〜雪の降る夜〜

12月のとある金曜日。この日はいつにも増して冷え込んでいた。高校の部活が終わり、
跡部と宍戸は家への道をたどっている。
「今日、マジでさみーな。さっさと家帰って、あったまろ。」
「宍戸、今日俺んち誰もいないんだ。明日学校休みだし、泊まりに来ねぇ?」
「ああ。別にいいぜ。じゃあ、これから直で行っていいか?」
「もちろん。でも、まあ、帰ったらまずシャワーだな。」
「確かに。何でこんなに寒いのに部活やんとあんなに汗かくんだろうな?」
「そりゃ、あんだけ練習すれば当然じゃねえの。」
跡部と宍戸は同じ高校で中学と同様テニス部だ。跡部はあの天才的なプレイから、入部し
たと同時にレギュラーになった。だが、宍戸はまだまだなので毎日の練習はかなりハード
なものである。
カチャッ
「ホントに誰もいないんだな。真っ暗だ。」
「嘘ついてどうすんだよ。それよりさっさとシャワー浴びちゃえよ。服は用意しとくから。」
「分かった。じゃあ、先に入るな。」
宍戸はそのままバスルームに向かい、跡部は奥の部屋へ向かった。
久々だよな。跡部んちに泊まるの。うー、それにしてもさみぃー。汗がひくと冷えるんだ
よな。シャワーの温度少し高くして浴びよう。
熱めのシャワーを頭から浴び、長い髪を洗い始めた。一度は短く切ってしまった髪だった
が、高校に入りまた伸ばすことにしたのだ。今ではもう背中の中心あたりまで伸びている。
「宍戸、洋服ここに置いとくぜ。」
「ああ。俺、そんなに時間かかんないから跡部も入る用意すれば?」
「向こうの部屋の暖房つけてから入る。」
「そっか。寒いもんな。」
跡部はドアの前のカゴにタオルと服と置くと、また部屋の方へ戻って行く。
それにしても、跡部どんな服持ってきたんだろ?まさか、また変なのじゃないよな。まあ、
どっちにしろこの後するのは変わんないだろうけど。
いろいろなことを考えながら、宍戸はシャワーを浴び終え、バスルームを出た。カゴに入
っていた服は、宍戸が心配していたようなものではなく、いたって普通のパーカーだった。
「何だ、普通じゃん。」
「出たのか宍戸。」
「ああ。跡部これから入んだよな?」
「そうだよ。向こうの部屋暖まってるはずだから、そこで待ってろよ。」
宍戸は用意されたパーカーを見て、ふと何かを思いついた。
いつもは何か一方的っぽいけど、俺が誘うようなことしたら跡部どうすんだろ?ちょっと、
試してみてぇな。
グリーンのパーカーを上に着て、下は何も穿かない。側にある鏡で確認したが自分で見て
も結構挑発的な格好だった。髪は邪魔なのでいつもどおり一つに結ぶ。だが、少し前に残
す髪を多くして、ほのかに解れている感じを出した。
「何か自分でいうのもなんだけど、こりゃ結構いいかも・・・。」
宍戸はそのままの格好で奥の部屋に行き、ソファに座って跡部を待つことにした。
「あー、さっぱりした。」
「遅かったな跡部。・・・!!」
十数分後、跡部の声に気づき振り返った宍戸は跡部の格好に驚いた。
「な、何だよその格好。」
「何だよって言われても、ただのバスローブだけど。」
「お前、いつも風呂入った後、そんな格好なのか?」
「別に。今日はたまたま。」
自分の格好を見せて驚かせようと思っていた宍戸だが、跡部の格好に先に驚かされてしま
った。跡部は宍戸が今どんな格好をしてるかも知らず、ソファにそのまま近づいていく。
あれ?そういえば何か今日、宍戸の奴、感じが違うな。何でだ?・・・そうか、髪だ。髪
の結び方がいつもと違うからか。
「宍戸、お前何か今日色っぽくねえ?」
「そんなことねぇよ。いつもと変わんねえ。」
「いや、俺から見れば髪だけでも充分そそられるぜ。まして、そんな格好されてちゃな。」
宍戸の真後ろに立ち、解れた部分の髪に指を絡め、跡部は首すじにそっとキスをした。
「あっ・・・」
突然の出来事に、宍戸は思わず声をあげる。
「お前、それ俺のこと誘ってんのか?そんなやりやすそうな格好してんと、そのままやっ
ちまうぞ。」
「いいぜ、別に。どうせ、普通に着ててもするつもりだったんだろ?」
「まあな。この部屋だいぶ暖かいし、どうせだったら全部脱いじまえよ。」
跡部はソファの後ろから、宍戸の着ていたパーカーを脱がした。宍戸はあまり抵抗しなか
ったが、髪の毛の結んであるところがひっかかり、結んでいた赤いゴムが切れてしまった。
「あー、切れちまった。」
「別にいいじゃねえか。俺はそっちの方が好きだぜ。」
「そーかよ。つーか、跡部もさっさと脱げよ。」
「そうだな。」
跡部は着ていたバスローブを自ら脱いだ。跡部も下は何も穿いてなかったらしく、バスロ
ーブがなくなると無駄のない身体が素で現れる。
うわあ、跡部の裸って普通に綺麗だよな。無駄がないし、色は白いし、バランスとれてる
し。羨ましいよな。
「何、そんなに見てんだよ宍戸。」
「いや、跡部の身体ってホント綺麗だなあと思って。」
「何を今更。それよりさっさと始めようぜ、亮。」

「くっ・・・・んう・・・」
「お前って、犯り始めるとどこでも感じるようになるのな。」
「んなこと・・・ねえ・・・・」
跡部はわき腹を指でつっと撫でる。
「あっ・・・ああ・・!」
「普通のヤツはここをこうされてそんな声出さねぇよ。」
「ウルセー!こうなったのもお前のせいだろ!?」
「文句ばっか言ってる口は塞ぐぜ。」
「ふぅ・・ん・・・」
跡部のヤツ上手すぎ〜。息つく暇がねぇー。っ!!うあっ、な、何か下半身に何かが微妙
に当たって・・・。
「ハァ・・・んっ・・・あっ・・景吾・・・!!」
「どうした、亮?」
「景吾のが・・・お、俺のに当たって・・・・」
「こんなんで感じてんのか?」
「やっ・・・だって・・・・」
自分のモノが当たって宍戸が感じていると知って、跡部はわざと宍戸のモノに自分のモノ
を擦りつける。
「あっ・・・ヤダっ・・・景吾・・・・やめ・・」
「確かにこりゃイイな。」
「うあっ・・・何か・・景吾の・・・熱いっ・・・」
「そりゃそうだろ。お前のが俺のでこんなに喜んでんだ。俺のだって元気になるぜ。」
こんなのすんのは初めてだけど、いい感じじゃねえの。宍戸のヤツ、前にも増して感じや
すくなってるもんな。他にもいろいろ試してみるか。
「んんっ・・・ああっ・・・・」
「なあ、亮。いいこと教えてやろうか。」
「な・・何だよ・・・」
「俺のコレはな、お前のためだけにこうなるんだぜ。」
「っ!!」
うー、何でこういう時にそういうこと言うかなこいつは〜。あー、もうダメだ。跡部がん
なこと言うから、マジで余裕がなくなっちまったー!
「景吾っ・・・もう・・だめっ・・・」
「ふーん。俺はまだ全然平気だけど。」
「しょうが・・・ねぇだろ・・・うっ・・あっ・・・ああっ!!」
ホントにこれだけでイクとはねぇ。溜まってたのかこいつ。でも、これくらいじゃ、まだ
まだだよなあ。
息を乱し、ぐったりとしている宍戸の腹を跡部は丁寧に舐め回して、今、放たれた熱を全
て取り除いた。そして、汗で額にはりついている前髪を払いのけ、軽くキスをする。
「なあ、亮。俺、ちょっとやってみたいことがあるんだけど。」
「何だよ。」
未だ息を整えられない宍戸の耳元で跡部は囁く。
うわっ、マジかよ。それはいくら何でもやるのはどうかと思うぞ。でもなあ、俺もちょっ
とやってみたい気もするでもないし・・・。うーん・・・。
「どーすんだよ。やるのか。」
「わ、分かった。やるよ。」
「じゃあ、先にイッた方が負けで、勝った方の言うことを何でもきく。文句は言わない。
分かったか?」
「おう。絶対俺が勝ってやるからな!」
跡部はソファに仰向けになり、宍戸は跡部の顔をまたぐような形で上にかぶさる。そして、
お互いの熱を咥え、思うままに舐め始めた。
「ん・・ふ・・・んん・・・」
「いい眺め。どっちも丸見え。」
「なっ・・・何言って・・・・ふ・・ぁんっ・・・」
「さっきので、先っぽベタベタだぜ?お前、実はすっげぇHだろ?」
「ちっ・・がう・・・つーか、変態の・・・お前に言われたくねぇ・・・」
「ほら、ちゃんとやらないとお前の方が先にイッちゃうぞ。」
先端を舌先でつつき宍戸のソレに刺激を与える。長い髪を揺らして、宍戸は身を振るわせ
た。
「はぁ・・・あんっ・・・」
くそー、このままじゃマジで俺が負けちまう。絶対、負けたくねー!!俺だって、頑張れ
ば何とかなるはずだ。
宍戸は跡部のモノを口いっぱいに含み、震える手も使って自分が出来る限りのことをする。
「んっ・・・く・・ん・・ぅ・・・」
くっ、なかなかやるじゃねーか。もうそろそろ、こっちの方もやってやるか。
右手の指を濡らし、跡部は宍戸の後ろの口に入れていく。
「んんっ・・・あっ・・何すんだよぉ・・!!」
「何って、こっちも慣らさないと。」
「卑怯・・・だぞ・・!!・・・そんなんじゃ俺のが・・・不利っ・・・」
「そんなことねーよ。お前は一回イッてるけど、俺はまだイッてねぇもん。」
「うー・・・」
跡部、ズルイ〜!!でも、でも、このままイカされるわけにはいかねぇ。どうすればいい
んだー。
回らない頭をフル回転させて、宍戸は一生懸命考えた。とは言っても、やっぱり思い浮か
ばないので、結局、とにかく少しでも何かをしようと跡部のモノを咥え続ける。
「ふ・・・んんっ・・・ぅくっ・・・」
自分もやられているので喘いでいるが、決して口を離そうとはしなかった。跡部にもさす
がに我慢の限界がやってきた。
こりゃ、マジでヤベェな。でも、一回くらいイクのも悪くないし、ここは素直に・・・。
「くっ・・・!!」
「んっ・・・んんっ!!」
二人はほとんど同時に達した。勝負はどうやら引き分けのようだ。
「んだよ、引き分けじゃねーか。」
「ハァ・・ハァ・・・何だよ、跡部も結構余裕なかったんじゃねーか。」
「つーか、もう挿れてもいいよな?こんなになってるんだからよ。」
「今、イッたばっかだぜ。少しは休ませろって。」
「やだね。俺のはもう臨戦態勢だってのに、休んでなんかいられるかっての。」
半ば強引に跡部は宍戸を仰向けにさせ、足を開かせる。そして、手を絡め深く口づけをし、
慣らされた蕾に自分を押し入れた。
「んんっ!!・・・んぅっ・・・んんっ・・・!!」
手はしっかりと固定され、動かすことができない。下から悦楽の波が一気に駆け上がる。
「はあっ・・・あぁ・・景吾ぉ・・・・」
「ちょっと、まだキツイな。もう少し力抜け亮。」
「うぅ・・・んんっ・・・・」
宍戸は頭を振る。長い黒髪が乱れ、顔にかかり跡部の好きな表情を覆いかくした。それを
跡部は優しく払いのける。
「せっかくのイイ顔隠すなよ。ほら、いつもみたいにイイ声で泣け。」
「あっ・・・あぁんっ・・・景吾・・あっ・・・」
やっぱ、この時の宍戸は最高だな。男のくせにこんなイイ顔して、イイ声で泣いて、ホン
トまいるぜ。
「亮。」
「ん・・・何・・・?」
跡部は宍戸の耳元で、小声だけれどもハッキリとした声で囁いた。
「俺なしじゃ生きていけねー身体にしてやるよ。」
また、跡部はすごいことを・・・。でも、こんなセリフ聞いてうれしいと思っている俺も
俺だよな。
「・・・もうなってんよ。」
「えっ、今なんつった?」
「もうなってるっつたんだよ!アホ!!何度も言わせんな。」
「へえ、そうか。じゃあ、お前はもう俺のもんだな。」
跡部は冗談まじりに言うと、そのまま耳から首へと順番に舌でたどった。
「うあっ・・・ああっ・・・!!」
「ほら、どこがいいか。どこをどうして欲しいか言ってみな。」
「あっ・・・言えるかっ・・・・」
「じゃあ、俺の思うがままにするけどいいよな?」
「勝手に・・・しろ・・・」
反抗的なセリフとは裏腹に宍戸は跡部の背中にしっかりと腕を回し、しがみついていた。
そんな宍戸を跡部は本当に愛しいと思った。
「亮、ちょっと起き上がらねぇ?そっちの方がやりやすいんだけど。」
ソファでやっているので、いつものように寝てやるのは少しキツイのだ。つながったまま
の状態で起こすと膝の上に乗せるような感じでふわふわとしたソファに座った。
うわっ、この体勢はちょっとヤバイ〜。って、確か一番初めにやった時もこんなだったよ
うな気が・・・。そんなことは置いといて、だから、この体位はそのまま一気に奥に入る
からダメなんだって。
「やっ・・・ああ・・・ダメっ・・・・」
「何がダメなんだよ?」
「ダメじゃないんだけど・・・うっ・・あん・・・」
「お前、言ってること意味分かんねーぞ。」
「この体勢だと・・・奥に・・・景吾のが・・・」
「奥で感じられるから、よすぎて変になるって?」
「そこまで・・・言ってねぇ!・・・ふあっ・・・ん・・」
何か文句ばっかでいまいち色気に欠けんだよな。もう喘ぎしか言えないくらいにしてやる
か。
跡部は下から腰を打ちつける。ただでさえ奥で感じるのにぐちゃぐちゃに動かされて、宍
戸はもう文句を言う暇もなく喘いだ。
「ああっ・・・やぁんっ・・・はぁ・・・」
「それくらい鳴いてもらわないとな。ついでにここも弄んでやるよ。」
「くっ・・ああっ・・・ソコは・・・」
「ほらほら、今にも出そうだぜ。」
「やだぁっ・・・マジで・・・イッちゃうっ・・・・」
「そう簡単にはイカせねえよ。」
右手で宍戸のモノを弄りながら左手で根元を押さえイケないようにする。後ろも前も同時
に犯されながら、行き場のない快感に宍戸はビクビクと体を痙攣させる。
「ああっ・・・景吾・・・もう・・ヤダぁ・・・」
「でも、お前顔にはもっとしてーって書いてあるぜ。」
「書いてねぇっ・・・・はぁんっ・・・あっ・・・」
「お前、ホント淫乱だよな。すげぇ犯りがいがあるよ。」
「くっ・・ぅん・・・お・・前が・・・こうしたんだろ・・・!!」
そうだっかたねぇ。まあ、何回もやってくうちにこうなってたって感じだけど。俺として
はそっちの方が都合がいいな。
イキそうなのにイケないという状態がしばらく続き、宍戸もさすがに耐えきれなくなって
きた。
「景吾・・・マジで・・・もう勘弁して・・・・」
「どうして欲しいんだよ?」
「左・・っ手・・・離し・・・・てっ・・・」
「やだって言ったら?」
「お願い・・・もう・・ホントに・・・限界なんだってば・・・・」
生理的な涙をボロボロこぼしながら、宍戸は跡部に請う。跡部は何かを思いついたように
意地悪く笑った。
「じゃあ、『イカせて下さい、景吾様。』って言ったら離してやるよ。」
何だよ跡部のヤツー。こっちはホントに限界だってのにー。ああー、もう!!迷ってる余
裕もねぇ!とにかく、早く言わないと・・・・。
「イ・・カせて・・・くださ・・ぃ・・・景・・吾・・・様・・・」
「聞こえねぇな。もう一回ハッキリと言わねぇと離してやらねー。」
「イカせて下さい・・・景吾様ぁ・・・!!」
満足気な笑みを浮かべて、跡部は手を離す前に宍戸の目を見て自信満々な口調で言った。
「快楽の高みまでの刹那、俺様の美技に酔いな!」
こういう時にそのセリフ使うかぁ〜!?あーもう充分酔わされてますとも。でも、『快楽
の高みまでの刹那』っつーことは、この後だから・・・・っ!!
「あっ・・!ああっ・・・!!」
「もう俺も実は結構限界だったりするんだよな。」
「くぅ・・あっ・・・はあっ・・・・ああ・・!!」
宍戸の一番敏感で感じる部分を容赦なく突き上げる。左手も離されているので、その快感
はもろに一番熱を帯びている部分に伝わる。
「やっ・・・景吾ぉ・・ダメ・・・・もう・・イキそ・・・」
「俺も。一緒に果てようぜ。全部ドロドロに溶けちまうくらいによぉ。」
「んっ・・・ああ―――っ!!」
「・・・っ!!」
黒い波と金色の光が重なり、純白の雫が二人の身体に飛び散った。

全裸でそれも何もつけずにやってしまった二人は、もう一度シャワーを浴びることを余儀
なくされた。
「はあー、疲れたあ。」
「あんだけ泣いたり、動いたりすれば当たり前だろ。」
「だってよぉ、景吾があれがやりたいだの、これがやりたいだの、いろいろやらせるから
いけないんだぞ。」
「いいだろ。今は好奇心旺盛な年頃なの。あっ、そうだ。お前、髪の毛洗わせろよ。」
「はあ?何でだよ。」
「去年約束したじゃねーか。忘れたのか?」
「あっ、そういえばそんなこともあったような・・・」
「ほら、早くここに座れよ。」
宍戸は跡部の言うまま、イスに座った。
「お前の髪、やっぱ綺麗だよな。」
「お前が人のこと褒めるなんて珍しいな。」
「俺、長い方が好きだったのに勝手に切っちまいやがって。」
「あれはしょうがないだろ。いいじゃねぇか、また伸ばしたんだから。」
「まあな。」
さらさらで柔らかい黒髪を跡部は丁寧に洗う。宍戸は気持ちよさそうに跡部に身をまかせ
ている。
「よし、終わり。流すぞ。」
「ああ。」
一通り洗い終わると、二人は湯船の中に入った。さっきはシャワーだけだったので、温ま
るのにはちょうどよかった。
「あったけー。今日、何でこんなに寒いんだろう?」
「さあ。俺が知るかよそんなこと。」
「つーかさ、夕飯どうすんだよ。俺、腹ペコなんだけど。」
「夕飯か。すっかり忘れてた。」
「出たらどっか買いに行くか。」
「いや、だぶん冷蔵庫に何か入ってると思うぜ。母さん、作っていったはずだから。」
「そっか。じゃあ、それは心配ないな。」
体の芯まで温まると二人はバスルームから出て、今度はちゃんと洋服を着た。また、奥の
部屋へ戻ると宍戸はなんとなく窓の方へ行き、完璧に閉じられているカーテンを開ける。
「うわあ!」
「どうしたんだよ?」
「見ろよ景吾。雪が降ってる!」
「雪か。何か久々に見たな。どうりで寒いわけだ。」
外は粉雪が降っていて、庭がうっすらと白くなり始めていた。宍戸はニコニコしながら、
ふわふわとした白いソファに腰かける。
「そんなに雪降ってるのうれしいのかよ。」
「だって、何かうれしいじゃん。」
「まだまだガキだな。ちょっと、そこで待ってな。今、飯もってくるから。」
「おう。」
ソファの前にはテーブルがあるので、跡部はそこに夕飯を運び、仕度をした。作り置きと
はいえども、かなり豪華なメニューだ。それを二人は何も残さず、綺麗に食べた。
「はぁー、うまかった。ごちそうさま。」
「お前、よく食うな。」
「だって、あんなことした後だぜ。そりゃ腹も減るよ。」
「さっさと片付けて二階行くか。」
「えー、俺、この部屋がいい。」
「何でだよ?」
「だって、この部屋暖炉あるし、このソファ気持ちいいし、雪見れるし、最高じゃん。」
「ああ、そうかよ。じゃあ、せめてこの食器キッチンまで運ぶの手伝え。」
空になった食器をキッチンまで持って行き、二人は暖炉の火がパチパチと燃えている部屋
に再び入る。
「なあ、景吾。先に座って。」
「何で?」
「いいから。」
宍戸は跡部を先にソファに座らせ、自分はその膝の上に向かい合うようにして座った。
「何がしたいのお前?」
「いいじゃんか。たまには甘えさせろよ。」
「俺はいつでも甘えさせてやってるつもりだけど。」
「とにかく、俺はこうしてたいの!!」
「ったく、しょうがねぇ奴だな。」
首に腕を回し、宍戸は跡部に抱きつく。そんな宍戸を可愛い奴だと思って、跡部も宍戸
の腰に手を回した。
「お前とこうしてんと、何でかしんないけど、すげぇ落ち着くんだよな。」
「確かに嫌じゃねぇけど。」
「なあなあ、景吾、俺のことどう思ってる?」
「んなこと言うわけねーだろ。」
「何でだよー、俺は景吾のこと好きだぞー。」
雪が降っているからか、さっきの行為の疲れからか異常にテンションの高い宍戸は、まる
で酒にでも酔ってるような感じだ。
「言えよ、景吾ぉー。」
本当に甘えるような声と表情で言われて、さすがの跡部もドキッとする。
「I have already been body can’t live wit
hout you too.」
「はあ?」
「ほら、言ったぜ。」
「英語じゃ分かんねーよ!!」
「今の中学生レベルの英文だよ、バーカ!」
「う〜、もういい!!」
宍戸はボスッと跡部の肩に顔を埋めた。そして、突然黙る。
「・・・亮?」
跡部に全身を預け、宍戸はそのまま眠ってしまった。
「そのまま寝るヤツがあるかよ。」
文句を言いながらも優しそうな笑みを浮かべて、おろされた黒髪にそっとキスをして言っ
た。
「さっきの英文の和訳は、俺もお前なしじゃ生きていけねー体になってるよって意味だ。
これくらい分かれよな、バーカ!」
この時、跡部は気づいていなかったが実は宍戸はタヌキ寝入りをしていたのだ。日本語で
の告白を聞き、宍戸は顔を真っ赤にした。そのまま、起きるわけにもいかなかったので、
結局本当に寝てしまった。さすがに、ソファの上で眠るわけにもいかず、跡部は自分の部
屋に宍戸を抱いて運び、自分のベッドに寝かせた。
「中学のころから全然変わってねえな。全く何て寝顔してやがるんだ。」
暖炉の火を消し、自分の部屋へ戻ると跡部は宍戸の隣に寝転がった。暖房がまだきいてい
ないので部屋は少し寒いが、布団の中は宍戸の体温で温まっている。
「こいつホントにあったけぇ。さて、俺も寝るとするか。」
いつもより少し早いが跡部は眠ることにした。宍戸の体を自分の方へ引き寄せ、しっかり
抱き締める。
「おやすみ、亮。」
そう呟き、跡部は眠りについた。そして、二人の心に温かな雪が降り始めた・・・。

                                END.

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