秘密の放課後

「うわー、やっぱすごいね。見てよ、アレ〜。」
「本当だ。あんなにキャーキャー騒がれてうるさくないのかねぇ。」
二階の窓のから外を眺め、そんなことを話しているのは、氷帝学園二年のジローと岳人だ。
二人の視線の先には、三年生の跡部の姿。跡部はこの学園の生徒会長であり、容姿端麗、
文武両道、カリスマ性も抜群ということで、女子から絶大な人気を得ている。今もたくさ
んの女子に囲まれながら、学園の中庭を歩いていた。
「なあ、どう思う?宍戸。」
「んー、別に興味ねぇよ。」
岳人の問いかけに、宍戸は携帯をカチャカチャ弄りながら答えた。本当に興味がないんだ
なあと、ジローと岳人は顔を見合わせて苦笑する。
「宍戸は跡部様には興味ないってさ。」
「跡部様?アイツそんなふうに呼ばれてるのか?」
「本当、何も知らないんだな。ほとんどの女子はそう呼んでるし、同学年の先輩にもさん
づけで呼ばれてるぜ。」
「ふーん、そうなんだ。」
そう言いながら、宍戸は携帯電話をパタンと閉じる。そして、チラッと窓の外へ視線を落
とした。その瞬間、下にいる跡部も三人のいる窓を見上げる。
「今、こっちの方見なかったか?」
「まっさかあ。そんなわけあるわけないじゃん。」
そんな跡部の視線に岳人は気づくが、ジローは気のせいだと返す。別に跡部がこちらを見
ようが見まいが関係ないと、宍戸は興味のない素振りを見せた。
「どっちでもいいじゃねぇか。そうだ、俺、放課後用事が出来ちまったから、今日は先に
帰っててくれよ。」
「マジで?そっかー、じゃあ、今日は二人で帰ろうぜ、ジロー。」
「うん。今日は見たいテレビがあるから、早く帰りたいし。悪いけど、先に帰らせてもら
うね、宍戸。」
「おう。」
キーンコーンカーンコーン
「あ、昼休み終わりだ。」
「午後の授業、面倒くさいC〜。」
「確かにな。まあ、とりあえず教室帰るか。」
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったので、三人はそれぞれ自分のクラスに戻る。教
室に戻るまでに、宍戸の携帯が数度震える。それはメールの着信を知らせるものであった。

放課後になり、宍戸は生徒会室へ向かう。岳人とジローには委員会の仕事があると言って
別れた。生徒会室に到着すると、宍戸はノックをして中に入る。
「失礼します。」
「来たな。」
「今日は跡部先輩だけしかいないのか?」
「ああ。今日は特に生徒会の仕事はないからな。」
「ふーん、そっか。」
「ちゃんと入ったなら、鍵かけておけよ。」
「おう。」
跡部にそう言われ、宍戸は生徒会室の中へ入るとドアに鍵をかけた。氷帝学園の生徒会室
は跡部仕様になっており、仕事をする机の他にゆっくりとくつろげるソファなども置いて
ある。そんなソファに宍戸は腰かけた。
「今日も女子にキャーキャー言われてたな、跡部先輩。」
「俺様はモテるからな。何だよ?ヤキモチでも焼いてくれてんのか?」
「べ、別にそんなことねぇよ。あんな状況でも、跡部先輩は俺にメールしてくれてたし。」
軽く顔を赤らめながら、宍戸は跡部のことを上目遣いで見上げる。そんな宍戸の視線に、
跡部はムラっとしてしまう。顔にかかる長い髪を指で遊びながら、跡部は宍戸の顎を上げ
た。
「当然だろ?あんな状態でも、俺様の頭の中はテメェのことでいっぱいなんだからよ。」
あまりに率直な跡部の言葉に、宍戸の胸はドキンと高鳴る。何も言えずにぼーっと跡部の
顔を眺めていると、その顔が徐々に近づいてくる。
(キスされる・・・!)
ぎゅっと目を閉じる宍戸を見て、跡部はふっと笑う。そして、期待に応えるかのように、
宍戸の唇に自らの唇はピッタリと重ねた。
(ただ唇くっつけてるだけなのに、こんなに緊張して、本当可愛いな。)
初めてでもないのに、初々しい反応を見せる宍戸に跡部はひどくときめく。しかし、こん
な反応だけで満足する跡部ではない。一旦唇を離すと、ふにっと柔らかい宍戸の唇に触れ
た。
「宍戸。」
「な、何?」
「口開けて、舌出せ。」
何をされるかよく分からないが、宍戸は跡部の言う通りにする。宍戸が舌を出すと、跡部
はその舌を食むように再び唇を重ねる。
「んむぅっ・・・!?」
舌と舌が触れ合い、口を開いたまま唇も重なる。さっきとは全く異なるキスに宍戸の体は
ビクンと跳ねる。
「んぁ・・・んっ・・・んん――っ・・・」
舌を弄ばれ、互いの唾液が混じり合う。普通のキスでは味わえないその感覚に、宍戸はゾ
クゾクしてしまう。
(なんか・・・なんか・・・・)
腰のあたりが疼き、鼓動のリズムは速くなる。息つく間もないほど、何度も繰り返される
接吻に、宍戸の体はひどく熱くなっていた。
「ぷぁっ・・・ハァ・・・ハァ・・・・」
「どうよ?大人のキスの味は?」
「・・・もう・・・わけ分かんねぇ・・・・」
「けど、嫌ではなかっただろ?」
「・・・・うん。」
息を乱しつつ、顔を紅潮させながら宍戸は跡部の問いに答える。本当に嫌ではなかったと
いうことを表すような宍戸の体の変化に跡部は気づき、それを指摘してやる。
「俺様のキス、相当よかったみてぇだな。ココをこんなにして。」
「っ!!」
跡部の指摘に、宍戸は思わずその部分を隠そうとする。しかし、その手は跡部の手によっ
て阻まれた。
「ココも気持ちよくしてやるぜ?この前みたいに。」
「やっ・・・違っ・・・・」
「してぇんだろ?素直に言っちまえよ。俺様としたいって。そうしたら、最高にお前のこ
と気持ちよくさせてやるぜ。」
恥ずかしくてたまらないのに、跡部の言葉が頭の奥に沁み込んでいく。既に何度か跡部と
身体を重ねている宍戸にとって、その言葉は抗うことの出来ない麻薬のような言葉であっ
た。
「あ、跡部先輩と・・・・」
「ああ。」
「・・・跡部先輩と、エッチが・・・したいです。」
普段は跡部に対してタメ語を使っている宍戸だが、こういうセリフを言うときは、無意識
に敬語になってしまう。そんな宍戸の言葉に、跡部はひどく興奮する。
「エライぜ。ちゃんとして欲しいこと言えたんだからな。宍戸がそう言うなら、存分に楽
しませてやるよ。」
ニヤリと笑って跡部は、宍戸の身につけている衣服を脱がす。上はワイシャツのボタンを
外すだけに留めたが、ズボンや下着など下に身につけていたものは全て取り去ってしまっ
た。あらわになった熱は先程のキスですっかり硬くなっており、その熱を跡部はぎゅっと
握った。
「ひゃっ・・・あんっ・・・!!」
「握っただけで、そんな声上げて。可愛いぜ、宍戸。」
「あう・・・だって・・・あっ・・・あ・・・ぁ・・・・」
宍戸の熱を覆っている手を跡部は上下に動かす。敏感な熱を擦られ、宍戸は堪えきれずに
いつもよりオクターブ高い声で鳴く。その声が跡部の耳には心地よく響き、宍戸を気持ち
よくさせることへの意欲を掻き立てる。
「擦ってやればやるだけ、硬くなってビクビクしてるぜ、お前のコレ。」
「やっ・・・ひぅんっ・・・!」
「お前の体は本当素直だよな。口では逆のこと言ってることも結構多いけどよ。」
「そんなこと・・・ない・・・跡部先輩には・・・ちゃんと・・・・」
「なら、今思ってること、ちゃんと口に出して言ってみろよ。」
恥ずかしいセリフを宍戸に言わせたいと跡部はそんなことを言う。今の状況で思っている
ことなど、限られている。それを口にするのは、ひどく恥ずかしいと思いつつも、宍戸は
跡部の言葉に従った。
「跡部先輩に・・・触られるの・・・激気持ちイイっ・・・跡部先輩、好き・・・もっと
たくさん・・・触って欲しい・・・・」
予想以上に萌えるセリフに跡部の鼓動は速くなる。もっと触って欲しいと言われたら、そ
うしないわけにはいかない。前を弄っている手とは逆の手の指をペロッと舐め、ひくひく
と収縮している後ろの蕾にその指を差し入れる。
「あっ・・・ああぁ――っ!!」
油断すればすぐに達してしまいそうな程の刺激に、宍戸は一際大きな声を上げる。その声
はこの生徒会室が防音壁でなければ、外に聞こえてしまうのではないかと思う程であった。
「指、食われてるみてぇ。お前の中、狭くて熱くてすげぇ興奮する。」
「ひあっ・・・指、動かされたらっ・・・・」
「アーン?動かさないと、慣らせねぇだろ。」
「やっ・・・けどよ・・・あっ・・・ぅあ・・・・」
狭い内側をほぐしてやろうと、跡部は中に入れた指を動かす。もちろん、前を擦る手を休
めることはない。前も後ろも跡部の手に弄られ、宍戸の快感は速いスピードで高まってゆ
く。
「あっ・・・ああっ・・・跡部先輩・・・もう・・・イッちゃ・・・」
切羽詰まったような声で宍戸がそんな言葉を口にすると、跡部は宍戸の下肢を弄るのをや
める。刺激がなくなれば、当然のことながら快感の大きさは小さくなる。
「あっ・・・ハァ・・・先輩・・・?」
「どうした?」
「い、いや・・・別に・・・・」
もう少しでイけそうだったのにと、宍戸は残念そうな表情を見せる。言葉にしなくとも、
跡部はそのことに気づいていた。そして、再び宍戸の熱と蕾を弄り始める。
「んっ・・・あっ・・・ああ・・・!!」
「だいぶコッチもほぐれてきたな。ほら、こんなに自由に指が動かせるぜ?」
ぐりっと宍戸の弱い部分を抉るように、跡部は指を動かす。そんな刺激に宍戸はビクビク
とその身を震わせる。
「ああぁんっ・・・そこ・・・だめっ・・・・!」
「イイの間違いだろ。ココ弄ってやるとコッチもビクビクするもんな。」
「あっ・・・ああっ・・・ダメっ・・・イッちゃう・・・っ!」
その言葉を聞いて、跡部は再び弄るのをやめる。イキそうになると、刺激を与えられなく
なり、寸前のところで止められる。そんなことを何度か繰り返され、宍戸の息はひどく乱
れ、下肢もビクビクと震えていた。
「ああっ・・・も・・・・」
またイキそうになるが、決定的な刺激が与えられずイクことが出来ない。もどかしい程の
中途半端な快感に宍戸はもう我慢が出来なくなっていた。
「何で・・・やめちゃうんだよぉ・・・・」
「何がだ?」
「もうちょっとで・・・イけそうなのにっ・・・そこで跡部先輩が・・・弄るのやめちゃ
うからっ・・・・」
「テメェのそんな反応が可愛いから、わざとやってるって言ったらどうする?」
あまりにも可愛い反応を見せる宍戸に、跡部はニヤけながらそんなことを言う。それを聞
いて、宍戸は今にも泣きそうな顔をして、跡部の制服の裾を掴み、キッと睨むように跡部
を見た。
「意地悪・・・すんなよ・・・」
その表情、仕草、言葉・・・全てが跡部のツボだった。ゾクッと腰のあたりが疼き、跡部
はふっと口元に笑みを浮かべる。
「仕方ねぇな。だったら、お前のお望み通り、ちゃーんとイかせてやるよ。」
そう言いながら、跡部は宍戸の足を抱え上げ、存分に慣らした蕾に自分自身を突き刺した。
跡部の熱に貫かれ、宍戸は声にならない悲鳴を上げ、熱の先から大量の蜜を迸らせる。
「――――――っ!!」
なかなかイカせてもらえなかったこともあり、その放出はすぐには治まらない。宍戸が精
を放ってる間、激しく収縮を繰り返す宍戸の内側の刺激を跡部は存分に享受した。
「ハァ・・・たまんねぇぜ。お前の中。前から出るのに合わせて、ぎゅうぎゅう締めつけ
てきやがる。」
「・・・ぁ・・・ハァ・・・ハァ・・・あっ・・・ああ・・・・」
「突っ込まれてイッちまうなんてやらしいなあ。そんなに俺様のコレが欲しかったのか?」
やっと息がつけ、声を上げられるようになった宍戸の中を、跡部は自らの楔で大きく抉る。
達したばかりの身体にはその刺激は強すぎて、宍戸は背中を仰け反らせて喘いだ。
「ああっ・・・ああぁんっ・・・!!」
「ほら、俺様のがテメェの中に全部入ってるぜ。」
「んっ・・・跡部・・・せんぱ・・・いの・・・おっきくて・・・中、いっぱい・・・」
「お前の中は狭くて、俺のをぎゅっと全部包んでやがる。まあ、それが最高に気持ちよく
てたまんねぇんだけどな。」
「俺も・・・激・・・気持ちイイ・・・・」
濡れた瞳に快感に染まった顔。宍戸の唇から甘い吐息に混じり放たれる言葉は、跡部の気
分をより高揚させる。
「もっと気持ちよくなろうぜ。」
「あっ・・・んあ・・・ああっ・・・!!」
もっと大きな快感が欲しいと、跡部はより激しく動き始める。熱い楔と柔らかな壁が擦れ
合う。そこから生まれるとろけるような心地よさ。どちらもその心地よさに溺れ、繋がっ
ている部分に意識を集中させた。
「ふあっ・・・ああぁ・・・あんっ・・・!」
「いいぜ、宍戸・・・もっとイイ顔見せて、イイ声で鳴いてみせろよ。」
「ああぁっ・・・跡部先輩っ・・・ひあっ・・・ああ――っ!!」
跡部の熱が熟れた蕾の中を出入りするたび、宍戸の絶頂感は高まっていく。それと同じよ
うに跡部の熱も次第にその感度と硬さを高めていった。
「ちっ、そろそろ限界だな・・・・」
「先輩っ・・・俺・・・また・・・・あっ・・・ああっ・・・」
「・・・・くっ!」
「イクっ・・・んっ・・・あ・・ああぁ―――っ!!」
跡部が宍戸の中に熱い雫を迸らせたのと宍戸が達したのはほぼ同時であった。他のことで
は味わえない最高の気持ちよさと心も体も満たされる満足感。お互いの鼓動を感じながら、
二人は心地よさの余韻に浸る。
「ハァ・・・ハァ・・・・ん・・・・」
「宍戸・・・」
顔にかかる宍戸の前髪を除きながら、跡部はちゅっと宍戸の頬にキスをする。そして、ゆ
っくりと体を離し、宍戸の中から自身を抜くとソファに腰かけた。
「んっ・・・あ・・・・」
「お前の中、俺のでトロトロになってるな。」
「・・・うん。」
「俺の、まだおさまってねぇんだよな。今度はテメェが上になって入れてみろよ。」
「まだ、するのか・・・?」
「当然だ。ほら、来いよ。」
宍戸の腕を引き、ぐいっと体を起こすと、跡部は宍戸を自分の膝に乗せる。跡部の足を跨
ぐように宍戸は足を開き、ソファに膝を乗せた。
「跡部先輩のが・・・溢れてくる・・・・」
「溢れねぇように、さっさと栓しちまえ。」
「んんっ・・・ああ・・・・」
跡部の蜜が滴るそこを塞ぐように、宍戸は跡部の熱に腰を落とした。ぐちゅっと濡れた音
が響き、何の苦もなく跡部の熱は最奥まで入る。
「ふあっ・・・ハァ・・・はっ・・あ・・・・」
「さっきとは違う感じで、気持ちイイぜ。宍戸。」
「これ・・・すごい奥まで・・・入っちまう・・・・」
「繋がってるって感じがして、最高だろ?」
「うん・・・」
跡部の言葉に頷くと、宍戸はゆるゆると腰を動かし始める。一度動かしてしまうと、自然
と体はより大きな刺激を求めるようになる。跡部が指示しなくとも、宍戸は自ら大きく上
下に腰を揺らし始めた。
「あっ・・・あんっ・・・ひあっ・・・ああぁ・・・・」
「上手いじゃねぇか。いい感じだぜ。」
「気持ちよくて・・・勝手に体がっ・・・あっ・・・」
「俺もすげぇ気持ちいいぜ。お前のことももっとよくしてやるよ。」
そう言いながら、跡部は宍戸の動きに合わせて、宍戸の熱を擦り始めた。跡部の蜜が内側
で激しく掻き回され、敏感な部分を抉られる。さらに前への刺激も加わり、宍戸の体は激
しすぎる快感に支配されていた。
「ああぁんっ・・・やっ・・・あっ・・・ああ――っ!!」
「ハァ・・・こりゃクるな。」
「跡部先輩っ・・・俺・・・もう・・・おかしくなっちゃうっ・・・あぁんっ・・・!!」
「ふっ・・・イこうぜ、宍戸。」
そう言いながら跡部は宍戸の一番弱い部分を擦り上げるかのように、手を滑らせ、内側を
穿つ。跡部が一番奥まで入ってきたのを感じ、宍戸は背中を仰け反らせながら達した。全
てを出し尽くすと、宍戸は跡部にもたれかかるように脱力し、その身を預ける。そんな宍
戸の頭を優しく撫でながら、跡部はしばらく宍戸の中に熱を埋めたまま、絶頂の余韻に浸
った。

後始末をし、制服をきちんと着直すと、宍戸はソファに座り、隣に座っている跡部の肩に
頭を預けていた。
「そういえばさぁ・・・」
「何だ?」
「跡部先輩って、跡部様って呼ばれてるんだってな。」
「ああ、確かに女子とか後輩はそう呼んでるかもしれねぇな。」
「同学年の人達にもさんづけで呼ばれてるって聞いた。やっぱ、跡部先輩ってすごいんだ
な。」
昼休みに岳人やジローに聞いた話を宍戸は跡部に話す。それを聞いて、跡部はふっと笑っ
た。
「テメェは気づいてないのかもしれねぇけどよ。」
「何?」
「俺のこと『跡部先輩』って呼んでるの、宍戸だけなんだぜ。」
「へぇ、そうなのか?」
「ああ。だから、俺的にはその呼び方は気に入ってるぜ。テメェだけが呼んでいい呼び方
だからな。」
「ふーん。」
あまり興味なさげな返事を返す宍戸だが、その表情は実に嬉しそうであった。自分だけが
跡部のことを他の人とは違う呼び方で呼んでいる。それが何だか嬉しかった。
「でもよ、先輩ってことは来年には同じ学校じゃなくなっちまうんだよな。それはちょっ
と寂しいかも。どうせだったら、跡部先輩と同じ学年がよかったなー。」
「あと、一年早く生まれりゃよかったのにな。」
「本当だぜ。そしたら跡部先輩のこと、『跡部』って呼び捨てに出来るのに。」
「ははは、呼び捨てにしてぇのか?俺は別に構わねぇぜ。」
「俺が構うんだよ!先輩を呼び捨てになんて出来ねぇよ。」
「そういうとこは、変に真面目だよな。お前。」
先輩のことは呼び捨てに出来ないという宍戸の言葉を聞いて、跡部はクスクス笑う。そし
て、ふと頭に浮かんだイメージを口にした。それは感覚的なもので、全く根拠はないのだ
が、そうであると言いきれるような強いイメージであった。
「もしかしたら、違う世界の俺とお前は同い年なのかもしれねぇな。」
「は?どういうことだ?」
「何となくそんな気がしてな。ほら、パラレルワールドとかあるだろ。そういう世界では
そうじゃねぇかなあと思ってよ。」
「んー、よく分かんねぇけど、そうだったらいいな。」
「ま、そんなことはさておき、先のことを考えてうじうじするより今を楽しもうぜ。」
来年のことを考えて、ほんの少し寂しそうな表情を浮かべている宍戸の頭を撫で、跡部そ
んなことを言う。未来はこれからやってくるものなのだから、いくらでもよくすることは
出来る。それよりも今この時間をもっともっと楽しもうと、跡部は宍戸の肩を抱いてやっ
た。
「そうだな。俺は今跡部先輩と一緒にいれて、すげぇ楽しいし、それを大事にしてった方
が先のこと考えてヘコむより、全然いいもんな。」
「だろ?さてと、宍戸も元気になったみてぇだし、そろそろ帰るか。とっくに下校時間は
すぎてるけどな。」
「マジで?うわっ、本当だ!もうこんな時間かよ。あんまり遅くなると母ちゃんに怒られ
るんだよなあ。」
「とりあえず、今日は家まで送ってやるよ。怒られそうになったら、俺が適当に誤魔化し
てやるから安心しろ。」
「ありがとな、跡部先輩。」
時計を見て宍戸は焦るが、跡部が家まで送ってくれるということで、とりあえずは安心す
る。岳人やジローは知らない跡部との関係。学園一の人気を誇る跡部に愛されているとい
う状況に、宍戸はほんの少しの優越感と恋する乙女のようなときめきを感じながら、口元
に小さな笑みを浮かべるのであった。

                                END.

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