ぽかぽかとした陽気の中、間切は浜辺に寝そべりうとうととしていた。今日は第三協栄丸
が外出しているため、水夫のメンバーに特に大きな仕事は任せられていなかった。
(こんなにいい天気で、日差しもあったかいと眠くなっちゃうよなあ。)
そんなことを考えながら、目を閉じると、あっという間に夢の中に落ちてしまう。そんな
間切のもとへ、暇を持て余している網問がやって来た。
「間切ー、一緒に遊ぼう!!って、あれ?」
すーすーと寝息を立てている間切を見つけ、網問は寝ている間切のすぐ側にしゃがみこむ。
「間切、寝てる?」
「・・・・・・。」
「おー、マジ寝しちゃってる。珍しいなぁ、間切がこんなところで昼寝しちゃってるなん
て。」
つんつんと間切の頬っぺたをつつきながら、網問はそんなことを呟く。間切に遊んで欲し
かったが、こんなに気持ちよさそうに昼寝をしているのを起こすのは可哀想だと、一緒に
遊ぶのは諦めた。
「間切、好きぃ。大好き♪」
間切が寝てるのをいいことに、網問はそんなことを繰り返し口にする。間切が起きている
と、恥ずかしいから、あまりそういうことを言うなと言われてしまう。それなので、網問
は溢れんばかりの間切への想いをなかなか素直に口にすることが出来ない。と言っても、
全く言わないわけではないのだが・・・。
「そうだ!いいこと考えちゃった!!」
いいことを思いついたと、網問は手を叩いてそんなことを口にする。悪戯っ子のような笑
みを浮かべ、網問はじっと間切の顔を眺める。そして、おもむろに間切の顔に自分の顔を
近づけた。
ちゅっ
まず始めに網問の唇が触れたのは、間切の右頬だった。そして、左頬、額と顔のいたると
ころに網問はキスをする。
「最後はやっぱココだよね〜♪」
楽しげにそう言いながら、網問は間切の唇にキスをした。それで満足したのか、網問はふ
ふっと笑って、間切の横に仰向けで寝転がる。そして、そのまま眠ってしまった。
「網問の奴〜、俺が寝てると思って。」
網問が眠ってしまったのに気づき、間切はそう言いながら起き上がる。網問が自分のもと
へやってきたことは、初めから気づいていた。
「あーもう、すげぇ心臓ドキドキしてるし。」
火照る顔を手で覆いながら、チラッと眠っている網問を見る。網問に好きと言われるのは
嫌ではないが、他の者がいる時に言われると羞恥心が先に立ってしまう。しかし、今なら
自分と網問以外には誰もいない。ドキドキしながらも、間切は網問の髪にそっと触れた。
そして、網問にだけ聞こえるような声で囁く。
「俺も網問のこと好きだぜ。」
その言葉が聞こえたのか、何かいい夢を見ているのかは分からないが、網問の顔はふにゃ
っと緩む。
(可愛いなあ、網問。何か俺もちょっとキスしたい気分かも。)
網問が狸寝入りをしているのか、本気で寝ているのかを判断するのは、間切にとっては簡
単なことであった。
「本気で寝てるな網問の奴。」
それなら、キスの一つや二つしても大丈夫だろうと、間切はゆっくりと網問の顔に自分の
顔を近づける。そして、小さな寝息を立てる唇にそっと自分の唇を重ねた。
(網問の唇、柔らかい・・・・)
少し長めのキスをして、存分に網問の唇を堪能すると、間切は網問の唇から自らの唇を離
す。
「あんまりしてると起きちまうからな。今はここまでにしておこう。」
自制心の強い間切は、一度キスしただけでそれ以上のことをしようとはしなかった。もう
少しここで休んでいこうと、きちんと座り直し、海の方へ視線を移す。すると、先程まで
仰向けで眠っていた網問が寝返りを打ち、ぎゅうっと間切の腰に抱きついてきた。
「ん〜・・・」
「網問?」
「ま・・ぎりぃ・・・ムニャムニャ・・・」
「寝てんのかよ。」
起きたのかと思ったが、まだがっつり眠っている網問を見て、間切はぷっと吹き出す。本
当眠っていても可愛らしいなあと思いながら、間切は網問の頭をなでなでと撫でる。
「ま、たまには何もしないでこういうふうに過ごすのも悪くないなあ。」
打ち寄せる波の音と穏やかな日差し、そして、網問の腕から伝わる温もりに、間切は何と
も言えない心地よさと幸福感を感じるのであった。