今日は7月20日。財前の17歳の誕生日だ。財前の誕生日を祝いたいということで、元
四天宝寺中テニス部のメンバーは放課後に集まり、誕生日パーティーを開いていた。
『ハッピーバースデー、財前!!』
「相変わらず騒がしいっスね、先輩ら。まあ、誕生日祝われるんは普通に嬉しいんで、あ
りがとうございます。」
大きなバースデーに刺さったロウソクの火を吹き消した後、いつも通りのクールな口調で
財前はそう返す。
「よっしゃ、こっからお待ちかねのプレゼントタイムや!」
「別に待ってませんけど。」
「まずは、俺らから。俺と千歳とケンヤで準備したんや。」
「三人からってことっスね。」
「俺は全然何あげたら思い浮かばんくてな、白石と千歳が一緒にあげる言うとったから、
お金は出すってことで一緒にさせてもろたわ。何買ったかは知らんけど。」
「人任せ感半端ないっスね。」
「プレゼントは俺が選んだばい。桔平と遊び過ぎて今金欠やけん、ちょびっとしか出せん
かったけど。」
「どんな報告っスか。まあ、千歳先輩らしいっスけど。」
「買ったんは俺やで。俺じゃないと買えへんからな。まあ、エクスタシーなプレゼントや
から使うたら感想聞かせてな。」
「よう分からんっスけど、使うもんなんですね。ありがとうございます。」
白石からプレゼントを受け取ると、財前はそれを一旦鞄の近くの机に置く。白石の言葉に
少々引っかかるところがあるが、大したことではないだろうと、その場ではスルーした。
「アタシ達からはコレ。かなり可愛く出来たから受け取って。」
「小春がデザインしたんや。感謝せぇよ。」
「小春先輩がデザインして、ユウジ先輩が作ったってことっスか。ちょっと不安ですけど、
一応受け取っておきますわ。」
「あっ、他の人からの感想も聞いてみたいから、どんなやったか銀さん感想教えてね。」
「ワシか?財前はんにあげたプレゼントなのにどうして・・・」
「だって、それ、パジャマやもん。財前ちゃんがお泊りするのなんて、銀さんのうちくら
いじゃない。」
意味ありげな笑みを浮かべながら小春はそんなことを言う。図星ではあるが、それが何だ
か気に入らないと、財前ははいはいと興味なさげに適当に返事をする。
「次はワイの番やー!!誕生日おめでとうなー、財前!!」
そう言いながら、金太郎はどこから非常に大きな包みを出してくる。
「いや、デカすぎやろ!何やねん、それ!!」
「あんなー、白石の家にメッチャ気持ちええ柔らかいクッションがあんねん!せやから、
財前にもあげたろー思うて買うたんや!」
「柔らかいクッション?あー、ビーズクッション的なやつか。それにしても、随分デカい
の買うたな。」
「大きい方がええやん。あと、夏やからひんやりするのにしたんやで!」
「へぇ、それはちょっとええかもな。持って帰るん大変やけど。」
「持って帰るの手伝うで。」
「あ、ありがとうございます。師範。」
金太郎からの大きなプレゼントに少々困惑しながらも、財前は嬉しそうな表情を浮かべる。
大きさを考えなければ、物としては素直に嬉しいプレゼントであると感じていた。
「俺はみんなみたいにそんなに派手やないけど、最近新しく発売された熱中症対策のドリ
ンクのセットみたいな。実用性はあるはず!」
「普通にええやないっスか。この季節有難いっスわ。」
「ホンマに?それならよかったわ。」
思ったよりも財前が喜んでくれているので、小石川はホッとしたように笑う。
「あとは師範だけやな。」
「あー、師範は後ででええです。ですよね?」
「はは、せやな。」
「銀のはガチなプレゼントやろうしな。そのプレゼントもろてる財前も見てみたい気ぃす
るけど。」
「うるさいっスわ。そーいうこと言うから、今もらわないようにしとくんです。」
銀からのプレゼントは別にもらいたいと財前は今ここでは受け取らないことにする。仲間
からのプレゼントを受け取った後は、たこ焼きやケーキ、財前好みの甘味を食べながらパ
ーティーを続ける。日が沈むまで存分に騒ぐと、久しぶりに集まった楽しさの余韻に浸り
ながら解散となった。
「すみません、プレゼント持って帰るの手伝ってもろて。」
「別にかまへんで。どうせ、一旦うちに持って帰るんやしな。」
「遠山のは手伝ってもらうの予想してましたけど、小石川先輩のも何気に重かったっスね。」
「飲み物やからな。うちに着いたら、いくつかは冷蔵庫に入れとこうな。」
仲間との誕生日パーティーを終えると、銀と財前は一人暮らしの銀の家へと向かう。最近
はお決まりになっている誕生日のお泊りを二人とも楽しみにしながら歩みを進めた。
「着いたで。ほな、鍵開けるから待っとってな。」
「ありがとうございます。」
部屋の鍵を開けると、たくさんのプレゼントを抱え、二人は銀の部屋に入る。これから特
に出かける予定もないので、二人で家の中に入ると再度鍵をかけた。
「やっぱ、師範の家落ち着きますわ。」
「財前はんはよう泊まりに来てはるからな。今日もゆっくりくつろいでいくとええで。」
金太郎からのプレゼントをベッドの近くに置き、小石川からもらったドリンクを何本か冷
蔵庫の中に入れる。財前も白石達や小春達からもらったプレゼントを邪魔にならない場所
に置いた。
「ちょっと休んだら、ワシからのプレゼントも渡してもええやろか?」
「あっ、はい。もちろんええです。」
荷物を置いて、座布団の上に座ると、財前はビシッと背筋を伸ばす。銀からのプレゼント
をもらうのは他のメンバーにもらうのとはまた違った緊張感があった。
「そないに気ぃ張らんでもええで。」
「せやけど、師範からのプレゼントはやっぱ特別なんで。」
「はは、そう思うてくれてるのは嬉しいけどな。ほんなら、これ、ワシからの誕生日プレ
ゼントや。誕生日おめでとう、財前はん。」
「ありがとうございます。開けてみてもええですか。」
「うむ。気に入ってもらえるとええんやがな。」
銀からもらったプレゼントを大事に開ける。中にはほどよい大きさの小物入れのようなも
のが入っていた。
「何やええ雰囲気の箱ですね。」
「竹で出来たアクセサリーケースや。財前はんはピアスもぎょーさんつけとるし、アクセ
サリーも結構持ってるんやないかと思うてな。それを入れられるものがあったらええんち
ゃうかと思て。」
「なるほど、アクセサリーケースなんっスね。師範の言う通り、アクセサリー結構持って
るわりに、ちゃんとは整理出来てへんかったからメッチャ有難いっスわ。」
普段使いが出来るもので、デザインも雰囲気も自分好みのプレゼントをもらい、財前は嬉
しそうにお礼を言う。
(さすが師範やな。俺の好みメッチャ分かっとる。)
「気に入ってもらえたやろか?」
「はい。メッチャ気に入りました。ありがとうございます。」
「そないに嬉しそうな顔されると、こっちまで嬉しくなるな。」
財前の嬉しそうな顔を見て、銀も顔を緩ませる。
「そういえば、白石はんらからもらったプレゼントは何やったんやろな?」
「まだ開けてないっスね。とりあえず確認してみますか。あと、小春先輩とユウジ先輩か
らのも。」
「せやな。どちらも感想を聞かせてくれと言うとったし。」
「そこがホンマ意味不明っスよね。どうせ、ネタ的なもんやと思いますけど。」
ネタ的なプレゼントを想像しながら、財前はまず小春とユウジからもらったプレゼントを
開けてみる。中には財前が好きな色というよりは、銀が好きそうな色味の服が入っていた。
広げてみてみると、上下繋がったようなデザインで、フードにはうさ耳のようなものがつ
いている。いわゆる着ぐるみパジャマのようなデザインであるが、夏用として作ったのか
通気性のよさそうな薄い生地で作られていた。
「・・・こんなんどないせいっちゅーねん。」
やはりネタ感満載のデザインに財前は呆れるような口調でそう呟く。
「とりあえず、試しに着てみたらどうやろか?」
「えー・・・」
「ワシは見てみたいと思うけどな。」
「まあ、師範がそこまで言うなら・・・」
その服を着ることには全く乗り気ではなかったが、銀の言葉を聞き、財前はしぶしぶ着て
みることにする。もともと着ていた服を脱ぎ、前側についているチャックを下げ、足や腕
を通す。袖は半袖になっており、ズボンの裾は七分丈くらいになっていた。
「師範、着てみて気づいたことがあるんスけど・・・」
「何や?」
「この服、ホンマ腹立つくらい肌触りというか着心地がええんスよ。」
「流石ユウジはんやな。そういうとこにもこだわりがあるんやないか。」
「こないなデザインやなけりゃ文句なしやったんスけどね。」
「せやけど、財前はん、その服メッチャ似合うとるで。何や可愛らしくて、ワシは好きや
けどな。」
「・・・・・」
銀のその言葉を聞いて、財前の顔はみるみる赤く染まっていく。銀がそう言ってくれるの
なら、そんなに嫌がるものではないかもしれないと財前の胸はドキドキと高鳴る。
「財前はん、ちょっと後ろ向いてもらえるやろか?」
「後ろ?はい、こんなでええですか?」
財前の着ている服を見て、銀はあることが気になっていた。丸い尻尾のついている下のあ
たりにチャックが見えた気がしたのだ。財前に後ろを向いてもらうと、確かにそこにはチ
ャックがあった。
「何やお尻のあたりにチャックがあるみたいでな。何でこないなところにチャックがある
んやろなーと思て。」
「チャック?あっ、ホンマですね。」
銀に言われて腰の下あたりに触れてみると、確かにチャックのようなものがある。手探り
で動かせそうなので、財前は試しにそのチャックを開けてみる。腰の下のチャックが全部
開いた状態を見て、銀はドキッとし、顔は真っ赤に染まる。
「あー、それはちゃんと閉めておいた方がええかもしれへん。」
「何でですか?」
「そこのチャック開けると、その辺りが丸見えになるようになるみたいや。」
「は?」
チャックが開いている部分に手をやると、その手に触れるのは下着と太ももの後ろ側であ
ることに財前は気づく。銀の言わんとしていることを理解し、財前は慌ててその部分のチ
ャックを閉める。
「ホンマ、何考えとるんスかあの先輩ら!」
「なかなかセクシーなデザインになっとるんやな。」
「もー、ホンマありえへん。」
謎の仕様になっている服に文句を言いつつ、財前はボスンと座布団に腰を下ろす。財前は
もちろんのこと、思ってもみないデザインに銀もドキドキしていた。
「とりあえず、小春先輩とユウジ先輩のプレゼントの確認はもうええっスわ。あとは、白
石さん、千歳先輩、ケンヤさんのプレゼントやけど、その前に遠山からもらったクッショ
ンも確認しときますか。」
「せやな。」
大きな袋に入ったクッションを銀と協力しながら取り出す。財前の好きな色を考慮してか、
大きなクッションは派手な赤色であったが、パーティーのときに言っていた通り、そのカ
バーは冷感素材で出来ているようであった。
「色は赤いのに、触ると確かにひんやりしとりますね。」
「ホンマやな。この時期にはなかなかええんちゃうか?」
「そうっスね。遠山、意外とこういうセンスええですよね。」
試しにそのクッションに寄りかかってみるとなかなかに気持ちがよい。大きすぎると思っ
たその大きさも、体を預けるには最適な大きさであった。
「白石さんらのプレゼントもまあまあの大きさあるんスよね。もちろん遠山ほどやないで
すけど。」
「とりあえず、開けてみたらええんちゃうか。」
「そうっスね。」
これもまたネタ的なものだろうなとあまり期待はせずに財前は包みを開ける。少し大きめ
の箱を開けてみると、財前も銀も言葉を失った。
『・・・・・』
箱の中にはいくつかの玩具とトロリとした液体が入ったボトルが入っていた。その玩具は
子どもが遊ぶような玩具ではなく、いわゆる『大人の玩具』と言えるようなものであった。
「うっわあ、ホンマ何考えてんねん、あの人ら。」
「こういうもんの実物見たんは、ワシも初めてやな。」
「そりゃそうでしょ。ていうか、こういうのって18歳以上やないと買えないんやないん
スか。」
「ああ、それで買ったのは白石はんってことなんやな。」
「あー、あの人4月生まれですもんね。いやいや、だからってこんなん誕プレにするって
おかしいでしょ。」
白石、千歳、謙也からのプレゼントに若干引きながら財前は文句を垂れる。しかし、銀も
財前も男子高校生だ。こういうものに全く興味がないかと言われたら、それは嘘になる。
「これとかネーミングやばくないっスか?メス堕ちってそういう漫画でしか見たことない
っスわ。コレも、こんなんつけたら結構痛そうやん。」
「せやけど、それは財前はん結構好きそうやないか?」
「ちょっ、何言うてるんスか!!こんなん・・・」
「はは、冗談や。」
プレゼントされた玩具は、中のイイところをピンポイントで刺激してくれそうな代物と二
つのクリップにコードが繋がりその先には電源を入れるスイッチがついたような玩具であ
った。どちらも見た目だけで、どこにどう使うかだいたい想像がつくようなものであった。
(ホンマにありえんってドン引き出来るくらいの心持ちでおれたらええのに、微妙に使っ
てみたいって気持ちもあるのが腹立つな。せやけど、そんなん言うたら師範に引かれてま
うやろし、変態みたいに思われるのも嫌やな。)
玩具を目の前にして、引いてる気持ちもあるが、どちらかと言えば、使ってみたいという
気持ちの方が大きかった。そんな悶々とした気持ちを抱え、財前は大きな溜め息をつく。
「これをどうするかは置いておいて、ひとまずお風呂の準備でもしよか。」
「そうっスね。一旦ちょっとこの訳分からん気分をリセットしたいっスわ。」
とりあえず全員分のプレゼントの確認が出来たので、もやもやしてそうな財前に銀はそん
な提案をする。財前が頷いたので、銀はお風呂の準備を始めた。
お風呂の準備が整うと、まずは銀が先に入り、その後で財前が入ることにする。財前がシ
ャワーを浴びに行っている間、銀は箱に入ったままの玩具についていた説明書を読んでみ
る。
「ほぅ、こないな使い方するんか。財前はん、散々文句言うとったけど、ホンマはちょっ
と使うてみたいんやろな。まあ、それはきっと言わへんやろうけど。」
付き合いもだいぶ長くなっているので、財前の態度から本当はどんなことを思っているの
かが銀は分かるようになってきていた。それならばと銀はあることを思いつく。少々ドキ
ドキしなから、それぞれの玩具を箱から出し、すぐに使えるように準備をしておく。
「師範、お風呂ありがとうございました。」
「リフレッシュ出来たやろか?ん?結局、そのパジャマ着とるんやな。」
お風呂から上がってきた財前は、小春とユウジからもらったうさ耳のパジャマを身につけ
ていた。
「まあ、デザインはさておき、着心地は気に入ってるんで。」
「その感想、小春はんやユウジはんに伝えたら喜ぶと思うで。」
「言うわけないでしょ。って、師範、何やっとるんスか?」
箱から出され、テーブルに並べられた玩具を見て、財前はドキドキしながら銀に尋ねる。
「いや、どんななのか気になってしもてな。箱から出して確認しとったんや。」
「師範も何だかんだ興味あるんスね。」
「はは、そうかもしれへんな。財前はん、まだ髪濡れてるみたいやな。拭いたるからこっ
ち来ぃや。」
少し離れたところに立っている財前を手招き、銀は財前を自分の膝の上に座らせる。そし
て、首にかけていた手拭いで財前の髪を拭き始めた。
(横にこんなん置いてあるからか、ただ髪拭かれてるだけやのに無駄にドキドキしてまう
な・・・)
「よし、こんなもんでええやろ。」
「ありがとうございます。」
「それにしても、その格好、ホンマに似合うとってかわええな。」
「まあ、師範にそう言ってもらえるんは、素直に嬉しいです。」
銀に可愛いと言われ、財前は嬉しそうにはにかむ。そんな財前を見て、銀はドキっとして
しまう。
「今日は財前はんの誕生日やからホンマに嫌やったら言うてくれてええんやけど・・・」
「はい。」
「白石はん達からもろたコレ、使うてみたいと思うんやがどうやろか?」
「っ!!」
まさかの銀からの提案に、財前の心臓はバクバクと速くなる。正直なところ使ってみたい
という気持ちはある。しかも、銀からの提案なので、自分はただ頷けばいいだけだ。
「えっと・・・あの・・・」
「ホンマに嫌やったら嫌や言うてな。」
本当に嫌だと思っている可能性も無きにしも非ずなので、銀は念を押すようにそう口にす
る。銀が与えてくれたチャンスを財前は無駄にはしなかった。
「・・・師範がそう言うならしゃーないっスわ。使うてもええですよ。」
「おおきに。」
「何で師範がお礼言うんスか。師範がしたい言うなら、ホンマに嫌じゃないんで。」
本当は自分がしたいのを隠しているので、財前はなるべく嫌ではないことを強調しようと
する。くるりと財前の身体を回し、横抱きのような形で腕の中に収めると、銀は服の前面
にあるチャックに手をかける。
「してもええやろか?」
「・・・してください。」
ただ頷くのではなく、自らもして欲しいというニュアンスの言葉で返され、銀の胸はひど
く高鳴る。これから銀に気持ちいいことをしてもらえるという期待感に、財前の胸もキュ
ンキュンしていた。特にパジャマの下にインナーを着ているわけではなかったので、銀が
チャックを下ろすと、少し汗ばんだ素肌と胸の突起がチラリと見える。
「まずはコレを試してみよか。」
胸の突起を弄るための玩具を銀は手にする。平静を装っているが、銀もかなりドキドキし
ていた。銀の言葉に黙って頷き、財前は緊張と興奮から銀の着物をぎゅっと掴む。突起を
挟むためのクリップを指で開き、なるべく痛くないようにと銀はゆっくりそれを挟む。
「んっ・・・」
敏感な突起をそれなりの力で挟まれ、財前はピクっと肩を揺らす。しかし、思っていたよ
りは痛みを感じなかった。
「大丈夫そうやろか?」
「平気っス・・・思ったよりは痛くないですし・・・」
「ほんなら・・・」
もう一つもつけてみようと、さっきとは逆の突起を挟む。やはりそれなりの刺激はあるよ
うで、つけた瞬間、財前の身体はビクッと反応する。
(痛くはないんやけど、両方されると結構アレやな。じわじわ気持ちええというか、ちょ
い焦らされてる感あるいうか・・・)
小さく息を乱しながら、財前はクリップがつけられたそこに視線を落とす。半分くらい隠
れてはいるもののそれはなかなか刺激的な光景で、そこから伝わる快感もあいまって興奮
してきてしまう。そんな財前の様子を確認しつつ、銀は手に持っているスイッチをОNに
する。
ブブブブ・・・
「ひあっ・・・!?」
突然強くなった刺激に財前は思わず声を上げる。
「あっ・・・師範っ・・・あっ・・・ん・・・」
「試しにスイッチ入れてみたんやがどうやろ?痛かったりせぇへんか?」
「痛くはっ・・・ないですけど・・・んんっ・・・」
ビクビクとその身を震わせ、下肢をもじもじさせている財前を見て、気持ちいいんだろう
ということを銀は理解する。先程説明書を簡単に見た限りでは、振動の仕方にはいくつか
の種類があり、電源スイッチの下のボタンで変えられるということだ。それも試してみよ
うと、銀は財前の反応を見つつ、そのボタンを押してみる。
ピッ
「ふあっ・・・」
ピッ
「んん・・・」
ピッ
「んっ・・・・」
ピッ
「うあっ・・・ああっ・・・!!」
種類を変えて数秒間様子を見て、財前好みのパターンを把握する。せっかくならその好き
なパターンで責めてやろうと、そこでパターン変更のボタンを押すのを止める。一番感じ
るパターンで固定され、財前の反応はますますよくなり、その表情はとろけていく。
「あっ・・・んっ・・・師範っ・・・この震え方・・・アカン・・・」
「これが一番好きなんやろ?いろいろ変えてみた中で一番反応よかったで。」
「せやけど・・・コレ、気持ちよすぎて・・・んっ・・ぁ・・・」
「気持ちええんやな。ほんならこうするのはどうやろ?」
自分の腕の中で玩具に与えられる快感に乱れている財前に、銀はちょっとした嗜虐心を覚
える。銀が手にしている電源部分には種類を変えるボタンだけでなく、振動の強さを変え
られるダイヤルがあった。強さとしては今は弱と中の間くらいだ。そのダイヤルを強の方
向へと回してみる。
「ひあっ・・・ああぁっ・・・―――っ!!」
ただでさえ気持ちよくてたまらなかった刺激がさらに大きなものになり、そんな刺激に耐
えられず、財前は達してしまう。達するといっても、直接熱に触れられているわけではな
いので、そこから出るべきものは出ていない。空イキがゆえに刺激を与え続けられれば、
何度でも達してしまう。胸への刺激だけで達する財前に興奮し、銀はそんな財前をもうし
ばらく見ていたくなる。ダイヤルを弱の方に回すことも、スイッチを切ることも、クリッ
プをそこから外すこともせず、銀はただ財前の様子を眺めていた。
「ハァ・・・しは・・んっ・・・あっ・・・ああっ・・・」
「ホンマ気持ちよさそうやなぁ。」
「も・・・アカンです・・・気持ちええの・・・止まらんくてっ・・・あんっ・・・また
・・・・―――っ!!」
ビクビクと大きく腰を揺らし、財前は再び達するような様子を見せる。しばらくそのまま
にしておくと、財前は胸への刺激だけで何度も何度も果てた。そんな財前を十分に堪能す
ると、銀はスイッチをOFFにし、胸の突起からクリップを外してやる。
「んっ・・・ハァ・・・はっ・・・ハァ・・・」
強く長すぎる快感の余韻に財前の呼吸はすっかり乱れている。
「一つ目の玩具の感想はどんなやろ?」
「そんなん聞かんといてくださいよ・・・」
「はは、せやな。メッチャ気持ちよさそうで、こっちまでええ気分になったわ。」
「言っときますけど、俺がメッチャ気持ちよかったんは、単純にコレが気持ちよかったん
やなくて・・・師範が使うてくれてるからなんスからね。」
これはまた嬉しいことを言ってくれると、銀の顔は思わず緩む。一つ目の玩具への反応が
かなりよかったので、銀はもう一つの玩具も使いたくなる。
「財前はん。」
「何スか?」
「今日は財前はんの誕生日やから、もっと財前はんのこと気持ちよくさせてやりたいと思
うんやが。」
銀がわくわくした様子でもう一つの玩具とローションを手にしているのを見て、財前の顔
は真っ赤に染まる。もう一つ使ってしまえば、一つも二つも変わらない。銀の膝から下り、
あまり力の入らない膝で膝立ちをすると、財前は銀に背中を向け、腰の下のチャックを開
く。もともとこういうことをするつもりではいたので、パジャマの下は下着もつけていな
かった。
「ええですよ。今日はもう師範に全部任せるんで。それも使って、俺のことぎょーさん気
持ちよくさせてください。」
開かれたチャックの間から覗く双丘は実に煽情的で、銀の煩悩を刺激するには十分すぎる
光景であった。
「ホンマ、財前はんの誘い文句には敵わんな。」
金太郎からもらったクッションに手をつかせるようにし、銀は玩具と一緒に入っていたロ
ーションを指に垂らして、次に玩具を使うべき場所を慣らし出す。
「んっ・・・師範っ・・・」
「ローション使うてるからか、そこまでキツイ感じはせぇへんな。」
「いつもよりぬるぬるしとって・・・気持ちええです・・・」
「そんならそこまで心配せんでもよさそうやな。せやけど、念のため、多めに使うのがえ
えかもしれへんな。」
「ふあっ・・・そないにぎょーさん入れられたら・・・あっ・・んっ・・・・」
玩具を使うということもあり、銀はいつもよりかなり多めにローションを使う。入口も中
もローションでトロトロにされ、財前はその何とも言えない感覚にふるりと身体を震わせ
る。
「そろそろ入れてみても大丈夫やろか?」
「こないにトロトロにされてたら、大丈夫っスわ・・・ていうか、師範のに比べたら全然
余裕やろうし・・・」
「こっちにもぎょーさんつけておくから、そないに無理なくいけると思うで。」
玩具の側にも十分にローションを絡ませ、しっかり向きを確認して、すっかりトロトロに
なっている財前の中へと挿れる。ある程度の質量があるものの十分に準備してから挿れら
れたため、ほとんど抵抗なく根元まで挿れることが出来た。
「んっ・・・ハァ・・・」
「ちゃんと入ったみたいやな。」
「そうみたいっスね・・・」
「苦しかったり、痛かったりせぇへんか?」
「全然余裕っスわ・・・」
「流石やな。せやけど、ここからが本番やで。」
そう言いながら、銀は手元にあるスイッチを入れる。突如中で動き出したそれに財前は、
ビクッと下肢を震わせる。
「あっ・・・ふあっ・・・」
初めはゆっくりとしたスピードで、財前の中にあるそれは振動する。ゆっくりと中を掻き
回される感覚に財前は腰を揺らす。
(ゆっくり掻き回されてる感じやな。結構気持ちええかも・・・)
金太郎からもらったクッションはひんやりしていて熱くなる体には心地よいのだが、やは
り銀に触れていたいと、体勢を変え、財前は銀の胸にしがみつく。玩具を入れられながら
も甘えるように身体を預けてくる財前に、銀の胸はきゅんきゅんとときめく。
(ほんま可愛らしいな。せっかくやし、こうした方が・・・)
しがみついてくる財前のフードを銀は優しくかぶせる。うさ耳のついたフードをかぶった
財前に上目遣いに見上げられ、銀はその愛らしさに心を奪われる。初めは軽く息を乱し、
うっとりとした表情であったが、中にある玩具の動きが変化し、財前の反応はまた違った
ものに変わっていく。
「ひあっ・・・!?あぁんっ・・・あっ・・・ああっ・・・!!」
「だいぶ音が変わった感じするな。」
「やっ・・・師範っ・・・コレ、アカンかも・・・ああっ・・・」
ゆっくりと振動していたそれは突然その勢いを増し、一番感じる部分をピンポイントで叩
くような刺激も加わる。一気に高まる快感に抗えず、ビクビクと下肢を震わせながら、銀
の着物を掴む手に力がこもる。
「ふああっ・・・ダメっ・・・も・・・イクっ・・・っ!!」
銀の顔を見上げながら、財前は激しめに達する。中への刺激のみのため、やはり空イキの
ような状態だ。そんな状態で、中の玩具は容赦なく財前を絶頂させるためのスイッチを叩
き続ける。
「んんっ・・・やぁっ・・・気持ちええとこ・・・ずっと擦られて・・・んっ・・・くぅ
ぅんっ・・・―――っ!!」
「ホンマ可愛らしくて、いつまでも見てたくなるな。」
「ああっ・・・師範っ・・・あっ・・・ああっ・・・―――っ!!」
中にある玩具を止めなければ、財前はおそらくしばらくは達し続けるだろうと考えた銀は
あることを思いつく。うさ耳のついたフードごと頭を抱えて引き寄せ、甘い悲鳴を上げ続
けている口をその厚めの唇で塞ぐ。銀からの深く甘い口づけに財前の心は蕩けていく。
(こないにずっと気持ちええ状態でキスされたら、もう何も考えられなくなってまう。ホ
ンマ気持ちええ・・・)
ひたすらに気持ちいい状態で、大好きな銀からの口づけ。頭も心も銀のことでいっぱいに
なっている財前は、この気持ちよさが玩具ではなく銀の口づけによって与えられていると
錯覚するのにそれほど時間はかからなかった。
「ハァ・・・し、はん・・・」
「そろそろ玩具で遊ぶのは終わりにしてもええか?」
唇を離し、銀はそんなことを尋ねる。玩具で気持ちよくなっている財前を見るのもよいの
だが、やはり繋がって自分も一緒に気持ちよくなりたいと思ってしまう。そんな銀の問い
かけに財前は蕩けた表情で頷いた。財前の中で動いている玩具を止め、銀はそれをゆっく
りと取り出す。
「んっ・・・あ・・・」
抜かれてもずっと気持ちがよかった余韻が残り、財前はピクンと震える。ちょうど膝の上
に乗っているような状態なので、銀は帯を緩め、着物の前を少し捲り上げるようにして、
既に大きくなっている熱を出す。そして、チャックが開いていることで、服を着たまま丸
出しになっている財前の双丘の中心にそれをあてがった。
「師範・・・」
銀が入ってくる期待感に胸を膨らませ、財前は銀を呼ぶ。財前の腰を支え、ゆっくりと下
ろすと、ローションや玩具ですっかりトロトロになっているそこは、何の苦もなく大きな
銀の熱を受け入れた。
「はっ・・あぁ・・・あんっ・・・・」
「ホンマ今日は・・・いつもよりトロトロでたまらんな。」
挿れた直後からかなり余裕のなさそうな銀の顔を見て、財前は嬉しくなる。そして、今、
自分が思っていることを素直に口にした。
「さっきの玩具もメッチャ気持ちよかったですけど・・・やっぱり、師範のが・・・熱く
て大きくて気持ちよくて・・・好きです・・・」
「そないなこと言われたら、ホンマに余裕なくなってまうで。」
「師範ばっか・・・余裕なの不公平なんで、それでええんです・・・」
「はは、確かにそうやな。」
「師範・・・さっきみたいに、キスしてください・・・」
先程のようにもっと気持ちよくなりたいと、財前は銀の首に腕を回して、甘えるような口
調でねだる。うさ耳フードをかぶった状態でそんなおねだりをされ、銀はどこまでも愛ら
しい財前に夢中になる。
「ええで。もっと一緒に気持ちよくなろうな。」
財前の頼みを聞き、銀は先程と同じように深い口づけを施す。その瞬間、財前の身体はビ
クンと跳ねる。一瞬で一番気持ちのいい状態へと押し上げられ、中にある銀の熱をぎゅう
ぎゅうと締めつける。
「んんっ・・・んん――っ!!」
「―――っ!!」
根元から搾り取られるような財前の内側の動きに銀は図らずも達してしまう。それでも唇
を離すことはせず、もっと深いところで繋がりたいと言わんばかりに銀は果てしない心地
よさの中で財前の舌を捉える。
(大して動いてなくとも、こないにされたら全く堪えられんなぁ。)
(今日はホンマずっと気持ちよすぎてアカン・・・師範にキスされるだけで、イクくらい
気持ちよくなれるって相当やん。)
どちらも身も心も蕩けてしまいそうな快感の中で、お互いの熱を感じ合う。口づけを交わ
している間はずっと達しているような財前に引きずられ、銀も財前の中で何度か果てる。
「ハァ・・・んっ・・・師範・・・」
「財前はんの中・・・ホンマに気持ちよすぎて、何度も出してしまって堪忍な。」
「謝ることないっスわ・・・むしろ、誕生日に師範をぎょーさんもらえて・・・メッチャ
嬉しいと思ってます。」
「ほんなら、最後にもう一度だけ・・・」
そう言いながら、銀は今まで触れていなかった財前の熱に触れ、もう一度キスをする。条
件反射のように財前は達し、熱に触れている銀の手を濡らす。銀に与えられる大きな快感
に財前の内側は大きく反応し、銀が放つ熱い雫を存分に受け取った。
小春とユウジからのプレゼントは汚れてしまったので一旦洗濯に出し、財前は銀に借りた
シャツに着替える。白石達からもらったプレゼントもまた使えるように綺麗に洗い、箱に
しまった。心地よい疲労感を感じながら、財前は金太郎からもらったクッションに寄りか
かり、事を始める前に冷やしておいた小石川からもらったドリンクを飲んでいる。
「何だかんだで、今日もらったプレゼントは全部役に立っとるな。」
「まあ、そうっスね。」
「さっきのは激しい運動するのと変わらんから、小石川はんからもらったドリンクはホン
マに有難いわ。」
「それは同感っス。あと、このクッションも悪くないっスよ。」
「確かに火照った体には、ちょうどええひんやり具合やな。」
先程の雰囲気とは打ってかわって、穏やかな空気が二人の間には流れている。
「師範、一つ頼みがあるんですけど、ええですか?」
「今日は財前はんの誕生日やからな。何でも聞いたるで。」
「師範からもろたプレゼント以外、師範のとこに置いておいて欲しいんです。白石さん達
のはうちに持って帰るなんて出来ないですし、小春先輩やユウジ先輩からのプレゼントも
師範の前以外では着る気ないんで。あと、遠山からのプレゼントは師範の家に置いてあっ
た方がええなあと思て。小石川先輩からのは師範も自由に飲んでええですよ。」
「ワシは全然かまへんで。どうせ一人暮らしやしな。流石に白石はん達からもろたやつは、
少し奥にしまうかもしれへんけど。」
「それはそれでええと思います。何や師範の家に俺の私物が置いてあるの、ちょっと同棲
してる感あってええですね。」
「はは、せやな。いつかは、ホンマにそうなるとええな。」
何気なく放ったお互いの言葉に、銀も財前もドキドキしてしまう。いつかは同じ部屋で一
緒に生活してみたい。それは近い将来叶えたい夢と言えるものであった。
「師範。」
「何や?」
「今日も、俺の誕生日一緒に過ごしてくれて、それからぎょーさん祝ってくれて、ありが
とうございます。師範と一緒におるとホンマに幸せなんで、メッチャええ誕生日っスわ。」
「ワシの方こそ、存分にええ気分を味わえて、この上なくええ一日やったで。おおきにな。」
どちらも幸せで充実した一日だったと笑い合う。大好きな相手と共に過ごすかけがえのな
い時間。それが誕生日という特別な日であればなおさらだ。
「財前はん、ワシからも一つ頼みがあるんやが。」
「何です?」
「この季節ちょっと暑苦しいかもしれへんけど、今日は財前はんをぎゅっとしながら眠り
たい気分なんやが、ええやろか?」
「ええに決まっとるやないですか。大歓迎っスわ。」
「おおきにな。」
銀からの頼みが嬉しくて、財前は他の者には見せないような笑顔で返す。財前の誕生日が
終わるまではまだ時間がある。この心地のよい幸せな時間をもう少し堪能しようと、二人
は楽しげに想いを伝え合った。
END.