四天宝寺の部室での誕生日パーティーが終わった後、銀と財前は二人で寮へと向かう。銀
の誕生日には寮に泊まるということを前々から約束していたのだ。
「財前は今日は銀さんの部屋に泊まると?」
銀と同じ寮に帰る千歳は、二人と一緒に歩きながらそんなことを尋ねる。あまり答えたく
ないなあと思いながらも、財前はその質問に答える。
「まあ、そのつもりっスけど。」
「さっきみんなに祝ってもらったばってん、寮だとどうしても夜は一人になるけん財前に
泊まってもらえてよかね、銀さん。」
「そうやな。おおきにな、財前はん。」
「いや、別に・・・礼言われるようなことやないですけど・・・」
自分が泊まりたいと言って泊まらせてもらう予定にも関わらず、お礼を言われ、財前は照
れたような反応を見せる。そうこうしているうちに、四天宝寺の寮に到着する。
「ほんじゃ、俺は自分の部屋ば戻るばい。誕生日に好いとお相手と一緒にいられるんは、
羨ましかねぇ。」
からかうような笑みを浮かべながら、千歳はそんなことを言う。しかし、銀も財前も千歳
が誕生日に一人ではなかったことを知っていた。
「いやいや、千歳先輩やって大晦日やのにがっつり一緒におったやないですか。」
「あれ?何で知っとーと?」
「ワシも財前はんも見かけてるからなあ。」
「あはは、バレとったか。まあ、今日はせっかくの誕生日やけんゆっくり楽しめばよかと
よ。」
「おおきに。ほんなら、また明日な。」
銀の言葉に千歳はひらひらと手を振った後、自分の部屋へと戻って行く。千歳を見送ると
銀と財前は銀の部屋へと向かった。
銀の部屋に入ると二人は鞄を下ろし、学ランの上着を脱ぐ。ハンガーに上着をかけながら、
銀は財前に尋ねる。
「財前はん、着替えは持ってきたんか?」
「あっ・・・忘れましたわ。すんません。」
「別に謝らんでええで。サイズが少し大きいが、ワシの服でもええか?」
「えっと・・・構わないっス。」
銀の服を借りるという状況に少々ドキドキしてしまい、財前は戸惑いながらも頷いた。
「着物と洋服、どっちがええやろ?着物なら、着付けでサイズの調整は出来るで。」
「着物は着慣れてないんで、洋服でええですか?」
「もちろんええで。ちょっと待っとってな。」
タンスの中を探り、寝間着の代わりにしてもよさそうな服を出す。暖房はつけるにしても、
冬真っただ中のこの季節。少しでも暖かい服がよいだろうと、トレーナーのような生地の
服を出した。
「これでええやろか?」
「大丈夫っス。」
グレーの無地のトレーナーを渡され、財前はワイシャツを脱ぎ、受け取ったそれを着てみ
る。やはり銀の服はかなりサイズが大きく、だぼっとした首元に、手が完全に隠れてしま
うほどに余る袖、丈も膝ギリギリの部分まで隠してしまうほどの長さがあった。
「やっぱ、ぶかぶかっスね。こんだけ長さがあれば、ズボンいらんくらいっスわ。」
そう言いながら、財前は制服のズボンを脱いでしまう。膝上まで隠れているとは言えども、
露わになった財前の生足に銀はドキッとしてしまう。
「足、寒ないか?」
「はい、大丈夫っス。それにしても、こんなぶかぶかだとホンマ彼シャツって感じっスね。」
「まあ、間違ってないんちゃうか?」
「師範もこーいうん好きだったりするんスか?」
あまりそんなイメージはないがと思いつつ、財前はそんなことを尋ねる。そこまで興味が
あるものとは思っていなかったが、自分の服で彼シャツ状態になっている財前を前にして、
銀はそれを否定することは出来なかった。
「彼シャツがどうとかは考えたことあらへんかったけど、今の財前はんはえらい可愛らし
いと思うで。」
「そうっスか・・・」
好き嫌いではなく可愛らしいと言われ、財前は照れたように目を逸らす。そんな財前も可
愛らしいと思いながら、銀はニコニコしながら財前を眺める。ちらっと銀の方に視線を戻
すと、財前は鞄の中に入っているあるものを思い出した。
「あっ。」
「どないしたん?」
「俺、師範に誕生日プレゼント用意しとったんっスわ。二人きりになったタイミングで渡
そう思て。」
「ん?誕生日パーティーのときに、般若心経柄の手拭いと湯呑みもろたで。」
「それはパーティー用のです。それとは別にもっとちゃんとしたん準備してたんスわ。」
そう言いながら、財前は自分の鞄から用意してきたプレゼントを出す。手にしたプレゼン
トを銀に差し出し、はにかむような笑顔で誕生日を祝う言葉を口にした。
「師範、誕生日おめでとうございます。」
「おおきに。開けてみてもええか?」
「はい。」
財前から受け取ったプレゼントの包みを銀は丁寧に開ける。中には『龍涎香』と書かれた
箱と梵字の彫られた数珠で作られたブレスレットが入っていた。
「これは、香とブレスレットか?」
「はい。師範、座禅とかするんで、お香とか焚いたらええんちゃうかなーと思て。ブレス
レットは少し前に数珠が欲しい言うてたんで、アクセサリーっぽいのもありかなと思て、
師範っぽいイメージで作りました。」
「なんと、これは財前はんが作ったんか!流石やな。」
「別にそんな難しいもんでもないですし。」
「いや、そう簡単に作れるもんでもないで。試しにつけてみてもええか?」
「ええですよ。俺も師範がつけてるとこ見てみたいです。」
財前が作ったと言うブレスレットを銀は右手首にはめてみる。梵字が彫られた大ぶりの水
晶のビーズが銀の手首で光る。透明なビーズを繋げているのは黒とグレーの石のビーズで
落ち着いた銀にはピッタリの雰囲気であった。
「つけた感じキツかったりせぇへんですか?」
「うむ。ちょうどええ具合やで。バランスもええ感じやな。」
「よかった。ちゃんと測ったわけやなかったんで、サイズ合うとるかなって心配やったん
スよ。」
「おおきにな、財前はん。メッチャ嬉しいで。」
「喜んでもらえたならよかったスわ。あっ、ちょっと写メ撮ってもええですか?」
「もちろんええで。」
喜んでもらえたのが嬉しくて、財前は実に嬉しそうな顔で、数珠感のあるブレスレットで
飾られた銀の手首をスマホのカメラで撮る。後でブログに載せようと思いながら、財前は
鞄の中にスマホをしまった。今は写真をたくさん撮るよりも、銀とたくさん話していたか
ったからだ。
「この香もちょっと焚いてみてもええか?」
「ええですよ。」
「ほんならちょっと待ってな。」
箱の中から一本香を出し、たまに使用する香立てにそれを立てた。その香にマッチで火を
つけると、銀は財前の隣に腰を下ろす。しばらくすると、穏やかな甘い香りがふわりと二
人の鼻をくすぐる。
「ええ匂いやな。」
「結構甘い匂いなんスね。」
「そうやな。この匂い、ワシは好きやで。」
「俺もです。」
しばらく龍涎香の香りを堪能すると、財前はずいっと銀に近づき、床に手をついて銀を見
上げる。
「師範。」
「何や?」
「今日は師範の誕生日やから・・・師範にぎょーさん喜んでもらいたいです。」
ほのかに赤く染まった頬に、大きな瞳。明らかに緊張した様子で見つめられ、銀は財前が
言いたいと思っていることを察する。
「師範がして欲しいことがあれば、何でもします。師範が激しくしたい言うなら、全然そ
うしてくれて構わんです。今日は、師範が好きなようにしてください・・・」
予想はしていたものの実際言われてみるとかなりドキドキしてしまう。そんなことはしな
くても大丈夫だと言うのは簡単だが、財前が求めているのはそういうものではない。おそ
らく勇気を出して自分のために言ってくれているのだ。それを無下には出来ない。少し考
えた後、銀は財前の頭を優しく撫でた。
「財前はんの嫌がることはしたくないんやけど、ちょっとしてみたいことはあるで。」
「何ですか?」
「いつもよりゆっくり時間をかけて、財前はんに触れたいと思うんやが、ええやろか?」
「も、もちろんええです!あっ、えっと・・・どないすればええです?服、脱いどいた方
がええですか?」
「そないに慌てんでも大丈夫やで。ゆっくり楽しまなもったいないやろ?」
穏やかな口調でそう口にする銀の言葉に財前はこくんと頷く。ドキドキしながら、黙って
銀を見つめていると、ふわっと体が浮く。
「わっ・・・!」
「驚かせてすまんな。床よりベッドの方がええと思て。」
財前を抱き上げ、銀は優しくベッドの上に乗せる。自身もベッドに座ると、銀は財前の着
ているトレーナーに手をかける。
「せっかく着てもろたのにすぐ脱がすことになってまうが、脱がしてもええか?」
「はい。」
銀が脱がしやすいように腕を上げ、財前はぶかぶかだったトレーナーを脱がしてもらう。
「ほんなら、ちょっとうつ伏せになってもらえんやろか。」
「うつ伏せっスか?」
「せや。まずは緊張をほぐしてもらおうと思ってな。」
「分かりました。」
銀の言う通り、財前はベッドの上でうつ伏せになる。まるでマッサージを受ける前のよう
な体勢に、財前はこれから何をされるのだろうと期待に胸を躍らせる。
「これで準備は完了やな。」
「マッサージでもするんスか?」
「おっ、ええ勘しとるやないか。その通りや。」
「師範、肩もみ得意って言ってましたもんね。マッサージも得意なんスか?」
「それは受けてからのお楽しみやで。」
これはきっとすごく得意なんだろうなあと思いながら、財前は顎の下で手を組み、そこに
頭を乗せた。
凝っているところを強い力でほぐすというよりは、血行をよくするためなのか、大きな手
の指先を使って、円を描くように背中から腰にかけてゆるゆると撫でられる。
(そんなに強く押されてるわけやないし、くすぐったいってわけでもないんやけど、師範
の指に触れられると、メッチャ気持ちよくてアカン・・・)
ただ優しく背中を撫でられているだけなのだが、財前は必死で声を抑えなければならない
ほど、ゾクゾクするような気持ちよさを感じていた。肩甲骨の周りあたりはそこまででも
なかったが、その指がだんだんと腰に向かっていくと、ビクンと勝手に腰が震えてしまう。
「んっ・・・ぅ・・・」
「財前はん。」
「っ!!な、何ですか?師範。」
「気持ちええんやったら、別に声我慢せんでもええで。ここにはワシしかおらんし。」
「けど、ただマッサージされてるだけやのに・・・こないに感じてまうのが、恥ずかしく
て・・・」
「何も恥ずかしいことなんてあらへん。素直に感じてくれた方がワシは嬉しいで。」
「・・・・・」
銀の言葉に財前は耳まで真っ赤にして、ぎゅっとシーツを握る。触れるか触れないかの間
くらいの力加減で、銀は財前の尾てい骨あたりを撫でた。
「あっ・・・んんっ・・・・」
素直に声を上げるようになった財前にドキッとしながらも、その可愛さに口元を緩ませる。
腰のあたりに触れた後は、そのすぐ下の双丘には触れず、足の先にその手を移動させる。
両手を使って、両方の足を背中と同じようにゆっくりと撫でてやると、財前はピクンとそ
の身を震わせ、小さく声を漏らす。
「はっ・・・ぁ・・・し、はんっ・・・・」
「触られるん嫌なとこあったら教えてな。」
「師範になら・・・どこ触られても平気です。嫌なとこなんてないっスわ。」
「そうか。ほんなら、財前はんの全部触らせてもらうで。」
冗談じみた口調で銀はそんなことを言う。そんな銀の言葉に財前の胸はきゅんきゅんと高
鳴り、柔らかい肌の感度はさらに上がっていった。言葉通り、銀は財前の足の先から太も
もまで余すことなく、じっくりゆっくり撫で上げる。大きな刺激はほぼなく、ただゆるゆ
ると肌をなぞっているだけなのだが、財前にとってはその刺激がどうしようもないくらい
に心地よく感じられた。
「師範・・・」
「どうや?気分は。」
「メッチャ気持ちええです。ちょっと触られてるだけやのに、どこもかしこも気持ちよく
て・・・たまらんスわ。」
軽く呼吸を乱しながら、財前はそう口にする。財前が気持ちよくなれているのであれば、
それに越したことはないと、銀も良い気分になる。
「背中側はこれくらいにして、前の方も触ってええやろか?」
「はい。」
財前の返事を聞くと、銀は財前の体を起こし、後ろから抱き締めるような形で自分の膝の
上に座らせた。
「し、師範・・・?」
「前に触れるんは、こっちの方がええかと思ってな。」
「師範にぎゅっとされてる感じがして、この体勢、結構好きっス。」
「はは、財前はんは時々ホンマにかわええこと言ってくれるな。」
「そうですか?そんなん言うのホンマ師範だけですよ。」
「こんなことするのは、ワシだけやろ?」
「そりゃ、そうですけど・・・」
恥ずかしそうにうつむく財前の右手に自身の手を下から重ねる。自分より細い財前の指に
自身の指を絡めるように銀はぎゅっと手を握る。恋人繋ぎのような形で手を握られ、財前
は驚いたような表情で銀を見る。
「しばらくこうしといてもええか?」
「ええですけど・・・何やちょっと恥ずかしいです・・・」
「財前はんは恥ずかしがり屋やな。」
「別にそんなんやないですけど・・・」
ドキドキとしながら銀の顔から視線を外すと、銀の左手が心臓の辺りに触れる。指先だけ
しか触れてはいないが、財前の鼓動がひどく速くなっているのが指先からハッキリと伝わ
った。
「財前はんの心臓、えらいドキドキしとるな。」
「そりゃ・・・師範とこんなんしてたら、ドキドキするに決まっとるやないっスか。」
「まあ、ワシもやけどな。また、手少し動かすで。」
「はい・・・」
右手は財前の手を握ったまま、左手で財前の腹や胸のあたりを撫でていく。
「んっ・・・ふあっ・・・!」
背中を撫でていたときと同じく、力をほぼ入れることなく指先をふわっと滑らせる。しか
も、胸の突起や下腹部など刺激が強くなりすぎるとこをには一切触れない。焦らされてい
るようなもどかしいような気持ちもあるが、じっくり優しく撫でられて続けていると、そ
のような場所に触れられなくとも、蕩けてしまいそうなほどの快感がじわじわとわき上が
ってくる。
「ハァ・・・師範っ・・・・」
「どないしたん?」
そう聞き返しながら、銀は財前の顎から鎖骨に繋がるラインを撫でる。
「ひゃっ・・・あっ・・・!」
その瞬間、財前はビクンと身体を震わせ、銀に握られている右手に力がこもる。
「少しくすぐったかったか?」
「も・・・何か、師範に触られるとこ・・全部気持ちよくて・・・普段も触られてイイと
こに触られたら、それだけでイッてまいそう・・・スわ・・・」
「試してみるか?」
「えっ・・・!?」
「冗談や。まだそのときやあらへん。」
財前の普段から感じやすいところにはまだ触れず、銀はひどく優しい愛撫をもうしばらく
続ける。銀の手が少し離れるともっと触れて欲しいと、身体の奥がきゅんきゅんと疼く。
その期待に応えるかのように銀の指が肌に触れれば、財前の体はその喜びを表すかのよう
に跳ねた。
(コレ、ホンマにただ軽く触られてるだけでイッてまいそうや・・・何でこんな気持ちえ
えんやろ?師範の手、ホンマ最高や。)
「師範・・・」
「ん?」
「師範の手・・・メッチャ気持ちええです・・・大好きっス・・・」
「そうか。ワシも気持ちよさそうにしてる財前はんのこと、大好きやで。」
優しい笑顔でそう言われ、財前の胸は幸せな気分でいっぱいになり、その幸福感が快感に
変わる。少し油断すれば、本当に達してしまいそうなほどの快感。うっとりと銀の顔を眺
めていると、銀の顔が近づき、互いの唇が重なり合う。
(あっ、この状態でそれはヤバっ・・・)
「んっ・・・んん――っ!!」
唐突なキスに財前の体はビクビクと跳ねる。ただ唇を重ね合わせるだけのキスなのだが、
今の財前には強すぎる刺激であった。
(いやいや、キスされてイクとか・・・マジでどんだけ・・・って、あれ?)
完全に達したくらいの快感であったが、まだ穿いたままの下着に目をやるとそういう状態
にはなっていない。ちらりと下着の中を確認したが、先走りの蜜で少しは濡れてはいるも
のの達したときに出るはずのものは出ていないようであった。
「どないしたん?」
「えっ・・あっ、いや・・・あの・・・」
この状況をどう説明すればいいか分からず、財前は困惑したような表情を銀に見せる。戸
惑っているような財前の態度と下着の中を気にする仕草。そろそろ下着が邪魔になってき
ているのを伝えられないのかもしれないと、銀は財前の下着に手をかける。
「ああ、下着がもう邪魔な感じか?脱がした方がええな。」
「えっと・・・まあ・・・」
財前の端切れの悪い返事を肯定とみなして、銀はそのまま下着を脱がしてしまう。脱がさ
れる際に、銀の指が双丘と太ももに触れる。そんな些細な刺激にも財前は大きく反応し、
先程と同じようにビクビクとその身を震わせる。
「んっ・・・ああっ・・・!!」
「今日の財前はんは、ホンマに感じやすくてかわええな。」
脱がした下着を銀は丁寧に畳み、ベッドの下に置く。感じやすいというレベルではないと、
財前は呼吸を乱しながら頭にハテナを浮かべ混乱していた。
(また、イってないのにイってる感じや。えっ、どういうことや?)
「大丈夫か?財前はん。」
「あっ・・・えっと、あの・・・俺、何や今日ちょっとおかしくて・・・イってるくらい
気持ちええ感じするのに、イってなくて・・・ちょっと自分でも訳分からんくて・・・」
「なるほど。試しにココ少し弄ってみてもええか?」
財前がこくんと頷くのを確認すると、銀は下着を脱がせたことで露わになっている財前の
熱を掌で包んだ。軽く擦ってやると、それだけで財前の体は大きく跳ね、その熱の先から
白濁の雫を迸らせる。
「んんっ・・・ああ―――っ!!」
「今のは、達った感じやな?」
「ハァ・・・そ・・・ですね・・・」
「まあ、出さんでも達するような感じになることはあるみたいやし、そういう感じなのか
もしれへんな。」
「師範がそんなこと知ってるの・・・意外なんスけど・・・・」
「はは、自分では調べずともいろいろ教えてくれる仲間はおるからな。」
「・・・あの先輩ら、ホンマアホっスわ。」
確かに銀が自ら調べずとも、テニス部の他のメンバーは興味津々でそのようなことを調べ
ていそうで、それをネタに話をしてそうだと、財前は悪態をつく。そんな財前の言葉に銀
は苦笑する。
「せっかく財前はんが出してくれたし、そろそろこっちの方も弄ってやらんとな。」
左手に出された財前の蜜を指先に絡めると、銀はその指で熱の下をつつっとなぞる。双丘
の割れ目に隠されている蕾を見つけると、その周囲をゆるゆるとなぞった。
「あっ・・・師範っ・・・!」
「なるべく痛くないようゆっくりするからな。」
そんな言葉通り、銀はしばらくは蕾の周りをじっくりほぐし、すぐに中に指を入れるよう
なことはしない。もう入れて欲しくて仕方ないと、その蕾が収縮し出すのを見計らって、
ほんの少しだけ指先を入れる。
「ひゃっ・・・ぅんっ・・・・」
指を入れても急に奥までは入れずに、まずは入口をゆっくりと慣らしていく。焦らされる
ようなその動きに、財前は無意識に腰を揺らし、むき出しの双丘を銀の脚の間に繰り返し
押し当てる。
「ハァ・・・あっ・・・あ・・・」
「まだやで、財前はん。」
「んっ・・・しは、ん・・・・もっと奥っ・・・」
「まだアカン。ぎょーさん気持ちええ方がええやろ?」
「せやけど・・・もぉ・・・」
切なげな声を上げる財前に、銀の胸はひどく高鳴る。しかし、今日はじっくりゆっくり財
前を気持ちよくさせると決めているのだ。財前のおねだりに屈することなく、銀はきゅう
きゅうと蕾自体が奥へと引き込むような動きをするくらいに入口だけを弄った。
(入口だけしか入れられてへんのに、もう我慢出来んくなるくらい欲しくなっとる。けど、
これはこれで気持ちよくて・・・)
「そろそろもう少し奥に入れてもええか。」
財前の中の動きに合わせるかのように、銀は指を少し奥に入れる。欲しかった場所に銀の
指が入り、財前はぎゅうっと右手に力を込める。
「ああっ・・・ああぁんっ・・・!!」
脚も下腹部も大きく震え、達したかと思う程の快感が財前を襲う。しかし、また熱の先か
らは何も出ていなかった。それゆえ、銀が中で指を動かすたびに同じ程度の快感が繰り返
し訪れ、それこそイキ続けているような感覚に財前は陥っていた。
「ああっ・・・師範っ・・・んっ・・・ああぁっ・・・!!」
「中、気持ち良さそうやな。そんなに奥に欲しかったんか?」
「欲しくて・・・たまらんかった・・・・師範の指が奥弄るん・・・よすぎて・・・」
「今日の財前はんはホンマにかわええな。流石のワシもメロメロになってまうで。」
「そんなん俺やって・・・初めから師範にメロメロっスわ・・・」
普段は言わないようなセリフをお互いに口にして、どちらもふっと吹き出す。しかし、財
前はすぐに内側からわき上がる大きな快感に意識を持っていかれる。ずっと気持ちの良い
状態が続いているにも関わらず、銀は入口を弄っていたのと同じくらいの時間をかけて内
側を慣らした。銀が指を抜くころには、財前は長く続く快感にすっかりと蕩けたような状
態になっていた。
「財前はん。」
「ハァ・・・はっ・・・しはんっ・・・」
「ココに、ワシのを挿れてもええか?」
その言葉を聞いて、財前の身体はゾクゾクと痺れ、興奮と期待感で下腹部がときめく。体
捻り、銀の服をぎゅっと握ると、財前は銀の言葉に頷いた。
「ほんなら、さっきみたいにうつ伏せになってもらえるか?」
「はい・・・あっ、師範・・・俺からもお願いがあるんスけど・・・」
「何や?」
「師範も服脱いどいてください・・・せっかくやから、肌と肌で触れ合いたいなあと思て
・・・」
「ええで。少し待っててもらえるやろか。」
「はい・・・」
ふわふわとした意識の中、財前は銀に言われた通りベッドにうつ伏せになりながら、銀を
待つ。しばらくすると、自分の上に影がかかり、ぎしっという音とともに銀の手が自分の
体の横に置かれたことに気づく。
「ゆっくり挿れるから、力抜いとってな。」
「っ!!」
耳元でそう囁かれ、財前の心臓はドキンと跳ねる。少しでも銀が挿れやすいようにと、財
前は軽く足を開き、腰を上げる。協力的な財前にふっと微笑みながら、銀は人より少し大
きな自身の熱を財前の蕾へと押しつけた。
「んっ・・・」
ぐっとその身を進めると、財前のそこはゆっくりと押しつけられた楔を飲み込んでいく。
先の方からきゅうきゅうと締めつけられる感覚に熱い息を吐きながら、少しずつ少しずつ
銀はその身を進めていった。
「はっ・・・んっ・・・く・・ぅんっ・・・・」
「ハァ・・・大丈夫か?」
「んんっ・・・平気・・・っス・・・」
「今日は時間をかけて、財前はんの奥まで挿れるつもりやで。覚悟しとき。」
「そんなん言われたら・・・期待してまうやないですか・・・・」
「期待してもええで。一緒に気持ち良うなろうな。」
言葉通り、銀はゆっくりと時間をかけて財前の中に入っていく。少し進むごとにもっと奥
へ奥へという気持ちが高まり、財前は腰を揺らす。しかし、銀はそのペースを崩さなかっ
た。少しずつ銀の熱を飲み込みながら、財前のそこはその熱を締めつける。当然銀が感じ
る快感も相当なものであった。
「あっ・・・はぁっ・・・師範っ・・・ひっ・・・あんっ・・・」
「もう少しやで。もう少しで、最後まで入りそうや。」
「早く・・・もっと奥にっ・・・・」
かなりの時間焦らされているため、財前は思わずそんなことを口にする。シーツを掴んで
いる財前の手に自分の手を重ねながら、銀はその熱を財前の最奥まで埋める。銀の熱が奥
まで入ったのを感じ、財前は白い雫を溢れさせ、シーツを濡らす。
「はぁっ・・・師範っ・・・ああっ・・・!!」
ビクビクと震える内側は銀にこの上ない心地よさをもたらす。しばらくこのままでいたい
と、銀は奥まで自身を埋めたまま動かさず、財前の背中に体重をかけすぎないように、体
を重ねた。動いていないために、財前の中は銀の熱の形を覚えるかのように蠢く。それが
また心地よく、二人は肌を重ねながら息を乱す。
「動いてなくとも、財前はんの中は気持ちええな。」
「そんなん・・・師範専用の場所なんスから、当然やないですか・・・・」
「ワシ専用か。そりゃ嬉しいな。」
「師範とこういうことするの・・・ホンマ気持ち良くて、幸せで・・・大好きっス。」
「ワシも同じや。誕生日に財前はんとこないに繋がってられるんは、どうしようもなく幸
せなことやで。」
銀のその言葉に、財前の体温一気に上がり、触れ合う肌が熱くなる。しばらく中にある銀
の熱を、肌から伝わるぬくもりを身体に刻み込むように味わった後、財前は濡れた声でお
ねだりをする。
「師範・・・ゆっくりでええんで、動いて欲しいです・・・」
「そうやな。その方が財前はんもワシもより気持ちよくなれるやろ。」
銀の形を覚えたそこは少し動かれただけでも大きな反応を見せる。それは快感という名の
電流を財前に流し、銀にもその刺激を伝える。
「んっ・・あ・・・し、はんっ・・・あっ・・・ああっ・・・」
「ハァ・・・少し動くだけでもこんなにも違うんやな。」
「師範・・・師範っ・・・あっ・・・んんっ・・・」
そこまで激しくは動かなくとも、絶え間なく押し寄せる快感の波に二人は翻弄される。大
好きな者と繋がり、心を通わせる幸せ。そんな幸せをこの世に生まれた日に味わえること
が、銀にとっては何よりも嬉しいことであった。
「財前はん・・・・」
「ハァ・・・師範っ・・・」
「今日はホンマにええ誕生日や。おおきにな。大好きやで。」
顔は見えないものの、耳元で囁くその声は実に嬉しそうな声であった。その言葉にきゅー
んと胸がときめき、そのときめきは繋がっている部分に伝わる。乱れる呼吸の中、財前も
自分の気持ちを伝えようと精一杯言葉を紡ぐ。
「俺も・・・師範のこと、大好きです・・・師範の誕生日に、師範に喜んでもらえて、ホ
ンマ嬉しいっスわ・・・」
言い終わったと同時に、銀の熱が奥を突く。次の瞬間、銀の想いの込められた熱い雫が奥
の奥に放たれるのを感じる。力のこもった掌に、耳元で感じる熱い吐息。全身で銀に抱か
れているんだと感じ、財前は多幸感に包まれ、甘い絶頂に達する。もうすぐ銀の誕生日は
終わってしまう時間であるが、そのときまでは身体を重ねたままでいようと、二人はしば
らく幸せな時間の余韻に浸っていた。
穏やかな疲労感から財前は日付が変わってから少しして眠ってしまい、そんな財前に銀は
事を始める前に着ていたトレーナーを着せてやった。今年の誕生日は本当に充実した良い
誕生日であったと思いながら、財前の隣で銀も横になる。
(ホンマに幸せな誕生日やったなあ。来年もこんなふうに過ごせたらええなあ。)
まだ幼さの残る隣で眠る財前の顔を眺め、その頭を優しく撫でる。今日はいい夢が見れそ
うだと思いながら、銀は財前をその腕に抱きながら眠りについた。
次の日の朝。財前が目を覚ますと、昨日嗅いだあの香の匂いが部屋の中に漂っていた。目
を擦りながら起き上がると、銀が坐禅をしている真っ最中であった。
(昨日のお香の香りや。ちょっと昨日のこと思い出して、ドキドキしよる。)
銀の邪魔をしないように、着替えをしようと音を立てないようにしながらベッドを下りる
と、その気配に気づいたのか、銀が目を開ける。
「おはようさん。よう眠れたか?」
「おはようございます。おかげさまでぐっすり眠れましたわ。」
「はは、それはよかった。ほんなら、着替えて朝食をと言いたいところだが、着替える前
に一つ頼みを聞いてもらってもええやろか?」
「ええですよ。何です?」
「財前はんのその格好がホンマ可愛くてな。一枚写真撮ってもええか?」
「師範がそないなこと言うなんて、珍しいっスね。もちろんええですよ。」
銀に可愛いと言われるのが嬉しくて、財前は銀の頼みを快諾する。携帯電話を出して写真
を撮ろうとするが、普段あまり撮ることがないので、銀はかなりまごついていた。
「師範、ケータイ貸してください。」
「すまんな。ちょっと操作が分かりづらくて・・・」
銀から携帯電話を受け取ると、財前はベッドの端に座り、携帯電話を頭より上の方で構え、
上目遣いで見上げているような写真を撮る。ブログを書くのが趣味なので、自分の持って
いる端末とは違っていたとしても、自撮りをすることなど造作もなかった。
「これでどうですか?」
「おお!よく撮れとる!ホンマ可愛らしいなあ。」
自分が撮るよりも何倍も可愛らしく撮れている財前の姿に銀は嬉しそうな声を上げる。少
々恥ずかしい気もするが、銀が喜んでくれるならそれ以上のことはないと、財前は銀の様
子を見ながらふっと微笑んだ。
「ほんなら、朝食用意してくるから、着替えてちょっと待っとってな。」
「はい。」
銀が朝食を用意しに行っている間に、財前は自分のスマホで何枚か自撮りをする。それを
メールに添付して銀に送った後、制服に着替え始めた。
学校へ行く準備を終え、朝食も食べ終えると、二人はそろって部屋を出る。寮を出ようと
したところで、二人は千歳と鉢合わせる。
「おー、おはよーさん。」
「おはようさん、千歳はん。」
「おはようございます。」
「昨日はお楽しみやったと?誕生日にお泊りやけん、それくらいはしとっとね。」
「千歳先輩と一緒にせんでもらえます?」
いつものクールな口調で財前はそう返す。実際はがっつりしているので、銀は財前のそん
な言葉に苦笑するしかなかった。
「確かにそんなに騒いでる様子なかったばい、ほんなこつ何にもせんと?」
「さあ、どうやろな。」
「だから、してない言うとるやないですか。」
「そぎゃん否定してるの聞くと逆に怪しかねぇ。」
「千歳はん、あんまりからかわんといてや。財前はん、困っとるやないか。」
「あはは、冗談たい。銀さん的には、昨日はいい誕生日だったと?」
「もちろんや。ホンマに最高の誕生日やったで。」
嬉しそうに笑いながら即答する銀の言葉に、千歳は全てを察する。銀にこんな表情をさせ
るとは流石だなーと財前を見ながら感心する。
「師範、早く行かんと、朝練遅れますよ。」
「せやな。千歳はんも出れるんやったら出るんやで。」
「分かっとーよ。」
財前に促され、銀は財前の隣を歩き、千歳より少し前を進む。仲良さげに歩く二人を見な
がら、千歳は羨ましくなってしまう。
「羨ましかー。俺も会いに行きたいばい。」
そう呟くと、千歳は学校ではない方向に歩き出す。そんなことには気づかず、銀と財前は
二人で仲良く話をしながら、学校へと向かうのであった。
END.