Snug Days ― おまけ(ジロ樺) ―

ジローを背負ったまま樺地はジローの家に向かって歩いてゆく。学校から家までのちょう
ど真ん中あたりで、ジローはふと目を覚ました。
「はれ?樺地?」
「ウス。」
「あー、俺、また寝ちゃったのかあ。今何時?」
「9時少し前です・・・」
「もうそんな時間かぁ。ふあ〜、樺地重いっしょ。もう下ろしてもいいぜ。」
「ウス。」
ジローがそう言うならと、樺地は背中からジローを下ろす。
「ここまで負ぶってきてくれて、サンキューな。」
「いえ・・・・」
「なんかこんな時間に二人で歩いてるなんて不思議な感じしねぇ?」
「・・・ウス。」
街灯に照らされている道をゆっくり歩きながら、二人はまったりとした気分に浸る。眠っ
ていない時間にあった出来事を思い出しつつ、ジローは樺地に話しかける。
「今日は楽しかったな、樺地。」
「ウス。」
「幸村先生の描いた絵、超よかったよな。」
「ウス。」
樺地の大きな手を握りながら、ジローは実に楽しそうに話す。ただ一緒に帰るという何気
ないひとときも、二人にとってはとても貴重で贅沢な時間であった。
「幸村先生の展覧会、絶対一緒に行こうな!」
「ウス。」
「あー、でも、始まるまでまだ日にちがあるんだよな。明日は休みだC〜。あーあ、もっ
と樺地と一緒にいたいのにー。」
話しながら歩いているうちに、ジローの家まではあと数十メートルというところまで来て
いた。もうすぐ別れなければいけないと思うと急に寂しくなってくる。そんな寂しさから
ジローはそんなことをぼやいた。
「ジローさん・・・・」
ふと樺地が立ち止まり、ジローの名前を呟く。どうしたのだろうと、ジローも一緒に立ち
止まり、樺地の顔を見上げた。
「どうしたの?樺地。」
「明日・・・公園に写生に行きませんか?」
「写生?」
「ウス。」
思ってもみない樺地の提案に少々ビックリするジローであったが、樺地がせっかく誘って
くれているのだ。断るなんてもったいないことは出来ない。
「公園で絵描くってのも楽しそうだC〜!!行く行く!!」
ジローが乗り気になってくれているのを見て、樺地はホッとしたような顔になる。ジロー
にとっても、明日も樺地と一緒にいられるということはかなり嬉しいことであった。
「あー、でも、俺、起きれねぇかもしんねぇから、時間になったら迎えに来てくれよ。」
「ウス。」
「へへへー、明日も樺地と会えるのか。超楽しみー!!」
「自分も・・・楽しみです・・・・」
ジローの言葉を聞いて、樺地も恥ずかしそうにそんな答えを返す。そうと決まれば、今日
は早く帰って早めに寝るしかない。先程まで寂しそうな顔をしていたのが嘘のように、ジ
ローは自分の家に向かって駆け出した。それを追うように樺地もジローの家の前まで行く。
「じゃあ、また明日な。樺地。」
「ウス。」
「明日、待ってるから。しっかり起こしてくれよ。」
「ウス。」
「じゃ、オヤスミ〜。バイバイ!!」
「おやすみなさい、ジローさん。」
満面の笑顔で手を振ると、ジローは家の中へ入ってゆく。明日もジローと会えることを楽
しみに思いながら、何となく満ち足りた気分になりながら、樺地は自分の家へ向かって歩
き始めるのであった。

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