I will be with you

現実世界で暴れていたオーガモンをゆがみからデジタルワールドに連れ戻したレオモンは、
オーガモンを連れ、ムゲンマウンテンの中腹へと向かう。そこには、いつも戦いの後、体
を休めるための小さな洞窟があった。
「オーガモン。」
「・・・・・」
「悪いが少しの間、ここにいてもらうぞ。お前を治すために、選ばれし子供達に協力して
もらおうと思っている。」
感染しているオーガモンは、光を失った瞳でレオモンを見る。感染したことで、自分をコ
ントロール出来ず、自分の意志とは関係なく暴れてしまう。しかし、レオモンの声はオー
ガモンの耳に届いていた。
「選ばれし子供達のところに行っている間は、お前の側にいてやれない。だから、すまな
いが、これをつけさせてもらうぞ。」
自分が側にいて、オーガモンを止めなければ、再び現実世界に行ってしまったり、始まり
の町で暴れたりしてしまう。それを避けるために、レオモンは洞窟の壁とオーガモンの腕
を繋ぐように手枷をつけた。
「う、うぅ・・・・」
ガチャガチャと枷のつけられた腕を動かすが、オーガモンはひどく暴れるということはし
なかった。自分の言うことを聞き、大人しくしているオーガモンに、レオモンは優しく触
れてやる。
「もし、向こうに行って私に何かあっても、何匹かの親しいデジモンにはこの場所を教え
てある。手の届くところに食べ物も置いて置くから、しばらくは問題ないはずだ。」
「・・・・・」
レオモンのその言葉を聞き、オーガモンはふと不安そうな表情になる。正気を保っていな
いながらも、そんな表情をするオーガモンに、レオモンの胸は苦しくなる。その胸の苦し
さを誤魔化すかのように、両手をオーガモンの顔に添え、いつものように唇を重ねた。
「大丈夫だ。心配することはない。」
唇を離し、優しくそう呟くと、レオモンはその場から離れようとする。その瞬間、オーガ
モンの瞳にすっと光が戻る。
「う・・・レオ・・モン・・・」
まだ手の届く場所にいるので、オーガモンはレオモンの服を掴んだ。先程とは少し異なる
様子のオーガモンに、レオモンはその場を離れるのをやめる。
「どうした?オーガモン。」
「レオモンが帰ってくんの・・・ちゃんと待ってるから・・・・その前に・・・レオモン
のこと、またおかしくなっても忘れないように・・・・してくれよ。」
目的語がなくとも、レオモンはオーガモンのして欲しいことを理解する。
「それなら、これ、一旦外しておくか?」
「いい・・・またいつおかしくなるか分かんねーし。」
暴れないようにとつけた手枷を外すかと尋ねるが、オーガモンはそれを断った。
「いいんだな?」
「おう。なあ、早く・・・」
「ああ。」
少しでも多くレオモンを感じていたいと、オーガモンは手枷のついた腕を伸ばす。無理矢
理はしないということを表すかのように、レオモンはオーガモンの身体をそっと、しかし、
しっかりと強く抱きしめた。

している最中にまた暴走してしまったらどうしようと不安に思っていたオーガモンであっ
たが、レオモンの愛撫はそんなことを忘れてしまうほど心地よく、いつまでも自我を保っ
てられていた。
「ふあっ・・・レオモンっ・・・」
「大丈夫か?」
「ああ・・・だいじょ・・・ぶ・・・だから、もっと・・・」
短いズボンは脱がされ、昂ぶった熱に触れられながら、ゆっくりと入口をほぐすように中
を弄られる。その感覚がどうしようもなく、オーガモンは濡れた声でレオモンにねだった。
「んっ・・・もう・・・イキそ・・・・」
「一度、イっておくか?」
「やっ・・・イクなら、レオモンので・・・イキてぇ・・・・」
ひくひくと下肢を震わせながら、オーガモンはそう呟く。もうだいぶいい具合にほぐれて
いるし、そんなことを言われてしまっては、レオモン自身も我慢出来なくなる。オーガモ
ンの脚を抱え上げると、その中心に硬くなった熱を押し当て、一気にその身を進めた。
「うあっ・・・あああぁっ!!」
レオモンのモノで貫かれながら、オーガモンはたくさんの蜜を放つ。その反動で内側は大
きく収縮し、レオモンの熱をさらに奥へと取り込もうと蠢く。
「くっ・・・」
「ハァ・・・レオモン・・・ハァ・・・あっ・・・」
「そんなに食らいつかれたら、抜けなくなってしまうぞ。」
冗談じみた口調で、レオモンはそんなことを言う。レオモンとしている間は、正気を保っ
ていられるし、それでもいいかもしれないなあと、オーガモンはボーっとする頭で考える。
「なぁ・・・レオモン・・・・」
「何だ?」
「今日は・・・俺の中に・・・レオモンのたくさん・・・いつもよりたくさん・・・欲し
い。」
切なげな表情を浮かべ、オーガモンはそう口にする。しばらくの間、レオモンは側にいて
くれなくなる。自分のためとは言えども、それがオーガモンは不安であった。レオモンの
放ったものが自分の中にあれば、離れていてもレオモンのことを感じていられると、そう
思っていた。
「そうだな。なら、今日はありったけの私をお前の中に注いでやる。」
その言葉を聞いて、オーガモンは安心したような笑みを浮かべる。感染してからは、そん
な表情を見せることがなかったので、レオモンの胸はひどく高鳴った。その言葉を実行す
るため、オーガモンの中を堪能するかのように、大きく腰を動かし、オーガモンのそこが
ぎゅっと締まれば、そのまま熱い雫を放つ。
「くっ・・ああぁんっ・・・!!」
「ハァ・・・オーガモン・・・・」
「レオモン・・・もっと・・・もっといっぱい・・・・」
もう入らなくなるまでレオモンが欲しいと、オーガモンはねだるような言葉を放つ。レオ
モンが自分の中に放たれるたびに、オーガモンも絶頂を迎える。少しでも動けば、隙間か
らこぽりと白い雫が溢れるほどになると、オーガモンの体力が限界を迎える。
「このまま・・・俺が気を失うくらいまで・・・しろよ・・・・」
「だが・・・」
「もう結構限界なんだけどな・・・・でも、おかしくなって記憶がなくなっちまうよりも
レオモンと繋がったまま・・・気を失っちまいてぇ・・・・」
「オーガモン。」
「なあ、レオモン・・・・」
お願いだと言わんばかりの瞳で、オーガモンはレオモンを見る。オーガモンがそう望むな
らと、レオモンは深い口づけを施し、オーガモンの中を穿つ。全身でレオモンと繋がって
いる感覚を心と身体に刻みながら、オーガモンは再び高みに達し、そのまま意識を手放し
た。それと同時に、レオモンもオーガモンの中に自身を放った。

事を終えると、レオモンは選ばれし子供達のところへ行く準備を始める。力なく横たわっ
ているオーガモンの側には、一度はオーガモンの中に入ったもののその場に留まることが
出来なかった雫が、小さな水たまりを作るかのようにこぼれていた。
「本当は後始末していくべきだが、今は時間がない。戻ってくるまでの間くらい問題ない
だろう。」
思ったよりも時間をかけてしてしまったので、レオモンはそう呟きながら、身支度をする。
オーガモンにも服を着せてやると、その体を起こし、ぎゅっと抱きしめた。
「必ず治してやるからな。私が帰るまで、待っていてくれ。」
オーガモンの耳元でレオモンはハッキリとそう口にする。意識はないものの、オーガモン
はその言葉をしっかりと胸に刻み込んだ。
「さてと、そろそろ出発しなれけば。」
オーガモンをそっと寝かせると、レオモンは立ち上がる。オーガモンを早く治してやりた
いと、レオモンは急ぎ足でその場を立ち去った。

感染の原因も判明し、その原因を断つことで、一連の騒動は幕を閉じた。オーガモンも感
染状態から回復し、通常の状態へ戻ることが出来た。しかし、オーガモンのもとへレオモ
ンが帰ってくることはなかった。
「レオモンの奴、どうして帰ってこねぇんだよ・・・」
レオモンが用意してくれていた食料などのおかげで、その場から動けなくとも特に問題の
なかったオーガモンであったが、レオモンがいつまで経っても帰ってこないことに、言い
ようもない不安を感じていた。そこへ、感染問題が解決したことを知り、オーガモンがこ
こにいることを教えられていたデジモンがやってくる。
「大丈夫?オーガモン。」
「もう感染状態は治ったのか?」
オーガモンのもとへやってきたのは、ユキダルモンとメラモンであった。
「俺はもう大丈夫だ。ところでよ、レオモンの奴、どこ行ったか知らねぇか?選ばれし子
供達のところへ行くって言って、出て行ってから帰って来ねぇんだけど。」
オーガモンの手枷をカチャカチャと外しながら、ユキダルモンとメラモンは顔を見合わせ、
困惑したような表情を浮かべる。ある事実を言おうか言うまいか迷ったが、オーガモンに
は伝えておかなければいけないだろうと、意を決して伝えることにした。
「すごく言いにくいんだけど・・・・」
「レオモンは、選ばれし子供達のいる現実世界で・・・死んだらしい。」
「は・・・?嘘だろ・・・?」
「本当だ。」
レオモンにも似た声で言葉を発し、三匹の前に現れたのは、青年の姿をしたゲンナイであ
った。
『ゲンナイさん!』
「久しぶりだな。」
「お、おい、レオモンが死んだってどういうことだよ!?しかも、現実世界で?何でなん
だよ!!」
事態が飲み込めず、オーガモンはひどくうろたえる。そんなオーガモンをなだめるような
口調で、ゲンナイは言葉を続ける。
「今回の感染に強く関わっているデジモンを助けようとしてな。そのデジモンが暴走した
際に攻撃を受け、消滅したらしい。」
「そんな・・・」
ゲンナイの話にショックを隠し切れないオーガモンは、その場に崩れ落ちる。しかし、レ
オモンは以前にも一度死んでいる。一度死んでいるが、再び生まれ変わって、少し前まで
行動を共にしていたのは間違いない。
「で、でもよ、またデジタマになって生まれ変わるんだろ?ダークマスターズのときだっ
てそうやって・・・」
「それが、今回はそれとは事が別なんだ。」
「ど、どういうことだよ?」
「現実世界で死んだデジモンは、生まれ変われないとされている。ヴァンデモンの手下の
ウィザーモンやパンプモンやゴツモンがそうであったように。」
その言葉を聞いて、オーガモンは鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。レオモンはも
う自分のところへ帰って来ない。認めがたい事実を突きつけられ、頭の中が真っ白になる。
レオモンは自分のところへ帰って来ると言った。一度死んだときも、自分との約束を覚え
てくれていた。今回もきっと戻ってきてくれる。そう信じたいと思いつつも、オーガモン
は大粒の涙をこぼす。
「そんなの嘘だ!!レオモンは帰ってくる!!死んだかもしれないけど、生まれ変われな
いなんて・・・そんなこと信じねぇ!!」
「オーガモン・・・」
「信じたくねぇ気持ちは痛いほどわかるけどよ・・・」
「レオモン・・・レオモンっ・・・・」
号泣しながら、オーガモンはレオモンの名を呼ぶ。あまりに悲痛な叫びを上げるオーガモ
ンを見て、ユキダルモンもメラモンも胸が痛くなる。
「レオモンっ!!」
一際大きな声でレオモンの名を呼んだ瞬間、まばゆい光がオーガモンの足元を包む。あま
りの眩しさにそこにいる誰もが目を閉じた。光が消え、ゆっくりと目を開けると、オーガ
モンの側にオレンジ色に近い黄色のデジタマがコロンと転がっていた。
「デジタマ?」
「お前が産んだのか?」
「んなわけあるか!!」
ユキダルモンとメラモンの言葉に、オーガモンは思わずつっこむ。突然現れたデジタマを
ゲンナイは手に取る。そして、ふっと笑いながら、オーガモンに渡した。
「さっきはああ言ったが、もしかしたら例外があるのかもしれないな。」
「例外?何のことだ?」
「現実世界で死んだ場合、生まれ変われないという話だ。もし仮に、デジタルワールドに
そのデジモンのデータの欠片が残っていたり、そのデジモンの生まれ変わりをを強く望ん
でいる者がいた場合は、そうはならないのかもしれないな。」
「えっと・・・それはつまり・・・?」
「このデジタマは、おそらくレオモンだろう。」
ゲンナイの言葉を聞いて、オーガモンは手に持ったデジタマに目をやる。デジタルワール
ドに残っているデータの欠片、つまり、レオモンの一部だったものにオーガモンは心当た
りがあった。そして、自分は誰よりも再びレオモンと会えることを強く望んでいる。ゲン
ナイの予測が正しいのであれば、このデジタマがレオモンだと言われて、疑う余地はない。
「よかったね!オーガモン!!」
「時間はかかるかもしれねぇけど、またレオモンには会えるぞ。」
「・・・よかった。本当、よかった。」
レオモンのデジタマをぎゅっと胸に抱いて、オーガモンは再びポロポロと涙を流す。
(想いの強さは奇跡を生むものだな。パートナーがいないにも関わらず、こんなに想って
くれる者がいるというのはうらやましい限りだ。)
オーガモンの姿を見て、ゲンナイはしみじみとそう思う。愛おしそうにデジタマを抱えて
いるオーガモンに、ゲンナイは一つ助言をしてやる。
「お前では生まれたばかりの赤ん坊の世話は出来ないだろう。そのデジタマを持って、始
まりの町に行ったらどうだ?」
「そうだな。感染してるときに、たくさんのデジタマ壊しちまったから謝りに行かなきゃ
なんねーし。」
「僕たちもついて行く?」
「いや、俺一人で行くからいい。」
「そうか。じゃあ、また何かあったら声かけてくれよ。」
「赤ちゃんのレオモンが生まれたーとかね。」
「私もそろそろ戻るとしよう。レオモンに会えたら、よろしく伝えておいてくれ。」
オーガモンとデジタマを残し、ユキダルモン、メラモン、ゲンナイは洞窟から去って行っ
た。しっかりとレオモンのデジタマを腕に抱えると、オーガモンは始まりの町に向かって
歩き出した。

「感染の問題も解決したし、だいぶ落ち着いて世話が出来るようになったなー。」
ベイビー達のお世話をしながら、エレキモンはそんなことを呟く。問題が解決してからは、
始まりの町にも平和が戻り、オーガモンが壊してしまったデジタマもしばらくして復活し
た。ゆりかごの中のベイビー達に話しかけていると、何かに気づいたようにピョンピョン
と暴れ出す。
「どうした?」
「おい。」
声をかけられ、エレキモンは声のする方に顔を向ける。そこにはデジタマを抱えたオーガ
モンが立っていた。
「オーガモン!」
また暴れに来たのかと一瞬焦ったエレキモンであったが、感染していたときとは明らかに
雰囲気が違うので、ほんの少し距離を置きながら様子を見る。すると、オーガモンは土下
座をするように頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
「感染して正気を失っちまってたとはいえ、たくさんのデジタマを壊して悪かった。本当
すまねぇ。」
「・・・・もう大丈夫なのか?」
「ああ。」
感染状態から完全に回復している様子のオーガモンに、エレキモンはホッと胸を撫で下ろ
す。
「そっか。ところで、そのデジタマどうしたんだ?まさか、オーガモンが産んだのか?」
「メラモンも同じようなこと言ってたけど、そんなわけねぇだろ。」
「じゃあ、何なんだよ?」
「レオモンがな・・・俺のために選ばれし子供達のところへ行って、感染騒ぎに関わって
いるデジモンに殺されちまったらしいんだ。現実世界で消えちまったから、始まりの町に
は戻って来れないかもしれないってことだったんだけど、いろいろあってこうなった。」
「それじゃ、そのデジモンはレオモンのデジタマってこと?」
「ああ、たぶんな。」
レオモンが現実世界で死んだという話はエレキモンの耳にも入っていた。レオモンのデジ
タマをオーガモンが持っているとは意外であったが、普段の二人の関係を考えれば、そこ
までおかしくないかと納得する。
「それで、どうしてここに?」
「暴走してるときにデジタマ壊しちまったのを謝りにと、レオモンの幼年期のやつをここ
で面倒見て欲しいと思って。」
「それならお安い御用だけど、レオモンがそんなに好きなら、自分で世話すればいいのに。」
「俺に赤ん坊の世話が出来ると思うか?」
確かにそれは無理かもしれないと、エレキモンは苦笑する。預かる前にと、エレキモンは
あることをオーガモンに指示した。
「オーガモン、そのデジタマ、ちょっと撫でてみろよ。」
「撫でる?こうか?」
持っているデジタマをオーガモンはそっと撫でる。すると、ピキピキとデジタマにヒビが
入り、パカッと割れた。そして、中からボタモンが元気よく現れる。
「おわっ!?」
「ははは、それ、レオモンの幼年期の奴だぞ。」
レオモンの幼年期と聞いて、オーガモンはボタモンに向かって思いのうちを言葉にする。
「何で俺の知らないところで死んでんだよ!!帰って来るって約束したのに・・・全然帰
って来ねぇし。また、お前がレオモンになるまで待っていなきゃいけねぇじゃねぇか!!」
「ちょっ、オーガモン、そんなに怒鳴ったら泣いちゃ・・・」
半べそ状態のオーガモンに怒鳴られながらも、ボタモンは嬉しそうに笑いながら、オーガ
モンの顔にくっつこうとする。その姿を見て、このボタモンは間違いなくあのレオモンだ
なあとエレキモンは笑う。
「そのボタモン、やっぱりレオモンで間違いないみたいだな。」
「当たり前だろ!!そうじゃなきゃ困る。」
「よかったな、オーガモン。」
オーガモンがレオモンのことをどれだけ想っているかをエレキモンもある程度理解してい
るので、優しく笑いながらそんなことを口にする。エレキモンのその言葉と今目の前にい
るボタモンに、オーガモンはこみ上げてくる涙を抑えることが出来なかった。
「うう・・・」
「オーガモン?」
ボロボロと涙を流しながら、オーガモンはボタモンに頬ずりをするかのように顔をくっつ
ける。そして、心からの思いを口にした。
「生まれ変わってくれて・・・ありがとう・・・レオモン。」
オーガモンのそんな言葉を聞いて、エレキモンも目頭が熱くなる。オーガモンのためにも
ちゃんとレオモンになるように育ててあげようと、エレキモンは心の中で決意した。

「よし、これで終わり。」
「いつもすまねぇな。」
それから何年かの時が過ぎ、デジモンの医者になった丈に、バトルでケガをしたオーガモ
ンは傷の手当てをしてもらっていた。
「終わったか。」
「おう。」
「レオモンは特にケガしてない?」
「ああ、大丈夫だ。」
オーガモンの手当てが終わったのを見て、すぐ側で待っていたレオモンは声をかける。特
にケガはしていないというレオモンであったが、首筋のあたりに噛まれたような跡を丈は
発見する。
「レオモン、首のところ・・・」
「えっ?ああ、これはどうってことない。手当てされるようなものでもないし。」
歯型のついた首元を押さえながら、レオモンは答える。
「でも・・・」
「丈。」
「えっ?」
丈の助手を務めているゴマモンは、くいっと丈の服を引っ張り、それ以上つっこんでやる
なと言った目で見る。ふと二匹に視線を戻すと、オーガモンの方がひどく恥ずかしそうな
様子で、そっぽを向いていた。
「え、えっと・・・・」
「察してあげなよ、丈。」
ゴマモンの言葉に、丈はレオモンのその傷がどういうときについたかに気づいた。顔をボ
ッと赤くして、丈は慌てたような素振りを見せる。
「あ、そ、そうだね!レオモンが大丈夫って言うんなら、大丈夫だよね!」
「て、手当ても終わったことだし、そろそろ行こうぜ!レオモン!!」
レオモンの傷は、オーガモンが最中につけたものなので、オーガモンも真っ赤になる顔を
誤魔化すかのようにそんなことを言う。こんなちょっとしたことで、こんな反応を見せる
オーガモンが可愛いなあと思いながら、レオモンは頷いた。
「そうだな。」
「傷の手当てしてくれて、あんがとな。じゃあな。」
これ以上顔を合わせているのは恥ずかしいと、オーガモンはレオモンを連れて、そそくさ
とその場から立ち去る。そんな二匹を見送りながら、丈はいまだに顔を赤くして、ドキド
キしていた。
「はあー、ビックリした。レオモンとオーガモンってそうなんだ。」
「オイラは知ってたけどな。」
「あー、でも・・・」
「何だよ?」
「僕が小学生だったときも、オーガモンはかなりレオモンのこと好きだったよね。ミミく
んと別行動してるときの話とか思い出すと。」
「確かに。倒したいって言ってるくせに、レオモンがいなくなるなんて考えられないとか
言ってたし、レオモンが死んじゃったときは大泣きしてたしな。」
オーガモンがレオモンを好きなのは昔からだったかーと、丈とゴマモンは顔を見合わせて
笑う。ライバルでありながらもお互いに好き合っている二匹を見て、やっぱり平和なデジ
タルワールドが一番だなと丈は心から思う。
「でも、まあ、レオモンも生まれ変わってくれたし、オーガモンもレオモンも幸せそうだ
から、すごくいいことだよね。」
「そうだな。オイラもずーっと丈と一緒にいられるから、今すっごく幸せだぜ。」
ニコッと笑いながらそんなことを言ってくるゴマモンに、丈はドキドキしてしまう。全く
敵わないなあと思いながら、赤くなる顔を手の平で隠した。

丈とゴマモンと別れた後、レオモンとオーガモンはいつものようにムゲンマウンテンの道
を歩いていた。
「まさかコレを見つけられるとはなあ。さすがデジモンの医者だな。」
「見えないように隠しとけよ。」
「つけたのはお前だろう?こんなマーキングみたいなことしなくとも、私はお前のものだ
ぞ?」
そんな冗談を言い、レオモンはオーガモンに笑いかける。
「べ、別にそんなつもりじゃ・・・」
「私はお前のおかげで、再び生まれることが出来たんだからな。」
穏やかな笑顔でそんな言葉を続けるレオモンに、オーガモンはドキドキしてしまう。ただ
ドキドキさせられるのは何だか悔しいので、少し文句を言ってみる。
「お前、死にすぎなんだよ!そのたびに、俺は落ち込むし、お前がレオモンに成長するの
待ってなきゃいけねぇし・・・少しは俺の気持ちを考えろ!!」
「お前は私のことが、誰よりも好きってことか?」
「何でそうなんだよ!?そうじゃなくて・・・・」
「分かっている。何度も約束を破って、何度も悲しませて、本当にすまないと思っている。
それから・・・」
歩みを止め、レオモンはオーガモンをぎゅっと抱きしめる。そして、真剣な声色でオーガ
モンに言葉をかける。
「長い間、私を待っていてくれて、ありがとう。何度死んでも、何度生まれ変わっても、
変わらず私のことを思い続けてくれて、ありがとう。」
「っ!!」
「これから先、もう死なないという約束は出来ないが、死んでも必ず生まれ変わって、お
前の元へ戻る。お前が思ってくれるから、私はこうして生きていられるのだから。」
レオモンの腕の中で、オーガモンは恥ずかしさと嬉しさと泣きそうな気持ちで、胸がいっ
ぱいになっていた。何も言葉が出ないので、とりあえず、レオモンに背中に腕を回し、ぎ
ゅっと抱きつく。大きく高鳴る鼓動の音がレオモンに伝わってしまいそうで、オーガモン
はぼそっと呟いた。
「・・・・お前なんか、キライだ。」
「言葉と行動が真逆だが?」
「うるせー。」
オーガモンの『キライ』は『好き』と同義なので、レオモンは嬉しそうに微笑みながら、
オーガモンの頭を撫でる。
「私はオーガモンのこと好きだぞ。」
「・・・・知ってる。」
そこでそう返されるとは思わなかったので、レオモンは少々驚きつつ、顔を緩ませる。ど
んな態度でも愛おしいなあと思いながら、レオモンは腕の中にあるぬくもりをしばらくの
間堪能する。
「さてと、これからどうしたい?オーガモン。」
「バトル。」
「お前がそうしたいなら構わないぞ。」
「それが終わったら・・・・」
「何だ?」
「レオモンがしたいこと、すればいい。」
それはいい考えだと、レオモンは頷く。一日のほどんどを二人きりで過ごし、バトルをし
たり、想いを伝えあったり、触れ合ったりする。そんな当たり前だがかけがえのない時間
を二匹は共に過ごすのであった。

                                END.

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