学校も部活もない休みの日。甲斐は平古場の家に遊びに来ていた。特にすることもないの
で、甲斐は平古場の持っているゲームをやり、平古場はパクパクと何かを食べながら雑誌
を読んでいた。
「あー、また負けたやっし!!」
先程から何度もトライしているが、何度も同じ敵に負けてしまうと、甲斐は大声を上げる。
そんな甲斐を見て、平古場はクスクスと笑いながらつっこむ。
「また、負けたば?裕次郎。」
「だってよー、この敵でーじ強くってさー。」
「この敵を倒すには、ちょこっと頭を使わなきゃダメなんばぁよ。」
読んでいた雑誌を置き、平古場は甲斐の隣に座ってゲームを受け取る。そして、カチャカ
チャと十字キーとボタンを物凄い勢いで動かし始めた。
「こいつの弱点はコレだから、攻撃はコレ。回復する時は、こっちのじゃなくて、これを
使うといいんだばぁよ。」
説明しながら、平古場はその通りに操作していく。あれほど倒せなかった敵のHPがあっ
という間に一桁になっていた。
「よし、とどめはこれで。」
ポチっと決定ボタンを押すと、爆発するかのような演出と共に敵は倒された。あまりに華
麗な平古場のゲームの腕を目の当たりにし、甲斐は感嘆の声を上げる。
「おー、すっげぇな凛!!あんだけ俺が倒せんかった敵をこんな短時間で倒すなんて!!」
「まあ、このゲーム、だいぶやりこんでるからさー。慣れれば楽勝。」
「さすがやっし!!けど、もうこのゲームはいいさー。凛が倒してくれちゃったし。」
「俺も雑誌ちょうど見終わったところやっさー。」
「じゃあ、今からは二人で何かするば?」
ニッと笑って甲斐はそんなことを言う。
「二人で何かするって、何するば?」
「二人ですることって言ったら、こういうことだろぉ?」
そう言いながら、甲斐はドサッとその場に平古場を押し倒した。やっぱりそうかと思いつ
つ、平古場は別に驚いたような反応もせずに跳ね除けようともしない。
「沖縄武術の寝技の練習?」
「何でかよ?んなわけないだろ。」
「あはは、だよなー。けど、こんな真昼間からどーかと思うけど?」
「凛がじゅんに嫌だって言うんなら、そんな無理矢理はしないさー。」
「別に嫌じゃないけど。今日はみんな出かけてるし。」
「それなら問題ないさー。」
だったら少しくらいイチャイチャしてもよいだろうと、甲斐はちゅーっと平古場の口にキ
スをする。ちょっとばかり深いキスをすると、ほのかな甘さが口の中に広がる。
「んー?凛の口の中、何か甘い?」
「あー、さっきまで黒砂糖食ってたからな。」
「何か食ってるなあと思ってたけど、黒糖だったのか。」
「結構好きなんばぁよ。黒砂糖。」
「俺も好きだぜ。だから、この味のちゅうはかなりいいかも。」
甘い黒糖味のキスに味をしめた甲斐は、もっとその味を味わいたいと再び平古場にキスを
する。いつもより深く長いキスに平古場はドキドキしながらも、甲斐とのキスは嫌いでは
ないので、その感覚を楽しんでいた。
「ふはっ・・・」
「んー、だいぶ味消えちゃったな。」
「そりゃそーだろ。あんなにしてたら、味も消えちゃうって。」
「もっと黒糖味のちゅうしたい。」
「しょーがないなー。すぐそこに黒糖の袋あるから取って。」
甲斐から黒糖の袋を受け取ると、仰向けになったまま、ひとかけらの黒糖を口に含む。口
の中で黒糖が溶け、完全になくなると、ペロッと舌を出して平古場は笑った。
「これでまた、俺の口ん中黒砂糖の味になったぜ♪」
「じゅんになあ?」
「ああ。ほら・・・」
そう言いながら、今度は平古場の方から甲斐にキスをする。食べた直後ということもあり、
さっきよりも黒糖の味が強く感じられた。
(わあ、じゅんに黒糖の味するやっし。)
これは美味しいと甲斐ははむはむと平古場の舌を食む。その何とも言えない感覚に、平古
場はピクンと体を震わせる。
「んっ・・・んん・・・」
何だか本当に自分自身が食べられているみたいだと、平古場はいつもよりドキドキしてき
てしまう。今食べた分の黒糖の味が消える頃、甲斐はやっと平古場の唇から自分の唇を離
す。
「じゅんに黒糖の味したやっさー。」
「ハァ・・・舌、食われちゃうのかと思った。」
「食べるわけないだろー?確かに美味かったけど。」
「だってよー、裕次郎、でーじ俺の舌、あむあむしてくるからさー。」
顔を真っ赤にして、そんなことを言ってくる平古場に、何故だか甲斐はきゅんきゅんして
しまう。何だかもうキスだけでは我慢出来ないなあと、甲斐はこつんと自分の額を平古場
の額にくっつけた。
「何かもういろいろ限界なんだけど、進んでいい?凛。」
「もともとそのつもりだったんだろー?別にいちいち聞かなくてもいいさー。」
「一応、聞いておかないとと思ってさー。」
「いいに決まってるだろ。・・・俺もしたいし。」
「もー、じゅんに凛は可愛すぎやっし!!」
恥ずかしがりつつも肯定的な答えばかりを返してくれる平古場に甲斐はもうときめきまく
りだ。もう止まれないなあと思いつつ、甲斐はさらにラブラブなことをし始めるのであっ
た。