甲斐より先にシャワーを浴びてしまった平古場は、自分の部屋で甲斐が戻ってくるのを待
っていた。この後することを考えると、一人で待っているというのは何とも恥ずかしく、
平古場はあまりの落ち着かなさから、部屋の中をうろうろ歩き回っていた。
「うー、でーじ緊張するし。あんなこと言ったはいいけど、いざこうなると、ドキドキし
て何していいか分からんし。」
早く甲斐が戻って来て欲しいと思いつつも、あまりのドキドキ感からまだ戻って欲しくな
いとも思ってしまう。そんなことをしているうちに、甲斐がシャワーを浴び終え、平古場
の部屋へと戻って来た。
「凛ー、風呂ありがとう。」
突然、ガチャっと部屋のドアが開き、甲斐が声をかけるので、平古場は心臓が飛び出るの
ではないかと思うほど、ビックリする。
「お、おう。おかえり。」
「湯船の温度もちょうどよかったし、いい湯加減だったぜ。」
「そ、そっか。」
甲斐自身もドキドキしていたが、平古場のあまりにいつもとは違う態度が可愛いと、逆に
緊張がほぐれてくる。髪を拭きながら平古場の布団に座ると、ふっと笑って平古場に声を
かける。
「何で凛立ってるば?座ればいいのに。」
「う、うん。」
おずおずと平古場は甲斐の隣に腰掛ける。甲斐の隣に座ると、先程より心臓の音が大きく
なっていくのが分かる。
「そんなに緊張するなら、やめるか?」
相当緊張していることが空気で分かるので、冗談めかした口調で甲斐はそんなことを言う。
すると平古場は、ぶんぶんと頭を振って否定の言葉を発した。
「やだっ!!する!!」
「まあ、凛がそこまで言うなら仕方ないなー。」
こういうところは本当に素直だなあと思いながら、甲斐はくすくす笑う。そして、隣に座
っている平古場の手を取り、体勢を少し変えると、ドサッと平古場の体を押し倒した。
「わっ・・・ちょ、裕次郎っ・・・」
「して欲しいんだろ?凛。」
「う・・・うん。」
「先に言っておくけど、途中でやめてって言っても、俺、やめられないからな。」
「やめてなんて、言わないし・・・」
「じゃ、平気だな。」
緊張しつつもして欲しいオーラ全開の平古場の可愛さにやられ、甲斐も相当やる気になっ
ていた。押し倒したままの状態で、ゆっくりと平古場の唇に口づけ、その口の中を探ろう
と、舌でその閉じた扉を開こうとする。
「んっ・・・ふぁ・・・」
唇を舐められるように触れられ、平古場は閉じられた口をほんの少しだけ開ける。それは
甲斐のより深いキスを受け入れようとする合図だった。
「んむっ・・・んん・・・・」
甲斐の舌が口の中へ入ってくると、平古場はピクッと小さく体を震わせる。柔らかくて熱
い甲斐の舌が、自分の舌に絡んでくる。その感覚に平古場は、全身がとろけてしまいそう
な甘い痺れを感じる。
「んっ・・・はぁ・・・」
甲斐が少し口を離すと、平古場はどちらとも分からない透明な雫を口の端からこぼしなが
ら、潤んだ瞳で甲斐を見る。
「凛、口開けたまま、べろ出して。」
言われるまま、平古場は小さく口を開け、舌を出す。その舌を食べてしまうかのように、
甲斐は唇と舌を使って軽く食む。その感覚が何とも言えず、平古場は吐息混じりの甘い声
を上げる。
「あっ・・・ふぁ・・・あ・・・」
存分に平古場の舌の感触を味わうと、甲斐は再び自分の唇を平古場の唇に押しつける。息
をするのも忘れてしまいそうになるほどの長く激しいキスに、平古場はもうすっかり夢見
心地だった。
「ぷあっ・・・はっ・・ハァ・・・ゆう・・じろぉ・・・」
「キスだけでそんなにとろけてたら、この後もたないぜ?」
「だってよー、裕次郎のちゅう、しに気持ちイイし。」
「ふーん。だったらさー、もっと気持ちイイところにキスしてやるさ。」
ニヤリと笑って、甲斐は平古場の下肢を覆っていた服を脱がせてしまう。そして、先程の
キスによって半勃ちになっている熱の中心に、ちゅっと口づけた後、ぱくんとそれを口の
中に含んだ。まさかそんなことをされるとは全く予想していなかったので、平古場はぎょ
っとして、思わずその体を起こす。
「なっ!!何してるば!?裕次郎っ!!」
「んー、凛の咥えてる。」
「やめろって・・・汚いだろっ!!」
「汚くなんかない。俺は、凛の全部が好きだぜ。」
そんなことを言いながら、甲斐はちゅうっとその熱の先を吸う。あまりに直接的な刺激に
平古場は、ビクビクと体を震わせ、その強い快感に心を奪われてしまう。
「ああっ・・・やあぁ・・・・!」
「ほら、気持ちいーだろ?」
「あっ・・・あぅ・・・ふあっ・・・」
一度その感覚の良さを知ってしまうと、もう抵抗することなど出来ない。甲斐の髪をぎゅ
っと握りながら、平古場は与えられる快感に身を任せる。
「裕次郎っ・・・あっ・・・やあっ・・・」
「凛の体は本当素直だよな。ほら、もうこんなに溢れてきてるし。」
先っぽの方から滴り落ちる蜜を、甲斐は舐め取るように下から上に向かって舐め上げる。
それも平古場にとっては大きな刺激となり、より濃い蜜を放出したいという欲求を増大さ
せる。
「やあ・・んっ・・・ああっ!!」
平古場の愛らしい声を頭の上で聞きながら、甲斐はペロペロと平古場の熱を舐め続ける。
「あぅ・・・ゆうじろー・・・もう・・出ちゃ・・・出ちゃう・・・」
「出して、凛。俺、凛の飲みたい。」
「やあっ・・・そんなのっ・・・ダメ・・・」
「ダメって言われても飲むし。」
ぱくんと根元まで咥えて、少し強く吸ってやれば、平古場はもう我慢出来なくなる。熱く
濃い白蜜を平古場は甲斐の口内へと放った。
「ふあっ・・あ・・・ダメっ・・あっ・・・ああぁ――っ!!」
「・・・・っ!」
たっぷりと放たれた蜜を甲斐は喉を鳴らして飲み込む。少し苦いその蜜は、紛れもなく平
古場の味で、甲斐の舌を痺れるほどに満足させた。
「・・・たまんねぇ。」
そんなことを呟く甲斐に、平古場は乱れた息を整えながら尋ねる。
「ハァ・・・ホントに飲んだば?」
「ああ、全部飲んださー。凛のでーじ上等やったし。」
「信じらんねー・・・」
「けど、気持ちよかっただろ?」
「そりゃ・・・そうだけどさー。」
自分の出したものを飲まれたことが相当恥ずかしいようで、平古場は顔を真っ赤にしてう
つむいている。そんな態度を見せる平古場が可愛くてしょうがないと、甲斐は下から平古
場の顔をじっと眺めた。
「な、何でそんなに俺の顔ばっか見てるかよ!?」
「だって、凛の顔、でーじ可愛いし。」
「恥ずかしいだろー。」
「別に俺は恥ずかしくないさー。」
「当たり前だろー!!恥ずかしいのは、俺の方なんだからよー。」
そんなやりとりをしつつ、甲斐は体を起こし、平古場と向かい合うように座る。そして、
すっと平古場の唇の前に左手の指を持ってゆく。
「・・・?何か?」
「俺の指、舐めて?」
「別にいいけど・・・・」
特に断る理由もないので、平古場は甲斐の指をペロペロと舐める。指が平古場の唾液でい
い感じに濡れると、甲斐はその指を平古場の口の中から抜いた。
「もういーぜ、凛。」
「ぷは・・・どうするば?それ。」
「ココ、慣らさないとキツイだろ?」
そう言いながら、甲斐はその濡れた指でふにっと平古場の蕾に触れた。そのまま何度か入
り口を突っつくと、自然とそこは収縮してくる。
「やっ・・・」
「へーきへーき。ほら、力抜いて。」
くぷんっ・・・
「ひあっ・・あっ!!」
甲斐の指が一本入るだけで、平古場はビクッと身を震わせる。指を咥え込んだ蕾はきゅう
きゅうと収縮を繰り返し、甲斐の指をさらに奥に導こうと蠢く。
「凛の中、柔らかくて触り心地最高だぜ。」
「あっ・・・やあっ・・・裕次郎っ・・・!」
「なあ、もっと足開いて?その方がやりやすいんだけど。」
「んっ・・・ああっ・・・・」
恥ずかしいと思いつつも、平古場は甲斐の言う通り大きく足を開く。開かれた足の中心に
ある蕾をじっと眺めながら、甲斐は中を探るようにゆっくりと指を動かした。
「凛のココ、でーじエロいし。くちゅくちゅいって、俺の指、美味しそうに食べてる。」
「やあっ・・・変なコト・・・言うなぁ・・・」
「だってよー、本当のことだぜ。ほら、もう一本食べたいって言ってるみたいだから、俺
の指、もう一本入れてやるよ。」
「ひあっ・・・あぁんっ!!」
甲斐がもう一本指を増やすと、平古場はトクンと精を放ち、達してしまう。そんな平古場
を見て、少々驚く甲斐だったが、感じやすいのは悪いことではないと、ふっと口元を緩ま
せる。
「あっ・・・あぅ・・・」
「指増やしただけでイっちゃうなんて、本当凛はやらしーな。」
「裕次郎の意地悪っ・・・!!」
「意地悪で結構。でも、俺にこうさせてるのは凛だぜ?」
ニヤリと笑うと、甲斐はぐりっと指を動かす。それだけではとどまらず、わざと音を立て
るように指を動かし、蕾を擦り上げるかのように出し入れを繰り返した。
ぐぷっ・・・ぐちゅ・・くちゅ・・・・
「あっ・・・ああっ・・ひああっ!!」
「ふっ、すっげぇ声。ココ弄られんの、そんなに気持ちイイのか?」
「指・・・入ったり・・出たり・・・中・・・変になっちゃ・・・・」
「へーきやし。ほら、凛のココ、もうこーんなに広がるぜ。」
指を入れたまま、甲斐は平古場の蕾をぐいっと広げる。入り口を無理矢理広げられる感覚
にも、平古場は感じてしまい、ビクビクと下肢を震わせる。
「んあぁっ・・・広げちゃ・・やあぁ・・・」
「可愛いー、凛。なあ、そろそろ入れていい?」
ちゅぷっと平古場の蕾から指を抜くと、甲斐は平古場の目を見ながらそんなことを尋ねる。
突然空っぽになってしまった蕾が激しく疼き、平古場は息を乱しながらこくこくと頷いた。
ゆっくりと平古場を布団の上に押し倒し、甲斐はすっかり熱り立った楔を平古場の柔らか
な蕾に押しつけた。
「ふあっ・・・!?」
「力抜いてて、凛・・・」
ずっ・・・ずぷっ・・・
「いっ・・・ああぁっ!!」
存分に指で弄られていたそこは、いとも簡単に甲斐の楔を受け入れた。熱い塊が内側を抉
るように擦り上げる。もっと奥の奥まで擦って欲しいと言わんばかりに、平古場のそこは
奥へ誘い込むように蠢き、甲斐のそれを程よい力で締めつけた。
「ハァ・・・じゅんに食われてるみたいやし・・・」
「ああっ・・・ゆう・・じろー・・・・あっ・・・んあっ・・・」
「へーきか?凛。苦しい?」
「苦しくはない・・・けど・・裕次郎の・・・あっつくて・・・中・・・溶けそ・・・」
ふるふると震える腕を甲斐の背中に回し、平古場は甲斐の楔の熱さと触れ合っている部分
から生まれる快感に浸る。もっとたくさん甲斐を感じたいと、平古場はゆるゆると自ら腰
を揺らし、ねだるような仕草を見せる。
「裕次郎ぉ・・・もっといっぱい・・動いて・・・」
「そんなふうに言われたら、そーしないわけにはいかないさー。」
平古場のオネダリにすっかりやられ、甲斐は平古場の中を全て埋め尽くすかのように、激
しく腰を打ちつけ始める。甲斐の熱で何度も擦られれば擦られるほど、平古場の内側は感
じやすく敏感になり、より大きな快感を得られるようになってゆく。
「ふあっ・・あぁんっ・・・ゆうじろっ・・・あっ・・・んあぁ・・・っ・・」
「凛っ・・・すげ・・・気持ちイイっ・・・」
「ゆうじろぉ・・・俺の中・・・裕次郎でいっぱいにしてぇ・・・」
「ああ、俺の全部、凛にあげるさー。」
何度も何度も甲斐が自分の中を出入りする感覚に平古場は夢中になってゆく。全身がとろ
けてしまいそうなほどの甘い痺れと内側から溶かされてしまうのではないかと思うほどの
大きな熱。そして、甲斐の口から発せられる想いのこもった言葉が平古場の胸を満たして
いった。
「凛、好きだぜ。いつの世までも、ずぅーっと一緒に居るんだからな・・・」
「うん・・・裕次郎・・・」
ミンサー織りに込められた言葉が平古場の耳に響く。次の瞬間、甲斐の唇が平古場の唇に
重なった。そして、一際濡れた音と共に、甲斐の楔が身体の奥を穿つ。
「・・・・っ!!」
「んんっ・・・んん――っ!!」
望み通り、平古場の内側は甲斐の放った蜜で満たされる。甲斐の想いを全身で受け止め、
平古場はこれ以上ない満足感を感じながら、絶頂を迎える。気絶しそうなほどの快感。し
かし、平古場は最後の最後まで甲斐を感じていたいと決して意識を手放すようなことはし
なかった。
沖縄は暖かいと言えども、2月はやはり寒いので、二人はしっかりとパジャマに着替えて、
後始末を終えた布団に横になった。行為の後の気だるさが二人をうとうとさせる。
「凛、まだ起きてるば?」
「んー、かなり眠いけど、起きてる。」
「なら、もうちょっと俺の近くに来いよ。」
「おう。」
平古場のぬくもりをもっと感じていたいと、甲斐はより体が触れ合うように平古場を自分
の方へと招く。
「やっぱ、くっつくとあったかいな。」
「そーだな。」
「凛。」
「ん?何?」
平古場の体に腕を回しながら、甲斐は平古場の名前を呼ぶ。お互いの顔がかなり近くにあ
るような状態で、甲斐はふっと笑い、今思っていることを素直に口に出した。
「今日はありがとな、凛。プレゼントもチョコもでーじ嬉しかったさー。」
「お、おう。・・・裕次郎が喜んでくれたんなら、俺も嬉しいさ。」
改めてお礼を言われるのは少し照れくさいと思いつつも、そう言われるのはやはり嬉しい。
ほんの少し顔を赤らめながら、平古場は呟くようにそう口にした。
「さっきのもすっげぇよかったし。今日は本当最高のバレンタインデーだぜ。」
にっこりと笑ってそんなことを言ってくる甲斐に、平古場はきゅんと胸がときめいてしま
う。しかし、若干天邪鬼な部分がある平古場は、素直にその言葉が嬉しいということを表
さずに少し方向性の違うことを言って誤魔化そうとする。
「ホワイトデーは3倍返しだぜ。裕次郎、相当頑張んないとだな。」
「あったりまえさー。ホワイトデーは、今日の3倍どころか10倍でも100倍でも、凛
のこと喜ばせてやるぜ!」
まさかこんな返しをされるとは思っていなかったので、平古場は戸惑いつつ真っ赤になっ
てしまう。
「・・・・ずるいし、裕次郎。」
「あい?何か言ったば?」
「別に何でもないし。俺、もう眠いから寝るぜー。」
「そうだな。あっ、その前に・・・」
「へっ・・・?」
ちゅっ
もう寝ると言っている平古場の唇に、甲斐は軽く触れるだけのキスをする。
「なっ・・あっ・・・!?」
「おやすみのちゅうだぜ。せっかくバレンタインなんだから、これくらいはしとかないと
な。」
悪戯っ子のように笑っている甲斐の顔を見て、平古場はぷぅっと頬を膨らませた後、ぼす
っと甲斐の肩に顔を押しつける。恥ずかしさと嬉しさが混じったこの気持ちをどうすれば
いいか分からず、平古場は顔を見られないようにそうしたのだ。
「凛?」
「もう寝るからな!!おやすみ!!」
少し怒鳴るような口調で、平古場はそう言い放つ。そんな態度の平古場も可愛らしいと、
甲斐はくすくすと笑いながら、その言葉に答えた。
「おやすみ、凛。」
どちらも『おやすみ』という言葉を口にすると、今まで開いていた目を閉じた。目を閉じ
ても、触れ合う部分で感じられるぬくもりから、相手がすぐ側にいることを確認出来る。
大好きな人と一緒に眠るトキメキと安心感。身も心もバレンタインの甘い雰囲気に包まれ
ながら、二人はゆっくりと夢の中へと落ちてゆくのであった。
END.