今日の二翼〜宿泊棟にて〜

U‐17W杯の日本チーム宿泊棟の一室で、千歳と橘はのんびりとくつろいでいた。代表
選手の部屋はコーチ陣の采配で決められているが、応援団については特に指定はない。そ
れならばと、千歳は橘と同じ部屋がよいと頼みこみ、橘はそれを快諾した。
「千歳、今日は散歩には出かけんとね?」
「んー、今日は出かけんとよ。」
「合宿所では、毎日のように出かけとったばい。やっぱり海外じゃ出かけづらいと?」
「そぎゃんことなかよ。ばってん、合宿所のときは桔平とは違う部屋だったばい。だけん、
桔平と練習ばしたり、散歩ばした方が楽しかったけんね。今は部屋でも桔平と一緒やけん、
外に行く必要なか。」
ベッドの上で大きなクッションを抱え、うつ伏せになりながら、千歳はソファに座ってい
る橘に向かってそう答える。その言葉が照れくさいながらも嬉しくて、橘はふっと口元を
緩ませる。
「まあ、お前んこと探しに行く手間が省けるけん、一緒に居てもらえるんはありがたかば
い。」
「桔平も俺と一緒居ろごたると思うとる?」
「そりゃ・・・まあな。」
橘の返事を聞いて、千歳はにぱっと笑い、体を起こす。クッションを抱いたまま片手を橘
に向かって伸ばすと、橘にこっちに来るように促す。
「せっかく二人で居れるけん、桔平もここけ。イチャイチャしたか。」
「ったく、しょんなかなぁ。」
率直な千歳の誘いに橘は苦笑しながらもソファから移動する。千歳のいるベッドの上に乗
り上げると、橘は千歳の隣に座った。手の届く場所に橘が来てくれたので、千歳は抱えて
いたクッションをポイっと投げ、橘を抱き締める。
「桔平、好いとお〜。」
「こらこら、千歳。」
ぐりぐりと肩に頭を擦りつけ、千歳は橘の背中に回している腕に力を込める。いきなりベ
タベタしてくる千歳に少々戸惑いつつも、橘は別にそれが嫌というわけではなかった。一
旦、橘から離れ、千歳はいつもよりはいくらか真面目な顔で橘に確認をする。
「桔平、部屋の鍵は?」
「オートロックだけん、閉まっとると思うが。」
「誰か来る予定は?」
「今んとこはなか。」
「もし、来たとしたっちゃ寝てるってことにするばい。」
「何でそぎゃんこつ確認すると?」
何となくは分かっているが、橘はそんなことを尋ねる。そんな橘の問いに千歳は行動で答
えた。橘の顎を指で持ち上げ、触れるギリギリのところまで顔を近づける。
「っ!?」
「桔平と愛し合おごたる。よか?」
思っていたよりも真剣な眼差しと声色で問われ、橘は耳まで真っ赤になる。なんて恥ずか
しいことを言ってくるんだと思いつつ、断る理由もなかった。
「よかばってん、ちゃんと気持ちようさせろや。」
「もちろんたい!」
橘の許可が下りたので、千歳はふかふかのベッドの上に橘を押し倒す。いざこうなるとや
はり恥ずかしいなと思いながら、橘はふいっと千歳から目を逸らした。

橘の手首をしっかりと押さえながら、千歳は橘の唇に自身の唇を重ねる。舌を絡め、口内
をゆっくりと探ってやれば、橘の腕に力が入る。
「はっ・・・んっ・・・んん・・・・」
「桔平・・・」
「ハァ・・・ち、とせっ・・・・」
「もう少しよかね?」
「・・・ああ。」
まだまだ足りないといった表情でそう尋ねる千歳に橘は軽く呼吸を乱しながら頷く。千歳
のキスは激しいもののただ荒々しいわけではなく、的確に気持ちイイ場所を責めてくる。
そんな千歳のキスが橘は好きだった。言葉はなくとも、絡む舌から伝わる千歳の想い。口
づけを交わしていると、それが否応なしに流れ込んでくる。それが橘にとっては非常に心
地の良いことであった。
(ほんなこつ千歳とこぎゃんしてると、頭ん中がふわふわしてくるばい。気持ちよか。)
長い口づけを橘は存分に受け取り、千歳が満足する頃にはすっかり惚けたような状態にな
っていた。唇を離し、真下にある橘の顔を見て、千歳の胸はドキンと高鳴る。紅潮した頬
に荒い息、目をトロンとさせ、自分を見上げる表情は実に色に満ちており、千歳の胸を鷲
掴みにした。
「今の桔平の顔、たいぎゃエロくてむぞらしかあ。」
「・・・うるしゃーばい。」
「俺とんキス、そぎゃん良かったと?」
「よかに決まっとるばい。好いとお奴とのキスが悪かことあるわけなか。」
「はは、そりゃ間違いなかね。」
可愛らしいことを口にする橘の言葉に、千歳は笑いながら同意する。橘のシャツをぺろっ
と捲り上げると、千歳はその指で橘の肌をなぞる。
「うぁっ・・・」
「桔平、どこに触って欲しかと?」
「そんなこつ・・・言えん・・・」
「言えんとこに触って欲しかと?桔平はやらしかねぇ。」
ニヤニヤと笑いながら、千歳は橘の下着の中に手を入れる。直接感じやすい箇所に触れら
れ、橘はビクンとその腰を震わせる。
「んっ・・・ぁ・・・千歳っ・・・!」
「ココを触って欲しかったと?ちょっと触っちょるだけで、先ん方濡れてきとるばい。」
「そんなこつ・・・なか・・・・」
下着の中の熱が千歳の掌で包まれていることがどうしようもなく気持ちよく、橘は荒い息
を吐きながらそう答える。橘がどう答えようと、千歳のすることは決まっていた。ひたす
らに橘を気持ちよくさせる。それが今、千歳が一番したいことであった。
「桔平、気持ちよか?」
拳の裏で口を押さえながら、橘は頷く。恥ずかしがるような素振りは見せるのだが、本気
で嫌がることはない。抑えながらも時折漏れる甘い声に、千歳はゾクゾクとしながら口元
を緩ませ、橘の熱に触れている手を動かす。
「くっ・・・ん・・・ぅ・・・・千歳っ・・・」
(桔平、ほんなこつむぞらしかぁ。)
橘の熱を弄りながら、千歳は橘の耳元に口を近づける。千歳の吐息が耳をくすぐり、橘は
ぎゅっと目を瞑る。
「桔平、好いとおよ。」
「・・・・っ!!」
「大好きばい。たいぎゃ好いとる。」
「んっ・・・ち、千歳っ・・・・」
耳元で何度も繰り返される想いを伝える言葉に橘の胸はときめき、千歳に触れられている
部分が何倍も感じやすくなる。
(あからん・・・これじゃそぎゃんもたん・・・)
千歳の与えてくれる快感に橘は高まっていく絶頂感を抑えられないでいた。下腹部が甘く
疼き、痺れるような快感に腰を揺らす。
「桔平・・・」
「ハァ・・・ちと、せ・・・・」
「愛しとるよ。」
「―――――っ・・・!!」
最上級とも言えるその言葉を聞いた瞬間、橘は声にならない声を上げ、千歳の手を熱い雫
で濡らす。濡れた手を引き抜くと、千歳はその手をじっと眺めた後、口元に持っていき、
橘の放った蜜を舐めた。
「ちょっ・・・やめんね、千歳。」
「なして?桔平のやけん、舐めんともったいなかとよ?」
「・・・・恥ずかしか。」
顔を真っ赤にしてそう呟く橘に、千歳は心を奪われる。いつもの男らしい雰囲気とは全く
異なる自分だけが見れる橘の姿。そんな優越感と愛しさとが混ざったような感情に千歳は
ドキドキと胸を高鳴らせる。
「桔平、下に穿いとるもん全部脱がしてもよかとね?」
「あからん言うたっちゃ・・・どげんすると?」
「んー、桔平はいっぺんイっとおし、ここで終わりにしたっちゃ構わんよ。」
それは困ると橘は千歳の言葉に許可を出す。
「脱がしてもよか・・・」
「んじゃ、脱がさしてもらうばい。」
ダメだと言ったらどうするのか聞いた後で、迷わず許可を出す桔平の態度に、千歳は思わ
ずニヤけてしまう。ハッキリと言葉にはしていないが、まだ続けたいという気持ちがあり
ありと表れている。橘が下に身につけていたものを全て取り去ってしまうと、千歳は一度
ベッドを下りて、どこからかとろみのある液体が入ったボトルを持って来た。
「なんね?それ。」
「ローションばい。使った方が桔平楽と思うけん。」
「なしてそぎゃんもん持っとっとね?日本から持ってきたと?」
「まさか。コッチ来てから買うたばい。」
「そらそれでどうかて思うばってん・・・」
「使ってもよか?」
ここで頷くのは、千歳を受け入れる準備に入るということだ。ドキドキしながらも、こう
いうことを始めた時点でそのつもりの橘は千歳の言葉に黙って頷いた。橘の膝を軽く曲げ、
脚を開かせると、千歳は左手に持っていたローションを垂らし、指に絡める。濡れた指を
橘の脚の間に持っていき、ゆっくりと入口を探る。その部分に指が触れると、指先をそこ
に軽く埋める。
「んっ・・・ぁ・・・」
「そこまでキツくはなかね。」
「千歳・・・」
緊張と興奮が交錯する表情を浮かべ、橘は千歳の顔を見る。その表情にどうしようもなく
興奮してしまい、千歳はほんの少しだけ弄った橘の蕾に蓋の開いたローションの先端を挿
れ、直接中にローションを流し込む。
「ひっ・・あっ・・・!?」
内側が一気に濡れる感触に、橘はビクンとその身を震わせる。溢れるほどに濡れた橘の中
に再び指を挿れ、千歳はぐちゅぐちゅとそこを慣らし始めた。
「桔平ん中、トロトロのぐちゅぐちゅでやらしかねぇ。」
「やめっ・・・んっ・・あっ・・・ぁ・・・」
「ほんなこつやめてもよかと?ココはこぎゃん気持ち良さそうに締めつけてくるとに。」
「うあっ・・・千歳っ・・・・」
少し奥の方を弄ってやれば、橘の下腹部はビクビクと痙攣し、いつもより高い声で千歳の
名が紡がれる。少ししつこいくらいに橘の弱い部分を弄っていると、橘はひっきりなしに
声を上げ、そのうち切羽詰まったような声色に変わる。
「あっ・・・んんっ・・・ち、とせっ・・・ぅあっ・・・あっ・・・!!」
「桔平、もしかしてまたイキそうになっとっと?」
「お前が・・・そぎゃんさでまわすけん・・・しょんなか・・・・」
イキそうになっている橘の表情は、本当に可愛らしいと思いながら、千歳は橘の中から指
を抜く。まさかこんなところでやめられるとは思っていなかったので、橘はひどく困惑し
た表情になる。
「なして・・・」
「イクなら、指よかこっちのがよかやろ?」
そう言いながら、千歳は下肢に身につけていたものを脱ぎ去り、ベッドの上に胡坐をかく
ように座ると、橘に向かって手を伸ばす。千歳の言いたいことを理解した橘はおずおずと
千歳に近づき、肩に手を乗せる。
「挿れてもよかね・・・?」
「もちろんたい。桔平のペースでよかよ。」
「千歳・・・」
千歳の脚を跨ぎ、橘は十分に慣らされたそこを千歳の熱に押し当てる。千歳の首に腕を回
しながら、ゆっくりと腰を落とすと、全身が粟立つような快感が一気に押し寄せる。
「んあっ・・・ああっ・・・!!」
「くっ・・・桔平の中、ほんなこつヤバかね・・・」
「まだ・・・全部入っとらんのに・・・・もう・・・イキそうばい・・・」
「はは、桔平がたいぎゃえっちなこと言っとおばい。」
「せからしかっ・・・んっ・・・く・・・ちとせ・・・・あっ・・・―――っ!!」
千歳の熱を全て中に収めると同時に、橘は千歳にしがみつきながら果てる。ぎゅうぎゅう
と内側にある熱が締めつけられ、千歳も思わず声が漏れてしまいそうなほどの快感を感じ
る。
「イっとるときの桔平ん中、ほんなこつたまらんばい・・・」
「ハァ・・・はっ・・・千歳ぇ・・・・」
まだ強い快感が治まらないため、橘は真っ赤な顔で息を乱しながら千歳を見上げる。至近
距離でそんな顔を見せられ、千歳の熱はさらに大きくなる。
「んんっ・・・!!」
「すまんね、桔平。ばってん、桔平がむぞらしすぎるけん悪かとよ?」
「別に・・・そぎゃんこつ気にしとらん・・・・それより・・・・」
「何ね?」
「もっと攻めて来んね。」
「っ!!」
この状況でそのセリフを言うかと思いつつ、千歳のやる気は一気に上がる。橘の腰を掴む
と、下から突き上げるように千歳は腰を打ちつける。
「うあっ・・・ああぁっ・・・・!!」
「桔平がそぎゃん言うなら、リミッターば外していくばい。」
「はっ・・・ぁ・・・そう来なくちゃな・・・」
激しく動かれる方が好みな橘は、やる気になった千歳に口元を緩ませる。全力で試合をし
ているときと似たような興奮を覚えながら、二人は身体を繋げ、気持ち良い場所が擦れ合
う快感に夢中になる。
「なあ、桔平・・・」
「んっ・・・なんね・・・?」
「一つ頼みばあるけん、聞いてくれると?」
「そりゃ・・・内容によるばい・・・・」
「右目に・・・右目の瞼に、キスして欲しか・・・」
千歳のそんな頼みに橘の心臓はドキンと跳ねる。千歳はもう気にすることはないと言って
くれてはいるが、その話題を振られると、胸がぎゅっとなり、泣きそうな気分になってし
まう。しかし、千歳がそれを望んでいるのだ。やらない理由はないと、橘は千歳の顔に両
手を添え、千歳の右目に優しくキスをした。
(うわっ、こら思うとった以上にヤバか・・・・)
橘の唇が瞼に触れた瞬間、ぞくぞくと橘と繋がっている部分が甘く痺れる。橘に奪われた
という事実からある意味一番橘を感じられる場所。そこに橘の唇が触れ、千歳の絶頂感は
一気に高まる。
「ハァ・・・桔平、もうあからん・・・」
全身で橘を感じながら、橘の中で千歳は果てる。千歳の雫が自分の中に注がれているのを
感じ、橘もきゅんきゅんと下腹部を痙攣させながら、千歳が達した直後に達する。
「んっ・・・ち、とせっ・・・・―――っ!!」
絶頂の余韻にどちらも熱く荒い息を吐きながら、お互いの顔を見る。心地よさの中、相手
を愛しく想う気持ちで胸がいっぱいになる。
「千歳・・・」
「桔平、愛しとおよ。」
「・・・・俺もばい。」
他の者には見せられないような惚けた顔で、二人は互いに想いを伝え合う。この上なく良
い気分のまま、二人はもう一度口づけを交わした。

二人で軽くシャワーを浴び、千歳と橘は飲み物を買いに部屋を出る。自動販売機のところ
まで行くと、同じように飲み物を買いに来た財前と鉢合わせる。
「こぎゃん時間に何しとっと?」
わりと遅い時間にも関わらず、部屋の外に出ている財前に千歳はそう声をかけた。しかし、
自動販売機の前にいるという時点で、自分達と目的は同じだ。
「先輩らと同じっスわ。飲み物買いに来ただけです。」
「はは、そりゃそうやね。桔平は何飲むと?」
「普通にスポーツドリンクでよか。ちょっと運動した感じで喉渇いとるし。」
「こんな時間に運動って、合宿所でもないのに流石っスね。」
橘の言葉に財前はそう返す。別にトレーニングをしていたわけではないので、橘は気まず
そうに笑いながら、千歳の買った飲み物を受け取る。
「大したことはしてないけどな。」
「ほんなこつ?今日は結構激しかったち思うばってん・・・」
「ち、千歳っ!」
(あー、なるほど。そういうことか。)
天然なのかわざとなのか千歳の言葉とその言葉を聞いた橘の反応から、財前は察してしま
う。
「ほら、もう遅い時間やけん、部屋に戻るぞ!」
「そやね。財前もあんまり夜更かししたらいかんよ。おやすみばい。」
「はい、おやすみなさい。」
部屋に戻って行く千歳と橘の後ろ姿を見送りながら、財前はスマホを出す。橘が千歳に向
かって少し怒ったように何かを言っているが、そんな橘の腰に千歳はさりげなく手を回し
ている。流石だなーと思いながら、財前は二人にスマホを向け、パシャっと何枚か写真を
撮った。
「自分のブログに載せるより、惷さんの二翼まとめブログのネタにしてもらった方がええ
やろな。メール送っとこ。」
今撮った写真をメールに添付し、財前は自分と同じくブログを書くのが趣味で千歳や橘の
先輩の鈴木に送る。送って1分も経たずに返信が返ってきた。
「ええネタ提供出来たみたいやな。」
ブログ仲間の先輩にネタを提供出来たことを嬉しく思いながら、財前はふっと笑う。自分
の部屋へ戻ろうと歩き始めると、ふと先程の千歳と橘の仲良さげなやりとりを思い出し、
羨ましくなってしまう。
「声、聞くくらいならええやろ。」
そう呟きながら、財前は今声が聞きたい相手に電話をかける。相手は部屋が決まっている
上、三人部屋なのでこんな時間に訪ねることは出来ない。眠れなくて声が聞きたくなった
と素直に電話をかけた理由を話すと、すぐに自分に会いに来てくれると言う。さすがに悪
いと断ったが、大丈夫だと今居る場所を聞いて、電話を切られた。そんなつもりはなかっ
たのになあと思いつつ、会えるのが嬉しくて財前は顔が緩んでしまう。待っている間、財
前は二翼まとめブログが更新されているかを確認する。
「さすが惷さん、仕事が早いわ。」
思っていたよりもイチャイチャ感満載になっている千歳と橘の写真に財前はクスッと笑う。
そんなに意識したことはなかったが、九州二翼の二人と関わるのもなかなか悪くないなあ
と思いながら、財前はほくほくとした気分で待ち人が来るまでスマホを眺めていた。

                                END.

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