「月光さーん、これ見てください!出来たてのほやほやのCDもろてきました!」
自分達がジャケットに描かれているCDを手にし、毛利は越知に話しかける。
「それは、この前歌ったソロの曲が入ったCDか。」
「はい!」
「へぇ、配信されたんはダウンロードしてみんなの聴いたけど、まだそれは貰ってへんな。」
「出来たてって言ってたしな。そのうち俺らも貰えるんじゃねぇ?」
越知に声をかけた毛利ではあるが、そこには越知の他に大曲と種ヶ島、君島と遠野も一緒
にいた。
「CDも悪くねぇんだけどよ、聴くための媒体は持ち歩いてねぇから、パッと聴けねぇの
がちょっと面倒だよな。」
「おや、それでしたら私の部屋へ来て、私のパソコンで聴いてみます?仕事柄CDのチェ
ックがあるので、ドライブ付きのノートパソコンを使っているんですよ。」
「ええですね!ここにいるメンバーの歌、みんなで聴きたいです!」
君島の提案に毛利は嬉しそうに乗る。それは確かに悪くないと、他のメンバーも君島の部
屋で毛利が持ってきたCDを聴くことにした。
君島の部屋に到着すると、君島はパソコンを起動し、手慣れた様子でCDをセットする。
「これで流せますけど、どうします?とりあえずここにいるメンバーの歌だけ、順番に流
していけばいいですかね?」
「とりあえずそれでいいんじゃねぇ?そしたら、修二のが最初か。」
「CDに入ってる順番、G10のナンバーそのままになっとるの分かりやすくてええです
ね。」
曲順はG10のナンバー順になっているので、まずは二曲目に入っている種ヶ島の曲を流
す。
「どや?今回の俺の曲、メッチャカッコええやろ?」
「まあ、前に出てる二曲に比べたら、曲調も歌詞も雰囲気悪くないんじゃねぇ?」
「えー、前歌った曲もカッコええやん!」
以前に出した曲との比較で感想を言う遠野に、種ヶ島は少し納得がいかないとといった表
情で言葉を返す。
「前の二曲は良くも悪くも種ヶ島くんらしさが前面に出ていましたからね。」
「前の曲は、技名入ってるわ、全力であっち向いてホイしてるわ、挙句チャイボーイだろ?
まあ、曲調は悪くねぇけどよ。」
「そこがええやん!えっ、じゃあ、『Get Chuuuuu☆』は?」
「『u』多すぎだろ。」
『ぶっ・・・』
遠野の一言に他のメンバーは思わず吹き出してしまう。
「まあ、でも、今回のはそんなツッコミばっか入れてくるアツでも、雰囲気ええって認め
てくれる曲に仕上がってるってことやんな!」
とりあえずプラスに捉えてみようと、種ヶ島は明るくそんなことを言う。
「今、歌詞カード見とるんですけど、聴いてるときは気づかんかったけど、この曲難しい
漢字や四字熟語とか言い回し多いですね。読めへん漢字結構ありますわ。」
「確かに、ちょっと古文っぽい言い回しもあるし、『一縷』とか『襷』とか『閑か』とか
は読みづらいかもな。」
「しかし、その分和の雰囲気が増してよいのではないか?」
「せやねん!ツッキーよう分かっとるわ。ほんで、竜次も難なく難しい漢字部分抜き出し
つつ読めるんさすがやな。」
「そりゃもう飽きるほど聴いてるからな。さすがに覚えるし。」
何気ない大曲の言葉に、他のメンバーはおっ?となる。
「えー、竜次、そないに俺の曲聴いてくれとるん?」
嬉しそうに笑いながらそんなことを言ってくる種ヶ島に、大曲はしまったという顔を見せ
る。
「うるせーし。お前、歌上手いし、お前の歌聴くの好きなんだよ。わりぃか。」
「全然悪くないで!ちなみに、前に出した二曲も?」
「歌詞見ずに完璧に歌えるくらいは聴いてるし。」
「はは、竜次が俺の歌歌ってるとこ、メッチャ見てみたいわー☆」
「デカ勘弁しろし。」
恥ずかしいことがバレてしまったと、大曲は不機嫌そうに照れた様子でそっぽを向く。そ
うこうしているうちに種ヶ島の曲が終わる。
「次は大曲くんの曲ですね。何曲か飛ばしますね。」
大曲の曲は六曲目なので、カチカチッとマウスを操作して、大曲の曲をかける。
「大曲さんは歌出したんこれが初めてですよね?」
「あー、まあな。」
「竜次、歌上手いのに何で今まで出てなかったのかホンマ不思議でたまらんわー。」
「別にどうでもいいだろ。」
改めて自分の歌を聴かれるのは、なかなか恥ずかしいと大曲はソワソワしていた。
「この歌い初めのお前が負けた相手って種ヶ島のことだろ?そんなに悔しかったんだな。
絶望感じさせるほど打ちのめすって、お前、なかなかやるじゃねーか。」
からかうように遠野が言うと、種ヶ島は困惑したような表情を見せる。
「俺的には全然そんなつもりなかったんやで?」
「そういうとこだし。これだから才能ある天才って奴はよ。」
「えー、せやけど、竜次崖の上で頑張ってメッチャ強くなって戻ってきたやん!竜次が戻
ってきて、俺、ホンマ嬉しかったんやで!」
「まあ、そのおかげで今ここにいられるって考えれば、あのときお前に負けたのはよかっ
たことかもしれねぇけどな。」
当時は悔しくてたまらなかったが、今思えばそれも必要なことであったと大曲はふっと笑
う。そんな大曲を見て、種ヶ島はキュンとしてしまう。
「あー、もうやっぱ竜次メッチャカッコええわ!歌もメッチャカッコええし、俺も竜次の
歌ヘビロテしとるで!」
「しなくていいし。」
「確かにこの曲は、大曲くんらしさはよく出てますよね。」
「同感だ。」
「あ、俺な、この次の部分がメッチャ好きやねん!」
君島と越知の会話に被せるように、種ヶ島はテンション高く口にする。種ヶ島が言うこの
次の部分とは、二番のサビの後の実に大曲らしいフレーズであった。
「ここ!!ここはもう竜次のええとこ全部詰まっとって、ホンマカッコええねん!」
「分かります。大曲さんの口癖も入ってて、ええフレーズですよね!」
「せやねん!ホンマこの部分、竜次カッコええー、好きー!!ってなるわ。」
「お前、大曲のことカッコいいって言いすぎだろ。」
「えー、だって、ホンマのことやもん。これでも言い足りないくらいやわ。」
大曲のことをかっこいいと言いまくっている種ヶ島に、遠野は呆れたようにそうつっこむ。
しかし、まだまだ言い足りないくらいだと種ヶ島は言い返す。
「・・・勘弁しろし。」
種ヶ島の言葉が嬉しいながらも照れくさく、大曲はいつもの言葉を口にする。そんなやり
とりを見て、種ヶ島は本当に大曲のこと好きなのだなーと君島と越知はクスっと笑った。
「おっ、次は君島の曲なんじゃねーの?」
「そうですね。ここからは寿三郎の曲まで流しっぱなしでよさそうですね。」
大曲の曲が終わるのを聴いて、遠野は嬉しそうにそう口にする。大曲から毛利まではナン
バーとしては連続しているので、飛ばす必要はないと君島はマウスから手を離す。
「お前の新しい曲、何度か聴いてるけどよ、何か女児向けアニメの主題歌みたいな歌だよ
な。」
「あ、それちょっと分かります!魔法とかきらめきとか出てきたり、シアワセな世界を守
りたいとか言っとりますもんね。」
曲調も歌詞もそんな雰囲気の曲だと、遠野と毛利は楽しげにそう話す。しかし、君島を除
く他のメンバーはそうは思ってはいなかった。
「お前達の感想はそういう感じなのか。」
「えっ!?月光さん達はちゃうってことですか?」
「何つーか・・・なあ?」
「サンサン、アツと仲直り出来てホンマよかったわーってのが俺らの感想やな☆」
「なっ!?」
「はあ?」
種ヶ島の言葉を聞いて、君島の顔は赤く染まり、遠野は首を傾げる。
「歌い始めなんて、もろにギリシャ戦後のアツのことやろ?初っ端傷ついてること前提や
し、どんな雨にって、石打ちやろ?みたいな。その後で、どんな君も素敵や言うて、がむ
しゃらなとこが好きとまで言うとるんやで?」
「ち、違っ・・・」
種ヶ島の解釈に異論を唱えようとするものの、越知と大曲がさらに言葉を続ける。
「『darling』は『愛しい人』という意味で、英語圏では特に男女の区別はない言
葉だが、日本ではどちらかと言えば男性へ向けて使われるイメージだしな。」
「その上、ファンとかじゃなく『君だけの僕』でかつそのために『頑張れる』って、遠野
の影響受けて、がむしゃらにプレイしてたフランス戦かよって感じだし。」
「極めつけは、最後の『oh my dear』って文字通り『愛しい人』って意味もある
けど、驚きや困惑を表す意味もあるんやで。仲直りして、こんな気持ちになってることに
ビックリって意味も含まれてるんちゃうん?」
楽しげに各々の考察を述べる三人に、君島は何も言えなくなってしまう。
「はあー、そないな意味が込められとったんですね!先輩ら、ホンマ博識ですね!」
「いや、お前ら勝手な解釈しすぎだろ。なあ、君島!」
ほんの少しドキドキしながら、遠野は君島にそう声をかける。しかし、君島は恥ずかしそ
うにそっぽを向いたまま、何も答えない。
「ちょっ、お前は否定しろよ!否定しねぇと、こいつらが言ってることが正しいみたいじ
ゃねーか!」
「いや、その・・・」
君島が否定しないまま、遠野は今流れている君島の歌に耳を傾ける。納得はいっていない
が、その曲が自分に向けられている歌だと思って聴いてみたところ、遠野の顔はぶわっと
赤く染まった。
「おっ、サンサンの抒情詩(リリック)、ちゃんとアツの心に届いたみたいやで?」
「・・・ノーコメントで。」
タイトルや歌詞の内容に絡めて、種ヶ島はそう言う。それを聞いて君島は気まずそうに言
葉を濁す。
「今までの態度と違いすぎて、あり得なさすぎだろ・・・」
あり得ないと思いつつも、この歌の内容が君島の気持ちだとしたら少し嬉しいかもと遠野
は複雑な気持ちになる。君島も遠野もドキドキしたまま、君島の曲は終わった。
「次は遠野さんの曲ですね。」
「遠野の曲は、100%ギリシャ戦の曲だからな。分かりやすくて、らしいし。」
ギリシャ戦での試合をそのまま歌詞にしたような遠野の曲が流れるのをそこにいるメンバ
ーはじっくりと聴く。サビのあたりで、大曲がふと口を開く。
「ここで『嘲って』って言ってんだろ?『嘲る』って、バカにするみたいな意味が一般的
だし、ここでの意味はたぶんそうなんだろうけどよ、古典的な意味だと『声に出して詩を
吟ずる』って意味もあるらしいし。」
「ほーん。ん?サンサンの抒情詩(リリック)って詩の一つやんな?」
「つまり、君島の抒情詩(リリック)と繋がるわけか。その抒情詩(リリック)では、ど
んな君も素敵で、そのままでいて欲しいと肯定していたな。」
「なるほど!さすが、キミさんと遠野さんですね!」
ちょっとしたフレーズで、君島と遠野を仲良くさせようとするような考察をする四人に、
当の二人は恥ずかしさから動揺するような反応を見せる。
「そんな意味は込めてねぇ!!」
「せやけど、それに気づいてちょっと嬉しいと思っとるのやろ?」
「そ、それは・・・」
「さっきから歌詞を深読みしすぎなんですよ、アナタ達は。」
「けど、そこまで間違ってはねぇんじゃねーの?」
君島の曲と遠野の曲はいじりがいがあると、頭の切れる三人はからかい気味に思いつくこ
とを口にする。しばらくすると、遠野の曲は二番のサビに差しかかる。あるフレーズの部
分で、君島の顔が不機嫌そうな表情になったことに種ヶ島は気づく。
「サンサン、急に不機嫌そうな顔になっとるやん。あっ、もしかして・・・」
「何ですか?」
「サンサン、勝利の女神ニケに嫉妬してるんちゃうん?アツが『愛しき』女神て言うたり、
懇願するような口調でお願いしよるから。」
「ほう。女神に嫉妬するとはいいご身分じゃねーか。」
それはなかなか面白いと遠野も種ヶ島の言うことに乗り、からかうようなことを言う。
「そ、そんなわけないでしょう!」
「そんなに全力で否定するって図星かよ?まあ、勝利の女神に嫉妬してたら、ギリギリの
ところでは微笑まなくなっちまってもおかしくないな。」
フランス戦のことを思い出し、大曲はクスっとしながらそんなことを言う。
「あ、アレはちょっと運が悪かっただけで・・・いずれは勝利の女神とも交渉してみせま
すよ!」
「おっ、言うじゃねーか。そういうとこ君島らしくて好きだぜ。」
話の流れでしれっと好きと言ってくる遠野に、君島は無駄にドキドキしてしまう。今まで
そこまで意識することはなかったものの、和解後は遠野の好意的な言葉にはひどく敏感に
なっていた。そんなやりとりをしているうちに、遠野の曲が終わる。
「次は月光さんの曲ですね!今回の月光さんの曲もメッチャかっこよくて、俺、大好きで
す!」
越知の曲が流れるのを素直に喜ぶ毛利に、越知は少し恥ずかしく思いながらも満更ではな
い顔になる。
「今回のツッキーの曲、何や武士感強めよな。」
「分かるし。ラケットより日本刀持ってそうな雰囲気だよな。」
「そういう雰囲気を意識した曲だからな。」
「あっ、やっぱそうなん?せやけど、ツッキーがホンマに日本刀持っとったら・・・」
種ヶ島の言葉で、皆越知が武士の格好をして日本刀構えている様を想像する。
「戦う前に逃げ出したくなりますね。」
「物理でやられる前に、メンタルが持たねぇな。」
「しかも、振り下ろすその刃はマッハなんやろ?いやー、勝てる気せぇへんわ。」
「精神の暗殺者の名は伊達じゃねぇな。まあ、暗殺者ってわりには目立ちすぎだけどよ。」
どう考えても勝てる気がしないと、毛利以外の四人は苦笑する。
「えー、武士の姿で日本刀持ってる月光さん、メーッチャカッコええやないですか!そん
な月光さんになら切られてもええかなーと思いますよ!」
「はは、毛利ヤバイな。ツッキーのこと好きすぎやろ。」
「毛利は切らないから大丈夫だ。むしろ、毛利がいることで、マッハを安心して打てるし
な。」
冗談なのか本気なのか分からないような口調で越知は言う。それを聞いて、毛利を守るた
めの武士だという想像をしてみる。
「アカンアカン!毛利に手出したら、殲滅させられるで!」
「さっきよりヤバさ増したし。」
「さすが愛情深いダブルスですね。」
「武士でダブルスって何だよ?まあ、より勝てる気がしない感じが強くなったのは分かる
けどよ。」
越知の曲から武士な越知の想像が膨らみ、楽しげにそんな内容の話をする。そんな話をし
ていると、越知の歌の語りの部分が流れる。
「ここ!!この語りの部分、ホンマにかっこよくて大好きでっせ!!こんなん言われたら、
貫かれたーいってなってまいますよね!」
「!!」
ハートを散らすような雰囲気で、キャッキャしながらそう言う毛利に越知の顔は赤くなる。
「おっ、どうした越知?毛利が無自覚にエロいこと言い出すから興奮してんのか?」
「ええっ!?俺、そないなこと言ってへんですよ!」
「いや、今のはアツの言う通りやで。なあ?」
「そうだな。マジで無自覚なのかよ?」
「さすがに貫かれたいは、別の意味で捉えられますよね。」
ニヤニヤとそうツッコミを入れる四人の言葉に、毛利はさすがに自分の言ってしまった言
葉の危うさに気づく。
「い、いや、その・・・今のはちゃうくて・・・」
「さ、さして問題はない・・・」
いつもの言葉を口にする越知であるが、端から見ればかなり動揺しているのが見てとれた。
「越知をそこまで動揺させるのはさすがだし。」
「うわー、メッチャ恥ずかしいー!!」
「今宵はひとすじに貫かれちまうかもなァ!」
「あまり茶化すのは可哀想ですよ、遠野くん。」
遠野を注意するようなことを言っている君島であるが、その口元は笑っている。越知も毛
利もドキドキしたままで、越知の曲は終わり毛利の曲へと移る。
「おっ、毛利の曲始まっとるで。」
「この歌は、曲調も歌詞もとても寿三郎らしいですよね。」
「越知、お前的にはどうなんだよ?」
遠野の質問に越知は毛利の曲について考える。
(イエローというのは、おそらくテニスに真剣に取り組み始める前の自身のことだろう。
そんな過去の自分に向けた歌で、真剣に取り組むことへの楽しさや自身の成長についてを
歌っているのだろうな。しかし、歌詞にある言葉や言い回しは非常に毛利らしくて・・・)
「・・・可愛いな。」
「月光さん!?」
毛利の曲について熟考した結果、越知の口から出た言葉はその一言であった。
「メッチャ間があったけど、結果その一言に集約されるんか。」
「まあ、分からなくはないですよね。」
「考えてた部分が本来の感想なんだろうが、それはそれで越知らしいし。」
越知の感想を聞いて、ある意味とても越知らしいと種ヶ島、君島、大曲はくすくす笑いな
がらそんなことを言う。少し恥ずかしく感じるものの越知のその感想は素直に嬉しいので、
毛利ははにかむように笑う。
「ちょっと照れますけど、月光さんにそう言われるのは嬉しいです。」
「もう少し具体的にした方がよいだろうか。」
「い、いや、別に無理にそうしてもらう必要はないですけど、ちょっとは聞きたいかなあ
・・・なんて。」
具体的な感想も聞いてみたいと、毛利はおずおずとそう答える。
「君島が言った通り、この曲はメロディーも歌詞もお前らしさがよく出ている。明るく無
邪気で前向きで・・・この曲を聞いていると、とてもお前のことを愛でたくなるな。」
毛利の曲を聴きながら、越知はふっと口元に笑みを浮かべ、毛利の頭を優しく撫でる。そ
んな越知の言葉と行動に、毛利はキュンキュンしてしまう。
「ふあー、恥ずかしいけど、メッチャ嬉しいー!!」
「それは思ってても、心の中にとどめておけよ。」
「まあ、寿三郎は思ったこと全部口にしてまう癖がありますからね」
「普通に愛でててウケるし。」
「何だかんだでツッキーも毛利のこと大好きやからなぁ。」
しれっとイチャイチャしている越知と毛利を見て、他の四人はふっと笑う。しばらくする
と、毛利の曲も流れ終わる。
「これでここにいるメンバーのソロ曲は全部聴いた感じやな。」
「最後に全員で歌った曲も流しておきます?」
「いいんじゃねぇ?配信はソロ曲しかなかったから、まだちゃんとは聞けてねぇし。」
ソロ曲は聴き終わったが、U−17メンバー皆で歌った曲も聴いておこうと君島はその曲
を流す。
「これ、基本同じフレーズの繰り返しだから覚えやすくてよかったし。」
「確かにそうだな。」
同じフレーズが繰り返される中、少し違う歌詞が出てきたところで、毛利が声を上げる。
「あっ!ここ、月光さんと歌ったところや!」
「その後は俺と竜次やで☆」
それぞれのダブルスのパートナーと歌った部分が流れ、毛利と種ヶ島は嬉しそうにその部
分を聴く。全員で歌ったサビが終わると、今度は遠野が口を開く。
「俺らはここだよなぁ?君島。」
「ええ。フレーズ的には越知くんと寿三郎が歌っていたところと同じですけどね。」
次のサビが流れている中、種ヶ島はポツリと呟く。
「ワンフレーズやったけど、竜次と二人で歌えたんメッチャ嬉しかったわ。」
「分かるぜ。俺も君島と二人で同じ部分歌えたの嬉しかったし。」
「そんなにかよ?」
「大袈裟ですね。」
自分達も結構嬉しかったと思っているのだが、それを素直に言葉にするのは恥ずかしく、
大曲と君島はそんなことを言う。
「ツッキーと毛利はズルいよなー。初シングルもバレキスもサマバレもみーんな二人で歌
っとるやもん。」
「お前だって、つい最近出た曲で君島とユニット組んでたじゃねーか。俺からしたらそれ
だって十分羨ましいと思うぜ。」
「俺と月光さんは一心同体ですもん。ね、月光さん。」
「ああ。」
「愛情深いダブルスにデュエットマウント取られとるー。俺も竜次とデュエット歌いたい
わー。」
「俺も君島とデュエットしてぇ。どうにかしろ、君島!」
自分達とのデュエットを歌いたがる種ヶ島と遠野に、大曲と君島は顔を見合わせて笑う。
「それはまあ、機会とオファーがあったらということで。」
「右に同じだし。」
いつの間にか曲は終わっているが、六人の話は尽きない。自分達らしい歌を聴きながら、
その歌の魅力を再確認し、感想を言い合う。毛利が持ってきたCDをきっかけに、六人は
有意義で楽しい時間を過ごすのであった。
END.