「ふぅ、随分遅い時間になっちゃったなあ。」
委員会の仕事がなかなか終わらず、かなり遅くまで仕事をしていた伊作は、薬臭くなった
髪や体を洗うために、もう誰も入らないような時分に風呂に入った。寝間着に着替え、暗
い廊下を一人歩いていると、ほとんど明かりが消えている中、一室だけまだ明かりの灯っ
ている部屋があった。
「あそこの部屋って、会計委員会の部屋だよな。でも、お風呂入る前に会計委員会の子達
とすれ違ったし・・・あ、でも、文次郎はいなかったかも。」
まだ、文次郎が残っているのかもしれないと、伊作は明かりのついたその部屋に向かって
歩いて行く。そこまで音を立てていたつもりはなかったが、襖の前に立った瞬間、中にい
る人物から声をかけられる。
「誰だ?」
突然声をかけられたことに驚いた伊作であったが、その声の主が文次郎だと分かり、ゆっ
くりと襖を開ける。
「あ、ゴメンね。邪魔するつもりとかは全然なかったんだけど、この部屋だけ明かりがつ
いてたから・・・」
「伊作か。こんな遅くに何してんだ?」
「委員会の仕事が長引いちゃって、今しがたお風呂入ってきたとこ。お風呂行くとき、眠
そうな他の会計委員会の子達とすれ違ったから、何でまだこの部屋明かりついてるんだろ
うなーと思って。」
「まだ、少し計算しなきゃいけないのが残っていたんだが、もう俺一人で十分だったから、
他の奴らは先に帰らせた。それも今終わったとこだがな。」
「遅くまでお疲れ様。」
「お前もだろ?とりあえず、もう仕事は終わってるし、そんなとこ突っ立ってねぇで、入
れよ。」
文次郎に招かれ、伊作は後ろ手に襖を閉めて、部屋の中へと入る。机の上には、いくつも
の帳簿と重そうなそろばんが乗っていた。
「委員長改選で、ちょっとだけ会計委員長やったけど、本当文次郎すごいよね。ぼく、そ
ろばんが下手だから、全然仕事が捗らなくて。」
「まあ、これでも一応六年間やってることだしな。」
「適材適所って大事だよね〜。他の委員会も大変みたいだったし。」
「そうだな。」
学園長の思いつきで行われた委員長改選のことを思い出して、二人はクスクスと笑う。自
分達もかなり大変だったのだが、お互いの委員会の委員長を体験した文次郎と伊作は、相
手の委員会の委員長がどれだけ大変かを身を持って知ることが出来て、それはそれでよか
ったと思っていた。
「ふぅ、それにしてもお風呂入ったばっかりだから、ちょっと暑いや。」
「確かに少し顔が赤いみてぇだな。」
「本当に?」
ほのかに赤く染まった顔で首を傾げる伊作に、文次郎はドキッとする。長い髪もまだ少し
濡れていて、いつもより色っぽいなあなどと思っていると、だんだんとムラムラしてきて
しまう。ふと気づくと、文次郎の左手は伊作の腰の下にあった。
「・・・文次郎?」
「わっ・・・す、すまんっ!!つい・・・」
寝間着の上からお尻を触られていたとしても、その手は文次郎のものだ。そこまで嫌な気
分ではないと、伊作は少々ドキドキしつつも、嫌がるような素振りは見せなかった。むし
ろ、もっとその気にさせてしまおうと、悪戯っ子のような笑みを浮かべ、寝間着の下につ
けている褌に手をかける。
パサっ・・・
薄い布が床に落ちる音を聞いて、文次郎はドギマギしながら伊作の顔を見る。
「こうした方が触りやすいでしょ?」
「い、伊作・・・」
「文次郎になら、いくら触られても構わないよ?」
恥ずかしそうにはにかみながら、伊作はそう口にする。そんなことを言われれば、我慢を
しようにも出来なくなってしまう。寝間着の上からゆっくりと双丘を撫でると、伊作は恥
ずかしさと興奮が入り混じったような表情で、吐息を漏らす。
「んっ・・・」
「そんな顔見せられたら、止まらなくなっちまうぜ?」
「止めて欲しいような顔に見える?」
「いや、それはねぇな。」
やる気満々の伊作に、文次郎は苦笑する。伊作の寝間着の隙間から利き手を滑り込ませる
と、文次郎は割れ目の中心に指を持って行く。
「――っ!!」
「ココはさすがに嫌か?」
ビクンと身体を震わせる伊作にそう尋ねるが、伊作はふるふると首を横に振った。嫌でな
いならと、文次郎はまだ閉じたままの入口に指を入れる。
「ふっ・・・あんっ・・・!!」
「痛くは・・・なさそうだな。」
いきなり入れてしまったので、痛かったのではないかと心配したが、伊作は蕩けるような
表情で呼吸を乱している。予想以上にやらしい表情を浮かべている伊作に興奮しつつ、文
次郎はゆっくりと伊作のそこをほぐしていく。
「んんっ・・・あぁっ・・・・」
「伊作。」
「な、何・・・?」
「寝間着の裾、ちょっと持ち上げとけよ。」
「へっ・・・?何で?」
「その方が動かしやすいからよ。」
「う、うん・・・」
文次郎に言われるまま、伊作は両手で寝間着の裾を持ち上げる。褌を脱いでしまった状態
でそんなことをすれば、直接は触れられずとも文次郎に内側を弄られている刺激で、すっ
かり勃ち上がっているそれを文次郎の目に晒すことになる。そのことに気がつき、伊作の
顔は真っ赤に染まる。
「み、見ないで・・・文次郎。」
「俺からしたら、見せつけてるようにしか見えないが?」
「だって、文次郎がこうしろって・・・!!」
「ああ、そうしてもらった方が、いろいろと捗るからな。」
ニヤリと笑う文次郎の顔を見て、伊作はこれも一つの目的だったのかと気づく。しかし、
今更裾を下ろすことも出来ないと、恥ずかしさを我慢し、伊作はそのまま文次郎の好きに
させる。
「ハァ・・・ぅ・・ああっ・・・・」
「見られて恥ずかしいのか?」
「あ、当たり前だろっ・・・ふあっ・・・・」
「でも、さっきより明らかに感じやすくなってるよな?」
「っ!?そ、そんなこと・・・・」
文次郎に指摘されずとも、それは自分が一番よく分かっていた。ドキドキと鼓動が速くな
り、文次郎の指が入っているそこが嫌というほど疼く。少しでも指が動こうものなら、す
ぐにでも達してしまいそうなほど感じていた。
「そんなことないって言われても、ちょっと動かすだけで、喰われてるみてぇに指がぎゅ
うぎゅう締めつけられるし、前もトロトロだぜ。」
「うっ・・・仕方ないだろっ・・・・文次郎に弄られて、文次郎に見られてるって思った
ら・・・・身体が勝手に反応しちゃうんだから!」
「そこまで素直に肯定されると、もっとひどくしたくなっちまうぞ。」
「あっ・・・そこ、ダメぇっ・・・!!」
伊作の素直な言葉に煽られ、文次郎は伊作の一番弱いところを抉る。もともと限界だった
こともあり、いきなり大きくなった刺激に伊作はあっけなく達してしまった。
(ヤバイ・・・すごい気持ちイイ・・・・)
激しく呼吸を乱しながら、伊作は恍惚とした表情で絶頂の余韻に浸る。いい表情をするな
あと思いながら、文次郎は力の入っていない伊作の腰を自分の方へと引き寄せた。
「俺もそろそろ限界なんだが。」
「うん・・・」
「入れていいか?」
「いいよ。今度はぼくが文次郎を気持ちよくさせる番。」
そう言って微笑むと、伊作は文次郎の熱をトロトロになった入口に押し当て、ぐっと腰を
落とす。十分にほぐされたそこはいとも簡単に文次郎のモノを飲み込み、ほどよい力で内
側に入ってきたそれを締めつける。
「くっ・・・」
「ああぁっ・・・んんっ!!」
文次郎の熱さを内側で感じながら、伊作は文次郎の首に抱きつく。伊作との距離が一気に
縮まったことにより、風呂上がりの何とも言えないよい香りが文次郎の鼻をくすぐった。
「ハァ・・・文次郎・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・すごい、気持ちいいよ・・・」
「何か・・・風呂上がりだからか、すげぇイイ匂いがするぜ。」
「本当に?なら・・・もっとくっつく・・・」
文次郎にいい匂いだと言われ、嬉しそうにそう呟き、伊作はより文次郎に密着するように
体を寄せる。自分も文次郎ももっと気持ちよくなるようにと、そのままゆっくりと腰を動
かした。
「ふっ・・・あぁ・・・」
「伊作っ・・・」
慣れてくると、腰使いはだんだん激しいものになり、どちらも余裕がなくなっていく。
「ひっ・・ああっ・・・文次郎っ・・・ああぁっ!!」
「ハァ・・・そんなにされたら・・・もう・・・っ」
ぎゅっと伊作の身体を抱きしめ、文次郎は伊作の中に熱い飛沫を放つ。中が文次郎でいっ
ぱいになるのを感じ、伊作も少し遅れて達する。
「ああっ・・・文次郎っ・・・―――っ!!」
文次郎の名前を呼びながら、全身で気持ちよさを味わい、伊作は文次郎の肩に顔を埋めた。
事が終わっても、しばらく文次郎に抱きついたまま離れないでいた。さすがに夜も遅いの
で、そろそろ長屋に戻った方がよいのではないかと、文次郎は声をかける。
「伊作。」
「んー?」
「そろそろ自分の部屋に戻った方がいいんじゃねぇか?」
「もうちょっと文次郎と一緒にいたい。」
わがままな子供のようにそう呟く伊作に文次郎はほだされそうになるが、自分はさておき、
伊作はちゃんと寝かせたいと思う。
「俺もこれから風呂入って、自分の部屋に戻るからよ。」
「・・・・・。」
納得いかないという顔をしている伊作に、文次郎は仕方ないなあといった表情で小さく溜
め息をつく。そして、伊作の顎をぐいっと上げると、そのまま接吻をする。
「っ!?」
「今のは、何だ・・・寝る前の挨拶的なアレだ。」
「おやすみのキス・・・ってこと?」
「・・・そんな感じだ。」
まさか文次郎からおやすみのキスをしてもらえてるとは思っていなかった伊作は、ご機嫌
な様子で文次郎から離れる。
「おやすみのキスされちゃったら、戻らないわけにはいかないなあ。」
「ちゃんと帰って寝ろ。」
「それを文次郎が言う?自分こそあんまり寝ないじゃない。」
「俺はいいんだよ。」
「まあ、いいや。ちょっとの時間だけど、文次郎とくっついていられてよかった。また、
明日ね。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみ、文次郎。」
すっと立ち上がると、伊作は満面の笑みを浮かべて、そう口にする。伊作が出ていくのを
見送ると、文次郎もゆっくりと立ち上がった。
「あいつ、容赦なく俺の制服汚してくよなあ。」
特に制服を脱いでしていたわけではないので、伊作の放ったもので、文次郎の制服はとこ
ろどころ汚れていた。苦笑しながら上着を脱ぎ、風呂に入るついでに洗濯するかと思って
いると、足元に見慣れた布が落ちていることに気づく。
「・・・これ、あいつの褌だよな?」
これがここにあるということは、伊作は寝間着の下は何も身に着けないまま帰ったという
わけだ。
「ついでにこれも洗濯しといてやるか。」
下に落ちている状態のため、多少汚れてしまっているだろうと、文次郎はそれを拾い上げ
る。全く仕方がないなあと笑いながら、文次郎は会計委員会の部屋を後にし、そのまま風
呂へと向かった。
自分の部屋に帰ってすぐに寝てしまった伊作が、褌を忘れてきてしまったことに気づいた
のは、次の日であった。そんな忘れ物を文次郎以外の会計委員会のメンバーに見られたら
大変だと慌てていると、バンッと部屋の襖が開く。
「わっ!!」
「何そんな驚いてるんだよ?」
「な、なんだ文次郎か。」
「留三郎はいねぇみてぇだな。」
「う、うん。授業で使う道具を用具倉庫に取りに行かなきゃだからって、先に出て行った
よ。留三郎に用事?」
突然現れた文次郎にドギマギしながら、伊作は取り繕うように言葉を紡ぐ。
「いや、お前に用事だ。昨日、忘れていっただろ?」
そう言う文次郎の手には、綺麗に畳まれた褌があった。
「あっ、それ・・・」
「一応、洗っておいてやったから、特に改めて洗濯する必要はないぜ。」
「あ、ありがとう。」
「それじゃあ、俺、これから朝飯食いに行くから。」
忘れ物も渡したし、用事は終わったと部屋を出て行こうとすると、ぎゅっと腕を掴まれる。
「待って!ぼくも一緒に朝ご飯食べに行く!」
「だったら、さっさと着替えて用意しろよ。褌もつけてないんだろ?」
ニヤニヤ笑ってそう言う文次郎に、伊作はカァっと赤くなって反論する。
「つけてるよ!!」
「ははは、とにかく一緒に食いに行きたかったら、さっさと用意しろ。早くしねぇと置い
て行っちまうぞ。」
「分かった。すぐ用意する!」
文次郎と一緒に朝ご飯が食べれると、うきうきしながら伊作は制服に着替え、準備をする。
伊作の準備が終わるのを待ちながら、文次郎も朝から伊作と話せていることを心の中では
かなり嬉しいと思っているのであった。
END.