想いを込めて君に贈ろう

寒空の下、色とりどりのイルミネーションで彩られる12月。今年も跡部と宍戸は一年に
一度の特別な日に、同じ場所にいた。その特別な日を過ごす場所。今年は跡部の用意した
ホテルであった。
「お待ちしていました、景吾様、亮様。」
「ああ、早速案内してくれ。」
「かしこまりました。」
ホテルのエントランスに入った瞬間、深々とお辞儀をされ、跡部と宍戸の二人は出迎えら
れる。やっぱり跡部はすごいなあと思いながら、宍戸は自分より少し先を歩く跡部の後に
ついていった。
「何か激VIP待遇って感じだな。」
「当然だろ。俺様を誰だと思ってやがる。」
「跡部がそう迎えられるのは当然だとしても、俺の名前も呼ばれてこういう対応されると
ちょっと変な感じだぜ。」
跡部と一緒にいるからこそ味わえるこのような対応に、宍戸は少し照れくさいようなくす
ぐったいような感覚を覚える。そんな感覚を覚えながら、ホテルの支配人に案内されたの
は、このホテルの一番高いところにある一番豪華な部屋であった。
「こちらでございます。」
「ご苦労。必要があれば、その都度連絡する。下がっていいぞ。」
「かしこまりました。ごゆっくりお過ごし下さい。」
部屋に通されると、跡部は支配人を下がらせる。ホテルの一室とは思えないその部屋に、
宍戸は目を輝かせた。
「うわあ、相変わらずお前のとる部屋は半端ねぇな。」
「このくらい当然だ。今日はクリスマス・イブだぜ?」
「そうだけどよ。何か毎年すごいとこ連れてってもらうけど、こんなすごいとこに泊まれ
るとなると、やっぱテンション上がるぜ!」
跡部とは違って、セレブな雰囲気に慣れていない宍戸は、部屋に入っただけでもテンショ
ンが一気に上がる。生徒と呼ばれる時期には、こういうところに連れて来られると、どう
していいのか分からずひいてしまうことが多かった宍戸であったが、最近は素直に嬉しい
と思い、楽しめるようになってきた。外の寒さをしのぐために来ていたファー付きの真っ
赤なコートを脱ぐと、宍戸はぽいっとベッドの上にそれを投げ、部屋の中を見て回った。
「家具も小物も高そうなもんばっかだぜ。」
「コート脱いだら、ちゃんとかけておけよ。」
「んー、後でやる。」
「ったく、しょうがねぇなあ。」
子供のようにはしゃぐ宍戸を横目に、跡部も白いロングコートを脱ぎ、マフラーと手袋を
外す。そして、宍戸のコートも一緒にハンガーにかけ、扉のついたコートかけにしまって
やった。
「跡部ー、窓のとこカーテン閉まってるけど、開けていいか?」
「構わないぜ。」
部屋の奥には、大きな窓がある。しかし、そこには長いカーテンで外の景色が見えないよ
うになっていた。ここからの景色がどんなものか見たいと、宍戸はそのカーテンを開いた。
カーテンを開けて現れたのは、自分の背丈よりもずっと高く、端から端まで一続きになっ
た大きなガラス窓。そこから見える景色を見て、宍戸は驚嘆の声を上げる。
「うわあ、マジかよ・・・」
窓の外に見えたもの。それは、様々な色の光が散りばめられたどこまでも続く美しい夜景
であった。『綺麗な夜景』などと一言では言い表せないこの世のものとは思えないほどの
光の饗宴。それは一瞬で宍戸の心を捉えて離さなかった。
「すげぇだろ。クリスマスでいろんなところにイルミネーションがあるから、こんな景色
になってるんだぜ。今だけ見える最高の景色だ。」
宍戸の隣に移動し、跡部はそんなことを言う。ただの灯りではなく、クリスマスのイルミ
ネーションが多いが故に、光の粒は星がまたたくようにキラキラと輝く。そのまたたきに
宍戸はすっかり魅せられていた。
「すげぇ・・・激キレー。」
「今この景色が見れるのは、お前と俺だけだ。だから、ちゃんと目に焼き付けておけよ?」
「おう!」
隣にいる跡部に向かって、満面の笑みを浮かべて宍戸は頷く。そんな宍戸の笑顔を見て、
跡部もかなりいい気分になっていた。跡部の顔からもう一度外の景色に目を移した瞬間、
宍戸はあることに気づく。
「あっ!!」
「どうした?」
「跡部、見ろよ!雪だぜ!!雪が降ってきた!!」
宍戸に言われ、跡部は窓の外に目をやる。宍戸の言う通り、空から真っ白な粉雪が舞い落
ちてきていた。
「本当だな。今年はホワイトクリスマスか。」
「うっわあ、何かすっげぇ嬉しい!!こんなすごい景色見ながら、しかも雪が降ってるの
が見れるんだぜ?もうクリスマス最高って感じだな!!」
溢れんばかりの嬉しさを跡部に見せながら、宍戸ははしゃぎまくる。こんな子供らしいと
ころもまたいいと、跡部はその口元を緩ませた。
「そうだな。本当今年も最高のクリスマスだ。」
「だよなあ!!」
「景色を見るのもいいが、そろそろ腹空かないか。」
「そうだな。この部屋がすごくてはしゃぎまくってたら、腹減ってきちまった。」
「なら、そろそろクリスマスパーティーを始めるとするか。もちろん、この景色を見なが
らな。」
そんな跡部の言葉に、宍戸は嬉しそうに頷く。窓のすぐ横に用意されたテーブルで、二人
はクリスマスらしいご馳走を食べながら、聖夜の晩餐を楽しんだ。

「はあー、腹もいっぱいだし、綺麗な景色も見れたし、激満足。」
存分にクリスマスのご馳走を満喫すると、宍戸は満足気な溜め息をつきながらそう呟く。
そんな宍戸に跡部はふっと笑みを浮かべ、言葉をかける。
「まだ、満足するには早いぜ。」
窓から少し離れ、跡部はソファの近くにある低いテーブルに火をつけた燭台を置く。そし
て、部屋の照明を暗くし、宍戸を手招いた。
「こっちに来いよ、宍戸。」
「お、おう。」
蝋燭に照らされた跡部の顔がとても綺麗に見え、宍戸はドキッとしてしまう。宍戸を二人
掛けのソファに座らせると、跡部はどこからか二つの箱を持って来た。
「クリスマスの醍醐味といったら、やっぱりプレゼント交換だろ。」
「あー、そうだな。」
「今年のプレゼントは、かなりイイ感じのが選べたと思うぜ。」
「へ、へぇ、そうなんだ。」
毎年クリスマスにはかなり豪華なプレゼントをもらっている宍戸は、身構えてしまう。嬉
しくないわけはないのだが、自分がそこまで豪華なプレゼントを用意することが出来ない
ので、あまり豪華なものをもらうと気がひけてしまうのだ。
「メリークリスマス、宍戸。」
跡部からプレゼントを受け取ると、宍戸はドキドキとしながらその包みを開ける。それと
同時に、跡部ももう一つの箱の包みを開けていた。
(この箱の感じは、アクセサリーか何かか?)
包みをあけると、青い箱が現れる。さらにその箱を開けると、いかにも宝石のついたアク
セサリーが入っていそうな箱が姿を現した。
「開けてみていいか?」
「もちろんだ。」
金色の留め具をパチンと外すと、宍戸はゆっくりその箱のふたを開ける。中に入っていた
のは、黒い石の上に十字を描くように施された金の装飾、さらにその十字の中心には赤い
石、その周りにはキラキラと光る透明な石が四つ散りばめられたペンダントであった。
「おー、何かカッコイイペンダントだな。」
「なかなかいいデザインだろ?テメェと揃いのペアネックレスにしたいと思って、俺の分
も買ってあるんだぜ。」
そう言いながら、跡部は宍戸にあげたものと同じデザインのペンダントを手にして、それ
を宍戸に見せる。
「本当だ。このデザインだったら、普段つけててもいい感じだな。」
「そう思ってくれるなら、よかったぜ。俺もかなり気に入ってるからな。」
「なあ、ちょっとつけてみたいからつけてくれよ。」
「いいぜ。」
箱からそのペンダントを出すと、宍戸はそれを自分につけてくれと跡部に頼む。首の後ろ
でカチャっと留め具をとめてやると、跡部は一旦宍戸から離れ、ペンダントをつけた宍戸
の姿を眺めた。
「どうだ?似合うか?」
「ああ、すげぇ似合ってるぜ。」
「跡部もつけてみろよ。」
「そうだな。」
宍戸に言われ、跡部もそのペンダントをつける。黒と金が基調となっているそのペンダン
トは、宍戸にとっては跡部のイメージで、とても似合っていると感じられた。
「何か跡部がつけてた方が似合う気がする。」
「そんなことねぇぜ。テメェもかなり似合ってるからな。」
「そっか。何つーかさ、個人的なイメージだけど、このペンダントすごい跡部って感じが
するんだよな。」
その言葉を聞いて、跡部の胸はトクンと高鳴った。自分がこのペンダントをクリスマスプ
レゼントとして選んだ理由。それが今の宍戸の言葉にある程度込められているのだ。
「・・・・このペンダントを選んだ理由なんだけどな。」
「ああ。」
「さっきテメェが言ってた通り、自分で見ても俺様に似合うようなデザインだと思った。
黒と金は俺の好きな色だからな。だけど、それだけじゃねぇ。リボンが絡むように施され
た金の十字の中心には何がある?」
「俺、宝石にはあんまり詳しくはないから何の石かは分かんねぇけど、赤い宝石があるな。」
「赤はテメェの好きな色だ。だからこの赤い石は、俺にとってはお前以外の何者でもねぇ
んだよ。」
「えっ・・・」
「黒と金の部分が俺だとすれば、赤はお前だ。俺様の全ての中心にお前がいる。まるで、
このペンダント自体が俺の心を表しているみたいで、一目見て気に入った。」
跡部がクリスマスプレゼントとして、このペンダントを選んだ理由を聞いて、宍戸の胸は
ひどく高鳴っていく。顔が赤く染まっていくのを感じながら、宍戸は跡部の言葉に耳を傾
けた。
「それからな、この金色の部分。さっきも言った通りリボンみてぇになってるだろ。この
ペンダントが売っていたところの店員に聞いたんだけどな、この金のリボンには『絆』の
意味があるらしい。」
「絆・・・」
「あとは、このペンダントに使われている石・・・つーよりは宝石だな。宝石にはそれぞ
れ意味があってな。この黒い部分はオニキスって宝石で意味は『強い意志』。赤い部分は、
ルビーで意味は『深い愛情』。『情熱』って意味もあるな。それから、この透明な石。これ
は、ダイヤモンドだ。ダイヤモンドの意味は『永遠の絆』と『揺るぎない愛情』。だから、
このペンダント自体に、『俺達は強い意志と深い愛情、永遠の絆で結ばれている』って意味
が込められてるんだぜ。」
ペンダントに込められた意味を知り、宍戸の胸は熱くなる。ペンダントが触れている部分
から、跡部の強い想いが入ってくるような気がして、宍戸は顔を真っ赤に染めながら、跡
部を見た。
「ヤバイ・・・今、激ドキドキしてる。」
「分かるぜ。お前の顔、このルビーみたいに赤くなってるからな。」
「ドキドキしすぎて、何て言ったらいいか全然分かんねぇけどよ・・・何ていうか、その
・・・俺もこのペンダントすげぇ気に入った。見た目も、込められてる意味も、全部含め
て。」
「そうか。」
「あ、ありがとう、跡部。」
顔を染め、ドギマギしながら言葉を紡ぐ宍戸は、跡部にはとても可愛らしく見えた。啄ば
むような軽いキスをしてやると、宍戸はさらに慌てたような素振りを見せる。
「気に入ってもらえたならよかったぜ。」
「なっ・・・あ・・・」
「ちょっとキスしてやっただけで、そんな反応するとこも可愛いぜ。」
「べ、別にそんなおかしな反応してねぇし!ちょ、ちょっとビックリしちまっただけだか
らな!!」
照れ隠しに少し怒ったような言葉を放つ宍戸もどうしようもなく可愛いと、跡部はクスク
ス笑う。とにかくこの雰囲気を少しでも変えようと、宍戸は自分が用意してきたプレゼン
トを取りにいった。
「これ、俺からのプレゼントだ。」
ずいっと跡部の前にそれを差し出し、宍戸はぶっきらぼうにそう口にする。宍戸からのプ
レゼントを受け取り、跡部は丁寧にその包みを開けていく。跡部が包みをあけている間に
も、宍戸は言葉を続けた。
「お、俺は跡部みたいに高いものは買えねぇし、下手に無難なものも買えないからよ、プ
レゼントとしては微妙かもしれねぇけど、こんなのしか思いつかなくて・・・」
包みが取り除かれ、出て来たものは綺麗な模様が描かれた箱であった。パカッとそのふた
を開けると、そこには跡部の予想だにしていなかったものが入っていた。これはどういう
意味なのだろうと、しばらく黙っていると、宍戸が慌てた様子でその中身の説明を始めた。
「あっ・・・えっと、それはな、別に手を抜いたわけじゃなくて、むしろ手はメッチャか
けてんだけど・・・ちゃんと意味があって・・・」
あまりにも慌てている宍戸の様子を見て、跡部はふっと笑いながら、その箱の中身を一枚
手にする。
「落ち着け。別に手を抜いたプレゼントだなんて思ってねぇよ。だが、このプレゼントの
意図してることは是非聞かせてもらうぜ。」
「あ、あのな・・・俺が跡部にクリスマスプレゼントに何をあげたらいいか迷ってるって、
滝に相談したら、面白いことを教えてくれたんだよ。」
「ほぅ、どんなことだ?」
「バラには贈る本数によって意味があるんだとよ。跡部はバラが好きだろ?だから、その
意味に合わせてバラをプレゼントしたらいいかもなあって思ってよ。」
「なるほどな。」
「でな、俺が一番いいなあと思った意味が、999本のバラの意味だったんだよ。でも、
999本のバラなんて、リアルに買ったら、とてもじゃねぇけど俺が買える値段じゃなく
て・・・でも、その意味を知ったら、どうしてもそれを跡部に贈りたくて・・・」
「それじゃあ、この中には999個のバラが入ってるってわけだな。」
跡部の持っている箱に入っているもの。それは折り紙で作られた色とりどりの大小様々な
バラの花であった。本物のバラを999本も買うことが出来ないことに気づいた宍戸は、
どうすればその意味を込めたバラを贈れるか必死で考えた。そして辿りついた答え。それ
が、自分の手でバラを作ることであった。
「お、折り紙のバラなんて、本当ガキみてぇで・・・跡部が喜んでくれるなんて到底思っ
てないけどよ。それでも、俺はこれを跡部に贈りたかった。」
そこまで聞いて、跡部はこのプレゼントがどれだけ価値のあるものかを理解した。跡部は
999本のバラがどのような意味を持つか知っていた。それでも、その意味を、宍戸の伝
えたかった想いを、宍戸の口から聞きたくて、跡部は宍戸にどのような意味があるのかを
訪ねた。
「999本のバラには・・・どんな意味があるんだ?宍戸。」
跡部にそう尋ねられ、宍戸は跡部の目を真っ直ぐ見つめ、その意味を口にする。それは、
紛れもなく宍戸が跡部に伝えたいと思っている想いであった。
「『何度生まれ変わってもあなたを愛する』」
宍戸の口からその言葉を聞いて、跡部の中で何かが弾ける。箱に入ったバラをこぼさない
ようにしながら、跡部は宍戸の体を思いきり抱きしめた。
「う・・わっ・・・・」
「最高のプレゼントだぜ、宍戸。」
「えっ!?」
「お前はこれを、一つ一つ自分の手で作ったわけだろ?」
「ま、まあな。そうするしか、俺には出来なかったから・・・・」
「つまり、このバラ一つ一つにはお前の想いが存分に込められてるわけだ。それにこれは
紙で出来てる。だから、絶対に枯れることはねぇ。枯れないバラに込められたお前の気持
ち。これがどれだけ俺にとって、価値のあるものか分かるか?」
「・・・・本当に、こんなプレゼントで喜んでくれるのか?」
「さっきも言ったろ?最高のプレゼントだって。本当・・・すげぇ嬉しいぜ、宍戸。」
跡部の言っていることが本当のことであるということは、抱きしめる腕の強さからひしひ
しと伝わっていた。予想以上に跡部が喜んでくれたことが嬉しくて、宍戸は顔を緩ませる。
「まさかこんなに喜んでもらえると思ってなかったから、超嬉しい。」
「俺もテメェがこんな手の込んだプレゼントくれるとは思ってなかったから、嬉しさも一
入だぜ。」
抱き合ったままの状態で、跡部と宍戸はそんな言葉を交わす。お互いの胸から聞こえる鼓
動はいつもより速く、体温も先程よりはいくらか上がっていた。
「なあ、宍戸。」
「何だよ?」
「このバラの花言葉、もう一回言ってくれねぇか。」
それは少し恥ずかしいなあと思いつつ、宍戸は跡部の耳元で囁くようにその言葉を口にす
る。
「俺は何度生まれ変わっても、跡部のことずっと愛してるぜ。」
先程とは少し違い、今度は完全に宍戸の言葉であった。その言葉を聞いて、跡部の胸は熱
い想いで満たされる。
「俺もだぜ。」
宍戸の顔を見つめそう呟くと、跡部は宍戸の身体をソファに押し倒しながら、深く口づけ
る。その口づけを合図に、二人はこれからやってくるクリスマスを存分に楽しむ用意を始
めるのであった。

クリスマスから数日が経ち、宍戸はテニスをしに大学へやってきていた。そこでたまたま
滝に会い、軽くお茶をすることになる。
「宍戸、そのペンダントどうしたの?」
初めて見るアクセサリーをしている宍戸に、滝はそう尋ねる。
「ああ、これか?これ、クリスマスプレゼントにもらったんだよ。」
「跡部から?」
「ああ。」
「ふーん。いろんな宝石ついてるみたいだし、結構高そうだよね。でも、いいデザインな
んじゃん?」
滝にそう言われ、宍戸は嬉しくなる。顔が緩むのを抑えられずにいると、滝がさらに言葉
を続けた。
「そういえば、宍戸があげたプレゼントは喜んでもらえたの?随分一生懸命作ってたみた
いだけど。」
「えっ?んー、まあ、そうだな。」
本当はとても喜んでもらえたのだが、それを素直に言うのは少し照れくさく、宍戸は言葉
を濁すような感じでそんなことを言う。と、そこへ跡部と樺地が通りかかる。
「お前らも来てたのか。」
「あ、跡部。」
跡部に声をかけられ、そちらの方を振り向くと滝の目にあるものがとまる。それは、跡部
の首元にある宍戸がつけているものと同じペンダントであった。
「ふーん、なるほどね。」
「何がなるほどなんだよ。」
何かに納得したような滝の言葉に、宍戸はすかさずつっこむ。本当に仲がいいなあと、滝
はニヤニヤしながら宍戸に言葉を返した。
「お熱いねぇと思ってさ。」
「は?意味分かんねぇ。」
「そのペンダント、跡部とのペアペンダントじゃない。やるねー。」
「あっ・・・」
跡部とお揃いでつけているということに気づかれ、宍戸は何となく恥ずかしくなる。その
恥ずかしさを誤魔化すようにいつものツンデレ口調で言葉を紡いだ。
「べ、別に跡部とお揃いだからつけてるわけじゃないんだからな。俺的にもこのデザイン
は気に入ってるし・・・せっかくもらったんだからつけなきゃもったいねぇだろ!」
「ふっ、可愛いこと言ってくれるじゃねぇの。」
「そんなこと言ってねーし!何をもってそうなるんだよ!?」
「どんな理由であれ、俺はテメェがそれを身につけてくれてるのは嬉しいことだぜ。ま、
何回生まれ変わっても好きだって言ってたしな。どうせいつものツンデレセリフだろ?」
「なっ!?」
それを今ここで言うなと、宍戸の顔は真っ赤に染まる。跡部の言葉を聞いて、滝は少し驚
いたような顔を見せた。
「跡部、もしかして、跡部がもらったプレゼントって、宍戸が作ったバラ999個?」
「ああ、そうだぜ。」
「そんなに作ったんだ。てっきり100個くらいかと思ってた。へぇ999個かぁ。やる
ねー、宍戸。」
バラの本数によって花言葉が違うということを教えたのは滝なので、その数が何を表して
いるかよく分かっていた。それはすごいなあと、素直に感心してしまう。
「あ、跡部が余計なこと言うからっ!!」
「アーン?別に余計なことなんて一言も言ってねぇぜ。」
「ホーント、二人とも仲いいよね。クリスマスプレゼント一つで、どれだけお互いに想っ
てるかが分かるもん。な、樺地。」
「ウス。」
樺地にも話を振りつつ、滝はクスクス笑う。樺地もそれは認めるしかなかった。まだまだ
恥ずかしがって跡部に文句を言っている宍戸に、嬉しさを滲み出して宍戸をからかう跡部。
本当に昔から変わっていないなあと思いつつ、滝と樺地はほのぼのとした気分で、二人の
やりとりをしばらく眺めていた。

                                END.

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