「もうそろそろ終わりだな。」
「なかなかおもしろいじゃねーか。そうだ宍戸。コレ終わったら除夜の鐘鳴り始めるよ
な?」
「ああ。確かそうだと思うけど。」
「ちょっとしたいことがあるんだけど。」
「またかよ。今度は何だ?」
「確か除夜の鐘は108回だよな?」
「そうだけど、だから何だよ?」
「じゃあ、それに合わせて・・・」
跡部は宍戸の耳元でボソボソと囁く。それを聞いて宍戸の顔はだんだんと赤くなっていっ
た。
うそだろ〜。跡部の奴、どうしてそうしょうもないことばっかり思いつくんだよ。
「な、いいだろ宍戸。」
「お前、どうしていつもそんなしょうもないことばっかり思いつくんだよ。」
「いいじゃねーか。お前が好きだからこそしたいと思うんだぜ。」
宍戸は呆れながらも跡部の提案を呑んだ。
除夜の鐘が鳴り始めるまであと2、3分か。テレビは消した方がいいな。確かこの近くに
鐘を鳴らす場所はあったはずだから、音は聞こえるだろ。
「宍戸、ここに座れよ。寄っかかれた方が楽だろ。」
「本当にすんのか?」
「当然だろ?ほら、早くしろ。」
「はいはい。」
宍戸は言われるまま、ベッドの頭の方に寄りかかった。逃げないようにと跡部は宍戸の膝
の上に乗り、髪に手を絡める。
「顔近ぇよ。」
「気になるなら目つぶってりゃいいじゃねーか。」
「いい。もう少し開けとく。」
「鐘がなるまであと10秒。」
ドクンドクンと心臓が速くなるのを宍戸は感じていた。心の中で鐘がなるまでのカウント
ダウンをし、3秒前くらいになると目を閉じる。1回目の鐘が聞こえたと同時に宍戸の唇
は跡部の唇に触れた。
ホーント、俺も跡部に振り回されてんな。除夜の鐘に合わせて108回キスしようだなん
て、普通思いつかねぇよ。それを了解しちまった俺も俺だけど。
1、2、3、4、5、6、7・・・・・・18、19、20・・・・
初めの20回くらいはただ唇を重ねるだけの軽いキス。それを過ぎるとしだいに深くなっ
てゆく。
やっぱ、これくらいしないとキスしてるって感じしねぇよな。宍戸も抵抗する気は全くな
いみてぇだし、今は楽しまねぇとな。
・・・・53、54、55、56、57、58、59、60・・・・
「・・・んっ・・・ハァ・・・んん・・・」
50回を超すと宍戸はキスとキスの合間に声を漏らし始める。もう軽いだけのものではな
いので、息も荒くなっていく一方だ。
ヤバイくらい気持ちイイじゃねぇか。あと何回だ?このままずっとしててーかも・・・。
・・・・76,77、78、79、80、81、82、83、84・・・・・
「ふぅ・・ん・・・ぁ・・・」
「ハァ・・・宍戸・・・」
「んんっ・・・んぅ・・・・・」
お互いに夢中で唇を貪る。すればするほど気持ちよくなっていき、どちらも興奮度はあが
っていく。
あの本に書いてあったことは本当だな。キスはドーパミンを多量に放出させるっつーのは、
間違ってねぇよな。すればするほどもっとしたくなっちまう。
「・・・跡部ぇ・・・ぅん・・・んっ・・・」
うわあー、ヤベェよコレは・・・このままだと俺、キスだけでイッちまうかも。でも、こ
こまで気持ちよくなれるとは思ってなかったから、ちょっとうれしいかも・・・。
・・・103、104、105・・・
あと2回。ここまでくると二人ともうヤってるも同然に感じている。特に宍戸の方はされ
ている側とあって身体を震わせて、跡部にしがみついていた。
・・・107・・・
宍戸の奴、相当感じてんだな。ここもこんなに勃たせちゃって、マジでイキそうな顔して
やがる。
ゴーン・・・
「・・ぁっ・・・・んっ・・・んんっ!!」
最後の鐘がなったと同時に宍戸は達した。まさか本当にキスだけでイクとは思わなかった
ので、顔を真っ赤にして跡部を突き放そうとした。だが、全身の力が抜けていてそれはか
なわなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「宍戸、お前キスだけで・・・」
「言うな!!」
ニヤニヤと笑いながら跡部は宍戸をからかおうとする。宍戸は必死で言葉を遮った。
くそ〜、何で俺このくらいでイクんだよ〜。つーか、跡部が上手いのがいけないんだよな。
でも、嫌だってわけじゃないし・・・。
とその時、宍戸はあることに気がついた。
「跡部、お前ももしかして結構キてたりする?」
「は?んなわけねーだろ。」
「ふーん。」
聞き流してみせる宍戸だが、跡部もかなり限界ギリギリだったということは一目瞭然だっ
た。
宍戸の奴、変に細かいとこ気づいてんじゃねーよ。って、何やってんだコイツ!?
「跡部、今日俺機嫌いいからお前のしてやるよ。」
「なっ!?別にいい!!」
「何でだよ?いつもはお前からやらせるくせに。」
「うっ、でも今日はいいんだ!!」
「ヤダ。やる。」
跡部のズボンに手をかけ、充分に熱を持っているそれを口に含む。さっきのキスでかなり
限界近くまできてたので跡部はあっという間に達してしまった。
「くあっ・・・」
「んくっ・・・んんっ・・・」
やっぱ跡部も限界だったんじゃん。俺のことだけからかおうなんてずりぃよな。
「ずいぶん早いじゃん。」
「くっ、うるせー。お前に言われたくねーよ。」
まさか宍戸からしてくるなんて思わなかったぜ。これは予定外だったな。くそ、どうせだ
ったらこんなギリギリじゃない時にやってもらいたかったぜ。
「なあ、宍戸。続きしようぜ。」
「うあっ・・・ちょっ・・・跡部!?」
宍戸は一瞬抵抗しようとしたが、跡部の力には勝てない。あっという間に服を全部剥がさ
れ、行為を始められてしまった。
やっぱ、ちょっと気になるけどまっいっか。俺もしたいし。そういやもう日付変わってん
だよな。つーことはコレ今年初になんのか?
「あっ・・・跡部・・・ソコ・・・・」
「こっからは名前呼び。跡部って言うな。」
「わ、分かったよ・・・景吾・・・」
「さあ、今日はどう攻めようかね。どうして欲しい亮?」
「また・・・そういうこと・・・くっ・・んん・・・」
まだ1回もこの質問には答えたことねーんだよな。せっかく聞いてやってんのに。でも、
言おうが言わまいが俺の好きなように攻めるのには変わりねぇ。
「じゃあ、今日は足中心に攻めるぜ。」
「やっ・・・ひゃ・・あんっ・・・」
「ずいぶんイイ反応するじゃねーか。」
跡部があまりにもヤラしく足を触ったり、舐めたりするので、宍戸は足を閉じようとする。
だが、それは跡部の手により阻まれた。
「何やってんだよ?」
「だって・・・景吾・・触り方とか・・・すっげーヤラシイから・・・」
「閉じたとこで変わんねぇと思うぜ。」
「でも・・・あっ・・・うあっ・・・」
「さっきのお返し。」
足を閉じさせないのと同時に跡部は宍戸のモノを口に含んだ。さっき自分がされたのでお
返しだと言わんばかりに激しくソレに刺激を与える。
「やぁっ・・あっ・・・あぁ・・・」
ガクガクと身を震わせ、思わず跡部の頭に手を添える。離したいのかもっとして欲しいの
か宍戸は自分でも分からない。宍戸の様子を上目使いで見ながら跡部は足の指に手を絡め
た。
「やだぁ・・・景吾・・・足に手・・しないでぇ・・・」
足の指触られただけで、こんなに反応する奴も珍しいよな。おもしろいからもっとしてや
れ。
「あっ・・・あぁっ・・もう・・・出ちゃうっ・・・」
口を離そうとする気はさらさらないと跡部はさらに深く口に含み、軽く歯を立てた。
「んっ・・・うっ・・ああっ!!」
何か今日俺おかしい〜。いくら足が弱いからってこんなに反応するなんて変だぞ。なんか
さっきのキスが媚薬代わりって感じだな。
「ハァ・・・ぁ・・・ハァ・・・」
「うまいぜ。お前の。」
「そういうこと・・・言うな・・!!」
「俺も早くして欲しいな。」
「さっき、してやったじゃねーか。」
「違ぇーよ。早くお前に入りてぇってこと。」
「なっ・・・くぁっ・・・あぁ・・・」
跡部は自分の指を濡らすと次にする行為のため、宍戸の下の口に差し入れゆっくりと慣ら
し始める。なるべく負担をかけないように少しずつ少しずつほぐしていく。
「あんっ・・・やっ・・・景吾・・・」
「キツくねぇか?亮。」
「う・・ん・・・・なあ、景吾・・・」
「ん?何だ?」
「キスしてくれよ。」
「ああ。いいぜ。」
「ん・・・」
珍しいな。こいつからキスしてくれなんて言うの。やっぱり気分いいよな、こいつとキス
すんのは。
「・・・ふはぁ・・・」
「なあ、もうそろそろいいだろ?」
「ああ・・・もういいぜ・・・」
入れやすくするため足を抱え上げ、跡部は身を進める。初めはやはり圧迫感を感じるが、
そんなのはすぐに消えてしまう。
「あっ・・・あぁん・・・景吾っ・・・」
「亮、大丈夫か?」
「うん・・・だいじょ・・ぶ・・・」
「そうか。今日は少し激しくいくぜ。」
「うあっ・・・あっ・・く・・・はぁんっ・・・」
正常位ではあるが激しく突くので、宍戸は高い声を上げる。何度も何度も奥を貫かれ、ど
うしようもない甘い痺れが宍戸の身体を駆け抜けた。
「景吾っ・・・けい・・・ごっ・・・」
「最高だぜ、亮。もっと、名前呼んでくれよ。」
「あっ・・・はぁっ・・・景・・・吾・・・俺の名前も・・・呼んでくれよ。」
「亮、好きだぜ。大好きだ亮・・・」
「んんっ・・・あっ・・ああっ・・・」
今日の宍戸、スゲェいいな。普段も充分可愛いけど今日はまた格別だな。
「今日、なんかいつもよりよくねぇ?」
「確かに・・・イイ・・・」
「何でだろうな?」
「知るかっ・・・あっ・・・うあっ・・・」
話しながらも動いているので、宍戸の言葉はすぐに途切れてしまう。快感の中にも安心感
が欲しいと宍戸は跡部にしがみついていろいろなことを請う。
「景吾・・・髪撫でて・・・」
「ああ。」
「もっと・・・キスしてくれ・・・よ・・」
「ああ、亮。」
「ふぅっ・・・ん・・・」
そんな宍戸の願いを全部聞き入れ、跡部は叶える。しばらくすると、さすがにどちらにも
絶頂の波がやってきた。
「うっ・・・あぁっ・・・景吾・・・俺・・・もうイキそう・・・」
「俺もかなりイイ音たててるぜ。」
「はっ・・・何が・・・?」
「アドレナリン。」
「い、意味分かんねぇ・・・ひゃっ・・・」
「とにかく1回一緒にイクか?」
「う、うんっ・・・・」
跡部は宍戸の一番敏感なところを突き上げる。どちらも限界にかなり近かったので同時に
達した。
「あっ・・・ああ―――っ!!」
「くっ・・・はっ・・・」
いつもならこれで終わりなのだが、今回は違った。跡部が抜こうとするのを宍戸が止める。
「どうしたんだよ亮?」
「・・・もっと・・・」
「は?聞こえねぇよ。」
「今のだけじゃ足りねぇ・・・もっとしてくれよ・・・景吾・・・・」
こんなことを言われたのは初めてだったので、跡部は本当に驚いた。だが、こういうこと
は宍戸の何倍も好きなので、もう何度でもやってやるというようなノリで第2ラウンドを
開始する。
「お前の満足いくまで何度でもしてやるよ。」
「ひゃあんっ・・・」
本当に楽しそうな表情で跡部は宍戸を再び食べ始める。宍戸も跡部に食べられるのをそれ
なりに楽しんでいるようだ。
「うあーー、腰痛ぇーー。」
「でも、あんだけやりゃ満足だろ?」
「お前はヤリ過ぎ。何で新年早々4発もやんなきゃいけねーんだよ。」
素っ裸のまま宍戸は布団に包まり跡部に文句をぶつけていた。宍戸が誘ったのが元で結局
4回もやるはめになってしまったのだ。もう時計は5時を指している。
「もう朝に近いじゃんか。これじゃあ、ほぼ徹夜だぜ。」
「いいじゃねーか。この際だからもうちょっと起きてて初日の出でも見ようぜ。」
「そーだな。」
何となくくっつきたくなり、宍戸は跡部に抱きついた。
「何だよ宍戸。」
「別に。ただなんとなく。」
「あっそ。」
「なあ、跡部。」
「んー?」
「俺、前から思ってたんだけどさ・・・」
「ああ。」
「跡部といる時ってドキドキもするし、すっごく落ち着いたりもするんだよな。これって
正反対なことだろ。何でだろうな?」
「そんなの決まってんじゃねーか。」
「何だよ?」
「俺がお前を好きで、お前が俺を好きだから。」
「何だよそれ。」
跡部のこの返答に宍戸は思わず笑った。だが、それが間違っていないと思った。
「俺ってばホントに跡部に愛されてるよなあ。」
「光栄に思えよ。この俺様に愛されてるんだからよ。」
「俺様って・・・・お前はどっかの王様かよ。」
「王様っつーよりは皇帝だな。」
「じゃあ、俺はその皇帝に寵愛される姫ってとこか。」
「自分で姫って言うなよ。まあ、俺からすれば確かに姫も同然だけどな。」
こんなよく意味の分からない話をしているうちに時間は過ぎ、日の出が近づく。ほのかに
外が明るくなり始めると跡部はカーテンを開け、窓を開けた。
「うわっ、寒っ!!」
「ちょっとの辛抱だ。ほら、太陽が昇り始めてるぜ。」
「本当だ。わあー、スッゲーキレイだな。」
「ああ。宍戸。」
「ん?何?」
跡部は振り向いた宍戸の額にそっとキスをした。
「今年もよろしくな。」
顔を赤らめて額を押さえながら、宍戸は跡部を見る。そして、今度は宍戸が跡部のほっぺ
たにキスをして笑顔で答えた。
「俺からも。今年もよろしく。」
新しい年の始まり。二人は今年もいい年になりますようにと昇る太陽に祈った。
END.