「あっ、そうそう長太郎。昨日、親戚の家からたくさん和菓子が送られて来たんだけど、
食べに来ない?」
部活が終わっての帰り道。滝は鳳にそんな話を持ちかける。
「いいんですか?」
「うん。うちだけじゃ全部食べきれないし。結構高価なやつだからまずくはないと思うよ。」
「はい。ありがとうございます。」
和菓子なんてそう滅多に食べないので、鳳は滝の誘いにバッチリ乗った。滝は普通にただ
和菓子を御馳走するために鳳を家に招いたのだが、ここから話は意外な展開に進んでいく
のだ。
「ただいま。」
「おじゃまします。」
「俺、お茶とお菓子持ってくるから先に部屋行ってて。」
「はい。あっ、鞄持っていきましょうか?」
「ああ、ありがとう。」
家に到着すると、滝はお菓子とお茶を取りに台所へ向かい、鳳は滝の鞄を持って部屋へと
向かった。一足早く部屋へ行った鳳は自分の鞄を置き、滝の鞄もドサっと置く。滝の鞄は
開いていたのか、置いたはずみに何かが床へと飛び出した。
「いけねっ、あれ?何だろうこれ?」
鞄から飛び出たのはグリーンのビニール袋だった。中にはビデオかDVDか・・・そんな
ものが入っているようだ。何だか気になってしまい、鳳はいけないと思いつつもその袋の
中身を見てしまった。
「お待たせ、長太郎。」
「・・・・・。」
「どうしたの?」
テーブルの上に持って来た和菓子とお茶を置くと、滝は何故だが固まっている鳳の手元を
覗き込む。そこには今日、無理矢理クラスの男子に渡されたとあるDVDがあった。
「た、滝さん・・・」
「あー、それね。それ今日クラスの奴らが無理矢理渡してきてさ、俺は別に興味ないんだ
けどねー。でも、長太郎が興味あるなら別に見てもいいよ。」
「そ、そんなことっ・・・」
そう鳳が手に持っているのはいわゆるAVというやつだ。題名はそりゃもうあからさまで
ここには書けないようなものであるが、内容はどうやらストーカーの話らしい。滝は鳳か
らそのDVDをひょいっと取り上げると自分の部屋にあるデッキに入れた。
「試しに見てみようか?」
「えっ!?」
「たぶんそんな面白いもんじゃないと思うけどね。ま、世間の男子がこんなの見てるんだ
っていうのを確認するのもいいんじゃない?」
本当にそのDVDを見たいというわけではなく、どんなものかというのを確かめるためだ
けに滝は見ようかということを鳳に提案する。鳳からすれば、どんな話であろうとそうい
う話を見るのは気が引けると思ってはいるが、興味がないわけではない。
「本当に見るんですか?」
「長太郎がそういうの苦手だっていうなら見ないけど。」
「俺だって・・・見たことないですけど・・・」
「じゃあ、やっぱ見てみようか。面白くなかったら途中で止めよう。」
「・・・・はい。」
興味本位な滝に言われ、鳳は結局頷いてしまった。ちょうどよく今家には自分達しかいな
い。たとえ誰かが帰ってきたとしても、部屋に鍵をかけていれば外に音は漏れないであろ
う。というわけで、滝はテレビをつけ、再生ボタンをポチっと押した。
持って来た和菓子を食べながら、普通のDVDを見ているかのように滝はテレビの画面を
見ている。内容としては、もちろんそんなシーンばかりなのだが、ふーんというような薄
い反応しか見せていない。
「やっぱり、あんまり面白くないね。ストーリーも全然なってないし。第一、ストーカー
みたいなおかしな奴に犯られて、女がこんなに喜ぶわけないじゃん。」
AVを見て、ここまで冷静に感想を述べる男子も珍しい。
「それに俺、強姦ものってあんまり好きじゃないんだよねー。こんなの見てるから間違っ
た知識が植付けられるんじゃないの?ねぇ、長太郎。」
冷静に見られるのは滝だからであって、普通の男子はまずこんなことは思わない。当然、
鳳も後者の方だった。せっかく滝が持って来てくれた和菓子にもほとんど手をつけていな
い状態だ。
「長太郎?」
「えっ・・・?あっ、はい!!」
「面白い?」
「いや、面白いっていうか・・・その・・・」
顔を真っ赤にしながらうつむく鳳は、脱いだブレザーを足のところにかけ、何かを隠した
がっているようだ。その様子を見て、滝は鳳が言いかけたことを完璧に理解した。
「ま、普通はそういう反応が正常だよね。」
そう言うと滝は鳳の膝の上に置かれているブレザーを取り去ってしまった。隠せるものが
なくなってしまい、鳳は焦りながらさらに頬を染めて、滝の顔を見る。
「ちょ・・・滝さんっ!!」
「ほーら、やっぱり。ねぇ、長太郎。DVD止めていい?」
「別にいいですけど・・・」
「なーんか、今のDVD見て、長太郎の反応見てたらしたくなっちゃった。俺がこっちの
処理、ちゃーんとしてあげる。」
「えっ・・・ちょ、ちょっと待ってください!!」
いきなりそんなことを言い出す滝に鳳は慌てて行動を静止する。ここまでされるとは思っ
てなかったので、覚悟がまだ出来ていないのだ。
「どうしたの?」
「い、いきなり・・・そんな・・・」
「やっぱり嫌?嫌だったら、俺は無理矢理したりしないよ。」
さっきのDVDが無理矢理な感じだったので、滝はそんなことを言う。そう言われてしま
うと鳳もまた微妙な気分になってしまう。いずれにしても、あからさまな反応を示してい
るズボンの下にあるものを何とかしなければいけないのは事実だ。少し考えたあと、鳳は
思いきってしてもいいというようなことを小さな声で滝に伝えた。
「嫌じゃないです・・・」
「そっか。じゃあ、お言葉に甘えて。」
すっと鳳のズボンに手を伸ばそうとした滝だったが、何かを思いついたように手を止めた。
「あのさ、長太郎。」
「はい。」
「さっきのDVDみたく、手とか縛っちゃダメ?」
「へっ?」
突然の提案に鳳は滝の言っていることがすぐには理解出来ない。面白くないと言いつつも
滝もバッチリさっきの話に感化されているのだ。
「ほら、さっきの話、無理矢理だったから女の人の手ネクタイで縛ってたじゃん?あれ、
やってみたいなあと思うんだけど、ダメかな?」
「えっ・・・えー!?」
「嫌ならやらない。」
ニコッと笑いながら滝は言う。そんなふうに言われるとそうそう嫌だとは言えないものだ。
ましてや鳳。滝がやりたいと言ったら同意してしまうのも無理はない。
(ど、どうしよ〜。やるのもかなりアレなのに、縛ってもいいかって聞かれても〜。でも、
さっきの話、ちょーっとだけ、してみたいなあと思った部分もあったし、滝さんだったら、
そんなにヒドイことはしないよな。)
「えっと、あの・・・少しだけなら・・・」
「いいの!?やった。」
素直に喜ぶ滝は自分のネクタイを解くとあっという間に鳳の手を後ろ手に縛り上げてしま
った。あまりの素早さと正確さに鳳は唖然としつつ、ドキドキしてしまう。
「よっし、準備完了。それじゃあ、さっそく・・・」
「た、滝さんっ!!」
「何?長太郎?」
「あ、あの・・・ベッド行きません?床でやるのはちょっと・・・」
「そうだね。じゃ、移動しようか。」
実はまだ鳳はされることへの抵抗感が完璧には消えていない。それで、すぐには出来ない
ようにと時間稼ぎをしているのだ。しかし、ベッドに行ってしまってはもうこれ以上はの
ばせない。さすがにここまできたら覚悟を決めないとということで、鳳はベッドの端に腰
かけ、濡れた瞳で滝に視線を落とした。
「あんなDVDより、長太郎にそういう目で見られた方がよっぽど興奮するよ。」
「滝さん・・・」
「大丈夫、心配しないで。絶対気持ちよくさせてあげるから。」
そう言うと、滝は今度こそ鳳のズボンに手をかけ、熱くなりかけている鳳の茎をゆっくり
と口に含む。初めは緩やかに刺激を与えるだけだが、次第にそれは激しいものになってゆ
く。
「ふぅっ・・・ん・・・ぁ・・・」
あからさまに声は出せないと鳳はなるべく抑えているが、そのうちそれも出来なくなって
くる。そんな声を聞きながら滝はあんなDVDより何倍もいいじゃないかと心底感じてい
た。
「やっ・・・ぁん・・・滝さん・・・」
「やっぱり長太郎の声の方が全然イイ。」
「えっ・・・?」
「あんな演技の喘ぎ声より、長太郎のその声の方が何倍も可愛いし、色っぽい。」
ちゅっと音を立てて吸ってやると、鳳の身体はビクンと震える。手が使えないので、シー
ツを掴むことも出来ない。
「あっ・・・ぅ・・・」
「気持ちイイ?」
「ん・・・は・・い・・・」
濡れた息を吐きながら、鳳は頷くように答える。ちらっとその表情を見上げると、何とも
言えない色香が漂っていた。興奮で赤く染まった頬はどこか幼さを帯び、熱い吐息や甘い
声を漏らすその唇は大人の女性よりも艶やかだ。そんな顔を見てしまえば、滝ももっとも
っと攻め立てたくなる。
「長太郎、イカせていい?」
答えをもらう前に滝はそうさせるような行動を起こしていた。そんな刺激に鳳が耐えられ
るはずもなく、軽く歯を立てられた瞬間、あっという間に果ててしまう。放たれた雫をゴ
クリと飲み干すと、滝は満足そうに溜め息をついた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「ふぅ・・・長太郎、大丈夫?」
「はい・・・」
バタンとベッドに倒れながら、ぼーっとする頭で鳳は返事をする。後ろ手に縛られ、横向
きでベッドに倒れている鳳は、滝からすれば犯してやりたくなるほど可愛い。そんなうず
うず感を抑えられず、滝はまた率直にあることを尋ねた。
「長太郎・・・」
「何ですか?」
「続き・・・しちゃダメかな?」
この状態で聞かれても〜という感じだったが、滝が相当切羽詰っているということは鳳に
はよく分かっていた。本当は無理矢理やってもおかしくない状況であるのに、自分を気遣
って尋ねてくれるというのはやはり嬉しいことだ。鳳はすぐに頷き、その上わざと誘うよ
うなことも言ってあげた。
「いいですよ。・・・こんなところでやめられても、俺、困っちゃいますし。」
「本当にいい?」
「はい。滝さん、本当は我慢出来ないんでしょう?」
「実はね。ありがとう長太郎。」
すっかり見透かされてるということを少々恥ずかしく思いながらも、滝は早速進めようと
鳳のズボンを取り去ってしまった。そのあとはいつも通りナチュラルに進める。ただ、い
つもと違うのは鳳の手が縛られているということ。
「うーん、これって解いた方がいい?」
「ハァ・・・そのままでもいいっスよ。」
「でも、これじゃあ正常位は無理だよ?」
「たまには・・・バックでもいいんじゃないですか?」
恥ずかしそうに、しかしほのかに笑みを浮かべて鳳はそんなことを言った。意外なお誘い
だと、ちょっとビックリしながらも滝はその提案を受け入れる。もうすっかり慣らされた
鳳の蕾は後ろからでも軽々滝の熱を呑み込んだ。
「んっ・・・ああっ!!」
「はっ・・・何だ随分簡単に入っちゃった。」
「はぁ・・・滝さんっ・・・」
「久々にこの視点から長太郎のこと見るなぁ。何か今日の長太郎やらしい。」
「そんなこと・・・ないですよぉ・・・」
「いや、絶対そうだって。やっぱ、この縛られた手首がいい雰囲気出してるよねー。」
見かけだけは何となくSMチックだなあなどと思いながら、滝は楽しそうな口調で言う。
鳳としては喋るだけではなく、もっとちゃんと攻めて欲しいと感じていた。
「あの・・・滝さん・・・」
「何?」
「もう少し・・・ちゃんと・・・動いてもらえません?」
「あっ、ゴメンねー。了解。こっからちゃんとやります。」
「ふっ・・あ・・・ああっ・・・」
自分は全く動けないので、鳳は思わず率直に言ってしまった。そんなリクエストを受けて
滝は鳳の要望通りに動いてみせる。そうなってしまうと、どちらも話せる余裕はなくなっ
てしまった。生み出される快感にどっぷり浸りながら、二人はしばらくこんなことを楽し
んでしまうのであった。
「あー、何ていうか・・・ねぇ?」
「・・・・・。」
「あーいうDVDってやっぱ二人で見るもんじゃないね。」
「でも、俺、全然嫌だと思ってませんから!!」
急にやってしまった疲労感から鳳はすっかり動けなくなっていた。その上、ネクタイで縛
った跡がくっきり手首に残ってしまったのだ。
「ゴメンね、長太郎。今日、帰れないよね?」
「はい・・・すいません。」
「気にしないで。俺が悪いんだし。今日はうちでゆっくりしていきなよ。」
「ありがとうございます。」
布団で寝ている鳳と話ながら、滝はテーブルにあった和菓子を取り、ぱくっと自分の口に
運ぶ。そして、それを咥えたまま鳳の口元に持っていった。鳳は反射的に口を開けてしま
う。
「っ!?」
「長太郎、まだ一つも食べてないでしょ?どう?美味しい?」
「はい・・・」
こんな食べさせられ方で受け取ってしまった鳳はカアっと顔を赤くしながら頷いた。疲れ
てはいるが、何となく幸せだーと心の底から思ってしまう。やっていることは同じなのに
あのDVDの内容とはえらい違いだと感じた。
「やっぱ、したあとはこういう雰囲気がないとダメだよねー。あんなストーカーの話じゃ
絶対ありえないもん。」
「そ、そうですね。」
自分の心が読まれたのかと鳳は一瞬焦った。しかし、滝の言っていることは自分の考えと
全く同じ。それがまた嬉しくて何となく顔が緩んでしまう。そんな鳳の顔を見て、滝も微
笑んだ。そんな甘い甘い雰囲気の中、二人は和菓子のような柔らかいキスを何度も何度も
交わすのであった。
END.