カ・レ・シ・ャ・ツ

「あー、しもた!!」
練習を終え、入浴の準備をしていた毛利は突然大きな声を上げる。やってしまったという
表情で大きな溜め息をついた。
「どうした?」
「いやー、最近雨続きやったやないですか。ちょっと洗濯サボっとって、今日まとめて洗
ったんですよ。んで、明日干そう思てたんですけど、部屋で着るもの全部洗ってしもて。」
「なるほど。入浴後の着替えがないというわけか。」
「練習用のジャージの予備も洗濯してもうて、ホンマに何にもないんですわ。」
どうしたものかと頭を抱えていると、すっと目の前に綺麗にたたまれた服が差し出される。
「サイズはだいぶ大きくなってしまうが、何もないよりはマシだろう。」
「えっ!?これ、月光さんの・・・」
「よければの話だ。他の者に借りるという選択肢もあるだろう。」
「ありがとうございます!助かりますわ。」
越知の服を着れるという機会など滅多にないので、毛利は喜んで差し出された服を受け取
る。広げてみると薄い青色のシンプルなパジャマであった。軽く体にあててみるとやはり
だいぶ大きく、上着の裾は膝の少し上くらいまで長さがあった。
「これ、たぶん下の方穿いたら引きずってまうね。」
「ああ。確かにそうかもしれないな。」
「せやったら、上だけ着ればええですかね?」
「・・・ある程度の長さがあるようだし、さして問題はないだろう。」
下を穿かないのはどうかと思ったが、ハーフパンツほどの長さであれば隠れてしまうほど
の長さがあるので、越知は問題ないと判断した。
「それじゃ、風呂行きましょか。」
「ああ。」
早く汗を流したいと、毛利は越知を誘って大浴場へと向かう。自分の服を着た毛利がどの
ような姿になるのか、越知はこっそり楽しみにしながら部屋のドアを閉めた。

「はあー、さっぱりした!」
「いい湯加減だったな。」
「月光さんのパジャマ、丈もまあ長いですけど、袖も結構余りますね。」
「それは仕方あるまい。」
風呂からあがると、越知は部屋着に毛利は越知から借りたパジャマに着替えた。パジャマ
の丈がだいぶ長いのは分かっていたが、思った以上に袖の部分も長く毛利の手を完全に隠
してしまっていた。
「ここで話していても湯冷めしてしまうし、早めに部屋へ戻るか。」
「そうですね。明日は休みですし、今日はゆっくりしましょ。」
「そうだな。」
脱衣所で脱いだ服を片付けると、二人は部屋へと向かう。他愛もない話をしながら、廊下
を歩いていると、これから風呂へと向かおうとしている中学生に会った。
「あー、えっと、四天宝寺の子やね?」
「そうですけど、先輩、えらい格好してますね。」
越知と毛利が廊下で出会ったのは、四天宝寺の財前であった。自分より遥かに身長の高い
先輩が袖が余るほどぶかぶかの服を着ている。その光景がなかなかに奇妙で、財前は思わ
ずつっこみを入れる。
「いやー、ちょっと訳あって月光さんから服借りたんよ。」
「先輩、身長いくつですか?」
「身長?191.63cmやで。」
「師範より大きいやないですか。そんなに大きいのに彼シャツ状態とか半端ないっスね。」
『彼シャツ?』
彼シャツという言葉がピンと来ない越知と毛利は思わずそう聞き返す。軽くスマホを操作
し、彼シャツで検索した画像を財前は二人に見せる。そこには可愛らしい女の子が彼氏の
ものと思われるぶかぶかのシャツを着ている画像がずらっと並んでいた。
「なるほど、これは確かに・・・」
「190cm超えてたら、普通はどうやったって彼氏側にしかなり得ないはずなんスけど
ね。それが着る側とかホンマすごいっスわ。」
「まあ、月光さんは俺より30cm以上大きいわけやし。」
「かなり珍しい感じなんで、写真撮ってブログに載せてもええですか?」
これはブログのいいネタになると財前はそんなことを頼んでみる。ノリのいい毛利は特に
嫌がることもなく、その頼みを了承する。
「別に構わんで。その代わり、カッコよく撮ってな。」
「ありがとうございます。」
先程見せてもらった画像を参考に、毛利は可愛らしいポーズを取ってみたりする。これは
カッコイイというよりは・・・と思いつつ、財前は何枚か写真を撮った。
「越知先輩もよければ入ってもらえませんか?」
「さして問題はない。」
後輩の頼みということで、越知もその頼みを快諾する。二人の写真を数枚撮った後、二人
の身長の高さを示すため、自撮りをするような形で自分も入った写真も撮る。なかなかい
い写真がたくさん撮れたと、財前は満足そうな表情で二人にお礼を言った。
「ええ写真たくさん撮れましたわ。ありがとうございます。」
「それはよかったわ。」
「そろそろ部屋に戻るがよいか?」
「はい。引き止めちゃってすいませんでした。」
スマホをポケットにしまうと、財前はペコリと二人に頭を下げ、大浴場へと向かって歩き
出す。越知と毛利も自分達の部屋へと向かって歩き出した。

部屋に戻ると、毛利は普段は越知が寝ている二段ベッドの下へ入る。寝転がるのではなく、
あぐらをかくように座り、ポンポンと布団を叩いて越知を呼んだ。
「月光さんもこっち座ってください。」
「もう寝るのか?」
「ちゃいますよ。明日は休みやし、今日もわりと時間あるんで、月光さんとイチャイチャ
したいなあと思て。」
照れたように笑いながら毛利はそんなことを言う。パジャマの上しか着てない状態で、あ
ぐらをかいて座っていると太腿のあたりが見えそうで見えないような状態になっている。
(何というかこれは・・・)
彼シャツというものを今日初めて知ったが、毛利の姿を見て、そのよさが分かると越知は
そういう言葉があることに納得してしまう。
「月光さん?どないしました?」
「いや、何でもない。」
「早くこっち来んせーね。」
「ああ。」
毛利に呼ばれ、越知もベッドの下へ入る。どちらも大柄なので、二段ベッドの下という空
間はかなり狭い感じになる。しかし、毛利にとってはその近さがちょうどよかった。
「やはり二人で入ると狭いな。」
「ほなら、もっとひっつきます?」
「お前はどうしたいんだ?」
「そんなんひっつきたいに決まってるやないですか。月光さんにぎゅーってしてもらいた
いです!」
素直に甘えるようなことを言ってくる毛利を越知は心から可愛いと思う。しかも今日は、
彼シャツという最強の装備を纏っている。そんな毛利に向かって腕を広げてやると、嬉し
そうな笑顔で、袖で隠れた手を伸ばし抱きついてくる。
「甘えん坊だな。」
毛利の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめてやると、毛利が胸に顔をうずめてくる。こう
いうところは本当に可愛らしいと、越知の胸はドキドキと高鳴った。
「月光さん、心臓ドキドキしとりますね。」
「お前がこんなふうにしてくるからな。」
「俺も今メッチャドキドキしてます。」
「そうか。」
いつものように毛利の頭を撫でてやると、毛利は越知の胸にうずめていた顔を上げ、越知
の顔を見る。ほのかに赤く染まった頬と自分を見てくる大きな瞳に越知はドキっとする。
「月光さんに頭撫でられるの気持ちよくて好きです。」
どこかうっとりとした様子で、目を細めながら毛利は言う。触れ合っているところから感
じる体温とすぐそばにある大好きな顔。そんな状態で平常心でいることなど、さすがの越
知でも出来なかった。
「毛利。」
「はい、何です?月光さん。」
「キスしてもよいか?」
「っ!!・・・ええですよ。」
越知の言葉にほんの少しだけ驚いたような反応を見せつつ、毛利ははにかみながら頷く。
その反応がどうしようもなく可愛く、越知はもうどうにかなってしまいそうだった。毛利
の頭に手を添えたまま、越知はゆっくりと唇を重ねる。お互いの唇の形、柔らかさ、感触
を確かめ合うように口づけた後、より深いところまで探りたいと、越知は舌で毛利の口に
触れた。
「・・・・っ!!」
その瞬間、毛利の肩はピクンっと震える。おずおずと口を開き、越知の舌を受け入れる。
上の歯と下の歯の隙間をすり抜けるように入ってくる舌は、すぐに毛利の舌を捉えた。
「・・・ふっ・・・んんっ・・・!」
小さく開かれた口から漏れる声に、毛利自身も越知も身体が熱くなっていくのを感じる。
絡む舌の熱さに次第に混じっていく唾液。ぞくぞくと身体の奥が痺れるような感覚に二人
は夢中になっていく。
(月光さんとキスするのメッチャ気持ちええ・・・頭ん中溶けてしまいそうや・・・)
甘い媚薬のようなキスは二人の理性をドロドロに溶かしていく。もうどれだけ時間が経っ
たか分からないほど長いキスの後、二人は軽く呼吸を乱しながらお互いの顔を見た。
「・・・これはアカンですね。」
「・・・ああ。」
「月光さんとのキスがよすぎて・・・したくてたまらんですわ。」
「同感だ。」
「なら・・・」
越知もその気ならと、毛利は着ていたパジャマを脱ごうとする。ボタンを全て外しきった
ところで、越知はその手を止める。
「どないしはったんです?」
「そのままがいい。」
「パジャマ、脱がない方がええってことですか?」
「ああ。下着は脱いでも構わないがな。」
「月光さんがそうして欲しい言うならこのままでいときます。」
邪魔な下着は脱いでしまい、越知のリクエストの通りパジャマを羽織っているだけのよう
な格好になる。彼シャツの真骨頂とも言えるような毛利の姿に、越知はひどく興奮する。
「せっかくなんで、月光さんも同じ格好にしてください。」
「分かった。」
毛利に言われ、越知も毛利とほぼ同じような格好になる。はだけた胸とどうしても目が行
ってしまう越知のそれに毛利の顔は赤くなる。
「やっぱ・・・月光さんのすごいですねぇ。」
分かってはいるもののあえて指摘されると恥ずかしいと感じる。そんな恥ずかしさを誤魔
化すかのように、越知は服を脱ぐついでに準備をしたローションを手にし、毛利をぐっと
引き寄せた。
「そう思うのなら、しっかりと準備をしないといけないだろう。」
「えっ・・・ひゃあっ・・・!?」
むき出しの毛利の双丘に越知はローションを垂らす。自分の手にもたっぷりとそれを絡め、
まだ閉じたままの入口に指を這わせる。
「やっ・・・月光さんっ!!」
「しっかりほぐしてやるから、力を抜いておくといい。」
「・・・っ!!うあっ・・・」
ヌルヌルとした越知の長い指が内側へと入ってくる感覚に毛利は思わず声を上げる。ロー
ションのおかげで毛利のそこは抵抗なく越知の指を受け入れ、じゅぶじゅぶと濡れた音を
立てる。
「あっ・・・ああっ・・・!!」
「痛くはないか?」
「こないにヌルヌルやったら・・・痛いどころか・・・・ひあっ・・・!!」
「問題なさそうだな。」
毛利の中を柔らかくほぐすかのように越知は指を動かす。一本では足りないほどにほぐれ
てくると、一本また一本と指を増やしていった。
「んんっ・・・月光さぁ・・ん・・・」
越知の指で内側を弄られる感覚に毛利の下肢は熱を帯びていく。その中心は直接触られて
いないにも関わらず、蜜をこぼしながら大きくなっていた。あまりの快感に毛利は腰を浮
かし、両手でシーツを握りながら越知の顔を仰ぐ。今にも涙がこぼれてしまいそうなほど
潤んだ瞳に、乱れた呼吸。両手は袖で隠れているが、開いたパジャマの間からは赤く染ま
った突起が覗く。
(ああ・・・たまらないな。)
自分の腕の中で乱れる毛利に越知の理性は崩れ去っていく。だいぶほぐれてきた内側をも
う少し激しく弄ってやろうと大きく指を動かすと、ビクンと毛利の身体が跳ねた。
「ひあっ・・・ああぁんっ!!」
「随分とよさそうだな。」
「ああっ・・・月光さん、アカンです・・・そないにされたら・・・俺・・・」
「気持ちいいのなら、我慢しなくていい。」
「やぁっ・・・もっ・・・月光さんっ・・・・ああぁ―――っ!!」
一際大きく身体を震わせ、毛利はパタパタとシーツの上に白く濃い蜜をこぼす。その瞬間、
内側に埋めていた指がぎゅうぎゅうと締め付けられ、これが指ではなく自分自身のモノで
あったらと越知は期待感に胸を躍らせる。
「ハァ・・・ハァ・・・・」
達した余韻に浸りながら、大きく息を乱している毛利をぎゅっと抱きしめ、越知は耳元で
囁く。
「そろそろ俺も限界だ。」
その言葉が意味することを理解し、毛利は越知を抱きしめ返し、その言葉に答える。
「ええですよ。今度は月光さんも一緒に気持ち良くなりましょ。」
その言葉を聞いて、越知はゆっくりと毛利を布団の上に押し倒す。パジャマの前は大きく
はだけ、下半身は無防備にむき出しになっている。しかし、腕と手は長さが余る袖でしっ
かりと隠れている。そのギャップに越知は我慢ならない状態なっていた。なるべく毛利に
負担をかけないようにと、越知は限界ギリギリの熱の塊にローションを垂らし、毛利の中
へ入る際に生じる抵抗を減らそうと試みた。
「いくぞ。」
開かれた脚の中心に越知の熱があてがわれる。その大きさと熱さに毛利の心臓はドキンと
高鳴った。次の瞬間、その大きな熱が十分にほぐされ敏感になっている入口と内側を擦り
上げながら、毛利の中へと入っていく。
「――――っ!!」
ローションのおかげか、毛利のそこは予想よりも遥かにすんなり越知を受け入れる。痛み
や違和感はほとんど感じず、ただただ内壁を擦られる快感が毛利を襲う。声にならない声
を上げ、毛利はビクビクと下肢を震わせる。
「ハァ・・・大丈夫か?毛利。」
「は、はい・・・平気です・・・せやけど・・・」
「何だ?」
「月光さんと繋がってるの気持ち良すぎて・・・おかしなってしまいそうですわ・・・」
「それはさして問題ではない。」
「そーですよね・・・ほなら、月光さん・・・・」
呼吸を乱しながらも、口元に笑みを浮かべて毛利は言葉を紡ぐ。
「月光さんがぎょーさん気持ち良うなれるように・・・・好きなように動いてください。」
「いいのか?」
「はい!月光さんが気持ち良うなるんやったら、俺はもっと気持ちええんで。」
赤く染まった顔でニッコリと笑いながら毛利は言う。そんなことを言われてしまっては、
抑えがきかなくなってしまう。毛利に言われた通り、越知はいつもよりも激しく毛利の中
を穿つ。
「ひっ・・あ・・・ああぁっ・・・月光さ・・・・っ!!」
「毛利っ・・・」
自分が気持ちいいと思うような動きをすれば、毛利も大きな反応を見せ、繋がっている部
分がぎゅっと締まる。それが相乗効果となり、繋がっている間中絶え間ない快感が続く。
「月光さんっ・・・ああっ・・・んっ・・・もっと・・・」
「ああ。」
長く続く快感は、ただ長く続くだけではなく次第に大きくなっていく。繋がり合う部分か
ら全身へと広がる多幸感。身体の奥で擦れ合い交じり合う心地よさが二人を絶頂という名
の高みへと誘う。
「ああぁっ・・・月光さんっ・・・もう・・・アカンっ・・・!!」
「ハァ・・・俺も、もう・・・・」
「ふあっ・・・ああぁ―――っ!!」
「くっ・・・」
限界まで高まった熱が脈打ちながら精を放つ。身体を重ねながら感じる気だるい心地よさ。
もうしばらくお互いの体温を感じていたいと、二人はしばらくの間、その身を重ねたまま
でいた。

汚れてしまったシーツを新しいものに取り替え、毛利はその上に横になっている。当然の
ことながら羽織っていたパジャマも汚れてしまっているので、先程とは違う服を毛利は越
知に借りていた。
「すんません、月光さん。また、服借りてもうて。」
「さして問題はない。それに、俺の服を着ているお前のその格好、俺は好きだぞ。」
「月光さんも彼シャツ好きなんやね。」
「さして興味はない。」
「今、好きって言ったやないですか。」
越知の言葉に毛利はケラケラ笑う。もうだいぶ遅い時間になっているが、汚れたシーツや
服をそのままにはしておけないので、今からでも洗濯をしに行こうと越知は考える。さす
がにそういうことをして汚してしまった洗濯物を昼間に洗濯するのは気がひけた。
「毛利、今から洗濯に行くが、お前の洗濯物はまだ入ったままなのか?」
「あー、そうです。取りに行かなアカンね。」
「お前は休んでいろ。これらのついでに持ってきてやる。」
「すんません。ありがとうございます。」
越知の言葉に甘え、毛利は部屋に残ることにする。洗濯物を抱え、コインランドリーまで
移動すると、越知はまず毛利の洗濯物を出す。さすがに夜も遅いこともあり、越知以外に
は誰もいなかった。
(少し時間はかかるが、終わるまで待っているとしよう。)
今洗わなければいけないものを洗濯機に入れると、越知はコインランドリー内にある椅子
に座る。先程したことの疲れもあり、少しうとうとしていると、ふと人の気配を感じる。
「こんな時間に洗濯かよ。」
顔を上げると、シーツやTシャツなどわりと多めの洗濯物を抱えた大曲が立っていた。
「大曲か。どうした?こんな時間に。」
「人のこと言えねぇけど、洗濯しに来ただけだし。毛利ならまだしも、お前がこんな時間
に洗濯しに来るなんて珍しいな。」
「それはお前もだろう。」
「・・・・アイツがわりと洗濯物溜め込んでるからよ。ついでにしてやろうと思って。」
アイツとは同室の種ヶ島であることは間違いないが、何のついでかということについて、
越知はあえて質問しなかった。今自分がここにいる理由が理由なので、何となく察してし
まった。
「お前、これ終わったらどうするよ?乾燥機使うか?それとも干しに行くか?」
「そうだな・・・シーツなど大きいものもあるし、夜だが干しに行こうと思っている。」
「じゃあ、一緒に干しに行くか。二人で干した方が早く終わるだろうし。」
「ああ。」
洗濯が終わるまで少し時間がかかるので、暇つぶしにと二人は他愛もない話をする。しば
らくすると、なかなか大曲が帰ってこないことに痺れを切らした種ヶ島が二人の元へやっ
てきた。
「竜次ー、遅いでー。」
「ああ?ほぼオメーの洗濯物だろうが。」
「だから別に明日でもいいって言うたやん。」
「言わねぇとどうせ明日もしねぇだろ。」
「ちゅーか、ツッキーも洗濯?こないに遅くに珍しいな。」
大曲と同じようなことを種ヶ島も言う。特に理由を聞いてくるわけでもないので、越知は
黙って頷いた。
「竜次待ってる間に、面白いもん見つけたんやけど見てー。これ、中学生の子のブログな
んやけど、毛利が写ってんねん。あと、ツッキーも。しかも毛利、彼シャツやで☆」
そういえば、ブログに載せると言っていたなあと、越知は部屋に戻る前のことを思い出す。
種ヶ島のスマホに表示されているブログには、彼シャツ状態で可愛らしいポーズをとって
いる毛利の写真がいくつも並んでいた。
「あの身長で彼シャツとかすげぇな。ウケるし。」
「なあ、これツッキーの服やろ?って、ツッキーどないしたん!?」
さっきの今なので、ブログに載っている写真を見て、越知は先程の毛利の姿を思い出して
しまう。知らぬ間に越知の顔は真っ赤に染まっていた。
「何がだ?」
「ビックリするくらい顔真っ赤やで。」
「そんなことはない。」
「いや、赤いし。そんなに毛利の彼シャツ、ツボなのかよ?」
からかうように言ってくる大曲に越知は何の言葉も返せないでいた。普段ほとんど表情を
変えない越知がここまで赤面しているのが珍しく、大曲と種ヶ島は越知をからかいたくな
ってしまう。
「確かに彼シャツ毛利可愛いもんなー。こんなんツッキーイチコロやん☆」
「しかも、下穿かせないとか狙ってるとしか思えねぇし。」
「こないな格好して甘えられたら、さすがのツッキーも狼になってまうね。」
「さすがにだろ。リアルにそんなことしたら、その後のシーツの洗濯とか面倒・・・」
そこまで言って大曲も種ヶ島も気がつく。自分達がこんな時間にわざわざ洗濯しに来てい
る理由はまさにそれだ。普段しっかりした越知が昼間の時間ではなく、こんな時間にここ
にいる理由。そういうことかと気づいてしまい、思わず大曲も種ヶ島も赤くなってしまう。
ピー、ピー・・・・
「洗濯が終わったようだ。大曲、先に干しに行っているぞ。」
「お、おう。」
「気ぃつけてなー☆」
何事もなかったかのように洗い終わった洗濯物と毛利の洗濯物を抱え、越知は屋上へと向
かう。しかし、内心は二人に図星をさされ、動揺しまくっていた。残された大曲と種ヶ島
も越知と同じかそれ以上に動揺してしまっていた。
「おいおい、マジかよ。」
「せやなー。ツッキーやって男やもんなー。」
「俺らが言ったこと、全部図星だったってことか。」
「まあ、何だかんだツッキーも毛利のこと大好きやからな。あんな格好されたら、我慢出
来ひんやろ。」
ちょっと悪いことをしてしまったなーと二人は顔を見合わせて苦笑する。一緒に干すと言
ったものの、このまま顔を合わせるのは少々気まずいので、越知が干し終わる頃合いを見
計らって、二人は自分達の洗濯物を干しに行った。

(まさかあの二人にあそこまで気づかれていたとは・・・)
洗濯物を干し終え、越知は自分の部屋へと戻る。いまだに恥ずかしさと落ち着かなさは治
まらないが、傍から見たらいつも通りの越知に見えるような状態にはなっていた。部屋に
入ると既に毛利はぐっすりと寝入っている。それを見て、越知はどこかホッとした気持ち
になった。
(俺も寝るとしよう。)
部屋の電気を消し、越知はベッドに入る。どちらで寝ようか迷ったが、今日は毛利と共に
眠りたいと、毛利の眠っている下のベッドに入る。毛利を起こさないように気をつけ、越
知は毛利の隣に横になった。
(気持ちよさそうに眠っているな。ああ、やはり可愛らしい。)
すぐ目の前にある毛利の顔を眺めながら、越知はそんなことを思う。毛利の柔らかな髪に
軽くキスをし、小さな声で寝る前のあいさつを呟く。
「おやすみ、毛利。」
返事はないが、すやすやと寝息を立てる毛利の顔を見るだけで、越知は満足であった。優
しく毛利の体を抱きしめ、越知は目を閉じる。大好きな毛利のぬくもりを感じながら、越
知は心地よい眠りに落ちていった。

                                END.

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