お出かけバレンタイン
〜Valentine & WhiteDay〜(跡宍)

跡部×宍戸

跡部Side

バレンタイン当日、跡部は宍戸に呼び出され、人気のない通学路にやってくる。
「用件も言わずに俺様を呼び出すとは、いい度胸じゃねーの。」
「仕方ねーだろ!用件言うと、何つーかその・・・」
バレンタインに用件など一つしかない。もちろん、それが何か跡部は分かっていた。
「言われなくてもわかってるがな。チョコレートだろ。」
「ま、まあ、間違ってはねぇな。・・・受け取ってもらえるか?」
おずおずと宍戸はチョコレートを差し出す。いつもとは少し雰囲気の違う宍戸に跡部は思
わず口元を緩ませる。
「もちろん受け取らせてもらう。ありがとうよ。」
差し出したチョコレートを受け取ってもらえ、宍戸はホッとしたような顔になる。
「でも、渡すだけなら学校でも良かったんじゃねーか。」
「渡せるわけねーだろ。生徒会室も部室も跡部にチョコあげたい女子でいっぱいだったじ
ゃねーか。」
跡部にバレンタインチョコを渡したい女子は数えきれないほどいる。それ故、宍戸は学校
で渡すのは諦めざるをえなかった。
「今日は生徒会室も部室も近寄れなかった?ああ・・・バレンタインだからな。」
「いつ渡せるかタイミング計ってたら、こんな時間になっちまった。」
「それは悪いことをした。ある意味そいつは俺のせいだろう。」
跡部に謝られ、別に謝って欲しかったわけではないと宍戸は戸惑う。
「べ、別に謝ることではねーけどよ。」
「そうだな、手間をかけさせた詫びに・・・。お前、このあと時間あるか?」
「えっ?」
「せっかく外に出たんだ。どこか行きたい場所があれば、つき合ってやる。」
思ってもみない跡部からの提案に宍戸は驚きつつも、嬉しそうな顔になる。
「いいのかよ?」
「チョコレートを受け取るだけ受け取って、ハイ終わりじゃ勿体ないしな。」
「勿体ない?」
跡部らしくない言葉に宍戸は首を傾げて聞き返す。少し口が滑ったとばかりに跡部は言葉
を続けた。
「・・・勿体ないというのは、言葉のあやだ。で、どうする。」
「そうだなぁ・・・」
「ドリンクぐらいはご馳走するぜ。」
(跡部とファミレスっつーのもちょっと違う気がするし・・・ちょっと遠いけど・・・)
「そしたら、大通りのカフェでもいいか?」
電車で行く距離になってしまうが、宍戸は大通りのカフェに行きたいと提案した。
「ここからだと電車だな。うちの車を呼んでも構わないが・・・」
「いや、さすがに車呼んでもらうのは悪いからよ、電車で行こうぜ。」
「電車でいい?なら行くか。」
電車には乗り慣れてはいないものの、宍戸がそうしたいならと跡部はそう返す。大通りの
カフェに向かうため、二人はまずは駅へと向かった。

大通りのある駅で降りカフェに向かったものの、目当てのカフェは非常に混んでおり、二
人はカフェに入るのを諦めることにした。
「目当てのカフェが混んでたのは、残念だったな。」
「せっかく誘ってくれたのに悪いな。別の場所にしとけばよかったぜ。」
申し訳なさそうにしている宍戸を見て、跡部は気にするなといったニュアンスの言葉をか
ける。
「お前のせいじゃねーだろ。ただの散歩というのも悪くねー。」
「そうかよ。まあ、俺もお前と一緒に散歩するのは悪くねーと思うけどな。」
とりあえず、この後のことは散歩をしながら考えようと二人は大通りを歩く。白い息を吐
く宍戸を見て、少しでも温まるようなことをしたいと考える。
「そこのスタンドで温かい飲み物でも買うか。鼻の頭が赤いぜ。」
「マジか。激ダサじゃねーか。」
「寒いから仕方ねーだろ。ほら、行くぞ。」
跡部に指摘され、宍戸は鼻の頭を手で隠す。飲み物が売っているスタンドがすぐそばにあ
るので、二人はそこで温かい飲み物を買うことにした。

「跡部は何買う?」
「そうだな。紅茶もいいが、たまには違うの飲み物もありだな。」
ドリンクスタンドには、ホットの紅茶やコーヒーだけでなく、少し変わった飲み物もいく
つか売っていた。二人はメニュー表を見ながら、どれにするかを考える。
「俺はホットジンジャーにしようかな。温まりそうだし。」
「いいんじゃねーの?それなら俺はホットレモネードにするか。」
「お、それも良さそうだな。後でちょっと味見させてくれよ。」
「構わないぜ。」
それぞれ頼みたい飲み物が決まると注文を行う。温かいその飲み物を受け取ると、スタン
ドのすぐ目の前にあるベンチに腰掛け、受け取った飲み物を口にする。
「はあー、ちょっとピリッとするけどかなり温まるぜ。」
「ああ、悪くねーな。さっき味見したいって言ってたし、飲んでみるか?」
「おう!んじゃ、ちょっとだけもらうぜ。」
「どうだ?」
宍戸が味見をしたいと言っていたので、跡部は自分の頼んだホットレモネードを宍戸に飲
ませる。レモンの酸味と穏やかな甘さが口の中に広がり、宍戸はほうっと息を吐く。
「これも美味いな。あ、跡部も俺の味見してみるか?」
「そうだな。せっかくだし、一口もらうぜ。」
自分だけもらうのは申し訳ないと、自分が飲んでいるホットジンジャーを跡部に渡す。ピ
リリとした刺激と体の内側から温まりそうな風味が跡部の舌を楽しませる。
「結構イケるだろ?」
「ああ、確かに体が温まりそうな味だな。」
跡部のその言葉を聞き、宍戸はふっと笑みを浮かべる。バレンタインの放課後に、こんな
ふうに跡部と過ごせていることが何だかとても幸せだと、胸の中が温かくなる気がしてい
た。
「随分顔が緩んでいるが、どうした?」
「いや、別に大したことじゃねーんだけどよ・・・跡部とこうやって放課後出かけて、一
緒に温かいドリンク飲んでるのが、なんかちょっと嬉しくてよ。」
「フッ、随分可愛いこと言うじゃねーか。」
「笑うな!」
跡部に笑われ、思わずそう返すが、別にそれが嫌だとは思っていなかった。
「まあ、俺も同じ気持ちだからな。顔が緩んじまうのも分かるぜ。」
「そうなのか?」
跡部の意外な言葉に、宍戸は思わず聞き返す。『同じ気持ち』という言葉に小さく胸がと
きめくのを感じる。そんな宍戸の言葉に答えるように、跡部は言葉を続けた。
「好きな奴からバレンタインのチョコもらって、こうして一緒に過ごせて、そいつが幸せ
そうな顔してんだ。そりゃ、いい気分にもなるだろ。」
「なっ・・・!」
自分のことをハッキリと『好きな奴』と言われ、宍戸の顔は赤く染まる。そんな宍戸の反
応を跡部は見逃すはずがなかった。
「顔真っ赤だぜ。さっきよりもだいぶ温まったんじゃねーの?」
「う、うるせー!これは、その・・・ドリンクのせいだからな!」
「はは、そういうことにしといてやるよ。」
恥ずかしさと嬉しさで真っ赤になりながら、宍戸は誤魔化すようにそう返す。そんな可愛
らしい反応を見せる宍戸を見て、跡部はこの幸せなひとときを心から楽しんだ。

ドリンクを飲み終えた後も軽く散歩をし、二人はしばらくの間、一緒の時間を楽しむ。楽
しい時間はあっという間に過ぎ、いつの間にか夕方になっていた。
「このまま家に帰るのか?」
「おう。そのつもりだぜ。」
「そうか。送ってやりたいが、俺は学校に戻らなきゃならねー。」
跡部も帰ると思っていた宍戸は、思ってもみない跡部の言葉に驚いたような表情を見せる。
「えっ!?今からか?そんな忙しいのに、こんな時間まで俺につき合わせて悪かったな。」
まさかそんなに忙しいと思っていなかったので、宍戸は申し訳ない気持ちになる。
「忙しいのはいつものことだ。お前が気にすることじゃない。」
「でもよ・・・」
困惑したような表情を浮かべる宍戸に、跡部はふっと笑いながら言葉をかける。
「ハッピーバレンタイン。今日は楽しかったぜ。」
本当に嬉しそうな顔でそう言う跡部を見て、宍戸は跡部をつき合わせてしまった申し訳な
さが少し軽くなる。自分も楽しかったことをしっかり伝えようと、宍戸は跡部のその言葉
に返事をした。
「お、おう。俺もすげぇ楽しかった。サンキューな。」
二人で過ごした時間は間違いなく楽しいものであった。そんな楽しいひとときの余韻を感
じながら、跡部は学校に、宍戸は家に向かって歩き出した。

ホワイトデー
「用件も言わずに呼び出して悪かったな。まあ、想像はついてるだろうが・・・」
「ああ、まあ今日の日付が日付だしな。」
そう言いながら、宍戸は跡部に向かって両手を差し出す。
「先に両手を出すな。まだ何も言ってねー。」
「でも、ホワイトデーのお返しくれるんじゃねーの?まあ、そう言うなら・・・」
跡部に突っ込まれ、宍戸は差し出した手を引っ込める。
「引っ込めなくていい。ほら、チョコレートの礼だ。」
「おう!ありがとよ。」
「チョコレートだけじゃねーな。バレンタインデーはいい時間を過ごせた。」
「確かにバレンタインは跡部と出かけられて楽しかったぜ。」
「またそのうち、あんな風に出かけるのも悪くねーな?」
「そうだな。またどっか遊びに行こうぜ!」
跡部の言葉に嬉しそうな様子で宍戸は言葉を返す。跡部から貰ったバレンタインデーのお
返しを抱えて、宍戸は嬉しそうに笑った。

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宍戸Side

「よお。どうしたんだよ。そんなに慌てて。」
跡部が慌てて自分のもとに駆け寄ってくるのに気づき、宍戸はそう尋ねる。
「お前に用事があってな。」
「は?俺に用事?」
「お前が帰るのが見えてな。慌てて追いかけてきたんだ。」
今日は特に跡部と何か約束をしているわけではない。慌てて追いかけてくるほどの用事は
何かと宍戸は首を傾げる。
「学校から追いかけてきたのか。連絡くれりゃ待ってたのに。」
「なるほど・・・。いや、俺様は連絡する暇もなくてだな。」
そんなにも大事な用であるならば、連絡をくれれば待っていたのにと宍戸はそう伝える。
その言葉を聞いて、跡部はハッとしたような顔になる。
「・・・その顔、今気づいたって顔だな。」
「別にそんなことはねー。」
「ったく、ちょいダサだぜ。で、その用事ってのはなんなんだ。」
ちょっと抜けている跡部を前にくすっと笑いながら、宍戸は尋ねる。それが重要だと、跡
部は鞄の中からあるものを出すと、宍戸に差し出した。
「ああ、これをお前に渡したいと思ってな。」
跡部が差し出したそれは、誰が見ても分かるようなバレンタインのチョコレートであった。
「えっ、バレンタインのチョコ・・・!?俺が受け取っちまっていいのかよ。」
「当然だろ?お前のために用意したもんだからな。」
「・・・だよな。わざわざ追いかけてまで渡しに来てくれたんだもんな。」
「素直に受け取れ。」
跡部からチョコを受け取り、宍戸はドギマギとしながらお礼を言う。
「ありがとよ。これは帰ってからゆっくり食べるぜ。」
「ああ、しっかりと味わって食えよ。」
「あー・・・せっかく追いかけてきてくれたんだ。このまま、まっすぐ帰るってのもつま
らねーよな。」
このまま跡部と別れるのは忍びなく、宍戸はとあることを提案する。
「ほう、だったらどうする?」
「時間があるならどっか寄ってこうぜ。」
「悪くない提案だな。いいぜ。」
わざわざ学校から追いかけて来るほどなのだ。跡部は宍戸の提案に、迷いなく乗った。
「クラスのヤツらでまとまって遊ぶ事はあるけどよ、お前とサシでってのは珍しいかもな。」
「そうだな。学校帰りにどこかに行くことはあんまりねぇかもな。」
「どこか行きたいところとか、やりたい事とかあるか?」
「行きたいところか。」
「遠出は難しいかもしれねーけど・・・お前の希望があれば聞かせてくれよ。」
特に希望はないのだが、宍戸と一緒に過ごすにはどこがよいだろうと跡部は考える。あま
りに大層な場所は、思いつきで行くには嫌がるだろうと考え、宍戸が行きそうな場所をチ
ョイスした。
「そうだな・・・少し腹が減ってるし、お前と一緒ならファミレスにでも行って何か食う
か。」
「そういえば、お前・・・ここまで走って来たんだもんな。そりゃ腹も減るか。」
「そこまで減ってるわけじゃねーけどよ、お前と話すにはちょうどいいんじゃねーの。」
「俺もなんか食べたくなってきたし、はやく行こうぜ。」
宍戸が悪くない反応を示すので、そのチョイスは間違っていなかったと跡部はふっと口元
を緩ませた。

「腹減ってる時にメニュー見ると、どれも美味そうに見えて迷うよな。」
ファミレスに着き、メニューを見ながら宍戸はそんなことを漏らす。同じメニューを跡部
も向かいの席から眺めていた。
「そうだな。これとか、お前好きそうじゃねーの。」
「4種のチーズを使ったチーズサンド?美味そうだけど、これだけじゃ量が足りなそうな
んだよなぁ・・・」
「そんなにがっつり食うつもりかよ?まあ、いい。だったら、サイドメニューをいくつか
頼んで分け合えばいいじゃねぇか。」
宍戸が好きそうなメニューを提案したものの、量が足りなそうと返され、跡部はさらに案
を出す。
「サイドメニューを分け合えば、か。確かに、それならちょうどいいかもな。んじゃ、何
を頼むか一緒に決めようぜ。」
悪くない提案だと、宍戸は跡部の提案を呑むことにする。一緒に決めるということにした
が、ファミレスでの注文に慣れていない跡部は、食べたいものをほぼほぼ宍戸に選択させ
た。

「適当に何品か頼んでみたけど、マジでこれでよかったか?」
注文した品がテーブルに並んだのを見て、宍戸はそんなことを漏らす。ほぼ自分が選んで
しまったので、跡部が食べてくれるか心配になったのだ。
「いいんじゃねーの?お前が好きなものなんだろ?」
「そうなんだけどよ、跡部、こういうの食べるのかなと思って。」
「俺を何だと思っている。確かにこういうとこでは食べる機会は少ないが、特に嫌いなも
のはねーし普通に食べる。」
「そうだよな。」
それを聞いて、宍戸はホッとする。確かに跡部は普段食べていないようなものでも、自分
達が普段食べているものであれば、興味を持って食べてくれることが多いと思い返す。
「それに・・・」
「何だよ?」
「一流の料理を食べるのも悪くねーが、こうやってお前と同じものを分け合って食べるっ
てのは、十分に贅沢な食事だと思うぜ。」
ファミレスで頼んだサイドメニューばかりの料理を前にそんなことを言われ、宍戸は納得
のいっていない表情を浮かべる。
「贅沢?・・・ではないんじゃねぇ?」
「料理が豪華だとかそういうのは関係ねーんだよ。お前と同じ時間を共有して、お前と同
じ料理を共有する。それは、俺にとってはこの上なく贅沢な時間だ。お前と以外は味わえ
ねぇ時間だからな。」
「そりゃそうだろうけど・・・」
やはり分からないと思っていると、それに気づいた跡部がさらに言葉を重ねる。
「分からねーって顔してるな。もっとわかりやすく言っちまえば、好きな奴と一緒なら、
何してたって楽しいし、いい時間だろって話だ。」
「!!」
さすがにそこまで言われれば、宍戸でも理解出来る。跡部の言わんとしていることを理解
し、宍戸の顔は真っ赤に染まる。
「そういうことだ。」
「うわ、今、激恥ずかしいんだけど。」
「お前は分かりやすく動揺するよな。」
「お前が変なこと言うからだろ!」
「変なことなんて言ってねーだろ。」
顔を真っ赤にして明らかに動揺している宍戸を見て、跡部はくすくす笑う。
「変なことじゃねーかもだけど、聞いてて恥ずかしくなるっつーか・・・」
「照れてはいるが、内心嬉しいんだろ?」
「そ、それはその・・・っ」
跡部の言葉が嬉しいと思っているのは事実なので、宍戸は言葉を続けられなくなってしま
う。そんな宍戸に追い打ちをかけるように跡部は今目の前にある食べ物を一緒に食べよう
と誘う。
「ほら、冷めちまう前に食べようぜ。一緒に、な。」
「〜〜〜〜っ。」
「フッ、ホントお前は可愛い反応してくれるよな。そういうとこも好きだぜ。」
「だ、だから、そういうことをポンポン言うなっての!」
照れる宍戸が可愛くて仕方がないと、跡部はご機嫌な様子でからかうようなことを言う。
ファミレスで軽食を取るだけなのに心をかき乱され、宍戸はドキドキと胸を高鳴らせてい
た。

ほどよくお腹が膨れるくらいに食事を取り、二人は駅の近くまで戻って来た。
「いい時間帯に戻ってこられたな。この辺、遅くなるとすげー混むだろ。」
「駅周辺は仕方ねーんじゃねーの。電車で帰るやつでごった返すからな。」
「明日も学校だし、ここらで解散しとこうぜ。」
「そうだな。」
これ以上遅くなると混雑が激しくなる可能性があると、二人はここで解散することにする。
名残惜しい気はするが、二人で過ごした時間は充実していた。
「今日はありがとよ。お前のおかげでいいバレンタインになったっつーか・・・」
「俺もお前と一緒に居れて楽しかったぜ。」
もっと跡部と一緒にいれて楽しかったことを伝えようと言葉を考える宍戸だが、思い浮かぶ
言葉は口にするのが恥ずかしい言葉ばかりであった。
「なんかこれ以上はこっ恥ずかしい事言っちまいそうだぜ。じゃあな。」
「フッ、こんな日なんだから言っとけばいいだろ。」
言われなくとも宍戸のその態度から、自分と一緒にいたことに満足していることは分かる。
本当に今日はよいバレンタインデーだったと思いながら、二人はそれぞれ家路を辿った。

ホワイトデー
「・・・ちょっと待て!」
後ろから声をかけられ、跡部は立ち止まり振り返る。
「宍戸か。そんなに慌ててどうした?」
「はあ・・・やっと追いついた。お前、意外と歩くの速いんだな。」
「そうでもねぇと思うけどな。で、俺様に何の用だ?」
「教室からいつの間にかいなくなってるし、走って追いかけてきたんだよ。これ、先月の
チョコのお返しな。」
先月自分が言ったセリフと似ているなと跡部はフッと笑う。
「お返し、ありがとよ。そんなに慌てて追いかけて来なくても、連絡くれれば待ってたぜ。」
「連絡くれれば良かったのにって?・・・焦ってて気づかなかった。」
「フッ、先月の俺の再現かよ。」
「ったく、激ダサだぜ。とにかく用はそれだけだ。気をつけて帰れよ。」
「ああ、お返し、家に帰ってから開けさせてもらうぜ。せっかくだし、途中まで一緒に帰
るか。」
少し迷ったものの、宍戸は跡部のその誘いに乗る。他愛もない話をしながら、駅まで一緒
に歩くことにした。

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