夏休みの思い出

夏休みも終わりに近づいた頃、たくさんの花火を持って甲斐と平古場は夜の浜辺に来てい
た。夏休みの最後の思い出を作ろうということで、二人で花火をしようということになっ
たのだ。
「裕次郎ー、早く来いよ!!」
「ちょっと待てって。」
「だってよー、早く花火したいじゃん。こんなにいっぱいあるんやし。」
早く花火がしたくてたまらないと、平古場は甲斐のだいぶ前を歩く。その後を甲斐が半分
以上の花火を持って追って行く。花火をするのにいい場所を見つけると、平古場はそこに
持っていた花火を置いた。
「このへんでいいんじゃねぇ?」
「そーだな。」
平古場に追いついた甲斐もその場に花火を置く。バケツに水を汲み、ローソクに火をつけ
ると、二人は花火の袋を開け始めた。
「まずは手持ちからやるか。」
「おう!やっぱり、一本ずつじゃつまんないからまとめてやんなきゃじゃね?」
「あー、分かる分かる。いくつかまとめてやるとかなり面白いよな!」
一本ずつつけるのはつまらないと、二人は何本かまとめて花火に火をつけ、両手いっぱい
に花火を持つ。いくつもの鮮やかな火花が二人の周りを明るく照らし、真っ暗な浜辺を照
らし出す。
「おー、すっげぇ。この花火全部色が違うぜ。」
「本当だな。綺麗じゃん。」
「でも、ちょっと熱いな。ちょっと手滑らせたら、手の方に火がきそうだし。」
「まあ、こんだけいっぺんにやったらしょうがねーだろ。」
手に火がかからないように注意しながら、二人は次々と花火に火をつけてゆく。二人だけ
でやっているにも関わらず、花火は次々になくなっていった。
「もう後これだけしかないぜ。」
「意外と早く終わっちゃうもんだな。」
「でも、まだ、打ち上げ系か残ってるし、今度はそっちメインでやろうぜ。」
「そうだな。あっ、手持ちの最後の一本、凛がやってもいいぜ。」
いつの間にか、手持ち花火は残り一本になっていた。甲斐はそれを平古場に譲る。それを
素直に受け取り、平古場は火をつける。赤い火花が噴き出し、辺りが赤く染まった。赤い
光に照らされた平古場に、甲斐は目を奪われ、じっと見入ってしまう。
「どした?裕次郎。」
「へっ?」
「花火じゃなくて、俺の顔ばっか見てるからよ。」
「い、いや、綺麗だなあと思って・・・・」
「俺の顔が?」
今の会話の流れ的にそういうことかなあと思い、平古場は冗談っぽくそんな言葉を返して
みせる。すると、甲斐の顔がぼっと赤く染まった。
「えっと・・・あっ・・・」
「な、何でそんな赤くなるんだよ!?」
思ってもみない反応に平古場も赤くなってしまう。花火の火が消え、辺りは真っ暗闇にな
り、シンと静かになる。しばらく沈黙があった後、甲斐がきゅっと平古場の手を握った。
「っ!!」
「凛・・・」
いきなり手を握られ、平古場はドキッとしてしまう。手を握ったまま、甲斐は平古場の顔
をじっと見つめる。熱い視線を受け、平古場も甲斐から目が離せなくなってしまう。どち
らの鼓動もいつもより何倍も速くリズムを刻んでいた。胸の高鳴りが最高潮に達したとき、
甲斐は平古場の腕を引っ張り、自分の方へ抱き寄せた。
「わっ・・・」
甲斐の腕に包まれ、平古場は固まってしまう。力強く抱きしめられ、壊れてしまうのでは
ないかと思うほど、心臓の鼓動が速くなる。
「ゆ、裕次郎・・・?」
「ゴメンな、凛。でも、体が勝手に・・・」
「何で謝るば?」
「えっ・・・?」
「別に、俺、嫌だなんて一言も言ってないし。」
恥ずかしがりながらも平古場は、ゆっくり甲斐の背中に腕を回し、ぎゅっと服を掴む。そ
んな平古場の行動に、甲斐はより魅せられる。
「凛・・・キスしていい?」
「・・・勝手にすればいいだろ。」
トゲトゲしい言葉ではあるが、平古場にとっては精一杯の同意の言葉であった。抱きしめ
る腕を緩め、甲斐は平古場の顔を正面に捉える。そして、自分の顔を傾けると優しく平古
場に唇に口づけた。ほんの数秒の短い時間であったが、どちらにとってもその時間は何倍
も長く感じられた。唇を離すと、平古場は恥ずかしさから甲斐の肩に顔を押し付ける。
「凛?」
「あー、ヤバイ。すっげぇ恥ずかしー。」
「凛は本当可愛いな。」
「だってよー、好きな奴にキスされたら、そりゃ恥ずかしいだろー?」
好きな奴ときっぱり言われ、甲斐はドキッとしつつも、嬉しさで胸がいっぱいになる。こ
こまで言われてしまったら、走り出した気持ちはもう止まらない。がしっと平古場の肩を
掴み、甲斐は切羽詰ったような口調で、自分の想いを伝える。
「凛っ!!」
「な、何だよ?裕次郎。」
「キスだけじゃなくて、もっといろんなこと、凛としたい!」
「えっ!?な、何言ってるば!?」
「俺、凛のこと超好きだからっ!」
思ってもみない力で肩を掴まれているのと、甲斐の言葉を聞いて動揺してしまった平古場
は砂の窪みに足を取られ、倒れてしまう。当然のことながら、甲斐も平古場に引きづられ
るように倒れてしまった。
『うわっ!!』
砂の上に倒れた二人は、まるで甲斐が平古場を押し倒したかのような状態になっている。
偶然とはいえ、こんなことになれば、どちらもそういうことを意識してしまう。
「だ、大丈夫か?凛。」
「お、おう・・・」
触れ合ってしまいそうなほど近い距離にお互いの顔がある。甲斐は平古場の髪にそっと触
れると、そのまま唇を重ねた。もっとたくさん平古場を感じたいと、甲斐は先程よりも長
く深い口づけを施す。
「ん・・・んぅ・・・」
驚くような反応をする平古場だが、嫌がるような素振りは見せない。素直に甲斐の口づけ
を受け入れ、おずおずと舌を絡めようとする。
(ヤバイ、これじゃマジで止まらなくなりそうやし・・・)
平古場の舌の熱さにうっとりしながら、甲斐はそんなことを思う。十分すぎるほど、平古
場の舌を味わうと甲斐はゆっくりと唇を離した。
「はぁ・・・」
「ハァ・・・裕次郎ぉ・・・」
潤んだ瞳で甲斐の顔を見上げながら、平古場は甲斐の名前を呟く。その表情と声に甲斐は
完璧にやられた。もうどうにでもなれと、平古場の服の前を開き、露わになった肌に噛み
付くように口づける。
「ふあっ・・・!?」
「ゴメン、凛。もうマジで止まんねぇ。」
「ちょっと、待っ・・・あっ!!」
胸の突起を吸われ、平古場は自分でも驚くほど高い声を上げる。その声に驚き、必死で声
を押し殺そうとするが、甲斐の唇が肌に直接触れるたびに堪えきれずに漏れてしまう。
「あっ・・・やぁ・・・裕次郎っ・・・」
恥ずかしさと全身が疼くような快感で、平古場の目からはポロポロと涙がこぼれる。それ
を見て、甲斐は優しく声をかける。
「泣くなよ、凛。」
「だって、だって・・・」
「俺は別に凛をいじめてるわけじゃないんだぜ。」
「そんなこと、分かってるけどさぁ・・・・」
「そんなに嫌か?」
「・・・・・・」
嫌かと言われれば、そうでもない。ただ今までに感じたことない感覚のために、いつもの
自分でいられなくなるような感じが少し怖いのだ。平古場は甲斐の服をぎゅっと掴み、首
を横に振った。
「嫌じゃない・・・」
「本当か?本当に嫌だったらやめ・・・」
「嫌じゃないって言ってるだろ!!」
自分も甲斐のことがこんなに好きなのに、嫌がっていると思われるのは嫌だと、平古場は
少し怒ったような口調でそうきっぱりと言い放った。
「凛・・・」
「俺だって、裕次郎のこと好きなんだからな!!裕次郎にされて嫌なことなんて、一つも
ない!!」
恥ずかしがりながらもハッキリとそう言う平古場を甲斐は心の底から愛しいと思う。ニッ
コリと笑って、甲斐は平古場の頭を撫でた。
「嬉しいぜ、凛。それだったら、続けさせてもらうけど、本当に嫌だったらちゃんと言え
よ?」
「絶対嫌なんて言わないし。」
「はは、そういう意地っ張りなところも大好きだぜ。」
愛情を込めて平古場の頬にキスをすると、甲斐は先程の続きをし始めた。

しばらく胸の突起を指で弄っていると、平古場はもぞもぞと足を動かし始める。それに気
づいた甲斐はそちらの方に目を移した。
「ふーん。」
「な、何だよ・・・?」
「凛、ここ弄られて気持ちいいんだ。」
あからさまに反応している部分を見られ、平古場はかあっと顔を赤く染める。そんな反応
が可愛いと、甲斐は胸を弄っていた手を下の方へと持っていってみる。ズボンの上から少
し触れただけで、平古場はビクンと体を震わせた。
「あっ・・・!!」
「ココ、感じる?」
「ひぅっ・・あんっ・・・やだぁ・・・」
布越しに擦られる感覚に、平古場はその刺激から逃れようと腰を動かす。しかし、甲斐の
手からは逃げられない。何度か擦られているうちに平古場の熱は完全に形を変えた。
「ハァ・・・あっ・・・」
「もうきつきつじゃん。かわいそーだから出してやるな。」
「やっ・・・裕次郎っ!!」
平古場の言葉を無視して、甲斐はズボンのジッパーに手をかけ、平古場の熱を外に出した。
恥ずかしさに耐えきれず、平古場は顔を両手で覆う。
「凛の・・・すっげぇ熱い。」
平古場の熱を直接感じようと、甲斐は掌でその熱の塊を包む。そして、そのまま上下に手
を動かし始めた。
「うあっ・・・あっ・・・!」
直接一番感じるところに触れられ、平古場はビクビクと身を震わせる。自分でするときと
は全く違う感覚に驚きつつも、確かな快感を感じていた。
(何だよコレ!?すげぇ気持ちイイし・・・)
「あっ・・あぅ・・・ゆう・・じろぉ・・・」
息を乱しつつ、甲斐の名前を呼ぶ。ここまでよい反応が見れるとは思っていなかったので、
甲斐もドキドキしてきてしまう。いつも自分がしているように手を動かしてやれば、平古
場の反応はより顕著なものになった。
「ああっ・・・はぁっ・・・んんっ!!」
「凛、気持ちイイ?」
「ハァ・・・気持ちイイ・・・裕次郎の手ぇ・・・すっげぇ気持ちイイよぉ・・・」
平古場のそんな言葉を聞いて、甲斐は身体の奥から何か熱いものが湧き上がってくるのを
感じる。
(凛のイクとこ、超見たい。)
そう思った瞬間、手の動きが自然と速くなった。急に激しくなった刺激に平古場は過敏に
反応し、限界に向かって快感が高まってゆく。
「あっ・・あんっ・・・裕次郎っ・・・あ・・ああっ!!」
「凛・・・」
「も・・・ダメっ・・・ゆうじろ・・・出ちゃ・・・あっ・・・」
「いいぜ、出せよ凛。」
「あっ・・・ああ―――っ!!」
魚のように身体が跳ねたかと思うと、平古場は甲斐の手にたっぷり白い蜜を放った。達す
る瞬間の平古場は、信じられないほど艶やかで、甲斐をより夢中にさせる。平古場の蜜で
ベタベタになった手を眺めながら、甲斐はとある衝動に駆られる。
「凛。」
「ハァ・・・何?」
「あのな・・・」
「うん。」
「俺のをな・・・凛の中に入れたいんだけど・・・」
自分の腕の中で乱れる平古場を見ていた甲斐は、平古場と繋がりたいという衝動を抑えら
れなくなっていた。そんな甲斐の言葉を聞いて、少し困ったような顔をする平古場だった
が、自分ばかり気持ちよくなるのも不公平だと思い、甲斐の要求を承諾した。
「ちょっと怖いけど・・・裕次郎だったらいいぜ。」
「本当か!?」
「その代わり、痛くすんなよ。」
「分かってるさぁ。ちゃんと慣らしてから入れるから。」
邪魔なズボンや下着は完全に取り去ってしまい、甲斐は先程より少し平古場の足を広げる。
そして、まだしっかり閉じたままの下の口に平古場の出した蜜を十分に塗りつけた後、ゆ
っくりと指を挿し入れる。
「ひぁっ・・・」
「痛くねぇ?大丈夫?」
「んっ・・・大丈夫っ・・・」
濡れた指でゆっくりと入り口と中を掻き回す。少し指が動くだけで、平古場は今までにな
く高い声を上げる。
「はぁっ・・・あんっ・・・あっ・・ひぅ・・・・」
「なあ、凛。」
「何・・・?」
「もしかして、コッチも気持ちよく感じてたりしてる?」
図星を指され、恥ずかしくなる平古場だが、事実は事実だ。思ったより痛くないことに自
分自身もビックリしているが、気持ちよく感じるのは悪いことではない。甲斐の問いかけ
に平古場は小さく頷いた。
「それなら安心だ。も少し慣らすけど、その方がいいよな?」
痛がられていないのは好都合だと、甲斐はよりそこがほぐれるようにじっくりと指で蕾を
慣らす。もう十分だろうと思うほど慣らすと、甲斐は指を抜き、自分のズボンのジッパー
に手をかけた。
「・・・・何で裕次郎の、もうそんなにでかくなってるんだよ?」
「仕方ないだろー。凛があんまりにも可愛い反応ばっか、見せてくるからさー。」
「でも、そんなの入るかぁ?」
「大丈夫だって。凛なら全然余裕余裕。」
「どーいう意味だよ、それ?」
「俺が凛のこと、すっげぇ気持ちよくさせてやるってことだよ。」
ちゅっと平古場の唇にキスをすると、甲斐は自分の楔を平古場の入り口に押し当てた。そ
の瞬間、平古場がビクッと震えたが、そんな不安をかき消すかのように、甲斐は平古場の
身体をぎゅっと抱きしめる。
「行くぜ、凛・・・」
甲斐の言葉に平古場は頷く。次の瞬間、蕾が押し開かれるような感覚と共に、甲斐が中に
入ってきた。指とは比べ物にならないほどの、圧迫感と異物感。しかし、平古場にとって
はそれが甲斐自身であると思うだけで、少しも苦痛だとは感じられなかった。
「んんっ・・・はあぁっ・・・!!」
「くっ・・・ちょっとキツいけど、それはそれでイイ感じかも。」
「あっ・・・裕次郎っ・・・あっ・・ああ・・・」
平古場に負担をかけないようにと、甲斐はゆっくりと腰を進めてゆく。根元まで平古場の
中に楔を埋め込むと、甲斐はいったんその状態で留まろうとする。
「ハァ・・・全部、入ったぜ。」
「あっ・・・すご・・・裕次郎が俺ん中に入ってる・・・」
「もう少しこのままでいていいか?」
「うん・・・」
平古場のそこが完全に甲斐の熱があることに慣れるまで、甲斐はそのまま動かずにいた。
しかし、ある程度その状況に慣れてしまうと、もっと大きな刺激が欲しいという欲求がど
ちらの心にも芽生えてくる。
「あのさ・・・凛・・・」
「ハァ・・・何・・・?」
「そろそろ動いてもへーきか?」
「・・・俺もそうして欲しいって思ってたトコ。」
同じようなことを考えていたことを嬉しく思い、甲斐はゆっくりと中にある楔を抜くよう
な動きをする。
「ああ・・・」
入り口のギリギリのところまで引き抜くと、全部が抜けきってしまう前に再び奥に突き入
れる。
「ひゃ・・あんっ!!」
「わっ・・・すげぇ締まる・・・」
「ゆ、ゆうじろぉ・・・今のもっかいして・・・?」
思ってもみない平古場からのおねだりに甲斐はドキっとしてしまう。そんなことを言われ
てしまったら、もう止められないと甲斐は何度も何度も平古場の中を熱い熱の棒で掻き回
した。
「あっ・・・んはっ・・・ああっ・・・あぁっ!!」
「凛の中・・・メチャクチャ気持ちイイぜ・・・」
「俺も・・・裕次郎の・・・すげぇよくて・・・・あっ・・ん・・・」
「凛、可愛い・・・」
そう呟きながら平古場の唇にキスをし、平古場の限界寸前まで高まった熱をきゅっと握っ
た。そして、それを優しく擦ってやると、平古場はさらによい反応を示す。
「あっ・・・ダメっ・・裕次郎・・・・」
「何で?こっちも触った方が気持ちイイだろ?」
「そこ・・・触られたら・・・・すぐ・・イっちゃ・・・」
「大丈夫さぁ。俺ももう限界だし・・・」
平古場よりは余裕のあるフリをしていたが、甲斐も実はもう限界であった。少し大きく腰
をグラインドさせると同時に、平古場のミルクを全て絞り出すかのように手を動かす。後
ろと前にダイレクトに刺激を与えられて、平古場はあっという間に快楽の高みへと突き上
げられる。
「ああっ・・・ああぁ―――っ!!」
「・・・っ・・・凛っ!!」
平古場は達している間、きゅうきゅうと甲斐の熱を絞り上げ、甲斐のミルクを一心に自分
の中へと取り込もうとする。身体の中が甲斐で満たされてゆく感覚。それが半端なく気持
ちよく、長い絶頂感に浸る。甲斐も平古場の全てが自分を受け止めてくれている感覚に果
てしない快感を感じながら、熱い想いを残らず平古場の中に注いだ。

ある程度の始末が終わると、残っていた打ち上げ花火に甲斐が次々と火をつけてゆく。次
から次へと空に向かって飛んでゆく花火を平古場は心地よい気だるさの中で見上げていた。
「凛、次は10連発だぜ!!」
「おー、そりゃすげぇな。」
「これな、こうやると面白いんだぜ。」
ニッと笑って、甲斐は手に打ち上げ花火の筒を持ったままそれに火をつけた。
「危ないぜー、裕次郎。」
「大丈夫だって。」
甲斐の持った筒からは、まるで鉄砲のように打ち上げ花火が連続して飛び出す。もちろん
花火も綺麗だと思ったが、平古場の目は花火よりも楽しげに笑う甲斐を捉えていた。そん
な甲斐を眺めていると、手持ち打ち上げ花火をしたくなってくる。まだだるい体でゆっく
り立ち上がり、平古場は甲斐のもとまで歩いて行く。
「俺にもやらせて。」
「ああ、いいぜ。でも、ちゃんと持ってないと危ないから気をつけろよ。」
「じゃあ、裕次郎も一緒に持てよ。」
悪戯に笑いながら平古場はそんなことを言う。その笑顔を見て、甲斐は平古場がどうして
欲しいか完全に把握した。花火を持つ平古場の手に自分の手を重ね、しっかりと握る。
「んじゃ、火つけるぜ。」
「おう。」
導火線に点火すると、パンッという衝撃とともに花火が筒の先から飛び出す。本当に鉄砲
を撃っているような衝撃に平古場はわくわくする。
「うわあ、これ、マジ面白いなぁ。」
「だろ?まあ、手に持つなって書いてあるのにやるから、結構危ないっちゃ、危ないんだ
けどな。」
「もっかいやろーぜ、裕次郎。」
「えっ?」
平古場はもちろん花火のことを言っているのだが、一瞬だけ甲斐は違うことを考えてしま
った。少し動揺している甲斐を見て、平古場は甲斐が何を考えたのかを見破ってしまう。
「今、全然違うこと考えただろー?」
「べ、別にそんなことないぜ!」
「嘘つけー。顔、赤くなってるぜ。」
「しょうがないだろー。凛とするのすっげぇ気持ちよかったし、凛がメチャメチャ可愛か
ったんだからさぁ。」
「今日はもう無理だって。でも、あれはまたやっていいかなあって俺も思うぜ。」
「本当か!?」
「まあな。俺も気持ちよかったし。」
恥ずかしそうに笑いながら、平古場はそんな言葉を返す。そんな笑顔に甲斐はもうメロメ
ロだ。
「凛〜vv」
「わっ、いきなり抱きつくな!!」
「俺、凛のこと本当に本当に大好きだぜ!!この海に誓って!!」
「な、何恥ずかしいこと言ってるば!?」
「だって、本当のことやし。凛は?」
自分はどうなのかと聞かれ、平古場は黙ってしまう。しかし、甲斐が大好きで仕方がない
のは事実だ。真っ赤になって甲斐の方を振り返りながら、口を開く。
「俺だって・・・裕次郎のこと、大好きなんだからな!」
「知ってる♪」
「だったら、聞くな!!」
「だって、凛の口から聞きたかったんだからしょうがないじゃん。」
「ったく〜、ほら、残りの花火終わらすぞ!!」
照れ隠しに平古場は怒ったような口調でそんなことを言うが、本当は甲斐の言葉が嬉しく
て仕方なかった。しばらくじゃれあった後、二人は残っていた全ての花火をやりつくす。
夏休みの最後の思い出。この浜辺であった出来事は、今年の夏休みの他のどんな思い出よ
りも二人の心に深く刻まれるのあった。

                                END.

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