今日の宍戸はこれ以上なくご機嫌だった。そんなに大したことではないのだが、宍戸にと
っては跡部との試合に勝ったくらいの勢いだ。次の日が祭日なので、いつも通り跡部の家
に泊まりに来ている。跡部のベッドに座りながら、宍戸はさっきからニコニコとしていた。
「へへへ。」
「さっきから何なんだよ?そんなにアレが嬉しいのか?」
シャワーから上がった跡部が髪を拭きながら、宍戸の隣に座る。あまりにもへらへらした
顔の宍戸を見て呆れるが、まあ、一般人にとっては嬉しいとこなのだろうと一応は理解を
示してやる。
「だってよぉ、今までで初めてだぜ。定期テストで満点取るなんて。」
もう言葉一つ一つに嬉しさが滲み出ている。今日、学校でこの間やった定期テストが返さ
れた。そのテストで宍戸は満点を取ったのだ。教科はもちろん宍戸の得意な歴史。跡部と
一緒に勉強したこともあり、いつも以上によく出来たのだ。
「あの程度のテスト、満点取れて当然だろ?」
「お前はいつも満点取ってんだからそう思って当然だろうけど、俺にとってはすごいこと
なんだよ!!」
「ああ、そうかよ。それより、今日も当然するよな?」
いきなり話を変えられ、宍戸はむぅっとするが機嫌がいいのはまだ持続中だ。いつもなら
初めの方は嫌がるのだが、今回は普通に跡部の提案に同意した。
「ああ。別にいいぜ。今日は俺、機嫌いいからな。」
「そうか。それじゃ・・・」
跡部が押し倒し、始めようとしたその時、突然宍戸はストップをかけた。
「ちょっと待ったー!!」
「ああ!?何だよ!?」
「俺、あんな点数取ったの初めてなんだぜ。」
「それはさっきから何度も聞いてる。」
「だから、いつもとは違うふうにしようぜ。つーか、俺にご褒美くれ。」
「はあ?何だよそりゃ?」
確かに宍戸が満点取るなんてことはそう滅多にあることではないが、こんな状況の時にご
褒美をくれと言われても困ってしまう。
「どうして欲しいんだよ?」
「そうだなぁ・・・・あっ、そうだ!!イメクラしようぜイメクラ!!」
「お前からそんなこと言ってくるなんて珍しいな。」
宍戸からの意外な提案に跡部は驚きながらも、どこか嬉しそうな表情になる。どんなもの
をしようか考え始めるとすかさず宍戸が口をはさんだ。
「俺がご主人様で、お前が世話役っつーのはどうよ?」
屈託のない笑顔で宍戸は言う。今日あったことでどこまでも優越感に浸りたいのだろう。
だが、それを聞いて跡部の表情は一変する。自分がご主人様で宍戸がメイド、というよう
なものであればすぐに承諾するのだが、それを逆にしようと宍戸は言っている。跡部にし
たら微妙に納得のいかない設定であろう。
「それ、逆だろ。俺がご主人様でお前が・・・・」
「俺はそれがいいんだよ!!なあ、たまにはいいだろー。跡部ぇ。」
「うっ・・・・」
いつも以上に可愛く誘うような声でねだられ、跡部は何も言い返せなくなってしまった。
まあ、やることは同じだしな。シチュエーションがどうであれ、俺が主導権を握れれば問
題ねぇ。
というわけで、仕方なく跡部はその宍戸の提案を呑む。宍戸からすれば少しは跡部より優
位な地位になれるということで素直に喜んだ。
やったー、たまには俺が優勢になったっていいよな。こんなにこういうことすんのが楽し
みになるのって久々かも。
そうは決めたもののまずどうすればよいのか分からない。跡部はもうそういうモードにバ
ッチリ切り替えている。なので、自らは手を出さないのだ。
「跡部、何で何もしてこねーの?」
「ご主人様が何も命令なさらないのに俺は動くことは出来ません。」
あっ、そうか。俺が命令しなきゃダメなんだな。うーん、まず何させようかな?俺が主人
なんだから何やってもいいだろ。
そんなことを考えながら、宍戸は自らズボンを脱ぎ去ってしまう。下着はまだつけたまま
だが、綺麗な生足を自ら晒すとは思わなかったので跡部は正直驚いた。そして、宍戸は子
供が悪戯しようと試みるような表情で、跡部にさらっとこう言い放つ。
「足を舐めろ。」
いつもは自分が言うような命令口調で言われ、ちょっと腹が立つなーと思いながらも、跡
部はふっと笑ってその通りの行動を起こす。もちろん心の内ではそう命令したことを後悔
させてやるというようなことを考えているのだが・・・
「おおせのままに。」
宍戸の足を軽く持ち上げるとその細い足首に軽くキスをする。そのまま舌を使い爪先の方
へ辿ると宍戸はピクッと身体を震わせた。
「んん・・・・」
やっべぇ、これ思った以上に感じちゃうかも〜。でも、自分で命令したことだし、少しく
らいは我慢しないとな。
ところが、跡部はそんな宍戸の決意を揺るがすかのごとく、あらゆるテクニックを駆使し
て宍戸の足を舐め回す。当然、その度に宍戸は声を上げることになってしまう。
「あっ・・・ぅあ・・・」
「ご主人様、そんなに俺に足を舐められるのが気持ちイイんですか?」
「ち、違っ・・・」
「まだまだ、俺の技量が足りないんですね。それでは・・・」
ちゅっ
「ひっ・・ぁあっ!!」
弱い場所を思い切り吸われ宍戸は思わず高い声を上げてしまう。どんなに主人ぶってよう
が宍戸は宍戸だと、跡部は楽しそうな笑みを浮かべた。
弱いとこ全部知りつくしてる俺に足なんて舐めさせるからいけねぇんだよ。もっと泣かせ
てやれ。
もっと宍戸を泣かせてやろうと跡部は足先だけではなくふくらはぎや太腿にまで舌を這わ
せる。
「やっ・・・あぁ・・・そこはダメぇ・・・」
「おおせのままに。」
宍戸が嫌だと言えばぴたっとそこで動きを止める。今は宍戸がご主人様。ご主人様の言う
ことは絶対。だが、それ故に少しでもそういうことを言ってしまうと跡部は行動をやめて
しまう。
何気にこのシチュエーションっていいんじゃねぇの?こいつが主人ってことは、こいつは
俺に命令しなきゃいけないわけだし、嫌だとかそういうこと言ったら俺はやめなきゃいけ
ねぇ。ということは、必然的に宍戸はやって欲しいことを自分で言わなきゃいけなくなる
わけか。おもしろいじゃねーの。
このシチュエーションの楽しみを見つけてしまった跡部はそれを最大限に活用しようと、
いやらしい笑みを浮かべる。宍戸はまだそんな思惑に気づいていない。ただ、嫌がる意味
を含む言葉を言うと跡部が動きを止めてしまうということには気がついた。
「あっ・・・えっと・・・」
「どうなさいました?ご主人様。」
「今の・・・やっぱやめなくてイイ・・・」
「おおせのままに。」
顔を真っ赤にしてうつむきながらそう言う。跡部は必死で笑いを堪えながら、さっきの続
きを始めた。足への愛撫は宍戸を高めさせるには十分で、それは跡部も気づいていた。だ
が、宍戸の命令があるまではそこに触れることは出来ない。
うーん、どうしよう・・・。触って欲しいのはやまやまなんだけど、それを言わなくちゃ
跡部はやってくれねぇし。つーか、俺、すげぇ間違ったシチュエーション選んじまったか
も!!これって跡部がおいしくて俺が恥ずかしいだけじゃん!!
やっと宍戸も気がついたようだ。だが、今更気づいても遅い。自分でやりたいと言い出し
てしまったのだからしょうがない。恥ずかしいのを必死で堪えて、宍戸は次の命令を下し
た。
「景吾・・・俺のを咥えろ。」
「おおせのままに。」
命令口調なのだが、どこかまだ抵抗がある感じだ。跡部が言ったのならこんなふうにはな
らないであろう。跡部は楽しそうに下着を取り去り、既に熱を持っている宍戸のモノを口
に含む。
「うっ・・あんっ・・・」
その瞬間、宍戸の口から思わず愉悦の声が零れた。簡単に咥えろとは言ったものの、それ
は跡部の美技を十分に堪能することになってしまう。それも、嫌だとかやめろということ
は言えない。普段ならそんな言葉を言っても無視して跡部が勝手に進めてくれるので、平
気で言えるのだが、今回はそれをを言うと跡部は本気でやめてしまう。それは困るとまた
心の中で葛藤しまくりだ。それがまた、逆に感覚を研ぎ澄ませてしまう。
「あっ・・・あぁ・・・んんっ・・・あぅっ・・・」
「どうですか?ご主人様。」
聞く言葉は優しいが表情は全くそれとは合わないものになっている。世話役という役割で
あっても跡部であることには変わりない。宍戸を自分の好きなように犯して泣かせたいと
いういじめっ子跡部様なのだ。
「イイ・・・景吾っ・・・ハァ・・あぁ・・あっ・・・」
「そうですか。それはよかった。ご主人様が気持ちイイことは俺にとって嬉しいことです
から。」
「ふっ・・・そんな・・あっ・・・んんっ・・・」
いつもは言われないようなことを言われ宍戸は余裕がなくなってしまう。高まり続ける熱
を抑えることが出来ずに宍戸は涙声になり、跡部の髪を掴む。
「ハァ・・あっ・・・けぇごっ・・・あぁ・・・」
「やめますか?」
「やめるなっ・・・ハァ・・やめるなぁ・・・あっ・・・」
「おおせのままに。」
宍戸はもう自分でも何言っているのか分からなかった。ただこの状態でやめて欲しくなく
て、必死でそれを跡部に伝える。宍戸の言うとおりに跡部は宍戸のモノを咥え、舌と唇を
使い愛撫をし続ける。もう宍戸の頭は真っ白だった。
「ああっ・・んぅ・・・も・・・出るっ・・・」
ちゅっ
「ああっ・・・ああ――っ!!」
一際跡部が強く吸うと宍戸はあっという間に達してしまう。放たれた熱を飲み干すと跡部
は一つ大きく息をついた後、宍戸の耳元でこう囁いた。
「ご主人様の蜜は大変に美味でございます。そんな貴重なものを飲ませてもらい光栄です。」
「っ!?」
瞬間、宍戸の中で何かが弾けた。もうどうでもいい。いちいち命令する度に恥ずかしがる
のがバカらしくなってきた。跡部の胸ぐらを掴むと噛み付くようにキスをして、無茶苦茶
な命令をする。
「俺がお前のをやる。その間に俺のを慣らせ!!すぐにお前のを入れられるくらいにな!!」
「・・・・・。」
さすがにこの命令には跡部も唖然としてしまう。こんなことをキレながら言われても・・・
という感じだ。
「返事は!?」
「お、おおせのままに。」
パジャマの上だけを羽織っているという感じで宍戸は跡部の足の間に顔を埋める。跡部は
言われたとおりに腕を伸ばし、宍戸のバックを慣らし始めた。
何つー命令してんだよこいつ。でも、ま、こんな状況を自ら作るってのはそう滅多にねぇ
からな今はとにかく楽しむか。
「んぐっ・・・ん・・・んん・・・」
「ご主人様、どのあたりがよいんですか?」
「ふっ・・・んんっ!!・・・んっ・・ぁ・・・」
「って、歯立てるな!!」
歯を立てられたことに役柄を忘れて抗議すると、宍戸は潤んだ目で跡部を睨んだ。ちゃん
と世話役のままでいろということらしい。跡部は溜め息をつくとバックに持っていってい
る指を激しく動かす。仕返しだといわんばかりにだ。
「んっ・・・んくっ・・・ぁん・・・!!」
「ご主人様のココ、すごく濡れてきてますよ。俺の指で弄られてそんなにイイんですか?」
「んん・・・んっ・・・ふ・・・」
もうそろそろ跡部も優しい言葉だけをかけることに飽きてきた。この際だから、この役柄
を使ってとことんいじめてやろうと考える。
「自分が主人なのにそんなことしていいのかよ?やらしい奴。」
「景吾っ、テメー、ちゃんとやれよ!!」
「まだ、俺は世話役のままだぜ。受々しい主人を犯して、その全てを手に入れようとする
野心ある世話役だ。」
「なっ!?」
「ほら、もういいだろ?挿れるからな。」
「うわっ・・・!!ちょっ・・・あっ・・ああ――っ!!」
跡部はあっという間に宍戸を押し倒し、足を無理やり開かせ、自分を挿入させていった。
立場が逆転してしまって宍戸は納得いかない〜!!という表情を見せるがここまできてし
まったらもうどうしようもない。とにかく跡部を受け入れ、何とか意識だけは保とうと努
力する。
「お前が主人なんだろ?命令するんだったら何か命令しろよ。」
「そ・・んな・・・こんな状況で何命令すんだよ・・・!!」
「何でもいいぜ。もっと奥を突いてくれとか、動いてくれとか何でもあるだろうが。」
「そんなこと・・・言えるかっ!!」
「じゃあ、俺の好きにするぜ。いいな?」
「ああ。もういいよ!!・・・結局、こうなるのかよ・・・」
はあーと溜め息をつきながらも、まあさっきまでは自分が優勢だったからといいかと思い
跡部の好きにやらせてしまう。さっきの余韻が残っているのか、跡部の動きはどこか宍戸
を気遣うような感じでもある。それに気がついて宍戸は最後の命令を下した。
「ハァ・・景吾・・・」
「何だよ?」
「まだ、俺が主人だっての続いてるよな・・・?」
「まあ、一応な。何だよ。まだ命令し足りないのか?」
「最後・・の命令・・・俺にキスして・・・・最高に気持ちよくさせて・・・イカせろ。」
この命令を聞いて跡部は笑いながら頷いた。
「おおせのままに。」
そう言うと跡部は宍戸に深いキスを施し、己を放つかのごとく奥を突く。その瞬間、宍戸
の頭から跡部以外のことが全て消える。跡部も同じだった。宍戸のことのみが頭の中を凌
駕し、身体の全ての器官は宍戸のことしか感じなくなる。
『・・・・・っ!!』
唇が重なっていることでどちらの声も漏れることはなかったが、確かに二人は快楽の高み
へと同時に達した。熱を放った後も二人は余韻に浸りたいとしばらく口づけだけは交わし
続けるのであった。
「楽しかったな。なあ、宍戸。」
「最後でお前があんなふうにしなかったらな。」
「いいじゃねぇか。それともお前はあの状況をキチンと命令できたのか?挿れろだの動け
だの。」
「うっ・・・。」
「出来ねぇだろ。どうせ。俺様に感謝しろよ。」
確かにあのまま跡部が素直な世話役のままであったら、宍戸はもっと恥ずかしいことを自
ら言わなければならなかった。そのことに関してだけは跡部に感謝してもいいかもと思っ
てしまう。
「で、でも、やっぱり最後まで優しい跡部がよかった。」
「!!」
「まあ、いいや。どうせ跡部だしな。」
意外なことを宍戸に言われてしまって跡部は少し動揺する。上半身何も来ていないままの
状態で跡部は自分の机の引き出しからあるものを出し、宍戸のもとに持って来た。
「ほらよ。」
「何だよ?」
「やる。」
「へっ?」
跡部が持ってきたのは金色のプレートがついたシンプルなネックレスだった。もちろん鎖
も金色だ。
「お前、満点取ったご褒美が欲しいって言ってたじゃねぇか。」
「えっ!?あれは冗談・・・・」
「俺様がやるって言ってんだ。素直に受け取れ。」
「おう・・・。サンキュ。」
宍戸は素直にそのネックレスを受け取った。本当に貰えるとは思っていなかったので、ち
ょっと戸惑いがちだ。折角貰ったのだからと宍戸はそれを自分の首につけてみる。
「どうだ?似合うか?」
「俺様ほどではねーけどな。でも、まあ似合うんじゃねぇ?」
ふっと笑いながらそのネックレスに接吻を施す。素直に似合うとは言ってくれてはいない
が何となく嬉しくて宍戸は跡部の頬に軽くキスをした。
「まあ、ありがたく受け取っておいてやるよ。ホント、あんがとな。」
「素直にありがとうだけ言やぁいいのに。」
「ウルセー。お前に言われたかねぇよ。」
言葉は悪いが二人の顔は実に楽しそうだ。普段とは違うことがあって、普段とは違うこと
をして、でもいつもと変わらない。そんな楽しさを満喫しながら二人の夜は更けていった。
END.