「おいっ、宍戸っ!!」
「何だよ?跡部。」
ある日の部活終わり、跡部はかなり怒ったような様子でレギュラー専用部室に入ってきた。
そんな跡部に名前を呼ばれ、宍戸は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「この前、随分へたれた練習してた時があったよな?」
「へたれた練習?」
「先週の金曜日だ。」
「ああ。あのテメェがやたらと文句言ってきた日な。」
先週の金曜日、宍戸はわけあっていつもと同じように練習が出来なかった。それを見た跡
部はもっと真面目に練習しろとかなりキツく宍戸を叱った。いつもならそこで口論になる
はずなのだが、その日ばかりは宍戸が何故だか大人しく、ケンカまでは発展しなかった。
「さっき、忍足や岳人に聞いたんだが・・・」
「ああ。」
「テメェあの日、体調を崩してたって話じゃねぇか。」
「あー、まあ、ちょっとな。風邪気味で少し熱があったんだよ。でも、部活には出たかっ
たからよ、ちょっと無理して出てたんだけど・・・」
それを聞いて、跡部は何かが切れたように宍戸を怒鳴りつけた。
「どうして言わなかった!?」
「へっ?」
「どうして初めから俺に体調が悪いって言わなかったんだ!?」
「何そんなに怒ってんだよ?別にそんな大したことじゃねぇだろ。」
跡部がここまで怒っている理由が分からないと、宍戸はかなり困惑する。確かに体調管理
も部活をするにおいては大切なことであるが、そこまで怒られるほどのことではない。し
かし、跡部にとっては重要なことだったのだ。
「大したことじゃねぇだと?テメェが体調崩したら俺が困るんだよ!!」
「はあ?何わけの分からねぇこと言ってやがるんだ。」
「とにかく次からはそんな理由があるならまず初めに俺に言え!絶対だからな!!」
あまりにも自分勝手なことばかり言ってくる跡部に、宍戸は次第にイラついてきた。思わ
ずいつものようにケンカ腰になってしまう。
「別に俺が出たいと思ったら出るし、無理だったら出ねぇし、それでいいじゃねぇか!!
何でわざわざテメェにそんなこと言わなきゃいけねぇんだよ!?」
「だから、さっきから言ってるだろうが。テメェの体調が悪いと俺が困るっつってんだよ。」
「それが意味分かんねぇって言ってんだろ!?さっきから、何なんだよ、テメェは!?」
跡部がハッキリと理由を述べないためにケンカはどんどん白熱してくる。これ以上続けた
ら、それこそ殴り合いのケンカになってしまいかねないというところで、他のメンバーが
部室に戻ってきた。
「またケンカか?今度はどないしたん?」
「よく飽きもせずに、こんなにしょっちゅうケンカするよな。」
「二人ともちょっと落ち着きなよ。またどうしようもないことが原因なんでしょ。」
『どうしようもないことじゃねぇ!!』
滝に対する抗議はそれはそれはもう息がピッタリだ。仲がいいんだか悪いんだか分からな
いなあと呆れつつ、掴み合いになっている二人を岳人と忍足はいったん引き離した。
「マジでちょっと落ち着けよお前ら。」
「跡部って、いつもは冷静なくせに宍戸とケンカとなると急に感情的になるよね。」
「それは悪いことやないと思うけど、やりすぎはアカンで。」
『だって、コイツがっ!!』
「はいはい。今日はいったんそれぞれうちに帰って何が原因でケンカしたかとか、よく考
えてみた方がいいんじゃない?このままここでケンカ続けても埒あかないっしょ。」
「滝の言う通りやと思うで。跡部も宍戸も正確には何が原因になっとるか分かってないや
ろ?」
確かに自分達は何故ケンカをし始めたのかと聞かれれば、正確に答えることは出来ない。
跡部と宍戸はいったんお互いの顔を見た後、ぷいっと顔を背ける。何だか小学生のケンカ
のようだと滝と忍足と岳人は二人に気づかれないように笑った。
「跡部って、こういうとこは妙に子供っぽいよな?」
「同感。」
「このままバラバラに帰らせても二人のケンカ熱はそう簡単におさまりそうにないやん?
俺らが二手に分かれて、一緒に帰ってそれぞれの言い分聞くってのはどや?その方がスム
ーズに仲直りさせられると思うんやけど。」
「そうだね。こいつらのケンカ、長引かせるとロクなことないもん。俺、宍戸と一緒に帰
るから、お前らは跡部と一緒に帰るって感じでいい?」
「俺は全然構わないぜ。」
「俺もええで。」
二人をさっさと仲直りさせるべく、そこにいた三人は二手に分かれて二人と一緒に帰るこ
とにする。まだイライラがおさまっていない二人を連れ、三人は部室を出て行った。
「また随分ひどいケンカになってたみたいだけど、今度は何があったのさ?」
「・・・・・・」
滝がケンカの原因を聞いても宍戸はぶすっとした表情で黙りこくっている。本当にガキっ
ぽいなあと思いながら、滝は小さく溜め息をつく。
「宍戸的には跡部が悪いと思ってる?」
「・・・おう。」
「どうして?」
「だって、アイツ、部室に入ってくるなり俺のこと怒るんだぜ!?しかもかなり意味分か
んねぇ理由でよ。」
「どんな理由?」
やっと宍戸がしゃべり始めてくれたので、滝はケンカの原因を探り出そうとポンポン質問
を重ねてゆく。宍戸も溜まっている鬱憤をぶちまけたいので、次々と滝の質問に答えてい
った。
「先週の金曜日な、俺、ちょっと風邪気味で微熱があったんだよ。」
「うん。」
「だから、いつも通りには練習出来なくて跡部にたるんでるってすげぇ怒られた。」
「それが原因なの?」
「違ぇーよ。そんときはやっぱ頭がぼーっとしてるから言い返す気にもなれなくて、別に
ケンカとかはしなかったんだ。でもよ、今更になってあの時どうして体調が悪いって言わ
なかったんだって怒るんだぜ。しかも、俺の体調が悪いと跡部が困るとか言いやがって。
ったく、意味分かんねぇよな。」
宍戸の話を聞き、滝はなるほどと納得。跡部としては、宍戸が体調不良だということを知
らないで怒ってしまったことを悪いと思っている。しかも、大事な宍戸が風邪をひいてい
るとなれば、跡部にとっては一大事なのだ。
「跡部さぁ、宍戸のこと大事に思ってるからそういうふうに言ったんだと思うよ。」
「はあ?」
「だって、宍戸が風邪ひいてるって知らなかったから、厳しくしちゃったんでしょ?もし
知ってたら、そんなこと言わなかったわけじゃん。」
「・・・おう。」
「跡部もさ、跡部なりに宍戸がもっと強くなれるようにって考えてくれてるんだよ。だか
ら、風邪ひいて調子悪かったのがだれてるように見えて怒ったんだよ。でもさ、風邪ひい
てるって知ってたら、早くよくなるようにって違うことを考えてたと思うんだ。それが出
来なかったわけだから、自分自身に対しても宍戸に対してもイラついてたんだよ、きっと。」
それは確かにあり得ると宍戸は滝の言葉に納得する。素直に言葉に出さなくとも跡部が自
分のことを考えてくれた上で厳しくするのを宍戸は身を持って知っていた。
「だったら、そうハッキリ言えばいいのに・・・・」
そうすればケンカなどせずに済んだのにと、宍戸はぼやく。そんな宍戸の言葉に滝は苦笑
する。
「跡部もああ見えて照れ屋だからねー。宍戸も言えないでしょ?お前のことがすごく心配
だから、調子が悪かったらちゃんと言ってくれなんて。」
「絶対言えねぇ・・・」
それは恥ずかしくて言えないと宍戸は素直に頷いてしまう。そうなると、今日のケンカの
原因は跡部の遠まわしすぎる優しさとそれに気づけなかった自分。何だか呆れるくらい恥
ずかしい理由だなあと思いながらも、そのことに気づき、宍戸は冷静な気持ちを取り戻し
た。そして、大きな溜め息をつく。
「やっぱ、どうしようもない理由だったわ。」
「でしょ?でも、いいと思うよ。お互いを想い合ってるから出来るケンカじゃない。全く
羨ましいくらいだね。」
「からかうなよ!まあ、いいや。跡部にメールしとこ。」
そうと分かれば、さっさと仲直りするに越したことはない。宍戸は携帯を取り出し、カチ
ャカチャと跡部へのメールを打ち出した。
岳人と忍足も跡部にケンカの理由を聞き、それは跡部も宍戸もどちらも悪いということを
教えてやる。初めは納得していない跡部だったが、よくよく考えてみれば、確かに自分の
言ったことは宍戸には伝わりにくかったかもしれない。そんなことに気づき、自分にも非
があることを認めた。
「まあ、跡部的には宍戸のことを思って言ったことなんだからさぁ、ちゃんとそれを伝え
てやれば、宍戸も許してくれると思うぜ。」
「やっぱり、俺から謝るべきなのか?」
「宍戸がまだ怒ってるいうんならその方がいいと思うで。」
「だって、いきなり怒ったようにんなこと言ったんだろ?宍戸が困るのも当然だろ。」
「うーん・・・」
確かにその部分では自分が悪いのだが、やはり自分から謝るのは気が引ける。そんなこと
で跡部が軽く悩んでいると、メールの受信を知らせる携帯の着信音が鳴り響いた。
「跡部の携帯じゃねぇ?」
「ああ。」
携帯を開いてみると、そこには『宍戸亮』の文字。その文字を押して、メールを開いてみ
ると、そこには跡部にとって意外な言葉が並んでいた。
『さっきは悪かった。ちゃんと仲直りしたいから、お前んとこ行きたいんだけど、今から
行っていいか?』
「なんや、宍戸もう怒ってへんやん。」
「意外とすんなり仲直り出来そうだな。」
「まあ、理由が理由やからな。宍戸も滝と話しててそれに気づいたんちゃうん?」
「せっかく宍戸の方から謝ってきてくれたんだから、ちゃんと仲直りしろよ!跡部。」
「言われなくても分かってんよ。」
まさか宍戸の方から謝ってきてくれるとは予想外だったので、跡部は少し動揺しながら返
信メールを打つ。そんな跡部を見て、岳人と忍足は顔を見合わせてくすくす笑った。
「あとはもう問題ないよな。」
「俺らちょっと寄りたいとこあるから、先行くで。」
「今度は宍戸にちゃんと伝わるように、お前の気持ち伝えてやれよ!!」
「分かってるっつってんだろ!さっさと行っちまえ!!」
あまりにも同じようなことを岳人が何度も言うので、跡部はちょっと怒り口調でそんなこ
とを言う。笑いながらパタパタ走って去っていく二人を見送った後、メールを送信し、跡
部はふっと微笑んだ。
その後、帰り道の途中で合流した跡部と宍戸はそのまま跡部の家へと向かった。跡部の家
に着き、部屋へ入るなり宍戸はいつも跡部が眠っているベッドへ向かった。
「入っていきなりベッドに行くって、何考えてんだテメェは。」
「別にそういうつもりじゃないぜ。ただよ、俺らってベッドの上では自分の思ってること
とか言いたいこととか、いつもよりは素直に言えてるんじゃねぇかと思って。」
メールではお互いに謝ったが直接面と向かってはまだ謝っていない。顔を合わせるとやは
り照れや何かが生じてしまい、思っていることを素直に言えないのだ。なので、宍戸はい
つもより素直に言葉を紡ぐことが出来るベッドをちゃんとした仲直りの場所として選んだ。
「跡部も来いよ。」
「ああ。」
宍戸に招かれ、跡部もベッドに腰かける。しばらくお互いの顔を見つめ合って、何を言お
うか考えるが、それがなかなか思いつかない。何だかにらめっこをしているようだとお互
いに感じてしまい、二人とも同時に吹きだした。
『ぶっ・・・あははっ』
何がおかしいのか分からない。ただ何となくおかしくて二人は声を立てて笑う。もうこの
まま仲直りということでいいかと跡部が思った瞬間、宍戸は本当に自然に謝るような言葉
を口に出した。
「悪かったな跡部。お前、俺のこと思ってああいうこと言ってくれたんだろ?それなのに
あんなふうに感情的になっちまって。」
「別にテメェが悪いわけじゃねぇ。ハッキリ言わなかった俺も悪ぃ。」
「じゃあこれで、今日のケンカは終了な。」
「ああ。」
お互いに謝り合い、二人はケンカを終わらせる。ケンカが終わったときに感じる、快いす
がすがしさを感じながら、二人は緊張の糸を一気に緩めた。
「あー、あのさ、跡部。」
「何だよ?」
「ケンカ終わってすぐこういうこと言うのはどうかなと思うんだけど・・・」
「ああ。何だよ?まだ何か言いたいことがあるのか?あるんだったら、ちゃんと言えよ?」
「えっとな・・・セ・・・」
「セ?」
何かを思いついたように宍戸は言葉を紡ごうとする。しかし、それがなかなか恥ずかしく
て言えない。跡部の顔見て言おうとすればするほど、どんどん恥ずかしくなってゆく。意
味もなく赤くなり、ドギマギしている宍戸の様子を見て、跡部は宍戸が何を言いたいかに
気づいた。
「あー、くそっ!!さっき自分の言いたいことはちゃんと言おうって決めたのに!!」
なかなかそれを口に出来ない自分にイラつく宍戸を、跡部は本当に可愛らしいなあと思っ
てしまう。宍戸がその言葉を自分で言うのを待つのもよいが、何を言いたいかに気づいて
しまうと自分もそんな気分になってしまう。跡部はさっさとその行為に進めるよう宍戸の
代わりにその言葉を言ってやった。
「宍戸。」
「お、おう。」
「仲直りのセックス、しようぜ。」
跡部の言葉に宍戸の心臓は壊れそうなほど高鳴る。自分の言いたいことはまさにそれだっ
たのだ。宍戸はふしゅーと真っ赤になりながら、跡部の言葉に黙って頷いた。
もともとベッドに座っていたということもあり、二人は簡単にその行為に及ぶ。まだそん
なに遅い時間でもないし、急がなくてもいいだろうと跡部はじっくり前戯を楽しむ。もち
ろん宍戸も跡部に与えられる快感を存分に堪能していた。
「ハァ・・・あっ・・ん・・・ぁ・・・」
自ら足を開き、宍戸は一番熱く敏感なところを跡部の手で擦ってもらう。そうされること
で感じる身体全体が甘く痺れるような感覚に宍戸はいつも以上に夢中になってゆく。
「あ・・・あっ・・・」
「今日は随分素直に反応してくれるじゃねぇか。」
「さっきの今だろ?きっと無意識に身体が素直になろうってしてんだよ。」
「そりゃ嬉しいな。だったら、こうしたらどうよ?」
素直に反応を示す宍戸を嬉しく思いながら、跡部は親指を使い、蜜がじわじわと溢れてき
ている先端を刺激してやる。そんな強い刺激に宍戸の身体はよりよい反応を見せた。
「ひあっ・・・あ・・あっ・・・」
「さっきよりもいいんじゃねぇ?」
あまりの快感に小刻みに身体を震わせ、宍戸は跡部の服をぎゅっと掴む。そして、生理的
に流れる涙で潤んだ瞳を跡部に向け、呼吸を乱し呟いた。
「ハッ・・ハァ・・・激・・気持ちイイ・・・」
そんなことを言われれば、跡部の体温も一気に上がる。だったら、さっさとイカせてやる
と言わんばかりに宍戸の熱を擦っている手の動きを速めた。
「ふあっ・・あぁ・・・あっ・・あ・・・」
「さっさとイっちまえよ、宍戸。」
「んっ・・・やっ・・ぁ・・・ああ――っ!!」
上手すぎる跡部の美技に耐え切れず、宍戸は跡部の手を真っ白な蜜で濡らした。白い液体
にまみれたその手を跡部は満足そうに微笑みながら自分の口へと運ぶ。
「やっぱりいつもより感じてるみてぇだな。」
「そーいうこと・・・すんなよっ!」
「いいじゃねぇか。美味いぜ、お前のこれ。」
「ったく、ホント、跡部ってやらしいよな。」
「あーん?テメェが言えたことかよ。」
そう言いながら跡部は、まだ濡れたままの右手を宍戸の双丘の間へ持ってゆく。さっきの
刺激で緩み始めている蕾に触れられ、宍戸は反射的に腰を浮かす。
「ひゃっ・・・!」
「次はこっちを弄ってやるよ。もっとやりやすい座り方しろ。」
「う・・・」
そのままの座り方ではやりにくいので、宍戸を座りなおさせる。膝をつくような形に座り
なおした宍戸は、跡部がそこを慣らしやすいように自ら腰を浮かせた。
「もう少し足は開いた方がいいな。」
跡部に言われるまま、宍戸は膝から下がハの字になるように足を開いた。ベストな状態に
なり、跡部は触れていただけの指を内側に埋め込む。その瞬間、宍戸の身体は強い電流を
流されたかのようにビクンと跳ねる。
「んぁっ・・・」
「なかなかいい感じなんじゃねぇの?分かるか?俺の指、根元まで入ってるぜ。」
「そ・・いうこと・・・言うなよ・・・」
羞恥心から目を潤ませ、宍戸は跡部を睨む。しかし、その視線でさえ跡部にとってはさら
なる興奮を誘うものでしかなかった。もっとイイ顔をさせてやろうと、ギリギリまで埋め
込まれた指を中で動かし、時折、抜き差しするようなことをしてやれば、期待通りの表情
を宍戸は見せる。
「あっ・・・いやっ・・ぁ・・・」
「嫌じゃねぇだろ。どんどん解れてきてるぜ。ほら、もう一本入っちまう。」
「うあぁっ・・・あっ・・・あぁ・・・!」
ぐちゅっとやらしい音を立て、宍戸の蕾は跡部の指をさらに一本受け入れる。二本の指を
咥え込んでいるのは少し辛いのか、宍戸はしばらく苦しげな表情を見せていた。しかし、
何度か抜き差しを繰り返し、解すようにゆっくり動かしているとその表情は次第に恍惚と
したものに変わっていった。
「んっ・・・あ・・・ふ・・・・」
「だいぶ慣れてきたか?」
「ハァ・・・おう・・・・」
「感じ的にはもう全然俺のを入れてやってもいいんだが、もう少し指を使って中を感じや
すくさせとくってのもありだよな。」
「どういう・・・ことだよ?」
「ここ擦られると感じるだろ?」
「ひっ・・・ん・・うん。」
前立腺のあたりを刺激し、跡部は宍戸に尋ねる。前に直接触れられている感覚にも似た快
感に宍戸は首を縦に振る。
「入れる前に思いきりココを刺激しといてやるんだよ。だけど、イカせはしねぇ。ギリギ
リのところで止めて、俺のを入れた時に最高に感じる状態にしておくんだ。」
「マジ?」
「ああ。試してみるか?」
「・・・おう。」
跡部の口車に乗せられ、宍戸は頷く。もうここまできたらどうにでもなれと半ば投げやり
な部分もあったが、実際そうされてみるとそれだけで本当にイッてしまいそうなほど、感
じる。しかし、達することが出来るだけの決定的な刺激は与えられない。そんな刺激をし
ばらく与えられ、宍戸の身体は次第に敏感になっていった。
「ハァ・・・あと・・べ・・・跡部っ・・・」
「どうした?」
「も・・・耐えらんね・・・早く・・お前の・・・」
「俺の?」
どうして欲しいかなど百も承知であるが、跡部はあえてリピートをしてみる。断続的な快
楽ですっかり頭が働かなくなっている宍戸は、欲望のままにして欲しいことを口にした。
「跡部のコレ・・・早く俺のココに入れて・・・・」
跡部の熱に触れ、その後でいまだに跡部の指が埋め込まれている蕾に震える手を持ってい
きながら宍戸は言う。そんなねだられ方をされれば、跡部も我慢出来なくなる。
「最高の誘い文句だぜ、宍戸。」
予想以上の宍戸の誘い文句にやられ、跡部は十分に濡れた蕾から指を抜き、押し倒しなが
ら、限界間近の楔を突き立てる。指とは比べ物にならないほど大きなそれで身を貫かれ、
宍戸は悲鳴にも似た嬌声を上げる。
「あっ・・・ああ―――っ!!」
「すげぇ、あんなに解してやったのにメチャクチャ締めつけてくるぜ。」
「あっ・・・はぁ・・・あ・・あっ・・・・」
敏感になった内側は跡部の熱に擦られることで、さらに大きな快感を生み出す。それは当
然前にも伝わるのだが、跡部はまだそれから手を離していない。達してもおかしくないほ
どの快感を感じているにも関わらず、それは内側に留まったまま宍戸の身体を支配する。
「あっ・・・跡部っ・・・あ・・あぁっ・・あっ・・・」
「そろそろイカせねぇと辛いか?」
「嫌だっ・・・まだ・・・あっ・・うあっ・・・」
苦しそうなくらいに呼吸を乱し身体を震わせているのに、宍戸はまだイキたくないと言う。
しかし、どう見ても宍戸の身体は限界であった。
「このままだとマジで辛いだろ。素直にイッた方がいいんじゃねぇ?」
「あと・・べ・・と・・・・跡部と・・・一緒が・・・イイんだよっ!!」
切れ切れに発せられる宍戸の言葉に跡部の鼓動はひどく高鳴った。自分と一緒にイクため
に強すぎる快楽に身を委ねている宍戸の表情と声は、跡部の余裕を全く取り去ってしまっ
た。本能のままに動き、跡部は宍戸の熱を全身で受け止める。
「待たせて悪かったな。・・・イこうぜ、宍戸。」
跡部の囁きに宍戸は頷き、縋るように跡部の背中に腕を回す。跡部が宍戸の熱から手を離
したと同時にどちらも精一杯の想いをお互いの身体に放った。身体の奥に熱い想いが注が
れるのを本当に心地のよいことだと感じながら、宍戸は意識を手放した。
「おい、宍戸。大丈夫か?」
「う・・・ん・・・あー、跡部?」
だいぶ体が落ち着いてくると、跡部は気を失っている宍戸を揺り起こす。まだ夢見心地の
宍戸はぼーっとした頭で跡部を見上げる。
「ちょっと無理させすぎちまったか?」
「えっ?あー、別にそんなことねぇよ。ただ今回のはちょっと刺激が強すぎたっつーか、
何つーか・・・」
「何だよ?」
「激気持ちよかった。何かもう全部が跡部でいっぱいになっちまうような感覚がよ、すげ
ぇ気持ちよくて、思わず気失っちまった。」
「ふっ、そりゃよかったじゃねぇか。俺も今日はまた一段とよかったと思うぜ。」
「やっぱ、仲直りした後の一発目っていつもと違うよな!」
「そうだな。」
なかなか面白いことを言うなあと跡部は宍戸の言葉に笑いながら頷く。甘い雰囲気と満た
されたという感覚が心地よくて、宍戸はゴロンと頭を座っている跡部の膝に預けた。
「なあ、跡部。」
「あーん?」
「今日はして欲しいこととか思ってることとか出来るだけ口にするようにしてみたんだけ
ど、どうだった?」
「あー、アレ意識してやってたんだな。すげぇよかったぜ。どれも完璧に俺のツボを得て
た。」
「マジで!?やっぱ、思ってることってのは言ってみるもんだな。」
「そうだな。俺も今度からはお前にちゃんと伝わるように、言葉をしっかり選んでものを
言うようにするぜ。」
「是非そうして欲しいもんだな。でも、まあ、やっぱ気恥ずかしいもんはあるからな。後
でちゃんと分かればいいと思うぜ。今日だって、こんなふうにお互いに気持ちよくなれた
んだし?」
ニッと笑いながら宍戸は言う。ケンカをしてしまったのは不本意だが、そのおかげで、こ
んなにも気持ちいいセックスが出来たと上機嫌だ。もちろん跡部も宍戸と同じようなこと
を感じていた。
「それに滝が言ってたんだけどよ、こういうケンカもたまには悪くないんじゃねぇ?だっ
て、お互いに知らなかった部分があるからケンカになるんだろ?それが知れるって思えば
ケンカも悪いことじゃねぇと思うぜ。」
「確かにそうだな。お互いをよりよく知るのは悪いことじゃねぇ。実際、俺はもっとお前
のこと知りてぇしな。」
「俺も!跡部のこともっともっと知りたいと思うぜ!知らない部分を知る楽しみがあるっ
てのもこういう関係の醍醐味だよな。」
「ああ。」
宍戸の言葉に心から賛同して跡部は頷く。お互いを想い合っているが故に起こるケンカ。
それは、この二人にとってはマイナスよりもプラスの面が何倍も強く働くようだ。
END.