Snug Days ― おまけ(岳忍) ―

家に帰って来てから、忍足はベッドに横になりぐったりとしていた。かなりお疲れ気味の
ようだ。
「侑士、大丈夫か?」
「ああ。ちょっと疲れてるだけや。」
「俺が無理させちまったからだよな。ゴメンな侑士。」
「謝らんでええって。薬の所為とはいえ、俺が誘ったようなトコも結構あるからな。」
「侑士が可愛すぎるからさー、あーいうことすると止まんなくなっちまうんだよ。」
自分に非があると認めながらも、忍足もちょっと悪いんだというようなニュアンスを含ん
だことを岳人は言う。可愛いと言われて少々微妙な気分な忍足は苦笑いをする。
「俺、そんなに可愛いん?」
「そりゃもう!!侑士ほど可愛い奴なんかいないって思うほど、可愛いと思うぜ!!」
「あ、あはは、そうか。」
そこまで言われてしまったら認めざるを得ない。まあ、岳人に言われるのはそんなに悪い
気分ではないなあと自分自身を納得させつつ、忍足は軽く寝返りを打ち、仰向けになった。
「はあ・・・」
「やっぱ、疲れてんな。あっ、そうだ!飴玉あるけど食べるか?」
「何やいきなり?」
「いやー、侑士かなり疲れてるみてぇだから、ちょっと糖分取った方がいいんじゃねぇか
なあって思って。」
そう言いながら、岳人は鞄の中から宝石のように綺麗な色をした飴玉を持ってくる。こん
な飴玉は市販のものでは見たことがないと、忍足は多少怪しく思う。
「その飴ちゃん、岳人が作ったやつとちゃう?」
「そうだぜ。あっ、でも、さっきの薬とかみたいに変な効果はないから安心しろよ。本当
普通の飴玉だから。」
「ホンマに?」
「本当、本当。何なら俺が一つ先に食べるからさ。」
袋の中から真っ赤な飴玉を取り出すと、岳人はそれをぽいっと口の中に入れた。
「これは、イチゴ味だな♪」
「確かに平気そうやな。」
「侑士は何色がいい?」
「その緑色っぽいのは何味や?」
「マスカット。どれも味には自信ありだから、とにかく食べてみそ。」
「せやな。」
岳人も食べているし、たぶん大丈夫だろうということで、忍足は薄緑色の飴玉をもらう。
普通の飴玉より少し大きめのそれは、口に入れた瞬間忍足の舌をとろかせた。
「ホンマにマスカットって感じの味やな。余計な甘さがなくて、すごい美味いわ。」
「だろー?でも、それだけじゃないんだぜ。」
「どういうことや?」
何かすごい秘密があるということを匂わせて、岳人は悪戯っ子のように笑う。やっぱり大
変な効果があるのかと、忍足が警戒した瞬間、岳人は忍足の予想だにしなかった言葉を口
にした。
「この飴玉を舐めてるとすっげぇ幸せな気分になれるんだぜ!特に侑士は。」
「は?」
あまりにも意外な言葉だったので、忍足は思わず聞き返してしまう。
「幸せな気分になれるって・・・何でや?」
「だって俺、この飴作る時、侑士のことをずっと考えながら作ったんだもんよ。侑士が美
味いって言ってくれるといいなあとか、これ食べて笑顔になってくれたらいいなあとか、
とにかくこの飴玉には侑士への愛情がいっぱいいっぱいつまってるんだぜ!!」
満面の笑顔の岳人のそんな言葉を聞いて、忍足は胸が温かくなるような幸せな気分でいっ
ぱいになる。確かにその効果は本物だと、自然と笑顔がこぼれる。
「確かにそれは言えるかもしれへんなあ。俺、今、すっごい幸せな気分やもん。」
「本当か!?へへへー、頑張って作った甲斐があったぜ!!」
「お返しに今日は手繋いで寝てやるわ。まあ、俺がそうしたいだけやけど。」
「マジで!?やったー!!俺も今超幸せー!!」
「こ、こらこら岳人。」
あまりの嬉しさに岳人は忍足に抱きついた。飴玉のような甘い雰囲気に浸りながら、二人
はしばらく飴玉がくれた幸せを楽しんだ。

戻る