OASIS 〜Keigo’s Birthday〜

古代エジプトチックな格好になった二人は広いダブルベッドの上に座る。これからお楽し
みの始まりだ。
「そういや、俺もおもしろい香を買ってきたんだが、焚いてみるか?」
「香?どんな?」
「なんかそういうときに焚くといいらしいみたいな。」
「何でそんなもん買ってきてんだよ・・・?」
そんなもの買ってくるなと呆れる宍戸だが、全く興味がないわけではない。まあ、ちょっ
と試すくらいならいいだろと跡部にその香をつけさせた。三角形の香の先に火をつけると
なんともいえない香りがあたりに広がる。かなり匂いは強いが嫌な匂いではない。
「結構匂い強いな。」
「ああ。でも、俺はこの匂いどちらかといえば好きだぜ。」
「まあ、俺も嫌いじゃないけどさ。」
まだ慣れない所為かその香りが少々気になる。が、いちいち気にしていてもしょうがない
ので、跡部は早速始めることにした。
「じゃあ、始めるか。」
「お、おう。」
率直に言う跡部とは対照的に宍戸は少し緊張気味。自分で撒いた種ではあるが、やはりこ
うなると緊張してしまう。しかも、エジプシャン・スタイルのために跡部は既に半裸だ。
ドキドキしてしまうのも無理はないだろう。
「そんなに緊張しなくてもいいだろ?」
「べ、別に緊張なんてしてねぇよ!!」
「嘘つけ。表情が固いぜ。」
そう言いながら、跡部は宍戸の顔に手をやり軽く撫でる。そして、軽く顎を下げてやると
その少し開いた唇にしっかりと口づけた。宍戸は急にそんなことをされ、一瞬、跡部を押
し返そうとも思ったがもう遅い。跡部のキスの上手さにすっかり酔わされていた。
「ん・・・ぁ・・ん・・・・」
角度を変え、何度もキスを繰り返す。もう表情は固いとかそんな問題ではない。あまりに
心地のよい口づけにその顔はすっかりとろけていた。
「ふ・・はぁ・・・」
「お前はやっぱ、そういう顔の方がいいぜ。さっきみたいに緊張してる顔じゃなくてよ。」
「そうかよ。」
恥ずかしいとは思うが、否定は出来ない。あんなキスをされたらもうどうにでもなれと感
じてしまうのも仕方ないことであろう。
「さてと、問題はこのあとだな。俺様の服はいいとして、お前の服だいぶ長いんだよな。」
「ああ、確かに。じゃあ、脱ぐか?」
「いや、それは勿体ねぇ。そうだな・・・・」
そう言うと跡部はホテルに備え付けられている引き出しからハサミを出した。そして、と
ころどころに切り込みを入れ、バランスよく破ってゆく。
「お、おい、これ借り物だぞ!!」
「あーん?買い取りゃいいだろ。もとは売り物なんだから。」
「だからって・・・・」
だからって、ここまでしなくていいだろと宍戸はうつむく。肩の部分や腰の部分、そして
くるぶしまである襞の部分はめくりやすいそうにビリビリに破られた。何だか無理やりそ
うされたような感じになり、宍戸は羞恥心から顔を真っ赤にする。
「これ、ヤバくねぇ?」
「別に。メチャクチャ俺好みになった。」
「・・・変態。」
「変態で結構。それじゃあ、ここからが本番だぜ。」
ここまで来たら、もう宍戸が主導権を握ることは出来ないであろう。向かい合わせだった
座る位置を変え、跡部は宍戸の後ろに回りこむ。そして、破れた服の間から右手を入れ、
宍戸の身体を探り始めた。
「ひゃっ・・・お前の手、冷たてぇよ。」
「あーん?そのうち温かくなるだろ。」
「てか、どっから手入れてんだよ・・・?」
「どこからでもいいだろ。それより何だ。まだ、何にもしてねぇのにお前のココ、たって
きてるぜ?」
そう言いながら、跡部は外からは見えない宍戸の胸の飾りをぎゅっと抓んだ。思った以上
に強く抓まれ、宍戸は思わず声を上げる。
「いっ・・・ぁ・・・」
「その様子だと、痛いというより気持ちイイの方が大きいらしいな。」
「そ、そんなことねぇっ!!痛ぇよ、離せ!!」
「本当か?」
もう一度跡部は同じ場所を抓む。さきほどと同じくらいの強さでだ。しかし、宍戸の口か
ら漏れたのはさっきとは少し違う甘ったるい声だった。
「やっ・・・ぁん・・・」
「痛いときにはそんな声上げねぇだろ?」
「う〜、お前最悪。」
涙目になって、宍戸は跡部を睨む。こんなことに反応してしまう自分の身体がもどかしい。
しかし、嫌ではないのだ。表面上では嫌がる素振りを見せていても心の内では、次は何を
されるのかとドキドキしながら期待している。
「さて、次はどこをしてやろうか?」
「わっ・・・ちょっ、景吾、そんな中で手動かすなっ!!」
「何だよ?こんなのにも感じてんのか?」
「違っ・・・テメェの触り方がやらしいんだろ!?」
いちいちすることに文句を言ってくる宍戸がおもしろいと次から次へと跡部は焦らすよう
な刺激を与える。表向き、文句ばっかりを言い、余裕を見せている宍戸だが、確実に追い
詰められてきている。それは、跡部が自分の一番熱くなっている部分に触れたときに爆発
した。
「・・・・っ!?」
普段ならちょっと触れられたくらいでは、まだ何とか他のところにも頭が回るし、文句を
言う余裕がある。しかし、今回はそうではない。軽く跡部の指先が触れた瞬間、声も出な
いほどの快感が身体の中を一気に駆け抜けた。さすがにこれはヤバイと身を捩って、跡部
にいったん止めてくれと訴える。
「まっ・・・景吾っ・・・ここはダメだっ!!」
「どうした?まだ指先だけしか触ってないぜ。」
「とにかく今はヤバイんだ!!もう少し落ち着いてから・・・・ぅあっ!!」
いつもの抵抗と同じようなものだろうと思い、跡部は宍戸の言葉を全く無視していつも通
りの愛撫を始める。当然、さっきの感覚は宍戸から抜けていない。むしろ、あからさまに
触られることによって、さらにその異常なほどの快感は増幅された。
「あっ・・・やぁっ・・・ダメぇ・・・」
いつもの反応とは違うことに跡部は気がつく。しかし、その反応は跡部にとっては嬉しい
ものであり、手を止めるという理由には全くならない。さらに追い詰めてやろうと跡部は
そのままバックにも手を出し始めた。
「・・・っ!?・・・あっ・・・景吾っ!!」
その瞬間、あっという間に宍戸は達してしまう。いつもより早いと感じるがこれもありだ
と、跡部は手を休めることをしなかった。宍戸の身体は落ち着く暇がない。いったんやめ
ろと頼むが、跡部は全く聞く耳を持たなかった。
「ちょっ・・・待て・・・ふっ・・・あ・・・・」
「今日は随分早ぇーな。どうした?そんなに俺にされるのがイイのか?」
「違っ・・う・・・俺、絶対変だって・・・」
「こういう状況では別に変じゃねぇだろ。」
「何か・・・いつもより、無駄に感じちまうんだよ。」
「いいことじゃねぇか。ふっ、ここ探ってても分かるぜ。お前が感じてんのは。」
「んっ・・・くぅ・・・だから、少しは休ませろっての!!」
「そんなにいい反応見せられて、やめるわけねぇだろ。」
宍戸はかなり必死なのだが、それがまた跡部を楽しませている。しばらく、断続的にそん
な快感を無理やり味わされた宍戸は今度は逆の思考回路が働く。
「はぁ・・・もう・・・いいだろ・・・」
「何がだ?」
「・・・・・お前の・・・れてくれよ・・・・」
「聞こえないぜ。」
当然、ここまで言葉があれば宍戸が何が言いたいか理解できるのだが、跡部はあえて分か
らないふりをする。宍戸だって、跡部が理解しているのは分かっている。しかし、跡部は
言わないとしてくれないのだ。
「お前のを・・・俺ん中に・・・入れろ・・・」
「恥ずかしいやつだな。」
「ウルセー・・・さっさとしろ!!」
「はいはい。」
宍戸がこういうことを言ってくるのは、相当切羽詰っているときなので、このあともまだ
まだ楽しめると跡部はやらしい笑みを浮かべながら、宍戸をいったん押し倒し、足を抱え
た。そして、ゆっくりと自分自身を挿入してゆく。
「うっ・・・あっ・・・あぁ・・・」
「お前、すっげぇやらしい格好してるぜ。」
「テメェが・・・させてんだろっ・・・」
「でも、それ着てきたのはお前自身だぜ?」
「るせー・・・もう、さっさと動けよっ!!」
ここまで率直に言うのも珍しいなあと思いながらも跡部は、リクエスト通りに動いてやっ
た。そうすると宍戸は強く跡部にしがみつき、甘い声を上げる。相当、気持ちがいいらし
い。そんな宍戸の表情を見て、当然跡部も興奮する。
「あっ・・・あ・・・けい・・ごっ・・・」
「今日のお前、積極的でいいぜ。その顔も態度も全部がいつもよりいい。」
「そりゃよかったな・・・今日はお前の誕生日なんだし・・・」
「ああ、そういやそうだったな。ふっ、さてと、もうそろそろ本気だしていくかね。」
そう言いながら、跡部は攻め方をさっきよりも少し激しくする。それに便乗するように宍
戸の反応も大きくなった。
「あっ・・ぅあ・・・け・・いご・・・も・・ダメ・・・」
「そうだな・・・っ、俺も結構ヤベェ・・・」
どちらも限界を感じる。次の瞬間、一瞬時間が止まったかのように二人は声を失い、思考
も全て停止した。体中の熱を全て相手に移すような感覚にとらわれながら、二人は達する。
しばらく息を乱したまま、身体を重ねているとどちらともなくお互いの顔を見た。
「ハァ・・・なんかよかったな。」
「ああ。でも・・・」
「うん。俺もたぶん同じこと考えてる。」
『足りないよな?』
同時に発した言葉はこんなこと。確かによかったが、まだ何かもの足りない。というわけ
で二人は気の済むまで身体を重ね続けた。二人がそろってこんなことを思う原因は一つ。
そう枕元に焚いたあの香の所為なのだ。

「ありえねぇ・・・」
服はすっかり汚れてしまったので、今は真っ裸の状態でベッドに座っている。宍戸がこん
なことを呟く理由は、さきほどまでのこと。結局、あの香が消えるまで二人は行為を続け
てしまったのだ。数に直したら、6、7回といったところだろう。
「ああ、今日は随分たくさん出来たな。」
「絶対、絶対おかしいって!!だって、7回も・・・・」
かあっと真っ赤になって、宍戸は布団に顔をつっぷした。普段ならそんなにやる前に足腰
立たなくなってしまうのだが、今日はまだ余裕がある。いくらなんでもやりすぎだろと思
いつつ、すごくよかったと思ってしまう。
「まあ、たまにはいいじゃねぇか。今、そんなに体キツくはねぇだろ?」
「うん・・・。」
恥ずかしがっている宍戸は可愛くて、まるで猫みたいだ。跡部はその可愛さに我慢ならな
くなって、ぎゅうっと宍戸を抱きしめた。
「何だよ?」
「別に。何となくだ。」
特に意味もなしに跡部は宍戸の頭を撫で、髪にキスをする。それが心地よくて宍戸は甘え
るように体を預けて目を閉じた。
「なあ、こんな話知ってるか?」
「ん?何?」
「昔、人間は二人で一つでそれは果てしなく強大な力を持っていた。それゆえ、神に挑戦
しようと考えた。当然神はそれを未然に防いだわけだが、そのために二人で一つだった体
は二つに切り離される。それ以来、人はその片割れを求めるって話だ。」
「知らねぇ。初めて聞いたぜそんな話。」
「お前は俺の片割れかもしれねぇな。」
穏やかに微笑みながら、跡部はそんなことを言う。普段は見れないような表情に宍戸はド
キっとした。
「もう一度一つになるために、片割れ同士は出会い、求め合う。完全ではないとしても一
つになることに近づければ、それだけ幸せを感じる。俺達ってそんな感じじゃねぇ?」
「なんか・・・難しいけど、そうかもしれねぇな。」
跡部の言っていることは少々難しくて完璧には理解出来ないがなんとなく言っている意味
は分かる。片割れかあと宍戸は跡部の顔をじっと見上げた。
「確かに跡部が片割れだったらすげぇ強そうだな。」
「だろ?さぁてと、今日は気が済むまで出来たし、もうそろそろ休むか。」
「そうだな。なあ、跡部。」
「何だ?」
「今年はこんなすげぇとこ連れてきてくれてサンキューな。メチャクチャ楽しかったぜ。」
「俺もお前と来れてよかった。最高の誕生日だぜ。」
そう言って跡部は宍戸の額にキスをする。そして、ベッドに横になり、目を閉じた。もう
すぐ跡部の誕生日も終わる。お互いの誕生日を挟んだ、一週間のエジプト旅行。それは忘
れ得ぬ、どちらにとっても最高の誕生日になるのであった。

                                END.

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