満つるは潮と想いと熱と

浜辺から少し離れた岩の洞窟。海へと繋がっているそこで、一日の仕事を終えた鬼蜘蛛丸
は、足を海水に浸し、くつろいでいた。
「はあー、気持ちいいなあ。」
ここは鬼蜘蛛丸にとって秘密の憩いの場所で、この場所を知っているのは、鬼蜘蛛丸以外
では義丸くらいであった。
「やっぱり、ここに居たんだな。」
「義丸。」
ゆっくりとくつろいでいる鬼蜘蛛丸のもとに、小舟に乗った義丸がやってきた。
「見張りの時間が終わったから、鬼蜘蛛丸と少し話したいと思って。」
「お疲れさん。お前も座れよ。」
「ああ。」
鬼蜘蛛丸と話したいというよりは、一緒に居たいという方が正直な気持ちだ。鬼蜘蛛丸の
隣に腰掛け、義丸はあることに気づく。膝から下を海に浸しているため、鬼蜘蛛丸は袴を
穿いていない。目の前に晒されている鬼蜘蛛丸の生足に義丸は思わず生唾を飲み込む。
(これは、反則だろう・・・)
鬼蜘蛛丸の生足にムラっとしてしまった義丸は、鬼蜘蛛丸の肩を抱き、空いている方の手
でさらけ出されている内腿を撫でる。
「ひゃっ!!な、何だよ!?」
「何か、鬼蜘蛛丸の生足見てたらムラっときて。」
「何、ふざけたこと言って・・・ふあっ!!」
「したい。鬼蜘蛛丸。」
もう一度内腿を撫でられながら、耳元で妖しく囁かれ、鬼蜘蛛丸はぞくぞくと身を震わせ
る。
「ちょっ・・・義丸、やめ・・・っ・・・」
「一回だけでいいから。」
「んっ・・・やだっ・・・」
「鬼蜘蛛丸。」
口では嫌がっていても、体は正直で義丸の行動にいちいち反応してしまう。耳を食まれ、
足を撫でられ、鬼蜘蛛丸の顔は赤く染まり、呼吸は次第に乱れてくる。
(あー、ヤバイ・・・また、流される・・・)
「そろそろ観念しろよ。」
「う・・・」
「やらせて、鬼蜘蛛丸。」
「・・・・一回、だけだからなっ・・・」
義丸のちょっかいに耐えられなくなり、鬼蜘蛛丸は結局許してしまう。許しがもらえたな
らと、義丸はいったん海の中に入り、鬼蜘蛛丸の足をぐいっと開く。
「わっ・・・ちょ・・・」
「コレ、邪魔だな。外すぞ。」
「やっ・・・ヨシっ・・・・」
鬼蜘蛛丸の言葉に耳を貸さず、義丸は鬼蜘蛛丸の褌を脱がしてしまう。先程の愛撫で鬼蜘
蛛丸の熱の中心は既に勃ち上がっている。そんな熱の塊を義丸は躊躇いもせずに、パクン
と口に含んだ。
「ひ・・あっ・・・ちょっ・・・義丸、いきなりそこって・・・」
「好きだろ?ココをこうされるの。」
「あっ・・ぅ・・・そんなこと・・・」
「口では否定してても、身体は正直だぞ?ほら。」
根元まで咥え、ぢゅっと吸ってやると、鬼蜘蛛丸の身体はビクンと跳ねる。鬼蜘蛛丸の弱
いところを完璧に熟知している義丸は、自分が持っているテクニックを存分に駆使して、
鬼蜘蛛丸を追いつめていった。
「んあっ・・・あ・・・あんっ・・・ひぅっ・・・!」
(やっぱりこの声、たまらないなあ・・・)
「んんっ・・・よ、ヨシっ・・・あっ・・・はぁ・・・・」
義丸の髪を掴み、鬼蜘蛛丸は艶めいた声を洞窟内に響かせる。そんな鬼蜘蛛丸の声に酔い
しれながら、義丸はじっくり鬼蜘蛛丸の熱を味わう。義丸のテクニックにすっかりメロメ
ロになっている鬼蜘蛛丸は、程なくして限界を迎える。
「あっ・・・もう・・・あっ・・・ああっ・・・・」
限界を告げる鬼蜘蛛丸の言葉を聞いて、義丸は一際強く熱の先端を吸ってやった。そんな
刺激を与えられ、鬼蜘蛛丸は義丸の口内に熱い飛沫を放った。
「あっ・・・ああぁ――っ!!」
ドクンドクンと口の中に放たれるミルクを義丸は喉を鳴らして飲み込む。一滴も残さずそ
れを飲み込むと、義丸は鬼蜘蛛丸の熱から口を離し、ペロッと唇を舐めた。そんな義丸の
一連の行動に、鬼蜘蛛丸の鼓動はひどく速くなる。
(信じらんねぇ・・・)
乱れた呼吸を整えながら義丸の様子をうかがっていると、ふとした瞬間に目が合う。お互
いの視線がぶつかると、義丸はニヤリと笑って尋ねる。
「気持ちよかったか?」
あまりにも率直な質問に、鬼蜘蛛丸の顔はかあっと赤く染まる。
「そ、そんなこと・・・聞かなくても分かるだろっ!!」
恥ずかしがりながら、そんなことを言う鬼蜘蛛丸の耳元で、義丸は低く妖しさたっぷりの
声で囁く。
「鬼蜘蛛丸の口から、鬼蜘蛛丸の言葉で聞きたいんだよ。」
頭の奥が痺れるような声で囁かれ、鬼蜘蛛丸は言わないわけにはいかなくなってしまう。
恥ずかしさゆえに義丸から顔を背けながら、鬼蜘蛛丸は義丸の質問に正直に答えた。
「す、好きな奴に・・・あんなことされたら、気持ちいいに決まってるだろっ!!」
予想以上の鬼蜘蛛丸の言葉に、義丸はひどく興奮する。それならば、もっと気持ちよくさ
せてあげようと、再び鬼蜘蛛丸の足の間に顔を埋める。
「だったら、もっと気持ちいいことしてやるよ。」
そう言いながら、義丸は鬼蜘蛛丸の後ろの蕾に舌を這わせる。色々な意味でこれはヤバイ
と、鬼蜘蛛丸は先程よりもっと大きな抵抗を見せた。
「ひっ・・・やだっ、義丸っ・・・そこはダメだっ!!」
「どうして?」
「き、汚いし・・・は、恥ずかしい・・・・」
「汚くない。海の味しかしないし。それに、ちゃんと慣らした方が後々楽だぞ?」
「あっ・・・ダメっ、やだっ・・・ああっ・・・」
鬼蜘蛛丸が嫌がるのもお構いなしに、義丸は舌と指を使ってじっくりとその蕾をほぐして
ゆく。ある程度ほぐされると、鬼蜘蛛丸はその何とも言えない気持ちよさに意識を持って
いかれてしまう。
「んっ・・・あっ・・・ふ・・ぅ・・・」
(どうしよう・・・すごい気持ちいい・・・このままじゃ・・・)
「ヨシっ・・・も・・・やめっ・・・」
「嫌だよ。せっかくこんなに柔らかくなってきたんだから。」
「ひあぁっ・・・やっ・・・ああっ!!」
口を離して、ほぐれてきた蕾を指で広げると、鬼蜘蛛丸はビクンとその身を震わせて、甲
高い悲鳴にも似た声を上げる。なかなかイイ声を聞かせてくれると、義丸はさらに深い部
分をその指と舌で責めた。
「そ、そんな・・・奥っ・・・いやっ・・・あっ・・・」
(ああ、ダメだ・・・こんなの、もう耐えられないっ・・・)
「やっ・・・ヨシっ・・・ひあっ・・・ああぁ――っ!!」
どんなに鬼蜘蛛丸がイヤイヤと首を振っても、義丸は全くやめようとしない。感じやすい
内側をこれでもかというほど弄られ、鬼蜘蛛丸はきゅうきゅうと義丸の指と舌を締めつけ
ながら、達してしまった。
「はっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
鬼蜘蛛丸の放った雫は義丸の顔を白く汚した。そんな白い蜜を指で拭いながら、義丸はそ
れを口へと運ぶ。
「舌、食いちぎられるかと思った。」
「だから・・・ダメだって言ったのに・・・」
「別に痛いわけじゃないし、顔にかけられたのも全然気にしてないから。」
「俺が気にする!!全くお前って奴は・・・本当に人の言うこと聞かないんだから。」
そんなふうにぼやきながら、鬼蜘蛛丸は義丸の顔についた雫をペロペロと舐め始める。ま
さかこんなことをしてもらえるとは思っていなかったので、義丸はドキンと胸を高鳴らせ
た。
「お、鬼蜘蛛丸?」
「まずっ・・・お前、よくこんなの平気で飲み込めるよな。」
「鬼蜘蛛丸のものだったら何でも欲しいんだよ。」
「・・・またお前はそういう恥ずかしいことを。」
「でも、本当に思ってることだぞ。」
いちいち恥ずかしいことを言ってくる義丸に呆れながらも、鬼蜘蛛丸の胸はひどくときめ
いていた。鬼蜘蛛丸が義丸の顔を綺麗にし終わると、義丸はぐいっと鬼蜘蛛丸の足を開き、
自身を入れようと準備する。しかし、鬼蜘蛛丸はそれをあえて止めた。
「ちょっと待った、義丸。」
「何だよ?ここまで来て、ダメだって言ってもやめないからな。」
「別にやめさせようとは思ってない。とりあえず、場所交換だ。」
よく分からないが、義丸は素直に鬼蜘蛛丸の言うことを聞き、海に足を浸けるような形で
岩の縁に座る。そんな義丸の足を跨ぎ、鬼蜘蛛丸は義丸の首に腕を回した。そして、恥ず
かしそうに笑いながら、これからすることを義丸に告げる。
「今度は俺が、お前を気持ちよくさせる番だ。」
「えっ?」
次の瞬間、義丸の熱は鬼蜘蛛丸の熱い壁に包まれていた。鬼蜘蛛丸自ら、義丸のそれに腰
を落としたのだ。あまりに大胆な行動をしてくる鬼蜘蛛丸に、義丸はひどくドキドキしな
がらも、余裕のない態度は決して見せなかった。
「あっ・・・んっ・・・んん・・・」
「随分大胆なことしてくれるな。でも、これじゃあ俺は動けないぞ?」
「いいんだ・・・俺が動くんだから・・・・」
義丸の熱の熱さに息を乱しながら、鬼蜘蛛丸はそう口にする。その言葉の通り、鬼蜘蛛丸
は自ら腰を揺らし、義丸のそれに大きな刺激を与える。そんな鬼蜘蛛丸の動きに、義丸は
完全に翻弄されていた。
「ハァ・・・鬼蜘蛛丸・・・」
「ちゃんと・・・気持ちいいか・・・?義丸・・・」
「ああ。この世のものとは思えないくらい・・・」
「はは、それは褒めすぎだろ・・・」
「でも、本当気持ちいい・・・・」
「あっ・・・んっ・・・そりゃ、よかった・・・・」
時折見せる快感にとろけた鬼蜘蛛丸の表情に、義丸の心はすっかり鬼蜘蛛丸の虜になる。
自分も何かをしてあげなければと、義丸が鬼蜘蛛丸の熱に手を伸ばそうとすると、鬼蜘蛛
丸は怒鳴るようにして、それを止めた。
「触るなっ・・・!!」
「えっ・・・?」
「そこは・・・ダメだっ・・・本当に触らないでくれ・・・・」
「どうして?」
あまりにも鬼蜘蛛丸が必死なので、義丸は出しかけた手をピタリと止める。しかし、何故
そこまで触れるのを拒絶するのかは分からない。その理由を聞きたいと、義丸はそう尋ね
た。
「そこに触れられたら・・・すぐに達っちまう・・・俺は・・・義丸と・・・一緒に達き
たい・・・」
潤んだ瞳でそんなことを言われ、義丸の熱はもう爆発寸前であった。鬼蜘蛛丸の唇に深く
口づけると、義丸はふっと笑って伸ばしかけていた手を鬼蜘蛛丸の腰に添えた。
「そんなこと言われたら、全然余裕なくなっちまう。」
「だって・・・」
「俺も手伝う。だから、一緒に達こう。」
腰をしっかり捉えると、義丸は鬼蜘蛛丸の身体を揺らす。そんな刺激に満ちてきた波の刺
激も加わり、二人の熱はあっという間に限界近くまで高まってゆく。
「ああっ・・・ヨシっ・・・ふあっ・・ああぁ・・・・」
「ハァ・・・くっ・・・鬼蜘蛛丸っ・・・・」
「んっ・・あっ・・・も・・・義丸っ・・・義丸っ・・・ああっ・・・!」
「鬼蜘蛛丸っ!!」
「ひあっ・・・ああぁ―――っ!!」
お互いの名を紡ぎ、お互いの体を強く抱きしめながら、二人は同時に達する。全てがとろ
けてしまいそうな甘い絶頂の余韻に浸りながら、二人はお互いの熱の心地よさにしばらく
その身を委ねていた。

事が終わると、二人は肩を貸し合ってそのまま眠ってしまった。辺りには波の音だけが響
き、二人を心地よい夢の世界へと誘っていった。それから数時間、いつの間にか夜は明け、
二人の眠る洞窟内に朝日が差し込む。
「う・・・まぶしっ・・・・」
朝日の眩しさに義丸は目を覚ます。ゆっくりと目を開けると、目の前にはキラキラとオレ
ンジ色に輝く水面が広がっていた。
「起きたか?義丸。」
幻想的な景色に目を奪われていると、ふいに声をかけられる。
「鬼蜘蛛丸。もう起きてたのか。」
「ああ。一晩中、海水に浸かってた所為か、すごく体が軽くて気分がいいんだよな。だか
ら、少し早めに目が覚めちまった。」
「さすがだな。」
あんなことをしたにも関わらず、海に浸かっていたからという理由で、とても元気な鬼蜘
蛛丸を見て、義丸は感心してしまう。義丸も目を覚ましたしということで、鬼蜘蛛丸は脱
ぎ捨ててある褌や袴をしっかりと身につけ、ぐしゃぐしゃになっている髪をまとめ直す。
身支度が全て整うと、鬼蜘蛛丸は義丸の乗ってきた小舟にひょいっと飛び乗った。
「ほら、そろそろ浜に帰るぞ。義丸。」
ご機嫌な様子で鬼蜘蛛丸はそう声をかける。そんな鬼蜘蛛丸につられて、義丸も何だかと
てもよい気分になる。笑顔でその言葉に頷くと、義丸も鬼蜘蛛丸の乗る小舟に飛び乗った。
「浜までは、お前が漕げよ?」
「分かった。任せろ。」
小舟に腰を下ろすと、義丸は櫂を握り、鬼蜘蛛丸はそんな義丸に指示を出す。義丸が舟を
漕ぎ出し、浜に向かって舟が進み始めると、鬼蜘蛛丸はしばらく穏やかな海の様子を眺め
ていた。
「なあ、義丸。」
「何だ?」
「たまには、昨日の夜みたいなのも悪くないな。」
何気なく呟くように口にした鬼蜘蛛丸の言葉に義丸の心臓はドキンと跳ねる。恥ずかしい
ことを言っていると分かっているのか、鬼蜘蛛丸の頬は朝日の所為ではなく、ほのかに赤
く染まり、それを悟られないかのように視線は海へと向けたままだった。
「鬼蜘蛛丸・・・」
「で、でも、本当に時々するならってことだからな!!そんなしょっちゅうしてやろうと
か思うんじゃないぞ!!」
「ああ。分かってるって。」
恥ずかしがってか、そんな言葉を続ける鬼蜘蛛丸に、義丸の顔はひどく緩む。本当に可愛
い人だなあと思いながら、義丸はいつもよりゆっくり舟を漕ぐのであった。

                                 END.

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