今年初のプールを存分に楽しんだ黒羽と天根は、そろって天根の家にやってきていた。
「バネさん、お風呂沸いたよ。」
「ああ。」
「着替え、脱衣所のとこ置いておくね。」
「どうせだったら、ダビデも入っちまえよ。お前も早くシャワー浴びてぇだろ。」
「でも、うちの風呂狭いし。」
「大丈夫だって。ほら、行くぞ、ダビデ!」
「わっ、ちょっとバネさんっ!!」
半ば無理矢理風呂場に連れて行かれ、天根は黒羽と一緒にシャワーを浴びることになって
しまった。絶対狭いのにーと心の中で思いつつ、天根は制服を脱いで、浴室に入る。
「よーし、じゃあまず髪の毛から洗うぞ。」
そう言うと黒羽は天根に頭から水をかける。不意打ちで水をかけられ、天根は軽くむせる。
「ぶはっ・・・バネさっ・・・」
「ほらほら、動くなって。俺がちゃんと洗ってやるから。」
完全に黒羽のペースに巻き込まれ、天根は文句を言うのも面倒くさくなり、黙って黒羽に
髪の毛を洗ってもらう。初めは不機嫌そうにぶすーっとした表情だった天根だが、あまり
にも黒羽がいい感じに髪を洗ってくるので、次第にリラックスした表情になってくる。
「バネさん、洗うの上手すぎ・・・」
「そうか?普通だと思うけどな。」
「だって、超気持ちいいもん。床屋で洗ってもらってるみたい。」
「へぇ、じゃあ体も洗ってやろうか?」
ニヤニヤしながらそう言うと、天根は真っ赤になって首を振る。髪の毛を洗ってもらうく
らいなら平気だが、体まで洗われるとなるといろいろ意識してしまう。
「か、体は自分で洗う!!」
「そっか、残念。」
「残念って何だよ?」
「別にー。あっ、じゃあ、ダビデ、俺が自分で髪洗ってる間、背中流してくれよ。それな
らいいだろ?」
「そ、それなら別に・・・」
自分が体を洗われるのは嫌だが、黒羽の背中を洗うのなら何の問題もないだろうと、天根
は黒羽の頼みを受け入れる。洗ってもらっている髪の泡を流すと、天根はいつも自分が使
っているスポンジにボディーソープをつけ、黒羽の背中をごしごしと洗い出す。
「おー、いい力加減だぜ、ダビデ。」
「・・・・うーん。」
「どうした?」
「いいダジャレが思いつかない・・・」
そんなことを呟く天根に黒羽は右手でツッコミを入れる。まだ何も言っていないのにつっ
こまれ、天根はぶーぶーと文句を言う。
「ま、まだ何も言ってないのに〜。」
「だから、手にしてやっただろ?いつもは足だぜ。」
「う〜。」
頭を押さえつつ、天根は黒羽の背中を再び洗い始める。しばらくそんなやりとりを繰り返
しつつ、体を洗うのを進め、全てを洗い終わると綺麗に泡をシャワーで流した。
「さーて、体も綺麗になったことだし、湯船に入るか。」
「二人で入ると絶対狭いと思うんだけど・・・」
「平気だろ。ちょっとくらい狭くても。ほら、入るぞ。」
「うぃ。」
黒羽に促され、天根は湯船に入る。どちらもある程度体格がいいので、やはり湯船の中は
相当狭く感じるが、思っていた以上に気になるものでもなかった。
「意外と平気かも・・・」
「だろー?つーか、これなんだよ?アヒル?」
湯船に浮いている黄色のアヒルを手にし、黒羽は天根に尋ねる。天根はそのアヒルを黒羽
から取り上げて、お腹のあたりをぷにっと押した。すると、真っ赤なアヒルのくちばしか
ら水が勢いよく発射される。
「とりゃ。」
「わっ!ダビデ〜、やりやがったな!!」
「だって、こうやって遊ぶものだし。」
「お返しだ!!」
そう言って黒羽は手で水鉄砲を作り、天根に向かって打つ。打たれた水は見事に天根にクリ
ーンヒット。さらにお返しだと、天根は再びアヒル水鉄砲で攻撃する。そんことをして遊び
ながら、二人はつかの間のバスタイムを存分に楽しむのであった。