引かれ、宍戸は大きな屋敷に向
かって歩き出した。
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岳人×忍足
お返しあげる:岳人→お返しもらう:忍足
電話
岳人「あー、俺。今いいか?」
忍足「岳人か。構へんで。」
岳人「つーか、ちょっと会えねぇ?渡したいもんあるし。」
忍足「渡したいもの?急に何やねん。」
岳人「何って・・・今日渡すっつったら分かんだろっ!!いいからそこで待ってろ!!」
忍足「俺のいる場所も聞かんと来れないやろ。今、岳人の家のある商店街の入口にいるで。
待っとくからな。」
ホワイトデーSS
忍足が思ったよりも近い場所にいたので、岳人はホワイトデーのプレゼントを持って走っ
てその場所に行く。
「ハァ・・ハァ・・・待たせたな。」
「そないに慌てて来んでもええのに。帰ったりはせぇへんで。」
「いや、でも、待ってろっつたのは俺の方だし、あんまり待たせるのも悪いと思って。」
息を切らすほど全力で走って来た岳人を愛しく思いながら、忍足は少し休める場所を探す。
すぐ近くにベンチがあったので、そこに移動しようと岳人を誘う。
「ここで立って話しとるのも何だし、あそこのベンチに移動せぇへん?」
「そうだな。その方がお返しも渡しやすいし。」
ベンチのところまで移動すると、二人はそろって腰かける。ふぅーっと息を整えると、岳
人は用意してきたプレゼントを手にし、忍足の方を見る。
「侑士、バレンタインチョコくれてありがとな。これ、ホワイトデーのお返しだぜ。」
「おおきにな、岳人。」
手の平に乗るくらいの丸みを帯びた包み紙が可愛らしいリボンで留めてある。なかなかい
いセンスのラッピングだなあと思いながら、忍足はそっとリボンに手をかける。
「開けてもええ?」
「もちろんだぜ。」
リボンをほどき、包み紙を開いて出てきたのは、色とりどりの金平糖であった。
「侑士には、普通のキャンディーとかよりもちょっと和な感じの金平糖とかが似合うかな
あと思って選んでみたんだけどよ。」
「綺麗やなぁ。普通の飴ちゃんもらうより嬉しいわ。」
「本当か!?それならよかった。あんまりこういうプレゼントとか選ぶ機会ないからさ、
喜んでもらえるか分かんなくて心配してたんだよな。」
「岳人がくれるもんなら、何でも嬉しいで。」
「でも、納豆なんてあげたら怒るだろ?」
「それは勘弁やで。まあ、岳人はそないなことしないって思うとるけど。」
「あはは、さすがにプレゼントにそれは選ばねぇけどな。」
可愛らしい金平糖を手に持ち、お互いに顔を見合わせながら二人はそんな会話を交わす。
たくさんの金平糖を包んでいるビニールの袋を開け、忍足は一粒指でつまみそれを眺める。
「ホンマに綺麗やなあ。」
「一個食べてみたらいいんじゃねぇ?」
「せやな。せっかくやし、食べてみるか。」
今手にしている黄金色の金平糖を忍足は口の中に入れる。軽く舌で転がすと、口の中全体
に優しい甘さがふわりと広がる。何だか幸せな気分になるなあと、その甘さに浸っている
と、岳人が話しかけてくる。
「どうよ?美味いか?」
「ああ。メッチャ美味いで。」
「へぇ、ちょっと食べてみたいかも。」
「たくさんあるんやから、岳人も食べたらええやん。」
忍足にあげたものではあるが、あまりに忍足が美味しそうに食べているので、岳人も食べ
たくなってしまう。それならばと、忍足の持っている金平糖を一つだけもらい、口の中に
放り込んだ。
「おお、確かにこれは美味いな。」
「せやろ?こんな美味い金平糖くれて、ホンマおおきにな、岳人。」
穏やかに微笑む忍足が実に可愛らしく見えて、岳人はドキドキしてしまう。そのドキドキ
感が口の中の金平糖をより甘く感じさせた。
「俺、そういうことあんまり詳しくねぇんだけど、確かホワイトデーにキャンディー返す
のって、『好き』って意味だよな?」
「確かそうだったと思うで。」
「金平糖も一緒なのか?まあ、違ったとしても、俺はそのつもりだからな。」
「おおきに。ちなみに金平糖は『永遠の愛』って意味もあるで。普通のキャンディーより
大きい好きやな。」
「へぇ、そっか。侑士のこと、超好きだから、全然その意味で捉えてもいいぜ!」
「ほんなら、そう受け取っとくわ。岳人の気持ち、大事に食べさせてもらうで。」
照れながらもそんなことを言ってきてくれる岳人の言葉が嬉しくて、表面上は冷静さを装
っているが内心はもうときめいて仕方がなかった。もうすっかり走って来た疲れもとれ、
テンションの上がった岳人はベンチから下り、立ち上がって忍足の方に体を向ける。
「せっかく会ったわけだし、これからちょっとデートしねぇ?」
「ええやん。ホワイトデー・デートってことやな。」
「俺、今、侑士と一緒にいれて超イイ気分。」
「俺もやで。ホンマに岳人と一緒におれるん嬉しいわ。」
岳人からもらった金平糖をしっかりとしまい、忍足も立ち上がる。これからどこへ行こう
かとわくわくしながら、岳人と忍足は商店街の中へ向かって歩き出した。
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お返しあげる:忍足→お返しもらう:岳人
電話
忍足「もしもし、忍足やけど。」
岳人「おう、侑士。どうした?」
忍足「先月もろうたチョコレートのお返しをせなと思ってなあ。」
岳人「おー、そっか。今日はホワイトデーだもんな。」
忍足「今から会われへん?自分に渡したいものもあるんや。」
岳人「いいぜ。どこで会う?」
忍足「待ってるから、この前の公園に来てぇや。」
岳人「すぐ行くから、ちょっと待っててくれ。」
忍足「ゆっくりでええよ。」
岳人「でも、侑士に早く会いてぇし。」
忍足「ほな、後でな。」
岳人「おう。」
ホワイトデーSS
忍足が待っている公園にやってくると、岳人は忍足を探す。軽く辺りを見回してみると、
春用のコートに身を包んだ忍足が文庫本を片手に一本の木の下で待っていた。
「侑士。」
「ああ、岳人。待っとったで。」
パタンと本を閉じると、忍足は鞄にそれをしまい、代わりに岳人に渡すためのプレゼント
を出す。
「それ、プレゼントか?」
「せやで。」
「へぇ、結構小さい箱だけど、何入ってんだろ?全然想像つかねぇや。」
「それは開けてからのお楽しみやで。たぶん気に入ってもらえると思うんやけど。」
「へへ、そりゃ楽しみだぜ!」
わくわくした表情でプレゼントを見てくるので、忍足は手にしているプレゼントを岳人に
渡す。
「ハッピー・ホワイトデーやで、岳人。」
「ありがとな、侑士!開けてもいいよな?」
「もちろんやで。」
小さな箱を開けてみると、中には瑠璃色の羽根のネックレスがちょこんと置かれていた。
「うわあ、すっげぇ綺麗!!」
「初めは何かお菓子にでもしようかなあと思っとったんやけど、それ見つけてな。メッチ
ャ綺麗やし、岳人が好きそうやなあと思うてそれにしたんや。」
「確かに超綺麗だし、この感じすげぇ好き!さすが、侑士!俺の好み分かってる。」
「気に入ってもらえたならよかったわ。」
箱からネックレスを出し、岳人は早速つけてみる。
「どうよ?」
「ええやん。似合っとるで。」
「何か青い羽根ってのがさ、青い鳥みたいで幸せになれそうな感じだな。」
「ああ、確かにな。」
「それに青って、侑士のイメージだから、侑士が側にいてくれる感あってそれもいいな。」
「そないなことは考えつかんかったわ。」
岳人の言葉に忍足は少し驚いたような顔を見せ、照れたように顔を赤らめる。そんな忍足
を見て、岳人は悪戯っ子のように笑い、首に下げたネックレスのトップの部分を手に取っ
た。そして、瑠璃色の羽根の部分にちゅっと口づける。
「これつけてりゃ、侑士とキスしたくなったらいつでも出来るな。」
「何やねん、それ。」
クールな口調でそう返すが、岳人のその行動に忍足は内心ドキドキしていた。自分のイメ
ージだと言われた羽根に口づけるのを見て、何となく自分がキスされた気分になってしま
う。
「まあ、でも、侑士と一緒にいるときは、やっぱ侑士本人とキスしたいよな。」
上目遣いで忍足を見上げ、意味ありげに笑いながら岳人はそんなことを言う。忍足の手を
掴み、木の後ろにまわると、岳人は忍足の首に手を回した。
「一回だけしてもいい?」
「嫌や言うたらどうするん?」
「しないと見せかけてするかな。」
「何や結局するやん。外やし、一回だけやで?」
嫌がろうが許可しようがするという岳人に、忍足はくすくす笑って許可を出す。忍足から
許しがもらえたので、少し背伸びをして岳人は忍足に口づけた。
「やっぱ。外でするのってちょっとドキドキするよな。」
「せやな。」
「でも、侑士とキスすると、侑士が好きって気持ちでいっぱいになって、すげぇいい気分
になるぜ。」
キスをしてきたとは思えないほどの純粋無垢な笑顔を浮かべ、岳人はそんなことを言う。
そんな岳人の言葉に忍足の胸はときめき、岳人を好きだという気持ちで胸がいっぱいにな
る。
「俺もやで、岳人。俺も岳人のことメッチャ好きやし、岳人とキスするのも好きやで。」
「へへ、同じだな。なら、もっかいしてもいいか?」
「しゃあないなあ。今日はホワイトデーやから特別やで?」
ふっと笑って忍足は少し屈む。先程よりも近づいた顔に岳人はもう一度キスをした。二度
目のキスと同時にざあっと風が吹き、白い花びらが舞い、二人の周りを彩った。
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ジロー×樺地
お返しあげる:ジロー→お返しもらう:樺地
電話
ジロー「もしもし、俺、ジローだけど・・・」
樺地 「ジローさん・・・ですか?眠そうですけど、大丈夫ですか?」
ジロー「今見た夢にチョコが出てきて、お返しのこと思い出した。」
樺地 「お返し・・・。ああ、バレンタインのですね。」
ジロー「また寝ちゃう前に渡しに行ってもいい?」
樺地 「ウス。」
ジロー「いいの!?じゃあ、今から会いに行く!!すぐに行くから待っててね!!」
樺地 「ウス。待っています。」
ホワイトデーSS
電話を切った後に、今自分がどこにいるか伝えていなかったと、樺地はメールで自分の居
場所を送る。すぐに返信が返ってきたので大丈夫だと思い、その場でジローが来るのを待
つことにした。しばらくすると、ジローの姿が見え、ジローも樺地の姿を見つけたようで、
ぱあっと嬉しそうな表情になり、こちらに向かって走ってくる。
「お待たせ、樺ちゃん!!」
「こんにちは、ジローさん。」
「バレンタインのお返し、ちゃんと持ってきたよー。寝るまでちょっと忘れてたけど。」
持ってきてはいたのだが、渡すのを忘れ、眠ってしまっていたとジローは正直に話す。ご
そごそと鞄の中からプレゼントを出すと、両手で樺地に向けて差し出す。
「はい、どーぞ。」
「ありがとうございます・・・」
「開けてみて!」
「ウス。」
ジローがそう言うので、樺地はもらったプレゼントを丁寧に開ける。包み紙を開くと丸い
箱のふたに『ミルクキャラメル』の文字があった。
「樺ちゃんへのホワイトデーどうしようかなって思って、お返しについてちょっと調べて
みたんだ。そしたらね、キャラメルは『一緒にいると安心する』っていう意味なんだって。
樺ちゃんにあげるにはピッタリだなーと思って、キャラメルにした!」
自分のためにわざわざ意味まで調べてくれたということと、そのような意味のキャラメル
を選んでもらえたことが嬉しくて、樺地の顔は嬉しさで緩む。
「ねぇねぇ、一個食べてみて!」
「いいんですか・・・?」
「もちろん!」
「それじゃあ、いただきます。」
ジローの言葉に、樺地はキャラメルを一つ手に取り、包みを開けてゆっくりと口の中に入
れる。柔らかい歯ごたえにふんわりとした優しい甘さ。『一緒にすると安心する』という
意味がピッタリだと思いながら、樺地はジローからもらったキャラメルをじっくりと味わ
った。
「美味しいです・・・」
「本当!?よかったぁ!」
「ジローさんも、一つ食べますか?」
「えっ!?いいの!?」
「ジローさんがくれたものですし、二人で食べた方がきっと美味しいです・・・」
「ありがとー!!じゃあ、一つもーらお。」
丸い箱の中からキャラメルを一つもらい、ジローもそれを食べる。一口噛めば、キャラメ
ル独特のまったりとした風味が口全体に広がり、とろけるような甘さにジローは笑顔にな
る。
「んー、おいC〜!!」
「こんなに美味しいキャラメル、ありがとうございます。」
「えへへ、どういたしまして。樺ちゃん、もう一個もらっていい?」
「ウス。」
あまりにそのキャラメルが美味しいので、ジローはもっと食べたくなってしまう。もっと
食べるのであれば、座って食べれることろに移動しようと、二人は近くにあったベンチに
腰かけた。美味しいものは一人で食べるよりも二人で食べた方が美味しいだろうと、樺地
はキャラメルをジローに分け、自分もいくつか食べる。それほどたくさん入っているわけ
ではないので、二人で食べているとすぐにそのキャラメルはなくなってしまった。
「あれ?なくなっちゃった。樺ちゃんにあげたやつなのに、俺、結構食べちゃったよ!ゴ
メンねー。」
「いえ、一緒に食べることが出来て、嬉しかったです・・・」
「本当?ありがとう、樺ちゃん。ふあ〜、何かお腹いっぱいなったら眠くなってきちゃっ
た・・・」
「一緒にいるんで、少し寝ても大丈夫です。」
どこかに探しにいかなければならないわけでもなく、寝てしまったら自分が運べばいいだ
けなので、樺地はそんなことを言う。
「んー、でも、せっかく樺ちゃんと一緒なのに〜。」
もっと起きていたいというニュアンスを口にしているが、もう半分目は閉じかかっていて、
今にも眠ってしまいそうであった。
「あー、ダメだ。寝ちゃいそう。樺ちゃん、バレンタインのチョコありがとー。大好きだ
よー。」
夢の中に落ちる前に伝えておこうと、ジローはへにゃっと笑いながらそんなことを言う。
言い終わるとジローは樺地に寄りかかりながら眠ってしまった。ジローがくれたキャラメ
ルも、ジローが眠り際に放った言葉も、樺地にとってはとても嬉しいもので、心がポカポ
カと温かくなるのを感じる。空っぽになった丸い箱を眺め、隣で眠るジローのぬくもりを
感じながら、樺地はしばらくこの幸せな時間を満喫した。
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お返しあげる:樺地→お返しもらう:ジロー
電話
樺地 「もしもし、樺地です。」
ジロー「わー、樺ちゃんだー。」
樺地 「今・・・少しいいでしょうか。」
ジロー「うん、いいよー。」
樺地 「チョコレートのお礼をしたいので、会ってもらえませんか・・・?」
ジロー「チョコレートのお礼?あっ、そうか!今日はホワイトデーだ!うんうん、会う会
う!!」
樺地 「電話もいいですが・・・やっぱり顔を見てお礼を言いたいです。」
ジロー「えへへ、俺も電話より樺ちゃんに直接会う方が好きだC―。」
ホワイトデーSS
ジローの家の近くの公園で待ち合わせをすることにし、ジローも樺地もその公園へと向か
う。どちらもおおよそ同じタイミングで公園に到着し、桃色の花が咲く木の下でおち合う。
「急に呼び出してしまって、すいません。」
「ううん、俺も樺ちゃんに会いたかったCー!」
ふわりと花の香りがする木の下で、樺地は持ってきたホワイトデーのプレゼントをジロー
に渡す。カットケーキがいくつか入っているような見た目の箱を渡され、ジローはわくわ
く感でいっぱいになる。
「えー、何だろコレ?ケーキかなあ?」
「開けてもいいです。」
「本当!?あっ、もしケーキだった場合、落としちゃうと大変だから、ちゃんと座って開
けよう。」
樺地からもらったお返しを開けようと、ジローはその場に腰を下ろす。自分だけ立ってい
るわけにもいかないので、樺地もジローの隣に腰を下ろした。
「開けるよー!」
「ウス。」
取っ手の部分を開くと、中に入っていたのは、猫や犬、羊などの動物のクッキーが乗った
カップケーキであった。カップケーキは小ぶりではあるが、淡いピンクや緑、黄色などの
色がついており、見た目にもカラフルで、しかしキツイ色ではなく素直に美味しそうと思
えるようなものであった。
「うっわあ、マジマジすっげー!!可愛い〜!!」
「ジローさんからもらったチョコレートの包装がカラフルで、すごく嬉しかったので、お
返しもカラフルな感じにしてみました。」
「これ、樺ちゃんが作ったの?」
「ウス。」
「すっげー!!やっぱ、樺ちゃん天才だCー!!」
ジローが全力で褒めてくるので、樺地は照れてしまうが、そこまで喜んでくれているのな
らと嬉しくなる。
「こんなに可愛いと、食べるのもったいないなー。けど、どんな味か気になるし。樺ちゃ
ん、一個食べてみてもいい?」
「ウス。」
どれも可愛いし、どれも美味しそうなので、ジローはどれを食べようか迷ってしまう。
「樺ちゃん、どれがオススメ?」
「ジローさんはチョコレート味が好きだと思うのでこれがいいかと・・・」
樺地が指さしたのは、チョコレートチップが散りばめられたココア色のカップケーキであ
った。樺地がオススメしてくれたものなら間違いないと、ジローはそれを手にし、食べ始
める。
「いたたきます!」
パクっとカップケーキに噛りつく。チョコレートの甘い香りが鼻をくすぐり、ふわふわと
した生地が口の中でとろける。お店で買うカップケーキよりも断然美味しいと、ジローは
目を輝かせ、もぐもぐと口の中のカップケーキを味わう。
「樺ちゃん、これ超おいC〜!!これが手作りとかすごすぎだCー!」
「喜んでもらえてよかったです。」
「ありがとう、樺ちゃん!」
満面の笑みでお礼を言ってくるジローを見て、先月のお礼をもう一度しようと思っていた
ことを思い出す。
「こちらこそ、先月はバレンタインのチョコレート、ありがとうございます。ジローさん
からチョコレートがもらえて、すごく嬉しかったです。」
「俺も樺ちゃんからこーんな素敵なお返しもらえて、すっごい嬉しい!!ホワイトデー最
高!!」
ジローが本当に嬉しそうにしているので、樺地はほっこりとした気分になる。心を込めて
作った甲斐があったと、樺地はふっと微笑んだ。ぱくぱくとカップケーキを食べていたジ
ローであったが、急にかくんかくんと船を漕ぎだした。
「ジローさん・・・?」
「Zzzz・・・」
お腹が膨れ、はしゃぎすぎて疲れてしまったのか、ジローは眠ってしまった。ジローが眠
ってしまうことなど、いつものことなので、樺地は慌てることもなくカップケーキを片付
け、閉めた箱を手に持ち、ジローを背負った。季節は春と言えども、外で眠るにはまだ肌
寒い季節なので、ジローの家に送り届けようと考えたためだ。
「んー・・・あれ?」
「今から家に送るので、もう少し寝ていても大丈夫です・・・」
「ありがとー。樺ちゃん、好きー。」
寝ぼけながらそんなことを言うと、ジローは樺地の背中で再び寝入ってしまった。ジロー
の寝息が聞こえてくるのを確認した後、樺地はボソッと小さな声で呟いた。
「・・・自分もです。」
ジローが聞いていないかもしれないが、今日は口に出しておきたい気持ちでいっぱいにな
り、樺地はジローへの想いを口にする。背中の重みを愛しく思いながら、樺地はジローの
家に向かって歩き出した。