U−17のW杯が終わった後、遠野は自宅のある青森に戻っていた。学校から帰った後、
ポストの中に自分宛ての封筒が入っているのを見つける。
「ん?何だぁ?」
自分の部屋に戻り、その封筒を開けて見ると、中には東京行きの新幹線の切符とメモが入
っていた。メモに書かれていたのは君島の名前だ。
(この日に東京に来いってことか?よく分かんねーし、電話してみるか。)
私服に着替えると、遠野は君島にビデオ通話をかける。もしかすると、仕事中で出られな
いかもしれないと思ったが、数度のコールの後、画面に君島が映る。
『もしもし?』
「お、君島、久しぶりだな。」
『ビデオ通話なんて珍しいじゃないですか。どうしたんです?』
遠野からの電話を受け、君島はどこか嬉しそうな声色をしていた。
「お前、俺に新幹線の切符送ってきやがっただろ?コレ、どういうことだか説明しやがれ。」
『ああ、届いたんですね。その日、東京で私のライブがあるんですよ。別に遠野くんにラ
イブに来て欲しいわけではないのですが、ライブ後にどうしても遠野くんに会いたくて。
ホテルも取ってあるので、来てもらえると嬉しいのですが。』
それを聞いて、遠野の顔はパアっと明るくなる。
「この日は普通に休みだから行ってやってもいいぜ!お前から俺に会いたいとか言ってく
るの珍しいしな!」
『ありがとうございます。楽しみにしていますね。』
ビデオ通話のため、どちらも嬉しそうな顔をしているのが伝わる。断られるのを承知で送
ってみたが、遠野が来てくれるということを聞いて、君島の胸は嬉しさで躍っていた。
『では、私はこれから仕事がありますので。』
「おー、またな。」
ビデオ通話を切ると、遠野はウキウキとしながら送られてきた切符を見る。
「確かにこの日は君島のライブの日だな。わざわざ観に行く気はなかったけど、配信のチ
ケットは取ってあったんだよな。つーか、移動時間がもろにライブの時間じゃねーか。」
新幹線の時間を見て、遠野はそう呟く。君島のライブは新幹線の中で見ればいいかと考え、
送られてきた切符を大事に財布の中へしまった。
君島のライブの日当日、遠野は新幹線のホームにいた。新幹線を待っている間に遠野のス
マホに着信がある。マイク付きのイヤホンをつけ、遠野はその電話に出る。今回もビデオ
通話だったため、ボタンを押すと君島の姿が映った。
「よう、そろそろライブの時間じゃねーのか?電話なんかしてる余裕あるのかよ?」
『ええ。ライブ前に遠野くんの声を聞いておきたいと思って。』
「確かに衣装着てるみてぇだしな。随分派手じゃねーか。」
『これくらい派手なのがちょうどいいんですよ。遠野くんは・・・駅のホームですか?』
「ああ、新幹線待ってるところだ。」
『本当に来てくれるんですね。ありがとうございます。』
「ま、俺もお前に直接会いてぇと思ってたからな。」
さらっとそう言う遠野の言葉を聞いて、君島はキュンとしてしまう。このライブが終わっ
たら、遠野に会えるということ考えると、自然に口元が緩んでしまう。
「あ、そろそろ新幹線来るかも。」
『私もそろそろライブが始まります。では、また後で。』
「おう、ライブ頑張れよ。」
遠野からの応援の言葉を聞いて、君島のテンションはかなり上がる。電話を切ると、遠野
は君島に会いに行くための新幹線に乗った。
(まさかライブ前に電話かけてくるとは思わなかったな。君島に会うの楽しみだ。)
ライブ前の君島と話せたのが嬉しくて、遠野はご機嫌な様子で新幹線に乗る。君島が送っ
てきた切符はグリーン車のものだったので、予想よりは空いている状態で座席に座ること
が出来た。
(そろそろだな。)
席に着くと、遠野はスマホで君島のライブの配信をつける。画面はそれほど大きくないが、
派手な演出と耳に響く君島の歌声が心地良く、遠野は集中してその配信を観る。
(やっぱ君島の歌好きだな。仕事だから、あからさまにキミ様な感じなのはちょっと気に
入らねぇけど。)
君島のライブを観ながらだったため、新幹線での長い移動もさして気にならなかった。東
京までもう少しといったタイミングで、君島のライブも佳境を迎える。
(やっぱ、一番盛り上がるとこはこの曲か。)
ライブのラストの曲は『キミとParty Night』であった。コール&レスポンス
が多く、ラストの曲ということもあり、会場はひどく盛り上がっていた。後半のサビのあ
たりで、配信では君島の顔がアップで映る。ほんの一瞬、他の人には分からないレベルで、
君島の表情がキミ様でなく君島本来の表情になったことを遠野は見逃さなかった。そんな
君島を見て、遠野の鼓動はひどく速くなる。
(ライブ中にその顔はずりぃだろ・・・)
ドキドキとする胸を押さえながら、遠野はじっとスマホを見つめる。君島のライブが終わ
り少しすると、遠野の乗っている新幹線は東京駅に到着する。新幹線から降りても遠野の
胸はまだドキドキと高鳴っていた。
ライブを終え、挨拶や片付けを済ますと君島は遠野が待っているはずのホテルへと向かう。
チェックインを済ませ、部屋に向かいながら、君島ははやる気持ちを抑える。
(遠野くん、本当に来てくれているのかな?)
ライブ後はバタバタしていたため、遠野に連絡をすることが出来なかった。そのため、本
当に遠野がここに来ているのか分からない状態であった。部屋の前までやってくると、君
島は大きく深呼吸をした後、部屋の鍵を開ける。
ガチャ
ゆっくりとドアを開くと、部屋のソファでくつろぎながら読書をしている遠野の姿が目に
入る。
「おー、お疲れ。思ったより早かったな。」
「遠野くん。」
読んでいた本を閉じ、遠野は君島に目をやる。目の前に遠野がいることに君島の心は跳ね
る。しかし、そんな気持ちを隠すかのように君島はいつも通りを装って、遠野に話しかけ
た。
「久しぶりですね。」
「そうだな。まあ、電話では結構話してるけどよ。」
「ちょっと荷物を片付けてきますね。」
「おう。」
軽く荷物を片付け、君島は遠野の近くに戻って来る。
「そんなとこに突っ立ってねぇで座れよ。」
「そうですね。」
ドキドキとしながら君島は遠野の隣に腰掛ける。何を話そうか考えていると、遠野の方か
ら口を開く。
「今日のライブ悪くなかったな。」
「えっ!?ライブの時間は新幹線に乗っていたのではないのですか?」
「もともとライブの配信のチケットは買ってたんだよ。新幹線の切符が送られて来る前に。
だから、新幹線で観てた。」
「どうして・・・」
「どうしてって、普通に観たかったからだけどよ。さすがに東京に行くのは面倒だったか
ら、配信チケットにしたけど。」
まさか遠野が自分のライブを観たいと思っているとは思っていなかったので、君島は驚き
つつも嬉しさが込み上げる。
「だったら、ライブのチケットごと送ればよかったですね。」
「別にあの場に行って観たいとは思ってなかったから大丈夫だ。」
「生で観たいとは思わないのですか?」
「だって、お前のライブに来てる連中は『キミ様』のお前が好きなんだろ?俺はそうじゃ
ねぇし。」
「だったら、配信でも観る必要はないのでは?いや、別に観て欲しくないわけじゃないで
すけど。」
まるで遠野には観て欲しくないような言い方になってしまったので、君島は慌てて訂正す
るような言葉を続ける。そんな君島の言葉に遠野は少し照れながら、その理由を口にする。
「・・・お前の歌、結構好きだからな。あと、歌ってる姿も。」
「そ、そうなんですね。」
「そういえば、ラストのキミパ歌ってるとき、一瞬キミ様ではない顔になってたぜ。俺だ
けが知ってる君島の顔になってて、ちょっとドキっとした。まあ、それに気づけるのは俺
だけだけどな!」
「えっ・・・」
それを聞いて、君島はドキっとする。そんな顔になっていることには気づけなかったが、
思い当たる節はあった。
「その歌がラストの歌だったので、このライブが終われば遠野くんに会えると、ちょっと
テンションが上がっていたからかもしれません。」
「何だよ?あの歌歌いながら、俺のこと考えてたのか?」
一番盛り上がる曲を歌っている最中に自分のことを考えていたということを聞いて、遠野
は胸を弾ませながらからかうようなことを言う。
「ええ。遠野くんに会えるのが楽しみだったので。」
予想以上に正直な君島の言葉に遠野の顔は赤く染まる。
(こんなに正直に俺に会いたくてしょうがなかった感じ出されると調子狂うな。合宿のと
きはあんなにうざがってたのに。)
自分だけドキドキしている感じが少し悔しく、遠野はすっと立ち上がり、二人で寝るにも
十分な大きさのベッドに移動する。ベッドに腰掛けると、君島の方を向き、首を傾げて誘
うような言葉を放つ。
「なあ、久しぶりに会ったことだしよ・・・」
(ああ、そんな雰囲気を出されたら我慢出来なくなってしまう。)
「そんなつもりはなかったのですが、遠野くんがそう言うのであれば・・・」
後を追うようにベッドに移動し、遠野の前に立つ。胸を高鳴らせながら、君島はあること
が頭に浮かび、それを口にする。
「遠野くん、今宵、キミはどこまで行きたい?」
キミパの冒頭のセリフと同じであることに気づいて、遠野はふっと笑う。少し考えた後、
それならばと言葉を返す。
「そうだな・・・お前を道連れに地獄に招待してやるよ。」
「地獄?天国の間違いでしょう?」
「どっちでもイキ先は同じだろうけどな。」
どちらも自分の歌の歌詞を模したセリフで会話を交わす。それに気づきながら、どちらも
口元を緩ませ、そういうことをするためにベッドの上に乗り上げた。
ベッドの上で遠野を組み敷きながら、君島は遠野の手をしっかりと握り、甘く熱い口づけ
を施す。舌が絡むたび、遠野はぎゅっと君島の手を強く握る。その感覚が心地良く、君島
もその手を握り返す。
「んぁ・・・んんぅ・・・んっ・・・」
(この感覚、久しぶりだけどたまらないな。遠野くんとのキス、気持ちいい・・・)
口づけの合間にちらりと遠野の様子を確認すると、蕩けたような表情で目を閉じている。
そんな遠野の表情に興奮が高まるのを感じながら、君島は深い口づけを続ける。
(やっぱ、君島とキスしてるとすげぇドキドキする。けど、悪くねぇ気分だ。もっとたく
さんして欲しい・・・)
そんな遠野の気持ちを知ってか知らずか、君島はなかなかその唇を離そうとしない。その
キスがあまりにも気持ちよく、遠野は無意識に脚をもぞもぞと動かす。自分の口づけで感
じてくれていることが嬉しくて、君島はより深く遠野の口の中を探るように舌を動かす。
「あっ・・・んむっ・・・んぁっ・・・」
時折ビクンと身体を震わせる遠野の反応を楽しみながら、君島は遠野との口づけを堪能す
る。もう少し先に進みたいという気分が高まり、君島はやっと唇を離す。
「ハァ・・・」
「ふはぁ・・・ハァ・・・」
名残惜しそうに舌を出しながら呼吸を乱している遠野に、君島の胸は大きく跳ねる。
「ふふ、随分エッチな顔をしていますね。」
「お前だって、ココをこんなにしてるじゃねぇか。」
足を軽く曲げ、遠野は君島の股間にその足を当てる。
「ちょっとやめてもらえます?」
「なあ、せっかく俺もお前もこうなってるし、触り合いっこしてぇ。」
「触り合いっこですか。なかなか可愛らしい言い方してきますね。いいですよ。」
握っていた手を離し、君島は仰向けになっている遠野の腕を引いて座らせる。どちらもズ
ボンと下着を脱ぐと、お互いに触りやすいように向かい合って座る。
「キスだけで、こんなになってんのかよ?」
「それは遠野くんもでしょう?」
そんなことを口にしながら、どちらも相手の熱を握る。そこに触れられた瞬間、言いよ
うもない快感が湧き上がる。
「んっ・・・」
「あっ・・・!!」
相手の反応が悪くないことを確認すると、どちらも本格的に手を動かし出す。
「くっ・・・」
「んあっ・・・ああっ・・・!」
あからさまに大きくなった快感に、思わず声を上げる。どちらも相手の好きな触り方を熟
知しているので、その触り方で手を動かす。
「あぁんっ!!そこっ・・・」
「ハァ・・・遠野くんは本当ココを強く擦られるのが好きですね。」
充血して硬くなっている熱の先端を君島は少し強すぎるくらいの力で擦る。その刺激がた
まらず、遠野はビクビクと腰を震わせる。負けじと遠野も君島の弱いところを絶妙な力加
減で弄るので、君島は甘い吐息を漏らす。
「くっ・・・んんっ・・・!」
「お前も随分気持ちよさそうだな。どんな気分だ?」
「すごく・・・ゾクゾクしますね。遠野くんがとてもやらしい顔で私のモノに触れてくる
ので。」
妖しく口元を緩ませながら君島がそんなことを言ってくるので、遠野の心臓はドキンと跳
ねる。
「なっ!?しょ、しょうがねーだろ!お前の触り方、スゲェ気持ちイイんだからよ。」
「私も遠野くんの触り方、すごく気持ちがよくて大好きですよ。」
お互いの触れ方がこの上なく自分好みだということを伝えると、どちらも相手を気持ちよ
させることに集中する。
「ふあっ・・・あんっ・・・君島っ!!」
「ハァ・・・んっ・・・」
性感が高まると、自然と手の動きが速くなる。強くなる刺激に、どちらも激しく呼吸を乱
し、相手の顔を見る。快感にまみれているその顔は、どちらにとってもひどく胸を高鳴ら
せるものであった。
「んっ・・・遠野くんっ!!」
「ああぁんっ・・・き、君島、そろそろイっちまいそうだ!!」
「私も・・・!!」
「ああぁっ・・・イクっ!!」
「くっ・・・!!」
ビクビクと下肢を震わせ、どちらも熱に触れている相手の手を濡らす。手の平にかかった
雫の熱さにドキドキしながら、遠野はペロリとそれを舐める。
「と、遠野くん・・・」
「久しぶりの君島の味だ。」
手の平の雫を全て舐め取ると、遠野はうっとりとしながらそう呟く。そんな遠野に目を奪
われながら、君島は再度遠野を押し倒す。
「っ!?」
「遠野くんが出したものを使って、ココを慣らしてあげますね。」
ぐっと遠野の足を開かせると、君島は濡れた指で蕾に触れる。数度マッサージするかのよ
うに触れた後、つぷんとその指を中に挿れる。
「あああっ・・・!!」
「思ったよりはすんなり入りましたね。一人でするとき、自分で弄ったりするんですか?」
「ど、どっちだっていいだろ!!」
「それは肯定と捉えておきますね。」
存分に乱れる遠野が見たいと、君島は初めから遠野の一番弱い場所を狙って指を動かす。
「ひあっ・・・あああぁんっ!!」
一番感じる場所をぐりぐりと擦られ、遠野は腰を浮かせてビクビクと痙攣する。
「随分と気持ちよさそうですね。」
「あっ・・・君島っ・・・そこは、ダメだっ・・・!!」
「自分じゃこんなに激しく弄れないでしょう?」
「んああっ・・・ああぁっ・・・!!」
容赦のない君島の責めに、遠野は君島の望み通りに乱れながら絶え間なく喘ぐ。
(気持ちイイとこばっか弄られて、このままだとまたすぐイっちまう!)
「やっ・・・君島っ・・・また、イクっ・・・!!」
遠野がイキそうになっていることに気づき、君島は一旦指を抜く。
「なっ・・・あっ・・・!?」
刺激がなくなってしまえば、当然達することは出来ない。イク直前で弄られるのを止めら
れ、遠野は戸惑うような反応を見せる。
「どうしたんですか?遠野くん。」
分かっていながら、君島は意地悪くそんなことを尋ねる。呼吸を乱しながら黙っていると、
少し落ち着いてきたところで、再びそこに指を挿れられる。
「やっ・・・ああぁんっ!!」
「ふふ、触って欲しかったんですよね?」
「ああ・・・君島ぁ・・・!」
先程と同じようにそこを弄られ、遠野はまたすぐにイキそうになる。しかし、達する直前
で、君島はそこを弄るのを止めてしまう。
「ああっ・・・!!」
「遠野くんのココ、ヒクヒクしていますよ。」
「ハァ、ハァ・・・君島っ・・・も・・・焦らすなぁ・・・」
「焦らされてもどかしそうにしている遠野くん、とても可愛いですよ。」
意地悪な笑みを浮かべて君島はそう言い、更に何度かそれを繰り返す。何度もイキそうに
なりながらもイけない状態に、遠野は涙目になりながら君島に懇願する。
「ああぁっ・・・もぉ、いい加減・・・イかせてくれっ・・・!!」
「そんなにイキたいんですか?」
「イキたいっ・・・君島ぁ・・・」
顔を紅潮させ、呼吸を乱しながら達かせて欲しいと懇願する遠野の姿に、君島はゾクゾク
してしまう。
「仕方ないですね。」
嬉しそうにそう口にすると、君島は自身の熱をヒクヒクと痙攣している遠野の蕾に押し当
て、一気に挿入する。指ではなく君島の大きな熱で中を擦られ、遠野は激しく達する。
「んあ・・・あああぁんっ!!」
下肢をビクビクと痙攣させ、中をぎゅうぎゅうと収縮させながら遠野は果てる。長い時間
焦らされていたこともあり、その絶頂感はなかなか治まらなかった。
「遠野くんの中、ずっとビクビクしていて、とても気持ちイイですよ?」
「ああぁっ・・・あんっ・・・まだイって・・・」
「触れてもいないのに、こんなにたくさん蜜を溢して、すごくやらしいですね。」
遠野の下腹を濡らす蜜を指で掬い、君島はそれを舐める。少し落ち着きつつも、小さく下
肢を震わせながら、遠野は熱い吐息を漏らす。
「ハァ、ハァ・・・ハァ・・・」
「久しぶりですが、だいぶ具合はよさそうですね。動いても大丈夫ですか?」
「ああ・・・」
まだ気持ちいい感じは残っているが、動かれる分には大丈夫だろうと、遠野は君島の言葉
に頷く。しかし、いざ動かれると、予想以上の快感に遠野は甘い悲鳴を上げる。
「やあっ・・・ああぁんっ!!」
「そんなによさそうに喘がれると、嬉しくなりますね。」
「あんっ・・・君島っ・・・君島の、気持ちいい!!ああぁんっ!!」
「私としては、奥のこのあたりを突くのが気持ちいいんですけど、遠野くんはどうです?」
「ああぁっ・・・そこ、気持ちいいっ・・・!!」
いいところを突けば、中がいい具合に締まるので、君島は口元を緩ませる。自分が気持ち
いい感じに動くことで、遠野はそれ以上に感じているような反応を見せる。それが嬉しく
て、君島はたっぷりの愛情を込めて、遠野の中を穿つ。
「んあっ・・・ハァ・・・んあぁんっ!!」
「ハァ・・・遠野くんと繋がっているところ、蕩けそうなほど気持ちいいです。」
高揚した様子で、ひどく気持ちよさそうな表情の君島を見て、遠野の胸はキュンキュンと
ときめく。
「ん・・・君島ぁ・・・」
「どうしたんです?」
「好きぃ・・・」
蕩けるような表情でそう口にする遠野の言葉を聞いて、遠野の中にある君島の熱はビクン
と反応する。
(ああ、たまらない・・・)
ぐっと腰を進めながら、遠野の顔の横に手をつき、君島は遠野の耳元で囁く。
「私も遠野くんのこと、大好きです。」
いつもより低く甘い声で囁かれ、遠野はゾクゾクと内側から湧き上がる快感に身体を震わ
せる。
(あっ・・・イクっ・・・)
「君島っ・・・んあっ・・・あああぁんっ!!」
「くっ・・・遠野くんっ!!」
身体だけでなく、心も繋がり合うような絶頂感にどちらも極上の心地良さを感じて果てる。
しばらくふわふわとした余韻を味わった後、二人はお互いの身体をぎゅっと抱きしめ、甘
い甘い口づけを交わした。
軽くシャワーを浴び、汗を流して部屋に戻ると、遠野はあることを呟く。
「腹減ったな。」
「確かにそうですね。ルームサービスでも頼みましょうか。」
激しめの運動をしたため、遠野も君島も空腹を感じていた。ルームサービスのメニューを
手に取ると、君島は遠野と一緒にそれを見る。
「うわ、ルームサービスってメチャクチャ高いな。」
「まあ、わりといいホテルですからね。ホテル代も食事代もこちら持ちなので、気にせず
好きなものを頼んでいいですよ。」
ルームサービスメニューの値段の高さに驚きつつ、遠野は食べたいものを選ぶ。
「君島、デザートにアップルパイも頼んでいいか?」
「構いませんよ。」
「じゃあ、これとこれにする。飲み物はこれで。」
「分かりました。」
食べたいものを選び注文すると、程なくして注文したものが部屋へと運ばれてくる。
「お、これすげぇ美味いな!」
「それはよかったです。」
運ばれてきた料理を口に運ぶと、遠野はご機嫌な様子でそんな感想を口にする。君島も紅
茶を飲みながら、頼んだ料理をゆっくりと食べる。料理を食べ終えると、遠野はデザート
として頼んだアップルパイを食べ始める。アップルパイを口に入れると、遠野の顔は自然
とほころぶ。
「美味しいですか?」
「おう!」
本当に美味しそうに食べているので、そんな遠野を見ながらふっと微笑む。君島の視線に
気づき、遠野は思っていることを口にする。
「君島、今日はありがとな。」
「何の話です?」
「新幹線の切符送ってくれて、こんな豪華なホテルに泊まらせてくれて、こんなに美味い
飯も食わせてくれて。あと、お前に直接会えて、さっきみたいなこと出来て嬉しかったし。」
「遠野くん・・・」
非常に素直に感謝の言葉を述べる遠野に、君島の胸はひどくときめく。
「でも、遠野くんの都合も聞かずに勝手に送って、交渉なしに無理矢理頼んだようなもの
ですよ?」
「そうだとしても、俺は嬉しかったから。それでいいんだよ。」
そんなことを言われたら、より好きになってしまうと、君島は顔を赤くして眉をひそめる。
そして、遠野に対してさらに我儘を言いたくなってしまう。
「だったら・・・」
「ん?何だよ?」
「明日も東京に残ってまた一緒に泊まってください。ただ私は明日も仕事なので、会える
のは今日のように夜になってしまいますが。こんな我儘さすがに聞けないですよね。」
ちょっと試すような口調で君島はそんなことを言う。君島の言葉にポカンとする遠野であ
ったが、すぐに笑顔になって頷く。
「別にいいぜ。」
「えっ!?本当ですか?」
「こっちに来れることなんて、滅多にないしな。君島が仕事の間は、服買いに行くか、鈴
ヶ森や小塚原に行ってみるぜ。」
「鈴ヶ森や小塚原は昔の処刑場の跡地でしたっけ?」
「よく知ってるじゃねぇか。」
「遠野くんが行きたいデートスポットとして書いていたのを見たので、少し調べてみたん
ですよ。とてもデートスポットとは、思えないような場所ですけどね。」
まさか君島がそんなことを調べているとは思っていなかったので、遠野は驚きつつも嬉し
くなる。
「何だぁ?君島もやっと処刑に興味が出てきやがったか?」
「いえ、全く。ですが、遠野くんのことはもっと理解したいと思ってるので、時間が許す
なら今度一緒に行ってあげてもいいですよ。」
「本当か!?」
今日一嬉しそうな顔で、遠野は聞き返す。
「ええ。いつになるかは分かりませんが、近々ということで。」
「それなら、鈴ヶ森と小塚原に行くのはやめだ。せっかくなら、君島と一緒に行きてぇか
らな!」
「随分と嬉しそうですね。」
「そりゃ、君島と一番行きたいデートスポットに行けるんだからな!嬉しくないわけねー
だろ。」
「そうですか。」
うきうきとした様子の遠野を見て、君島も何だか嬉しくなる。
「んー、そしたら、明日は君島の広告探しでもするか。」
「何ですか?それは。」
先程とは全く異なる予定を口にする遠野に、君島は思わず聞き返す。
「越知が東京に住んでるだろ?東京の街を歩いてるとお前の広告があるからって、写真に
撮って送ってきやがるんだよ。青森はあんまりねぇから、実物見てみてぇと思って。」
「越知くんと遠野くん、そんなやりとりをしてるんですか。」
「まあな。ほら、こんな感じだ。」
越知が送ってきた写真のフォルダを遠野は君島に見せる。そこにはかなりたくさんの君島
の写真が表示されていた。
「こんなにたくさん・・・」
「東京にしか出てない広告が多いから、助かってるぜ。」
そのフォルダを見返しながら、遠野はそんなことを言う。
「助かるって、どういう意味ですか?」
「好きな奴の写真、たくさんあったら嬉しいだろ。」
さも当然のようにそう答える遠野に、君島はニヤけてしまいそうになるのを必死で抑える。
仕事モードの自分を遠野はあまり好きだと思っていないと認識していたので、それを聞い
てどうしようもなく嬉しくなってしまったのだ。
「それなら、明日は私の広告見つけられるといいですね。」
「おう。まあ、見つけられなくても、夜にはお前本人に会うからいいけどな。」
ニッと笑いながら遠野は言う。遠野のことが嫌いだという気持ちが薄れると、遠野の言葉
や態度がこんなにも嬉しく感じるのかと、君島は自身の認識の変化に驚く。
「遠野くん。」
「何だ?」
「ありがとうございます。」
「フッ、お前がそんなこと言ってくるなんて珍しいじゃねぇか。」
「今日も明日も私の我儘に付き合ってくれること、とても嬉しいと思っていますよ。」
「別に嫌々付き合ってるわけじゃねぇから、礼なんていらねぇよ。もし、そう思ってるん
だったら、一緒にいられる今夜と明日の夜、存分に楽しもうぜ。」
「そうですね。」
合宿所にいたときと違って、常に一緒にいることは出来ない。だからこそ、一緒に過ごせ
るこの時間を存分に楽しもうと、二人はくすっと笑い合った。
END.