キミとBloody Night

君島が考えた処刑法を受けてから、遠野はそれ以上のものを君島にお見舞いしたいとどん
なものがいいか考えていた。
「何気に君島のアイデアすごかったしな。あれを越えるもので、且つ君島が考えたのとな
るべく被らないようにするには・・・」
あのときの君島と同じように、遠野は紙に13の処刑法を書き出し、それぞれの処刑法に
ついて、アイデアを書き留めていく。処刑法のアイデアを考えるのは遠野にとって非常に
楽しいことなので、悩みながらもその表情は生き生きとしていた。
「おっ、結構いい感じなんじゃねーか。必要な道具やアイテムは・・・」
君島もいくつか道具や玩具を準備していたので、自分も何かしら用意しようと考える。君
島が用意したものほどあからさまではないが、自分が用意するものもそれなりにその処刑
法を再現出来るはずだと遠野は自負していた。
「よーし、次に君島に会うまでに用意して、次会うときにはこの処刑法をお見舞いしてや
るぜ!」
おおむね内容が固まると、遠野はご機嫌な様子で必要なものを注文する。早く君島にこの
処刑法を受けて欲しいと思いながら、遠野は君島とのメッセージ画面を開いた。

注文したものも全て揃い、君島への処刑の準備が整うと、君島とビデオ通話をしている際
にそのことを伝える。
「そういえば、お前が俺にしてくれた処刑のお返しを考えてやって準備が整ったんだが、
今度いつ会える?」
『本当に考えたのですね。』
「当然だろ。お前にも最高の処刑をお見舞いしてやるぜ!」
この場合の処刑は文字通りでありそうながらも、話の流れ的に間違いなくそういう行為を
することも含んでいる。それは少し楽しみだと思いながら、君島はスケジュールを確認す
る。
『次の日が休みで、前日の夜から会うという流れでも問題ないですか?』
「ああ、問題ないぜ。」
『それなら、二週間後の金曜日はどうでしょう?』
君島にそう言われ、遠野もカレンダーを見て予定を確認する。
「大丈夫だ。」
『それと、その日は仕事が夜まであるので、現場の近くのホテルを取る形でも大丈夫です
か?』
「俺は全然構わねぇんだけどよ、お前はいいのか?仕事後だと疲れてるだろ。」
『問題ありませんよ。次の日は休みですし。それに遠野くんの考えたその処刑法、かなり
興味があるので。』
君島に処刑に興味があると言われ、遠野は分かりやすく嬉しそうな顔になる。
「フッ、だったら、存分にお前を血祭りにあげてやらないとなぁ!今から楽しみだぜ!」
『私も楽しみですよ。切符とホテルの情報については、また後日連絡しますね。』
「ああ。ありがとな。」
『いえ、遠野くんに会えるのであれば、これくらいのこと何てことないですよ。』
明らかに好意多めの君島の言葉に遠野はきゅんとしてしまう。
(前はこんなに分かりやすくは言ってくれなかったのにな。何だかんだそう言われると嬉
しいんだよな。)
「早く会いてぇな・・・」
無意識に漏れてしまった言葉に、今度は君島の方がドキッとしてしまう。意識して発して
いる言葉とは異なり、大人しめでありながらも非常に気持ちのこもった一言であった。
『そうですね。会える日が待ち遠しいです。』
君島の言葉を聞き、遠野はハッとして誤魔化すような言葉を口にする。
「あっ、いや、今のはその・・・」
『照れてるんですか?遠野くんらしくないですね。』
「うるせーな。別にいいだろ。」
ほのかの赤くなりながらそっぽを向く遠野を可愛らしいと思いながら、君島はくすっと笑
う。
(ああ、本当に早く会いたいな。)
そんなことを心の中で呟きながら、君島はもうしばらく遠野との会話を楽しんだ。

約束の日、遠野は君島の仕事が終わる前にホテルに着き、軽く食事を済ませた後、シャワ
ーを浴び、処刑をするための準備を万全に整える。君島が来るのをわくわくとしながら待
ち、部屋がノックされると即座にドアを開けに行く。
「お待たせしました。」
「おう、待ってたぜ。」
ノックをしてかなり早くドアが開いたところを見ると、遠野は本当に自分が来るのを楽し
みにしていたのだなと、君島は顔を緩ませる。
「食事は済ませてきたのですが、シャワーを浴びたいです。浴びてきてもいいですか?」
「ああ。俺はもう先に浴びてるから、ここで待ってるぜ。」
そう言いながら、遠野はベッドに腰掛ける。本当にそういうことをする気満々なんだなと、
君島は期待感で胸を躍らせる。早くシャワーを浴びてきてしまおうと、足早にシャワール
ームへ向かった。
(もう十分に準備はしてあるけど、君島がシャワー行ってる間、一応もう一回慣らしてお
くか。)
今日は自分が主導権を握りたいがために、遠野は挿れてもらう場所の準備を自分自身でし
ていた。君島が出てきたらすぐにそういうことを始めるのを見越して、ローションを指に
絡めながら、もう一度そこに触れる。
「んっ・・・」
(あっ、やっぱ全然余裕そうだな。これなら俺が考えた処刑法、ちゃんとしてやれそうだ
ぜ。)
バレないようにティッシュで手を拭うと、今日使う予定のアイテムが入った袋をベッドの
上に置いておく。しばらくすると、バスローブを羽織った君島が髪をタオルで拭きながら
戻ってくる。
「遠野くん。」
「おっ、君島出てきたか。やっぱ、風呂入った後は雰囲気ちょっと変わるよな。」
「そうですか?まあ、プライベートモードにはなるでしょうね。」
「それじゃ、お待ちかねの俺の考えたお前だけのための13の処刑法、執行してやるよ。」
ベッドの上に座りながら、遠野は君島を手招く。君島がベッドに腰掛けると、遠野は君島
の後ろに移動し、ぎゅっと後ろから抱きしめる。
「処刑法其ノ十三ギロチン。君島、ちょっとこっち向けよ。」
君島の顔を自分の方へ向かせると、遠野は君島の唇にキスをする。何度か唇を重ねると、
遠野はすっと唇を離し、君島のうなじにかかっている髪をかき上げ、ギロチンの刃が落ち
るその場所へ口づける。
「っ!!」
「今日は俺が処刑人だ。俺の考えた処刑法で、お前を支配してやる。覚悟しろよな!」
ギロチンはその一撃でこの場を支配する処刑法だ。そう宣言するのは、実にギロチンらし
いと、君島はふっと笑う。
「私が考えた処刑法とどう違うのか、楽しみですね。」
「フン、俺の考えた処刑法の方がすごいってところ見せてやるよ。」
そう言いながら、遠野は次の処刑法に使う道具を袋から出す。
「その袋に使うものが入ってるんですか?」
「ああ。君島はする前に見せてくれたが、俺はそう簡単には手の内を明かしたりしないぜ。
その方がスリルがあって楽しいだろ?」
「確かにそれはそうかもしれませんね。」
「つーわけで、君島はそのバスローブ脱いどけ。俺も準備するからよ。」
「ええ。」
次の処刑から本格的にそういうことをするのかと、君島はドキドキしながらバスローブを
脱ぐ。遠野も着ていたものを脱ぎ、次の処刑法に使う道具を手にして、座っている君島に
跨るように座る。
(裸でこの体勢はさすがにドキドキするな。)
君島がそんなことを考えていると、何かを胸のあたりに押しつけられる。
「処刑法其ノ十二電気椅子。コレを使って、上半身をビリビリ痺れさせてやるよ。」
君島の胸にあてたものを挟むように遠野は自身の胸を押しつける。楕円状のそれからはコ
ードが伸び、遠野の両方の手元にはスイッチが握られている。
「これは、ローターですか?」
「ああ。これ、結構強めに振動するんだよな。スイッチ入れるぜ。」
この状態だと遠野もその振動を受けることになるのではと君島が考えていると、遠野は手
元のスイッチをONにする。
ブブブブブ・・・
「んんっ・・・!!」
「んあんっ!!」
案の定、スイッチが入った瞬間、遠野も感じているような声を上げる。
「と、遠野くんっ・・・」
「ハァ・・・ほら、ビリビリするような振動が気持ちいいだろ?」
「んっ・・・何とも言えない変な感じです。」
「そうか。だったら・・・」
今はただ胸にあてているだけなので、振動しているローターを少しずらし、君島と自身の
胸の突起にそれが触れるようにする。
「んああっ!!」
「ああぁんっ!!」
「ちょっ・・・遠野くん、これは・・・」
「あっ・・・ここにあてられるとたまんねぇだろ?」
確かにある程度感じはするのだが、普段そこを弄られている遠野に比べたらそこまででは
ない。しかし、機械的な振動を受け続けていると自然と呼吸は荒くなっていく。
「ハァ・・・んっ・・・くっ・・・」
「あっ・・・あんっ・・・ハァ・・・ああっ・・・!!」
(圧倒的に遠野くんの方が感じてるんだよな。この至近距離でこの顔が見れるのは悪くな
いし、遠野くんが感じてる刺激と同じものを感じられているのも悪くないから、別に構わ
ないけど。)
「んああっ・・・あっ・・・ハァ、気持ちイイ・・・」
「私より遠野くんの方が気持ちよさそうじゃないですか。」
「しょ、しょうがねぇだろっ・・・ここ、弱いんだから・・・」
「それなら、私だけにあてればいいじゃないですか。いや、別にそうして欲しいわけでは
ないですけど。」
「だって、一緒に気持ちよくなれたらいいなーと思って・・・」
「っ!!」
素直な遠野の言葉に、君島は図らずもときめいてしまい鼓動が速くなる。ローターで感じ
まくっている顔でそんなことを言うのは反則だと、君島はひどく動揺してしまう。
「ああぁんっ・・・ちょっともう、ヤベェかも・・・これは、終わりにする!!」
これ以上続けると自分だけイッてしまいそうだと、遠野はローターのスイッチを切り、君
島から体を離す。
「んっ・・・ハァ、ハァ・・・おっ、ちゃんと感じてはいるみてぇだな。」
君島の熱がだいぶ大きくなっているのを見て、遠野は嬉しそうにそう口にする。
「遠野くんほどではないですけどね。物理的な振動より、遠野くんの反応の方が私にとっ
ては刺激的でした。」
「言うじゃねぇか。次の処刑ではもっとお前を感じさせてやるぜ!」
使ったローターを邪魔にならないところに置くと、遠野は少し腰を上げ、そそり勃ってい
る君島の熱を自身の入口に押し当てる。
「えっ・・・?」
「処刑法其ノ十一鉄の処女(アイアンメイデン)。」
そう呟くと、遠野は一気に腰を落とし、身体を密着させるように君島にしがみつく。
「んんっ・・・!!」
「あああぁっ!!」
「なっ、そんな急に・・・んっ、でも、中すごくぬるぬるしてます。」
「お前が来る前にちゃんと準備してたからな!」
「そ、そうなんですね・・・」
「ハァ・・・ほら、お前自身が狭いところに閉じ込められて、ゾクゾクするような刺激を
受けてるだろぉ?」
これは自分には真似出来ない鉄の処女(アイアンメイデン)の再現の仕方だと、君島は遠
野の内側の気持ちよさに酔いしれながら感心する。もっと強い刺激を与えてやろうと、遠
野は君島にピッタリと密着したまま、ゆっくりと腰を動かす。
「くっ・・・遠野くんっ・・・!!」
「あっ・・・あんっ・・・君島っ・・・!」
(遠野くんの中、ぬるぬるしてるし、わりと強めに締めつけられて気持ちいい。)
君島にしがみつきながらも、遠野は時折君島の顔を見てその反応は確認する。予想以上に
気持ちよさそうな顔になっている君島を見て、遠野は口元を緩ませる。そして、君島の興
奮をより煽るように耳元で囁く。
「ハァ・・・ほら、俺の襞がお前自身を刺すように包み込んで、気持ちイイだろ?もっと
深く強く締めつけてやろうか?」
君島の熱を根本まで包み込んだ状態で、遠野はそこをきゅっと締める。
「うあっ・・・!」
「んっ・・・イイ反応するじゃねぇか。だったら、もうちょっと続けてやるな。」
君島が入っているそこに意識を集中させ、遠野は意識的に締めつけたり緩めたりを繰り返
す。そんな刺激が堪らず、君島の熱はビクビクと遠野の中で震える。
(これ、イッてるときの動きにちょっと似てるから、俺も結構ヤバいかも・・・)
自ら動かしているのだが、その動きで自分自身も感じてしまい、遠野は熱い吐息を君島の
肩の近くで漏らす。
「んぅ・・・あっ・・・ああっ・・・」
「ハァ、ハァ・・・遠野くん・・・」
高まる快感に悶えながら、君島は遠野の身体をぎゅっと抱きしめ返す。より君島と密着し
たことで、遠野のそこは君島をより深く感じる。
「ああんっ・・・イッ・・・ク・・・!!」
収縮させるような動きを再現していたこともあり、その動きに引きずられ遠野は達してし
まう。遠野が達したことで、先程とは全く異なる不随意の収縮で締めつけられ、君島も達
する。
「くっ・・・ああっ!!」
しばらくビクビクと震える身体で抱き合ったまま、二人はその快感に身を任せる。少し落
ち着くと遠野は嬉しそうな声色で君島に話しかける。
「ハァ、ハァ・・・まだ処刑法は3つ目なのに、お互いにイッちまったな。」
「ハァ・・・そうですね。まさか鉄の処女(アイアンメイデン)をこんなふうに再現して
くるとは思いませんでした。」
「よかっただろ?」
「・・・まあ、そうですね。」
気持ちよかったのは確かなので、君島は遠野から目を逸らしながらも素直に頷く。君島と
繋がったまま例の袋に手を伸ばし、遠野は次の処刑に使うアイテムを取り出す。
「処刑法其ノ十聖アンデレの十字架。お前は一旦そこに仰向けになって、俺を見てろ。」
ぐっと君島の身体を押し倒すかのようにベッドの上に倒すと、遠野は手にしたアイテムを
自分の身体に巻き付けていく。何をしているのだろうと、しばらく黙って遠野を眺めてい
ると、君島はこの処刑をどう表現しているかに気がつく。
「赤いリボンで、遠野くんの身体に聖アンデレの十字架を施しているのですね。」
「おっ、よく気づいたな。」
遠野の上半身には、幾重にも重なったリボンで聖アンデレの十字架、すなわちX十字が作
られていた。右肩から左の脇腹、左肩から右の脇腹に向かって交差している赤いリボンは、
まるで遠野自身をラッピングしているようにも君島には見えていた。
「何だか遠野くん自身がラッピングされてプレゼントになっているみたいですね。」
「プレゼントじゃねぇよ。強いて言うなら生贄だ。」
「それは誰に対しての生贄なんです?」
「そんなのお前に決まってるだろ?」
ニヤリと笑いながら遠野はそんなことを言う。それを聞いて、君島はドキッとしてしまう。
「ほら、これでこの十字架を切り裂いてみろよ。」
そう言いながら、遠野は袋から大きなハサミを出し君島に手渡す。本物のハサミを渡され、
君島は戸惑う。
「えっ、これは・・・」
「いいから、この真ん中のラインをそれで切ってみろ。下手に切ったら、俺の皮膚が切れ
ちまうかもしれねぇけどなぁ!」
リボンが交差している部分、Xの中心あたりをなぞりながら遠野はそう君島に指示する。
何を企んでいるかは分からないが、これも処刑の一環なのだろうと理解し、君島は遠野を
傷つけないように気をつけながら、リボンにハサミを入れる。
ぶわっ・・・
「っ!?」
「処刑法其ノ九松の木折り(ディアスフォンドネーゼ)。お前が俺の身体の中心を切り裂
いたことで、血が飛び散っただろう?」
何かしらの仕掛けが施されていたのか、リボンの中心を切ると幾重にも重ねられていたリ
ボンが弾けるようにバラバラになり広がる。それはさながら、松の木折り(ディアスフォ
ンドネーゼ)で引き裂かれた体の中心から血が噴き出しているかのようにも見え、君島は
その仕掛けにドキドキしてしまう。
「今のは少し・・・驚きました。」
「だろう?けど、今のを見て、俺の中にあるお前のコレ、ビクッと反応したぜ。お前、本
当ドSだよな。」
「そ、それは単純に驚いたからで・・・別にそういうわけでは・・・」
「フッ、そういうことにしといてやるよ。んじゃ、次の処刑法いくぜ。」
また別のアイテムを袋から出す遠野だが、君島はそれが何かを視認することが出来なかっ
た。取り出したそれを胸のあたりで抱えながら、遠野は止めていた腰を動かし始める。
「処刑法其ノ八ウィッカーマン。ウィッカーマンは人型の檻だ。俺がその檻になってやる
よ。その檻をお前の熱で燃やせばいい。」
ゆっくりでありながらも、遠野の内側で自身の熱を擦られ、君島は素直に反応してしまう。
「んっ・・・うっ・・・」
「んあっ・・・君島のあちぃ・・・」
「ハァ・・・ウィッカーマンらしくていいんじゃないですか?」
「言うじゃねぇか。ハァ・・・そろそろだいぶ熱くなってきたし、これくらいでいいか。」
「何の話です?」
胸にあてていた手を離し、遠野はそんなことを口にする。そして、手に持っているそれを
君島の手に握らせる。
「俺の心臓、捧げてやるよ。」
「熱っ!えっ・・・なっ!?」
遠野に渡されたものを見てみてると、赤いハート型の何かが握らされており、その熱さと
見た目に君島はビクッとする。
「いいねぇ、その反応。そういう驚いた顔、最高だぜ。」
「これは・・・何ですか?」
「カイロだ。俺の心臓も熱くなってるからな。その熱さ、次の処刑で存分に味わわせてや
るよ!」
君島の驚いた顔を見て、遠野はご機嫌な様子でテンション高くそう言い放つ。
「処刑法其ノ七ファラリスの雄牛。俺の熱でお前を焼き尽くしてやるよ!」
そう言いながら遠野は上半身を倒し、密着騎乗位のような状態になる。そしてそのまま、
腰を激しく動かし、胸や腹を君島の上半身に擦りつける。
「んあっ・・・あっ・・・ああっ・・・!!」
「うあっ・・・と、遠野くん!!」
(遠野くんの心臓あたり、本当に熱い。こんなに密着されて、中にあるモノもこんなに擦
られたら・・・)
カイロで温められていた遠野の心臓の真上の肌は、触れている君島の肌にその熱を伝える。
それはまるで遠野の熱いハートで焼き尽くされているようで、中に入っているものへの刺
激とは別に君島をに強い快感をもたらす。
「あんっ・・・君島っ・・・んあっ・・・ああっ!!」
「くっ・・・ハァ、ハァ・・・んあっ・・・」
(鉄の処女(アイアンメイデン)のときも思ったが、君島とこんなふうに密着してるの、
スゲェ好きかも・・・気持ちいい・・・)
肌と肌、粘膜と粘膜が擦れ合う心地よさをどちらも存分に堪能する。お互いの熱で触れ合
っている部分が焼き尽くされるような快感を共有し、どちらも蕩けたような表情でその快
感を貪る。
「ハァ・・・ハァ・・・ファラリスの雄牛はこれくらいにしといてやる・・・」
「ハァ・・・すごく気持ちよかったです。遠野くんの心臓、とても熱くてドキドキしまし
た。」
素直な君島の感想に胸を躍らせながら、遠野は次の処刑の準備をする。先程聖アンデレの
十字架で使ったリボンを一本手に取ると、一旦君島の熱を抜き、向きを変える。背面騎乗
位で再び挿れ直すと、次の処刑法を口にする。
「処刑法其ノ六セメント靴(シューズ)。君島、脚を曲げろ。」
「・・・こうですか?」
君島が膝を曲げると、遠野は足首同士を合わせ、赤いリボンで縛る。
「セメント靴(シューズ)の完成だ。どうだ?足を拘束された気分は。」
「これと言って別に・・・。今日は初めから遠野くんが動いてくれていますし。」
別に今更拘束されたからといって困ることはないと、君島はそう返す。君島がそのような
反応をするのは想定内だったので、遠野は軽く君島の方を振り返りながら、悪戯な笑みを
浮かべる。
「そう言っていられるのは今のうちだぜ。」
そう言うと、遠野は動かせない君島の足に手を伸ばす。そして、くすぐるのとマッサージ
をする間くらいの手加減で、君島の足の指に触れる。
「んああっ!!ちょっ、遠野くん、それは・・・」
「君島、足の指弱いもんな。セメント靴(シューズ)としては持ってこいの責め方だろ?」
君島の反応が悪くないことを確認すると、遠野はその器用な指先で足の指を責める。やわ
やわと撫でてみたり、指の間をぐいっと押してみたりする。そのたびに君島は逃げを打と
うとするが、足を拘束されているためにそれは叶わない。
「んあっ・・・ああっ・・・」
「ひゃっ・・あんっ!!そんなにビクッてされたら、中、気持ちよくなっちまう。」
君島がビクンと反応すると、遠野の中は予想外の突かれ方をする。それが遠野にとっては、
いい刺激となり、何度も君島の弱いところを責める。
「ハァ・・・遠野くん、もう止めてください・・・」
「お前がそんなこと言うなんて珍しいじゃねーか。ま、止めてやらねーけどな。」
「ちょっ・・・んっ・・・うあっ!!」
君島が気持ちいいと自分も気持ちいいので、遠野は君島に言われたところで止める気など
一切なかった。自分自身も呼吸を乱しながら楽しげに君島の足の指を弄っていると、一際
大きく中の熱が反応する。
「ハァ・・・この触り方好きな感じか?」
「ああっ・・・それは、ダメです!!」
「だったら、しばらくこの触り方でしてやるな。」
(そんな触り方されたら・・・)
一番気持ちいい触り方で触れられ、君島はビクビクとその身を震わせる。その快感は遠野
の中にある熱にも伝わり、すぐに限界を迎える。
「んっ・・・ああぁっ!!」
ビクビクと自分の中に熱い蜜が放たれるのを感じ、遠野もゾクゾクしてしまう。
「んあっ・・・あんっ!!あっ・・・!!」
(君島の中に出されて、俺も思わずイッちまった・・・)
君島も自分もイッたのを確認すると、遠野は君島の足首を縛っていたリボンをほどいてや
る。
「ハァ・・・セメント靴(シューズ)、よかっただろ?」
「ハァ、ハァ・・・さあ、どうでしょうね。」
「素直じゃねーなあ。イクほどよかったくせに。」
からかうようにそう言いながら、遠野は再度向かい合わせになるために君島の熱を抜く。
二回分の雫が溢れそうになるのを堪えながら、遠野は君島の身体を起こし、足首を縛った
リボンよりはもう少し長めのリボンを使って輪を作り、自分と君島の頭を通す。そして、
再びズプっと君島の楔を自分の中へ挿入する。
「んんっ・・・」
「遠野くん、これは・・・」
「処刑法其ノ五コロンビア・ネクタイ。血の色をしたこのリボンで、俺とお前の喉は強制
的に固定される。お互いの息がかかるくらいのこの近さ、興奮するだろ?」
赤いリボンを使い、いわゆる首引き恋慕の体位で遠野はコロンビア・ネクタイを再現する。
「君島、舌出せ。唇はつけちゃダメだからな。」
「えっ・・・んっ・・・!」
遠野に言われるまま舌を出すと、その舌に遠野の舌が触れる。唇はつけずに舌先だけでキ
スをするその感触に、君島は興奮してしまう。
「んぁ・・・遠野くん・・・」
「ハァ・・・君島・・・」
唇は触れさせず、お互いの舌に触れ、絡めたり舐めたりとその感触を存分に味わう。首に
かかるリボンで離れることは許されず、ゾクゾクとした快感が二人の身体を駆け巡る。ど
ちらも互いの舌の感触に夢中になり、まるで言葉を奪われたかのように交わす言葉は最低
限のものになっていた。
「はっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「ハァ・・・お前がしてくれたのよりは激しくはねぇけど、これはこれでよかっただろ?」
「そうですね・・・思わず夢中になってしまいました。」
首にかかったリボンを外すと、遠野は次の処刑のために例の袋に手を伸ばし、次に使うア
イテムを取り出す。
「処刑法其ノ四苦痛の梨。今度はちゃんと唇つけたキスしてやるよ。苦痛の梨みたいな刺
激的なキスをな!」
苦痛の梨のような刺激的なキスとはどういうことだろうかと君島は疑問に思いながらも、
ドキドキと胸を高鳴らせる。手にしている何かを遠野は口に入れる。
「遠野くん、何を口に入れたのですか?」
口の中に入れたものを見せるかのように、遠野はべーっと舌を出す。遠野の舌の上に乗っ
ていたのは、ハート型のチョコのようなものであった。
(チョコレート?)
君島がハテナを頭に浮かべて首を傾げていると、遠野はそんな君島の首に手を回し大胆に
口づける。口に入っているチョコレートを共有するかのように舌を絡めると、ほろ苦い味
が二人の口の中に広がる。そして、ある程度口の中のチョコレートが溶けたところで、君
島は遠野の言っていたことを理解する。
パチパチパチ・・・
「んんっ!?」
「んんんっ・・・」
口の中で何かが弾ける音とふわりと感じるリンゴの風味。遠野が口にしたチョコレートに
はリンゴ味のパチパチキャンディが隠されていた。チョコレートが溶けたことで、キャン
ディが二人の舌に触れ、パチパチと弾けているのだ。舌を動かすと、いたるところでキャ
ンディが弾け、二人の舌を刺激する。
パチパチパチ・・・
「んっ・・・ぅ・・・」
「んんっ・・・んっ・・・ぁ・・・」
お互いの舌の感触に、チョコレートのほろ苦さ、甘いリンゴの風味に、パチパチとした弾
けるような刺激。今まで味わったことのない刺激的なキスに、どちらも夢中になっていく。
「ハァ・・・ヤベェな。キスしながらパチパチ弾けるの、結構気持ちよくて癖になりそう。」
「初めての感覚ですね。ちょっと舌が痛いですが、この感じ、嫌いではないです。」
「だったら、もう一回してみようぜ。」
パチパチ感がなくなると口を離す二人だが、もっとしたいと遠野はそのチョコレートを口
に入れ、再び君島の唇に口づける。君島もこの刺激的なキスは悪くないと思っているので、
嬉々として遠野の舌とハートのチョコを受け入れる。
パチパチパチ・・・
「んあっ・・・んっ・・・!」
「んんっ・・・」
苦くて甘い刺激的なキスにハマった二人は何度かそれを繰り返す。数度繰り返すと、二人
の表情はひどく蕩けたものになっていた。
「ハァ、ハァ・・・スゲェ気持ちよかった・・・」
「まだ若干口の中がパチパチしています。」
「そろそろ次の行くか。」
さすがにそろそろ次の処刑に進もうと、遠野は呼吸を整えながらそう口にする。
「処刑法其ノ三生き埋め。君島、俺のココ、お前の舌で舐めてくれ。」
腰を上げ、自分の胸の突起を示しながら遠野は君島にそう頼む。これがどう生き埋めにな
るか分からないが、言われた通り、君島は遠野のそこに口をつける。
「んあぁんっ!!」
君島がそこに口をつけると、遠野はぎゅうっと君島の頭を掻き抱く。
「と、遠野くんっ・・・そんなに強く押しつけられると、ちょっと苦しいです。」
「はぁ・・・いいんだよ。生き埋めだからな。ちょっとくらい苦しくなきゃ、意味がねぇ
だろ?」
なるほどと思いながらも、正直もう少し緩めて欲しいと思ってしまう。だったら、少し強
めにそこに刺激を与えて緩めさせるまでだと、君島は遠野のそこを唇と舌と歯で刺激する。
「ああっ・・・ああぁんっ!!」
「ハァ・・・んっ・・・」
「ひあっ・・・んんんっ!!」
(遠野くんが感じると、入口が締まって結構クるな。)
胸を弄ってもらうため、少し腰を浮かせている遠野であるが、それゆえ、君島の熱は先端
の部分だけ遠野の中に入っている状態になっている。入口が締まると敏感な先端が刺激さ
れ、君島の呼吸は乱れる。
「ハァ・・・ああっ・・・君島、そこ気持ちいい・・・」
「ぐっ・・・ハァ・・・はっ・・・」
「んあっ・・・そこ、噛んでっ・・・!!」
遠野のリクエスト通りそこを噛んでやると、さらに強く頭を押しつけられ、ぎゅうぎゅう
と入口が締まる。
(苦しい・・・けど、気持ちいい・・・)
「ああぁんっ・・・君島ぁっ・・・あっ・・・!!」
「んっ・・・ふぅ・・・はっ・・・」
さすがに君島が苦しそうであることに気づき、遠野は君島を抱く腕を緩める。胸への刺激
に浅い挿入がもどかしくなり、君島を解放すると、ずぶっと腰を深く落とす。
「んあっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「んあぁんっ・・・ハァ・・・苦しくて気持ちいいとわけ分からなくなるだろ?」
「ハァ・・・そうですね。私の生き埋めを受けた遠野くんもこんな気分だったんですか?」
「まあな。いや、でも俺の場合は、気持ちいいのが強かったかも?」
「私もどちらかと言えば・・・そちらの方が強いかもしれません。」
生き埋めを受けて、気持ちいい方が上だと言う君島の言葉に遠野の顔は緩む。残る処刑法
はあと二つ。そろそろクライマックスだと遠野は気合いを入れる。
「処刑法其ノ二銃殺。俺の言葉で、お前の胸を撃ち抜いてやるよ。」
胸を撃ち抜くと言いながら、遠野は君島の額に自分の額をピタッとくっつける。そして、
君島の両手に自分の指を絡め、ぎゅっと握る。
「と、遠野くん・・・?」
「君島・・・好きだ。」
「っ!!」
触れ合うほどの至近距離で直接的な愛の言葉を囁かれ、君島の胸はドキンと跳ねる。
「ハァ・・・君島とこうして繋がっていると、スゲェ気持ちよくて幸せで最高の気分だ。」
「・・・・・。」
「君島・・・もっと・・・」
「あっ・・・」
「君島のコレで、俺をもっと気持ちよくさせてくれ。」
握られていた手を離され、結合部をゆっくりとなぞられ、君島はゾクゾクと全身が甘く痺
れるのを感じる。言葉で胸を撃ち抜くとはこういうことかと納得しながら、君島はすっか
り遠野に魅せられる。
「遠野くん・・・!!」
遠野の言葉に興奮し、君島は激しく遠野を突き上げる。
「んああぁっ・・・ああぁんっ!!」
「そんなことを言われたら、遠野くんに任せるだけなんて出来なくなってしまいます。」
「あんっ・・・やっぱ、君島が動いてくれた方が気持ちいい・・・!!」
「ハァ・・・あっ・・・」
「ああっ・・・君島ぁっ・・・!!」
君島が主体で動き始めると、遠野の絶頂感は急激に高まっていく。このままでは、最後の
処刑法が執行出来ないと遠野は慌てた様子で、最後の処刑法を口にする。
「しょ、処刑法其ノ一切腹。俺に介錯を懇願しろ!」
これは自分のときと同じだと思いながら、君島はどのような言葉で介錯を懇願するか考え
る。君島自身もかなり限界近くまで高まっているので、だいぶ頭は回らなくなっていた。
「君島、このままだとイッちまうからっ・・・早く、早くっ・・・!」
むしろ遠野の方が懇願していると思いながらも、せっかく遠野がここまで自分のために処
刑法を披露してくれたのだ。きちんと最後までしてもらいたいと、君島は思いつくままの
言葉を口にする。
「遠野くんの中に、私の想いを全て注ぎたいです!遠野くんの中でイカせてください!」
「あああぁっ・・・君島・・・!!」
「んあっ・・・遠野くん・・・!!」
介錯を望む言葉を口にした瞬間、君島は想いの全てを遠野の中に放つ。その想いを全身全
霊で受け止め、遠野も高みへ昇りつめ介錯を終える。激しく呼吸を乱し、君島にしがみつ
きながら、遠野はポツリと呟く。
「か、介錯は済んだ・・・これで処刑は完了した・・・」
「ええ。最高の処刑でしたよ。」
お互いの言葉にふっと口元に笑みを浮かべながら、どちらも甘美な処刑の余韻に浸る。も
うしばらくこのままでいたいと、二人は繋がったまましっかりと抱き合った。

心地よい疲労感と満足感を感じながら、二人は事が終わったベッドの上でゆったりとくつ
ろぐ。遠野が用意したアイテムが入っている袋を漁りながら、君島はふと思ったことを口
にする。
「これ、遠野くんが準備したんですよね?」
「当たり前だろ。他に誰が準備するんだよ?」
「しているときも思ったのですが、アイテムのチョイス可愛すぎません?」
「はあ?」
君島の言っていることが理解出来ないとばかりに、遠野は不満気な顔を見せる。
「いや、もちろんアイデアはすごかったですよ?聖アンデレの十字架も松の木折り(ディ
アスフォンドネーゼ)もウィッカーマンもコロンビア・ネクタイも。でも、それに使われ
ているアイテムが、真っ赤なリボンに赤いハートのエコカイロですし、ローターもスタン
ダードにピンク色だったじゃないですか。あと、あのパチパチするチョコレート。あれも
ハートの形で可愛かったです。」
「血や心臓を表すんだったらそうなるだろ。」
「それはそうなんですけど、やっぱりアイテム単体で見たら可愛らしいです。しかも、そ
れを遠野くんが選んだという事実がもう何というか・・・」
そのギャップが堪らないと君島は笑う。何となくバカにされているような気がして、遠野
はムスッとする。
「バカにしてるだろ。」
「いえ、してませんよ。むしろ、褒めてます。」
「本当か?」
「ええ。遠野くんのそういうところ、私は好きですよ。」
処刑という猟奇的な要素を表すためにリボンやハートという可愛らしいアイテムを選択す
る遠野は実に愛らしいと君島は素直にそう伝える。それを聞いて、遠野は少し嬉しそうな
顔になる。
「まあ、お前がそう言うなら褒め言葉として受け取ってやるよ。」
「あっ、このリボンやカイロ、もらってもいいですか?」
「は?カイロはまだしも、リボンはゴミだろ。そんなのが欲しいのかよ?」
「私が処刑したとき、遠野くん自撮りしてたじゃないですか。そのときの気持ちと同じで
すよ。」
「あー、なるほど。」
その気持ちは理解出来ると遠野は納得する。
「そういうことなら、別に構わないぜ。」
「ありがとうございます。遠野くんの血飛沫と心臓、大切にしますね。」
「はは、スゲェサイコパスみたいなこと言ってるじゃねーか。まあ、間違ってはねぇけど
な!」
自分が表したかったものを口する君島の言葉を聞いて、遠野は声を出して笑う。君島に自
分の考えた処刑を受けてもらうことが出来て、自分自身もかなり満たされ、遠野はいい気
分で隣に座っている君島の肩に頭を乗せる。
「どうしたんですか?」
「何となくこうしたい気分でよ。俺の考えたお前だけにしてやれる処刑法どうだった?」
「想像以上でとてもよかったですよ。同じものをモチーフとしているのに、私が考えたも
のとは全然違って興味深かったです。」
「だろう?ま、俺も楽しめたし、お前もよかったと思ってるならしてよかったぜ。」
「処刑という言葉を聞いて、こんなにもドキドキワクワクする日が来るとは思ってなかっ
たですけどね。」
「フッ、いいことじゃねーか。本当嬉しいぜ。」
自分自身を理解され、認められているように感じ、遠野は嬉しそうに笑いながらそう呟く。
そんな遠野を見て、君島も何となくいい気分になる。
「今日も十分楽しめましたが、明日は休みです。せっかく一緒にいられるんですから、二
人で何をするか考えましょう。」
「そうだな。何をするにしても、明日が楽しみだぜ!」
明日は一日一緒にいられると、君島はそんな提案をする。遠野の考えた処刑でより深く心
を交わし、お互いのことを想う気持ちが強くなった二人は、共にいられる時間を更に充実
させるため、これからの計画を楽しげに話し合うのであった。

                                END.

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