お出かけバレンタイン
〜Valentine & WhiteDay〜(金蔵)

金太郎×白石

金太郎Side

「呼ばれたから来たで〜っ!」
白石に呼び出された金太郎は、待ち合わせ場所に白石がいるのを見つけ、元気よく声をか
ける。
「金ちゃん、今日も元気いっぱいやな。」
「どっか遊びに行くん?ワイ、どこでもつき合うでぇ。」
遊びの誘いかと思い、金太郎はノリノリでそう言う。
「まあ、遊びに行くのもええんやけどな。その前にこれ、金ちゃんに。」
「うん?そのおっきい箱、くれるん?」
「今日はバレンタインやからな。俺からのチョコレートや。」
「わぁー!バレンタインのチョコなんや、おおきに!」
白石から大きな箱に入ったバレンタインのチョコレートをもらい、金太郎は満面の笑みで
お礼を言う。
「喜んでもらえるとええんやけど・・・」
「こんなええもんもろて、めっちゃ嬉しいでぇ。幸せやぁ」
「はは、金ちゃんはホンマ嬉しいこと言ってくれるなぁ。」
大袈裟過ぎるほどに喜んでくれる金太郎を見て、白石も嬉しくなる。
「入っとるチョコ、ぜーんぶ美味しいんやろなぁ。食べるん楽しみやわ!」
「ゆっくり食べてや。ほな・・・」、
「・・・あり?もう帰ってまうん?このまま遊びに行けるって思たのに・・・」
金太郎にチョコを渡せたので帰ろうとすると、残念そうな表情で金太郎は白石を引き止め
るようなことを言い出す。
「いや、今日はこれ以上特に予定はないしな。金ちゃんが遊びたいならつき合うてもええ
で。」
「・・・遊んでくれる?ホンマに?」
「せっかくのバレンタインやしな。」
「よっしゃー!ほな、遊びまくろなぁ。」
白石が遊んでくれるということで、金太郎は再び笑顔になる。
「ほな、どこ行く?遊びたいなら、ゲームセンターとか?」
「ゲームセンターもええなぁ。いろんなゲームがぎょーさんあるんやろ?」
「せやな。」
「せやけど、こないだテレビでやっとったローラースケートもオモロそうやったなぁ。」
「ローラースケートか。確かにそれもオモロそうやな。」
遊びに行くことは決まったので、次はどこで遊ぶかを決める。金太郎がテレビで見たとい
うローラースケートはやったことはないが、白石も興味津々であった。
「なぁなぁ、何して遊びたい?」
「うーん、結構迷うけど・・・金ちゃんの話聞いて、ローラースケートに挑戦してみたい
わ。」
「ほな一緒にやろうや!楽しみやなぁ。」
「やったことないから、上手く出来るかは分からんけどな。」
「すいすい滑ったら絶対オモロイでぇ。」
「はは、金ちゃんはすぐに出来るようになりそうやな。」
どちらもローラースケートをやってみたいということで、ローラースケートをしに行くこ
とにした。

ローラースケートが出来る施設に遊びにくると、金太郎はあっという間にコツを掴み、す
いすいと滑れるようになる。白石はまだ慣れず、練習段階といったところであった。
「ローラースケート楽しいなぁ!ここでちょっと休んだら、また滑ろうや。」
「ホンマ金ちゃん上達早いわ。俺なんて、何度も転びそうになって、金ちゃんに助けても
ろてんのに。」
「次も転びそうになったらワイが助けたる。任しときぃ。」
「金ちゃん頼りになるなぁ。」
すぐに滑れるようになった金太郎は、白石が転びそうになるたびにその体を支え、転ばな
いようにしていた。白石に頼りになると言われ、嬉しくなった金太郎はあることを思いつ
く。
「せや、手ぇ繋いで滑ろうや。そしたら絶対に転ばへんで。」
「えっ、手ぇ繋いで!?それはちょっと恥ずかしいっちゅーか・・・」
「ええやん!ほら、行くで白石!」
「ちょっ・・・はは、まあええか。」
まだまだたくさん滑りたいと、金太郎は白石の手を取って滑り出した。

もうかなり滑れるようになっている金太郎は、白石の手を引いたまま、かなり速いスピー
ドで滑る。まだあまり滑れない白石は、そのスピードに戸惑っていた。
「わわっ・・・ちょっ、金ちゃん、速い速い!!」
「平気やって。ちゃんと人避けられるし、白石も転ばさせへんで。」
「いや、危ないから!」
「速い方がオモロイやん。せやけど、白石がそこまで言うなら・・・」
危ないという白石の言葉を聞き、金太郎は素直にキュッと止まる。
「わっ・・・急に止まられたらっ・・・」
「よっと。」
「!!」
急に止まられても自分は止まれないと白石が焦っていると、金太郎は白石の手を引き、ぎ
ゅっと抱き締めるような形で白石を受け止める。
「ほら、大丈夫やったやろ?」
「アカン・・・いろんな意味でメッチャ心臓ドキドキしとるわ。」
「あはは、確かに白石の心臓メーッチャドキドキしとる〜。」
白石と金太郎の身長差はそれなりにあるので、ぎゅっと抱き締めた状態では、白石の心臓
の音が金太郎の耳には大きく聞こえていた。それも少し恥ずかしいので、白石は離れても
らっても問題ないと金太郎に伝える。
「・・・っと、も、もう離してもろても大丈夫やで。」
「ホンマに?ほな、また、手ぇ繋ご!」
「手はもうええんちゃう?」
「えー、繋いどった方が白石転ばんし、楽しいし、そっちの方がええやん。」
「せやけど・・・」
「アカンの?」
しょんぼりとしてそう尋ねてくる金太郎に白石はほだされてしまう。
「さっきみたいに、速く滑り過ぎるのは禁止。それ守れるんやったらええで。」
「おん!守れる!」
「約束やで。」
「約束な!ほんなら、白石。」
もう一度手を繋ごうと、金太郎は白石の前に手を差し出す。まだ少し恥ずかしいと思いな
がらも、白石はその手を握った。
(ホンマ金ちゃんには敵わんなぁ。)
「なあ、白石ー。」
「どないしたん?」
「ローラースケート、楽しいな!ホンマ白石と一緒に来れてよかったわ。」
今度はゆっくりと滑りながら、金太郎は楽しそうな笑みを浮かべて白石にそう伝える。も
ちろん白石も同じ気持ちであった。
「せやな。俺も金ちゃんと一緒におれて楽しいで。」
「あとな、白石と手ぇ繋げてるんもメッチャ嬉しいで!」
「まあ、ちょっと恥ずかしいけど嫌ではないな。せやけど、メッチャドキドキするわ。」
恥ずかしそうにそう言う白石に、金太郎の胸もドキドキと高鳴る。一緒に遊ぶ楽しさと手
を繋いでいることによるドキドキ感。そんな状況を金太郎も白石も心から楽しんだ。

「鳥さんが鳴いとるなぁ。鳥さん達もこれから家に帰るんやろか。」
「せやな。もう夕方やし、鳥さんも俺らも家に帰る時間やな。」
夕焼け空で鳥が鳴いているのを聞き、金太郎はそんなことを言う。そろそろ帰る時間だと
ほんの少し残念そうにしながらも白石も頷いた。
「今日はチョコおおきに。それから、一緒に遊んでくれておおきに!」
「俺の方こそ、金ちゃんとぎょーさん遊べて楽しかったで。おおにきな」
「ワイ、嬉しい気持ちでいっぱいやでぇ。おおきにって何度言うても足りんぐらいやわ。」
「それ聞いて、俺も嬉しい気持ちでいっぱいや。」
バレンタインの放課後に存分に遊べたことが嬉しくて、金太郎は何度もお礼を言う。
「へへ・・・帰ったらさっそくチョコ食べるなぁ。ほなまた明日!」
「また明日な。金ちゃん。」
どちらも嬉しい気持ちで胸がいっぱいになるのを感じつつ、また明日と手を振る。ほんの
少しの寂しさと満足感。家路を辿る二人の顔には笑みが浮かんでいた。

ホワイトデー
「よっしゃー、捕まえたでぇ!」
「うわっ、ビックリした。どないしたん?金ちゃん。」
後ろから勢いよく抱きつかれ、白石は驚いた顔で振り返る。
「さっき声かけようとしたけど、おらんくなってもうたから探しててん。」
「そうなん?そりゃ悪かったな。」
一旦白石から離れると、ポケットの中から何かを出し、それを白石に差し出す。
「これ、バレンタインのお返しやねん。受け取ってや。」
「ホワイトデーのプレゼントっちゅーことか。おおきにな。嬉しいで。」
「美味しいチョコくれておおきになぁ。ホンマ最高やったで。」
「はは、心を込めて準備した甲斐があるわ。」
嬉しそうに笑う白石を見て、金太郎も嬉しくなる。
「へへ・・・笑てくれた。また一緒に遊びに行こうなぁ!」
「ええで。また一緒に楽しいことぎょーさんしような。」
白石の言葉に大きく頷くと、金太郎は今度は正面から白石に抱きついた。

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白石Side

「遅れてスマン!」
「ちょっとだけやし大丈夫やで!」
「委員会の仕事が長引いてもうて・・・寒い中待たせてもうたみたいやな。」
「せやから気にせんで大丈夫やって。白石は気にしぃやな。」
待ち合わせ場所に遅れてきた白石に、何も気にしないでいいと金太郎は笑って言う。
「そんで俺に用事っていうんはなんや?」
「これなー、白石にーと思って用意したんやで。バレンタインのチョコや!」
「チョコ?バレンタインの?」
「せやで!」
ハートの形をした箱に入ったチョコレートを金太郎は白石に渡す。バレンタインらしいそ
の見た目に白石はふっと笑う。
「・・・やっぱりそうやったんか。」
「やっぱりって、ワイがバレンタインのチョコ渡すって分かってたん?」
「あ、いや、実は呼び出された時ちょっと期待してたんや。」
「そうなんや。」
「せやから、今めっちゃ嬉しいわ。ホンマおおきに。」
「白石が嬉しいとワイも嬉しいで!」
白石に喜んでもらえたのが嬉しく、金太郎は花が咲いたような笑顔になる。このまま別れ
るのももったいないので、白石は金太郎を遊びに誘うことにした。
「なあ、このあとって時間ある?」
「あるで!」
「どこかで話でもできたらって思ったんやけど・・・どうやろか?」
「ええで。白石と話すん楽しみやー。」
「ここからやったらどこがええかな。」
「白石と一緒やったら、どこでも楽しいと思うからどこでもええで!」
白石とまだ一緒にいれるということで、金太郎はご機嫌な様子でそう答える。
「大通りなら店がぎょうさんあるし、ちょっとした遠出もできそうやし・・・」
「それは迷うなあ、どこがええやろ?」
「もし、行きたいところあったら遠慮せず言うてな。」
白石にそう言われ、金太郎はしばし考える。たまにはテニス以外のスポーツをするのもあ
りかと思い、思いついたことを口にする。
「せっかくやから遠出したい!せやなあ・・・ボウリングとかどや?」
「ええなぁ。ボウリング、オモロそうやん。」
「せやろー?へへ、白石とボウリング楽しみやー!」
「パーフェクトにストライク狙ったるで。」
金太郎の発案で、ボウリングに行くことにする。どちらもやる気満々でボウリング場へと
向かった。

「ボウリングっていうと、小さい頃にピンの着ぐるみ着たん思い出すわ。」
「ボウリングのピンの着ぐるみ?あはは、なんやそれ、めっちゃオモロイやん!」
「あの頃の蔵ノ介くんは、それはもう可愛くて・・・」
「・・・・・・」
ボウリングのピンの着ぐるみを着た白石を想像し、金太郎はしばし黙り込む。何も言われ
ないのは逆に恥ずかしいと、白石は思わず声を上げる。
「・・・って、そないに生暖かい目で見るんやったら突っ込んでや!」
「あの頃の白石知らんけど、白石は今でも可愛いで!」
「なっ!?ちょお、そんなん言うんは反則や・・・」
小さい頃の白石は知らないが、今の白石も十分可愛いと金太郎は素直にそのことを伝える。
それはかなり照れると、白石の顔は真っ赤に染まった。

「なあなあ、白石ー。」
「何や?金ちゃん。」
「さっき話しとったボウリングのピンの着ぐるみの写真とかないん?」
「ないことはないけど・・・姉貴が紙の写真撮って俺に送ってきたりしとるから。」
「見たい!」
なんとなく想像はできるものの、写真があるのであれば見てみたいと、金太郎はそうねだ
る。自分から言い出したものの、いざ見せるとなるとかなり恥ずかしいと白石は一旦しぶ
ってみせる。
「えー、それはちょっと恥ずかしいなあ。」
「なんでや−!話に出したんやから見せてーな。」
「しゃーないなー。ちょっとだけやで。」
そこまで言うならと、白石はスマホを操作し、ボウリングのピンの着ぐるみを着た自分の
写真を金太郎に見せる。思った以上にボウリングのピンになっている白石を見て、金太郎
は声を出して笑った。
「あっはは、ホンマにボウリングのピンになっとるー!」
「そんなにウケてもらえると逆に嬉しいな。」
「ホンマにちっちゃい白石やな。なあ、他に白石がちっちゃい頃の写真ないん?」
「小さい頃の写真か。せやな・・・」
小さい頃の写真は基本紙に印刷された写真がほとんどであるが、可愛い写真はスマホにも
入れておきたいという理由で、白石の姉はそれをスマホで撮り、さらにそれを白石本人に
も送っていた。そんな写真の中からいくつかピックアップして、白石は金太郎に見せる。
「うっわあ、赤ちゃんや!赤ちゃんの白石がクマになっとる!」
「はは、かわええやろ?」
「こっちはミニカーで遊んでる感じなん?」
「せやな。ミニカーの大会に出たときの写真や。」
「へぇ、どれもかわええなー。ちっちゃいけど、どれも白石!って感じやな!」
確かに赤ちゃんであったり、明らかに小さい子どもではあるのだが、どれも今の白石の雰
囲気そのままという感じであった。
「そうか?俺、そんなに変わらん?」
「おん!もちろん体は大きくなっとるけど、ちっちゃくても白石って分かるし。」
「それは喜んでもええんかな?」
「ええんちゃう?白石はちっちゃくても大きくても可愛くて、ワイ大好きやで!」
自分の知り得なかった白石の幼い頃の写真を見て、金太郎はそんなことを言う。どれも大
好きだと言われて白石は少しのくすぐったさを感じながらも嬉しいと思う。
「そこまでハッキリ言われると、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいわ。」
「なあ、ワイもちっちゃいときの白石の写真欲しいー。送って!」
「まあ、金ちゃんには今日チョコもろたからな。俺の小さいときの写真くらいええで。」
「よっしゃ!ほんなら、早速送ってや。」
「今?まあ、確かに家帰ってからとかだと忘れそうやしな。メッセージに送るから受け取
ってな。」
「おん!おおきに!」
金太郎の頼みを聞き、白石は金太郎のスマホに幼い頃に自分の写真を送る。自分のスマホ
に表示される可愛らしい白石の写真に、金太郎は嬉しそうに笑った。

「暗くなるんはあっという間やなぁ。」
「ホンマやな。もう夕方になってもうた。」
「今日はチョコをもらったうえに、楽しい時間まで過ごせてホンマにええバレンタインや。」
「ワイもめーっちゃ楽しかったで!白石も嬉しそうで、ええ気分やったわ。」
金太郎からチョコをもらい、ボウリング場へ遊びに行って、いいバレンタインが過ごせた
と白石はしみじみとそう口にする。白石の可愛い写真をたくさん送ってもらえた金太郎も
満足気に笑う。
「もうちょっと話したいところやけど・・・遅くなったらアカンし、そろそろ帰ろか。」
少し寂しそうにそう言う白石に、金太郎はいつもの明るい口調で言葉を返す。
「明日もまた会えるしな。」
「ほな、また学校でな。」
「またなー。」
明日も学校で会えるということを楽しみにしながら、二人は手を振り合う。バレンタイン
デートを楽しんだ二人は、それぞれ相手からもらったものを帰り道にこっそり見るのであ
った。

ホワイトデー
「急に呼び出してスマンなぁ。」
「平気やで!何の用なん?」
「これ、先月のチョコのお礼。ハッピーホワイトデー。」
「ホワイトデーやぁ!おおきに!」
白石からバレンタインデーのお返しを受け取り、金太郎は全力で喜ぶ。
「はは、そない嬉しそうな顔してもらえるなら用意した甲斐あるわ。」
「バレンタインにチョコあげて、ホンマによかったわ!」
「ホンマはまた2人で出かけようかと思っていろいろ考えてたんやけど・・・」
「今日は出かけられへんの?」
また遊びに行けるなら行きたいと思う金太郎であったが、白石が行けなさそうな雰囲気を
醸し出しているのでそう聞き返す。
「このあと、学校戻らなアカンねん。せやから、またの楽しみって事にしとこか。」
「それならしゃーないな!また2人で出かけよな!約束やで!」
用事があるなら仕方ないと、金太郎は今日遊ぶのはスパッと諦める。その代わり、また別
の日に2人で遊びに行こうということを約束することにした。

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