君のためにできること 〜10.4 Night〜

すすきの中に倒された宍戸は、跡部の熱をしっかりと受け取る。文字通りの熱視線に、口
の中を探る熱い舌。そして、いらない布を剥がしてゆく熱い指。とても外でしてるとは思
えないほどのその熱に、宍戸はすっかり酔わされていた。
「ふっ・・ぁ・・・」
宍戸が軽く声を上げれば、跡部の目は興奮の色に染まる。上着のボタンを全て外され、薄
く色づき始めている肌が露わになると、跡部はすぐ横にあるすすきを一本折り、その花に
そっと口づける。
「な・・に・・・?」
「せっかくこんなもんがあるんだ。使わねぇと損だろ?」
そう言うと、そのすすきを使い、跡部は宍戸の肌を撫でる。くすぐったいような何とも言
えない感覚に、宍戸はぴくっと身体を震わせる。
「んっ・・・」
「結構感じるみてぇだな。このへんとか集中的にしたらもっといいんじゃねぇの?」
思った以上の宍戸の反応に跡部はニヤける。もっと率直に感じさせてやろうと、赤い突起
をそれで引っ掻くかのように滑らせた。
「うあっ・・・!」
「いい声出すじゃねぇの。おら、もっと感じろよ。」
すすきの花でゆるゆると擦られ、宍戸は疼くような快感を覚える。その中途半端な快感が
逆に宍戸の身体を敏感にさせていった。
「んっ・・く・・・ふっ・・・」
「すっかり固くなってんな。もうこんな中途半端な刺激じゃ足りねぇんだろ?」
跡部の言葉に宍戸は素直に頷いていた。それに気をよくした跡部は、ニヤリと笑って、自
分の唇を赤く染まった胸の飾りに持ってゆく。軽く口づけし、ペロッと舐めた後、音がす
るほど強くその突起を吸ってやった。
「あっ・・・あぅっ・・・!」
「いい反応だな。もっと虐めたくなっちまう。」
左の突起は唇で、右の突起は指と爪を使って攻めてゆく。敏感になったそれをそんなふう
に弄られれば、否が応にでも感じてしまう。
(あー、ヤベェ・・・マジ、気持ちよすぎだし〜。)
「ひぅ・・あっ・・・あぁ・・・」
堪えきれない声がひっきりなしに漏れる。いつの間にかまだ脱がされていないズボンの中
心もひどく熱を持って固くなっていた。そのことに気づいたのか、跡部は赤い突起から唇
を離し、視線をその部分へと移す。
「宍戸。」
「な、何・・・?」
「そろそろ下の方もして欲しいか?」
「そ、そんなの・・・聞かなくても分かんだろっ・・・・」
「テメェの口から聞きてぇ。」
触れるか触れないかのところに手を伸ばしながら、跡部はそんなことを言う。いつもなら
絶対言わないと一掃するのだが、今日は誕生日という特別な日だ。少し悩んだ後、宍戸は
羞恥心と格闘しつつ、小さな声でボソッと呟いた。
「下の方も・・・して欲しい。」
「了解。ちゃーんとよくしてやるから待ってろよ。」
嬉しそうにニヤけながら跡部は、ベルトに手をかけ、あっという間にそれを外してしまっ
た。そして、邪魔なズボンと下着を剥がし、バサっと横に置いておく。
「上の方弄られてるだけで、こんなになんのかよ?」
「ウ、ウルセー!仕方ねぇだろ!!」
「仕方ないねぇ。ま、それだけ俺様がよくしてやってるってことか。」
くっくと笑い、跡部はそっと拳ですっかり勃ち上がってる熱を握る。少し上下にその手を
動かしてやるだけで、宍戸は激しく身体を震わせた。
「ん・・あっ・・・あっ・・・!」
「少し擦ってやるだけで、そんなに感じんのかよ?」
「うっ・・・だって・・・」
「だったら、こんなことしたらすげぇんだろうなぁ?」
やらしい笑みを浮かべ、先程折り取ったすすきを跡部は再び手に取る。そして、折り取っ
た茎の方を宍戸の熱の先端へと持ってゆく。それに気づき、宍戸はぎくっとして、身体を
起こそうとした。
「ちょっ・・・待った、跡部っ!!」
「アーン?待たねぇよ。」
宍戸の制止する声など全く無視で跡部はことを進めた。尖った茎の先を宍戸の熱の先の小
さな穴に入れる。今までにない強い刺激に、宍戸は悲鳴にも似た声を上げる。
「ひあっ・・ああ――っ・・・!」
そんな声を聞き、跡部はさらに嗜虐心をそそられる。いやいやと首を振る宍戸を見ながら、
ぐりぐりと小さな穴に入ったすすきを動かす。
「いっ・・・やぁ・・・あっ・・くぅんっ・・・」
がくがくと足が震え、抵抗することさえままならない。強すぎる快感に、宍戸はただ声を
上げることしか出来なかった。そのうち、すぐに絶頂感が押し寄せる。しかし、それを解
放させるための穴が塞がれているためにそれは叶わない。
「ん・・くっ・・・跡部っ・・・」
「何だ?」
「も・・もぅ・・・イクっ・・・」
「俺としては、もう少しこれで楽しみたいんだけどな。」
ずぶっとさらに奥に差し込めば、宍戸は背中を仰け反らせ、ビクビクと身体を震わせる。
「はっ・・・あっ・・・」
それはまるで、達してしまったかのような反応であった。いや、実際、宍戸は達してしま
ったのだ。出すべきものを出さずに。
「もしかしてお前、イッちまったんじゃねぇの?」
「嘘・・・そん・・な・・・」
「男でもあるらしいぜ。出さないでイクってのは。」
確かに今の感覚は、まさに達した時の感覚であった。今までに体験したことのないことを
体験し、宍戸の鼓動は壊れそうなほど速くなる。
「すげぇなお前。さすがだぜ。」
「これは・・・褒められることじゃねぇと・・・思うんだけど・・・」
「そんなことねぇぜ。さて、そろそろ後ろの方も弄ってやらねぇとな。」
すすきはそのままに、跡部はペロッと指を舐め、それをまだ閉じている赤い蕾に持ってゆ
く。つぷっと一本の指が中に入り込むと、宍戸は跡部の服をぎゅっと掴む。
「あっ・・・!」
「ここの具合もよさそうだな。まだ少しキツイがちょっと弄ってやりゃ余裕だろ。」
入り口を解しながら、だんだんと奥へ指を差し込んでゆく。マッサージをするかのように
内側を擦ってやれば、次第にその花弁は収縮を繰り返しながら開いてゆく。
「はぁ・・・あん・・・あっ・・・」
「ほら、もうこんなに解れてるぜ。テメェの中、熱くて柔らかくて最高だぜ?」
「俺も・・・熱いの・・・感じたい・・・・」
「アーン?どういうことだ?」
分かりきったことだが、跡部はわざと分からないふりをする。服を掴む手を震わせながら、
宍戸は熱い吐息に言葉を乗せ、途切れ途切れにその言葉を紡ぐ。
「跡部の・・・が・・・欲しぃ・・・」
「どうしても欲しいか?」
「うん・・・欲しい・・・・」
「そうか。だったら、いくらでもくれてやるよ。」
すっかり解れたそこから指を抜くと、跡部は宍戸の脚を抱え、既に臨戦態勢となっている
自身の楔を宍戸の中に捩じ込んだ。前に刺さっているすすきは邪魔なので、それと同時に
抜いてしまう。その瞬間、塞ぐものがなくなった宍戸の熱は、出そうにも出すことの出来
なかったミルクをたっぷりと放った。
「あっ・・・ああ――っ・・・!!」
跡部の腹部が宍戸の蜜で濡れる。それさえも跡部にとっては、新たな興奮を産み出す要素
にしかなりえなかった。
「挿れた瞬間、イッちまうなんて、テメェはホーント淫乱だよなぁ?」
「っるせ、テメェが相手だからに決まってんだろ・・・」
「ほう。嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。俺が相手だとどうなんだよ?」
「何・・・されても気持ちイイし・・・どんなこと言われたって・・・本気で嫌だとは、
思わねぇし・・・・何より・・・」
「何より?」
「テメェが俺しか見てねぇ感じが・・・すげぇ嬉しくて・・・もっともっと・・・俺のこ
とで頭いっぱいにしてやりたいって・・・思うからっ・・・・」
「ああ・・・」
「身体全部が跡部に感じちまうんだよっ!!」
宍戸がそう言い放った瞬間、跡部は宍戸の中で熱を放っていた。その感覚に、宍戸は愕然
とする。しかも、跡部の顔はいつにも増して真っ赤に染まっている。
「えっ・・・あっ・・何で・・・?」
「あー、くそっ・・・」
赤くなる顔を手で覆い、跡部はバツの悪そうな声を漏らす。最後の一言が効きすぎて、思
わず達してしまったのだ。
「嘘だろ、跡部・・・?こんな早く・・・」
「うるせー。テメェがあんなこと言うからいけねぇんだ。」
「跡部が言わせたんだろーが。」
「あー、もう、いいだろ別に!!つーか、今のは納得いかねぇ。もっとちゃんとさせろ!」
「あはは、なーんだ。跡部だって、相当俺で感じてんじゃん?」
「そうだよ、悪ぃか!おら、ここからが本番だ。ちゃんとしがみついとけ!」
跡部の蜜で濡らされたそこは、跡部が動くたびにぐちゅっと濡れた音を立てる。熱い棒が
抜き差しされる感覚に、宍戸は再び熱を高ぶらせる。跡部にしがみつき、声を上げ、腰を
揺らす。何度イッても飽き足らず、もっともっとと際限なく身体は跡部を求めていた。
「あ・・跡部っ・・・もっと・・・はぁ・・・」
「ああ。もう限界までやってみようぜ。どんなに疲れようが、足腰立たなくなろうが、構
やしねぇ。」
「な、なあ・・・跡部。」
「アーン?どうした?」
「今日は・・・テメェの生まれた日だろ・・・?」
「そうだな。」
「この日がなけりゃ、こういうことも出来ないんだなあと思うとよ・・・」
「ああ。」
「何かこうしてることが・・・すっごい奇跡みてぇ・・・・」
熱に浮かされながら、笑顔でそんなことを言う宍戸に跡部は再びやられる。しかし、今度
は自分だけ達してしまうなどというヘマはしない。ちゅっと宍戸の唇にキスをしてやると
その言葉を聞いて、自分が思うことを素直に口にしてやった。
「そうだな。自分の生まれた日に、こんなに綺麗な場所で、こんなに気持ちイイことが出
来るなんて、本当奇跡だぜ。」
ここまでは半分冗談チックに言ってみる。そんな言葉に宍戸もクスクスと笑って同意した。
「だよな・・・」
「でも、一番の奇跡は・・・」
先程の冗談っぽさが抜け、一際真面目な口調で跡部は続ける。そして、宍戸の頬に手を添
え、じっとその顔を眺めながらゆっくりと言葉を紡ぐ。
「こんなにも俺が好きだと感じて、同じくらい俺のことを好きだと思ってくれる、テメェ
に出会えたことだぜ、宍戸。」
その言葉を聞いた瞬間、宍戸の心は跡部の気持ちのぬくもりでいっぱいになる。心が満た
されるのと同時に、身体は今までにない絶頂感を感じる。それは、跡部も同じであった。
心が満たされ、身体も満たされる。そんな感覚に、二人はこの世の天国を見た。

しばらくぐったりと身を横たえていた二人だったが、ある程度落ち着くと、跡部は鞄の中
から一枚のタオルを出し、すぐ側にある川でそれを濡らす。
「シャワーは、家に帰ってから浴びりゃいいけどよ、さすがにそのままじゃ微妙だろ。」
お互いの体液で汚れた宍戸の身体を、跡部は固く絞ったタオルで拭いてやる。川の水で濡
らしたので、だいぶ冷たいが、熱く火照っている身体にはちょうどよかった。
「あー、気持ちいい。」
「よし、こんなもんだろ。ちゃんと服着とけよ。さすがにその格好のままだと、風邪引い
ちまうからな。」
「おう。」
宍戸の身体を拭き終わると、今度は自分の身体を拭く。ゆっくりと体温が下がってゆく感
覚が心地よい。そんな心地よさを感じ、跡部は溜め息をついた。
「ふぅ・・・」
「あっ、そうだ。」
「どうした?」
「俺、まだ、跡部に誕生日プレゼント渡してねぇや。」
せっかくあんなに悩んで用意したプレゼントをまだ渡していないと、宍戸はがさごそと鞄
に手を突っ込んだ。そして、小さな箱をその中から取り出す。
「おっと、その前に・・・」
プレゼントを渡す前に、宍戸は自分の誕生日にもらったピアッサーを出した。もともとこ
ういうことになるのは予測済みだったので、必要だと思うものは全て鞄の中に入れてきた
のだ。
「右耳にも、ピアス開けようぜ。」
「そんなもんまで持ってきたのかよ?」
「だって、跡部の誕生日に開けるって言ってただろ?たぶんさっきみたいな雰囲気にはな
るだろうなあと思ってたからさ、その後にでも開けようと思ってな。」
「用意周到だな。いいぜ。消毒液は持ってんのか?」
「おう。ちゃんと持ってきたぜ。今日は俺が跡部のも開けるんだからな!」
この間はどっちも跡部が開けてしまったので、今日こそは自分が開けると宍戸は意気込む。
ティッシュに消毒液を染み込ませ、跡部の右耳を消毒する。そして、そこにピアッサーを
あてると、ぎゅっとそれを握り締めた。
バツンっ!!
「出来たか?」
「おう、綺麗に開いたぜ。」
「テメェにはどうする?自分でやるか?それとも、俺がやってやるか?」
「うーん、この暗さで自分で開けんの怖いからなあ・・・跡部、やってくれるか?」
「お安い御用だ。ほら、貸してみろ。」
「おう。」
五日前と同じように、跡部は宍戸の耳にピアスを開けてやった。ちょうど同じところに同
じ色の石が光る。それが何だか嬉しくて、二人は顔を見合わせて笑う。
「よし、これでこの誕生日プレゼントをあげる意味があるぜ。」
「どういうことだ?」
「とにかく受け取れよ。」
両耳にピアスが開いた状態になると、宍戸は用意したプレゼントを跡部に手渡す。何が入
っているのだろうと、跡部は興味津々にその箱を眺める。
「開けてみろよ。」
「ああ。」
包装を解き、箱を開けてみると、そこには種類の違うピアスが二つ入っていた。
「へぇ。なかなかいい感じのデザインだな。でも、何で形が違うんだ?」
「へへへー、ほら、これ。俺の分。」
自分の分と小さなビニールに入った全く同じピアスを跡部に見せる。それを見せられ、宍
戸が何を意図していたのかを跡部は理解した。
「なるほどな。コレとソレ、二人で一組なるようになってんのか。」
「正解。まあ、値段的にはちゃっちぃけどよ、俺の気持ちはメチャクチャこもってるぜ?」
「ありがとよ。ピアスホールがちゃんと出来たら、一緒につけようぜ。」
「おう!」
思った以上に跡部が嬉しそうな顔をしているので、宍戸も嬉しくなった。だいぶ気分も落
ち着いてきたし、そろそろ帰ってもよいころかと宍戸が立ち上がると、あるものが目に入
る。
「あっ、跡部、月が出てる。」
「本当だな。」
「三日月か?」
「いや、あれは三日月じゃねぇ。二十六夜の月だ。」
「にじゅうろくやのつき?」
「ああ。新月に向かって欠けていっている途中の月。鎮静の月とも言うんだぜ。」
「へぇー。何かカッコイイな。てか、ちょっと赤くねぇ?」
「昇ってきて、そんな時間が経ってねぇんだろ。あの色であの位置ってことは、今は二時
過ぎくらいか?」
時計を見て確かめてみると、ビンゴ。まさにそのくらいの時間であった。さすが跡部だな
あと宍戸が感心して、月を眺めていると、側でポキリポキリと音がする。
「何やってんだ?跡部。」
「せっかくだから、少しここのすすきを持って帰ろうと思ってよ。」
「いいのか?勝手に折っちゃって。」
「別に誰のもんってわけでもねぇだろ。少しくらい大丈夫だって。」
数本のすすきを抱え、跡部は宍戸に手を差し出す。何も言われてはいないが、宍戸は当然
のように差し出しだされた手を握る。特に言葉を交わさず、二人はそろって歩き始めた。
家に向かって歩きながら、思いついたように跡部は宍戸に言葉をかける。
「宍戸、すすきの花言葉ってどんなのか知ってるか?」
「さあ、知らねぇ。」
「『心が通じる』」
ふっと笑いながら、跡部は呟く。宍戸が自分の誕生日をそこで迎えようと言ってくれた時、
跡部はこの花言葉を思い出した。宍戸はたぶんそのことを知らない。案の定、宍戸はすす
きの花言葉など知らなかった。それでも、すすきの生えるこの場所で、共に誕生日を迎え
てくれた。そして、お互いの想いを確かめ合う行為では、しっかりと心が通じ合った。ま
さに花言葉通りだと、跡部はすすきに感謝の意を表す。
「へぇ、そうなんだ。」
「してる時、テメェの気持ちは手に取るように分かったぜ。もちろん言葉に出してた部分
もあったけどな。」
「・・・確かに俺も、跡部の気持ちはすごい伝わってきたかも。これって、すすきのおか
げなのかな?」
「かもしれねぇな。とにかく、今日は最高だったぜ。」
「まだ、今日は始まったばっかじゃねぇか。うち帰っても、十分テメェのこと祝ってやる
から、楽しみにしてろよ?」
ニッと笑って宍戸は言う。そんな宍戸の言葉を聞き、跡部は穏やかな笑みを浮かべる。鎮
静の月が穏やかに照らす夜道を二人は、ゆっくり歩いてゆく。秋の夜風がすすきを揺らし、
二人の心を深く深く通わせるのであった。

                                END.

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