A Graduation Ceremony

ついに来てしまった。この時が。昨日はほとんど眠れなかった。たくさんの出来事が頭の
中をめぐって、とても寂しく、切なくなってしまった。今、三年生が俺の前をどんどん通
り過ぎてゆく。そう、今日は氷帝学園“卒業式”だ・・・。
『一同、起立。』
マイクでの声で何度か立ったり、座ったりを繰り返す。そして、しばらくすると俺達はず
っと座ったままの状態でいる時が来た。知っている先輩達の名前が呼ばれ、その先輩達の
返事が聞こえると胸に込み上げるものが抑えられず、自然と目が潤む。どうして、こんな
に涙が込み上げてくるんだろう?樺地や日吉もこんななのかな?
『芥川慈郎。』
「はいっ。」
ジロー先輩もさすがに今日は起きているみたいだ。あっ、でも、このあとの話ではきっと
寝ちゃうんだろうな。はあ・・・もうそろそろか・・・。
『滝萩之介。』
「はい。」
滝先輩の名前が呼ばれるのを聞き、俺は他の人が呼ばれたときとは違う反応を示す。滝先
輩のことを見たいのに、目の前がぼやけてしまってハッキリ見えない。俺はいつのまにか
ポロポロと涙をこぼしていた。二年生でこんなに泣いてる人って他にいるのかなー?少し
恥ずかしいけど、やっぱり涙止まんないや。
しばらくして、先輩達の卒業証書授与は終わった。これが終わると学園長先生の話や来賓
の祝辞、在校生代表の言葉、卒業生代表の言葉と続いた。卒業生代表の言葉はもちろん跡
部さんだった。涙一つ浮かべず堂々と在校生に向かって、三年間の思い出やこれから三年
になる俺達へ向けての言葉を放つ。やっぱ、すごいよなあ跡部さん。こんなたくさんの人
の前で、あんなに堂々としていられるんだもん。でも、跡部さんなら当然のことか。
『卒業生、在校生、職員、起立。』
全ての言葉が終わると、最後に歌を歌うことになる。在校生から歌うのだが、俺は泣いて
しまって、ほとんど歌えなかった。先輩達の中にも涙を流している人がいっぱいいたが、
その歌声はとてもそういう状態で歌っているとは思えないほど、キレイで迫力があって、
感動するものだった。そして、卒業式は終わり、三年生は退場。拍手で送り出すけど、跡
部さんに宍戸さん、向日先輩に忍足先輩、ジロー先輩に・・・滝さん。レギュラーだった
人を見るとまた涙が込み上げてきて、目の前は滲んでしまう。今日でお別れ。そう思うと
耐えられないほどの切なさが胸を締め付けるのだ。卒業生全員が退場すると、俺は涙を拳
で拭って、必死で普通の顔でいられるようにした。先輩達に笑顔で『おめでとうございま
す。』を言うために・・・。

俺は卒業式が終わると、元正レギュラーを正レギュラー専用の部室に集めた。最後の最後
くらいこのメンバーで、集まるのも悪くない。樺地や鳳、日吉だって、このまま何も言え
ないでさよならしちまうのは嫌だろうからな。まあ、これが俺が氷帝学園テニス部部長と
して出来る最後のことだろう。
「よし。お前ら全員集まったか。」
「ああ。全員いるぜ。俺に侑士に跡部に宍戸。ジローに滝に樺地に鳳に日吉。」
「せっかく、この俺様が正レギュラー全員集めてやったんだ。何か言いたいことがあった
ら、この機会に何でも言っていいぞ。どうせ最後だしな。」
跡部の奴、そんなこと言っていいのかよ。あー、俺、こいつらに結構迷惑かけちまったか
らなー。特に長太郎とか。何、言われんだろう?
「何か、黙ってても誰も言わなそうだから、俺が指名してくぞ。じゃあ、まず始めに鳳。」
「えっ!?俺ですか?」
「そうだよ。嫌なのか?」
「い、いえ。えっと・・・・」
うわあ、いきなり指名されちゃったよ。うーん、ここはやっぱ、一人ずつに向けて何か言
った方がいいよなあ。
「先輩達、ご卒業おめでとうございます。えっと、あの、いっぺんにまとめちゃうと失礼
なので、一人ずつ何か一言ずつ言っていきますね。」
ふーん、鳳の奴一言ずつ何か言っていくんか。俺、あんま直接鳳と関わったことないから、
何言われるか全く想像つかんわ。
「跡部さんは、俺が入学した時から、もうこの学園のナンバー1で本当にスゴイ人だなあ
って思ってました。カッコイイし統率力あるし自信満々だし、絶対、みんな跡部さんのこ
と尊敬してると思います。俺達じゃ、跡部さんくらいいい部長にはなれないと思いますけ
ど、頑張ります。だから、跡部さんも高校行っても頑張って下さい。」
へぇ、鳳がそんな風に言ってくれるとは思わなかったな。宍戸のことについて触れられな
かったのは意外かも。
「宍戸先輩は頑張り屋さんで負けず嫌いで、とってもいい性格してますよね。レギュラー
復帰のために俺を頼ってきてくれたのは本当にうれしかったです。ダブルスも一緒に組め
て本当によかったと思います。正直言って、俺、宍戸先輩のことすごく好きでした。でも、
今は尊敬できる先輩として、とても好きです。高校行ってもテニス頑張って下さい。それ
から、跡部さんと仲良くしてくださいね。」
「長太郎・・・。」
うわっ、何か泣きそう。長太郎の奴、何言ってやがんだ。そんなこと言われたら何か切な
くなっちまうじゃねぇか。
「向日先輩は、とても明るくて無邪気で可愛い先輩だなあと思ってました。忍足先輩との
ダブルスもすごく息が合っていて、羨ましいと思ってました。他の誰にも真似できないあ
のアクロバティックもスゴイと思います。これからも怪我とかしないように頑張って下さ
い。」
「あ、ありがとな、鳳。」
う〜、確かに鳳と比べたら俺かなり小さくて、子供っぽいかもしんないけどさ、“可愛い”
先輩って・・・。あー、でも、ダブルスのことで羨ましく思われてたなんて知らなかった
なあ。ちょっと、うれしいかも。
「忍足先輩はカッコよくて、天才で、落ち着きがあっていい先輩だったと思います。これ
からも向日先輩とのダブルス頑張ってください。二人ならきっと高校でもレギュラーにな
れますよ。」
「なんや、照れるなあ。」
カッコイイとか天才とか、そんな風に思ってたんかいな。何や恥ずかしいなあ。関東大会
俺らのペア負けてしもうたのに、そんなこと言ってくれるとうれしくなるわ。
「ジロー先輩は・・・あれ?」
「おい、ジロー!起きろよ。」
「うーん・・・眠いー。」
「全く、しょうがねーなあ。」
「ジロー先輩は寝てるときと起きてるときのギャップがすごくて、おもしろい先輩だなっ
て思ってました。でも、テニスはすごく上手くて、強くて、スゴイなあと思います。高校
行ってもそのままでいてくださいね。あっ、でも、ジャージ脱ぐときハーフパンツまで一
緒に脱いじゃうのは少し気をつけた方がいいと思いますよ。」
「ひどーい。鳳〜。」
「いや、それは俺も気をつけた方がいいと思う。」
「同感。」
「何だよー、みんなして。」
誰だってちょっとうっかりぐらいあるじゃん。もう、鳳ってばなんてこと言うんだよ。
「最後に滝さん。」
うわっ、どうしよ。泣きそう・・・あー、でも他の先輩の時、泣かなかったんだから泣い
ちゃダメだ。泣いちゃ・・・
「うっ・・・ご、ごめんなさい・・・滝さん・・・」
「泣かないで、長太郎。」
「は・・い。えっと、滝さんは美人で優しくて、俺の大好きな先輩です。本当はすっごく
すっごく卒業して欲しくないですけど、こればっかりはしょうがないですもんね。高校行
っても頑張って下さい。」
う〜、どうしよう。涙が止まんないよー。
「長太郎。高校行ってもいっぱい会おうよ。それから、今よりもっと仲良くなろうね。」
あー、長太郎が泣くからこっちまで泣けてきちゃうよ。でも、ただ学校が変わるだけだも
んな。いつでも会えるし、そんなに悲しむことないよな。
「おら、滝も鳳もそんなに泣いてんじゃねーよ。」
「ひっく・・・スイマセン。」
「いいじゃんよ。こういう時くらい。」
「次、樺地。」
「ウス。」
つっても、樺地はそんなにたくさんはしゃべらないだろうな。たくさんしゃべられてもこ
っちが困惑するだけだし。
「ご卒業・・・おめでとうございます・・・。」
「それで終わりかよ?」
「ウス。」
うーん、やっぱ樺地は樺地だな。で、二年最後は日吉か。日吉の奴は何て言うんだろう?
「じゃあ、次、日吉。」
何で、俺が一番最後なんだろうな。まあ、いいけどな。
「卒業おめでとうございます、先輩達。俺は鳳みたいに一人一人とあんまり関わったこと
がそんなにないんで、あーいうふうには言えませんが・・・でも、先輩達が卒業しちゃう
のは少し寂しいですね。」
「へぇ、結構意外。やっぱ、日吉も俺達の可愛い後輩だね。」
「下剋上する相手がいなくなるんで。」
「何や、そういうことか。」
やっぱ、日吉は日吉だな。でも、本当寂しいよなー。今日で卒業なんて。いまだに信じら
れねぇ。
「じゃあ、次、お前な。宍戸。」
「えっ!?俺!?」
えー、どうしよう。俺、こういうの考えんの苦手なんだよなあ。
「あー、えーと。俺、こういう時、何言っていいか分かんねぇけど、長太郎。」
「えっ、はい!」
「あの時、特訓つきあってくれてホントありがとな。すっげー、感謝してるぜ。」
「そんな、いいですよ。」
「それから、お前の気持ち応えられなくてゴメン。」
「それももう気にしないで下さい。」
「樺地。」
「ウス。」
「お前はもうちょっと積極的になってもいいと思うぜ。三年なっても頑張れよ。」
「ウス。」
「日吉はたぶん部長だろうな。大変だろうけど頑張れ。あっ、跡部をまんま見習うのはや
めておいた方がいいと思うぜ。」
「分かってます。」
んだよ、宍戸も日吉も。俺のどこがいけないっつーんだ。完璧だったじゃねーか。
「じゃあ、次、岳人。」
「なあ、跡部。侑士と一緒じゃダメ?」
「別にいいけどよ。」
「うん。じゃあ、俺と侑士からの贈る言葉は、鳳も樺地も日吉もみんな仲良くね。」
「せやな。俺達ほど個性がバラついてるっちゅーわけじゃないけど、みんなお互いに違う
タイプっぽいから、あんまり衝突せんようにな。」
「大丈夫ですよ。」
「ウス。」
「俺が引っ張っていきます。」
「みんな頼りになりそうだね。なっ、侑士。」
「ああ。これからも頑張りや。」
『はい!』
確かに自分なら本当に大丈夫そうやな。鳳はしっかりしてるし、樺地はマジメやし、日吉
はリーダーシップありそうやし、何や結構バランス取れてるやん。
「次はジローだけど、寝てるからとばすか。」
「ったく、こういう時くらい起きてろよな。」
「じゃあ、次、滝。」
えーと、何、言えばいいのかなあ。俺、みんなと一緒に試合とかしてたわけじゃないから
なあ。
「えっと、俺はみんなと一緒に関東大会で戦ったわけじゃないし、ただ、ちょっとの間、
正レギュラーだったってだけだけど、みんなこれからも頑張ってね。お前達なら、きっと
全国行けるよ。」
『はい!』
「ウス。」
うれしいな。滝先輩にそう言ってもらえるとすごくできるような気がする。
「じゃあ、最後に俺だ。俺様がいなくなって心細いだろうが、お前達には十分実力がある。
自信をもっていけ。勝つのは氷帝だからな。」
『はい!!』
さて、これで全員終わったな。もうそろそろ帰るか。
「じゃあ、解散するか。」
「えっ、もう?」
「ここにずっといたってしょうがねぇだろ。それに、二人きりになって話したいって奴も
いるんじゃねーの?」
「あっ、そっか。」
そうだよな。跡部よくみんなのこと考えてんじゃん。まあ、俺は跡部と帰るとして、岳人
は忍足とだろ、長太郎は滝とで、ジローは・・・樺地かな?あれ?日吉だけあまっちまう。
「日吉、一緒に帰るか?」
「いいですよ。先輩達の邪魔したくないし。じゃあ、俺、もう帰りますね。」
「ああ。じゃあな。」
正直、ちょっと鳳や樺地がうらやましいけど、まあ、しょうがないか。さあて、さっさと
家に帰って古武術の練習でもするか。

「なあ、宍戸。」
「何だよ?」
「お前、目、超潤んでるぜ。泣きそうなんじゃねーの?」
「そ、そんなことねぇよ!!」
う〜、跡部ってばどうしてそういう細かいことに気づくかなあ。絶対泣かねぇ!!こいつ
の前で泣いたら、またからかわれるだけだもんな。
「それにしても、みんないい奴だったよな。鳳も樺地も日吉も。特にお前にとっては鳳な
んかがかなり印象深かったんだろ?」
「うっ・・・・」
「はあー、今日で卒業か。寂しいよな。なあ、宍戸。」
くそ〜、跡部の奴わざとそんなこと言って、泣かせようとしてやがんな。うわっ、ヤバッ
・・・。
「どうした?宍戸?あー、もう涙流れてるぜ。もう我慢しなくていいんじゃねーの?」
「跡部のアホ!うっ・・・お前がそんなこと言うから、耐えられなくなっちまったじゃね
ぇか!!」
「別に泣いてもいいじゃねーか。でも、まあ、そんなに泣きたくないんだったら、その涙
俺が舐めとってやるよ。」
「うっわ、やめっ・・・!!」
今度は何だよー、ったく跡部の奴。まだ、学園内だっつーの!!あー、もう何か涙なんて
止まっちまったぜ。
「じゃあ、もうそろそろ帰るか。」
「ああ。・・・・あのさ、跡部。」
「どうした?」
「えっと・・・あのな・・・」
「何だよ?言いたいことがあるならハッキリ言えよ。」
「高校・・・行ってもよろしくな。」
何だよ、メチャクチャ可愛いこと言ってくれるじゃねーか。こんなこと言われたらせっか
く我慢してやってたのに、出来なくなっちまったな。
「ふ・・・ぅ・・・・っ!!」
だあーー!!何やってんだーー!!離せーー!!
「・・・はあ・・・って、跡部、何やってんだよ!!」
「いやー、お前があんまり可愛いこと言うから我慢できなくなっちまってな。」
「せっかく勇気出して言ってやったのによ。もう跡部なんて知らねぇ。」
「そんなこと言っといて、俺が無視したら怒るくせに。いいぜ。高校行ってもお前と仲良
くしてやるよ。もちろん、恋人としてな。」
「なあっ!?」
また、跡部はわけの分からないことを。でも、まあ、高校行っても仲良くしてくれるって
のは、やっぱうれしいかな。ちゃんと、確認したくなっちまうってのは、俺も結構重症だ
よなあ。
「今日、お前、俺んち泊まれよ。」
「しょうがねーな。行ってやるよ。」
「じゃあ、行くぞ。」
「ああ。」

「侑士ー、早く帰ろうぜ。」
「ちょっと、待ち。ほら、卒業証書忘れとるで岳人。」
「あー、ホントだ。ゴメーン、侑士。」
「最後なんやから、忘れ物したらアカンで。」
「うん。」
危ない、危ない。もう中学校は最後なんだから、忘れ物したら大変だ。やっぱ、しっかり
してるよなあ、侑士。
「ねぇ、侑士。」
「何や岳人?」
「高校行っても・・・ダブルス組んでくれる?」
「当たり前やん。俺らダブルス専門やし、俺と組めるの岳人だけやもん。」
「本当?」
「ホンマ、ホンマ。これからもよろしくな岳人。」
「うん!!俺、ずぅーっと侑士のパートナーだからな。」
卒業ったって、高校も一緒だもんな。そんなに寂しくないや。
「じゃあ、帰るか。」
「そうだな。なあ、今日岳人んち泊まってええか?」
「うん、もちろんいいぜ。」
今日は卒業式やしな。やっぱ、特別な日は岳人と一緒に過ごすのが一番やな。
「侑士ぃ、帰るとき手繋いでいいか?」
「ええよ。」
「じゃあ、帰ろう♪」
「ああ。」
さてと、今日は一日中侑士と一緒にいられるぞ。何しようかなあ?一緒にご飯食べて、一緒
にお風呂に入って、それから一緒に寝よーっと。

「・・・・・。」
「・・・・・長太郎?」
「はい・・・何ですか?」
「そんなに泣かないでよ。これから、会えなくなるってわけじゃないんだからさ。」
「でも、やっぱり寂しいっスよぉ。」
「大丈夫だって。じゃあ、約束しようよ。」
「約束っスか?」
「うん。これからは、週に一回以上必ず会おうって。」
「いいんですか?」
俺もこのままほとんど会えない状態になっちゃうってのは、寂しいもんな。約束しておいた
方が気持ちもいくらか楽になるだろうし。
「もちろんだよ。じゃあ、指きりげんまんしよ。」
「はい。」
指きりげんまんで約束なんて久しぶりだなー。滝さんやっぱり手キレイ。
『指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます♪指切った♪』
何かうれしいな。こんな簡単な約束だけど、すごく心の支えになる。まあ、高校ったって、
氷帝学園高校なんだから、校舎もあんまり離れてないんだよな。会おうと思えばいつでも
会えるって、普通に間違ってないし。
「じゃあ、もう帰る?」
「そうですね。」
「あっ、そうだ!長太郎。」
「何ですか?」
「春休みあたり、二人で旅行に行かない?」
「えっ!?」
滝さんと二人で旅行なんて、夢みたいだ。わあ、どうしよ。
「ダメかな?」
「い、いえっ!!すごいうれしいです!!是非行きましょう!!」
「本当?じゃあ、今度計画立てようね。」
やったー、長太郎と旅行だー。何か、今日卒業ってのが嘘みたいだなあ。旅行楽しみー♪

「はあ〜、今日で卒業かあ。寂しいな。な、樺地。」
「ウス。」
「俺、泣いちゃうかも。」
「ウス!?」
なーんて、冗談だけどね。でも、ちょっと、泣き真似してみようっと。あっ、樺地戸惑っ
てる。戸惑ってる。
「・・・・・。」
えっと、どうすればいいんだろう?でも、卒業式の時に泣くっていうのは普通のことだよ
な。ジローさん、本当に泣いちゃってるのかな。
「ウ、ウス・・・。」
「ゴメンね。樺地。今の冗だ・・・!!」
えー、嘘!何でそんなに樺地泣きそうな顔してんだよ。うわっ、ヤッベー、ホントに泣き
そうになってきちゃった。
「・・・・。」
「・・・・うっ、樺地〜。」
わあ、本当にジローさん泣いてたんだ。何かこっちまで寂しくなってきちゃったな・・・。
「・・・先輩達が、卒業するのは・・・・寂しい・・・です。」
何でこういう時にそういうこというんだよ〜。うわーん、本格的に寂しくなってきちゃっ
た。でも、まあ、いっか。今日は卒業式だしね。そうだ!
「樺地、これあげる。」
「ウス?」
「俺の制服の第二ボタン。つってもうちの学校ブレザーだから、心臓からはだいぶ離れち
ゃってるけどな。」
これって、普通女の子にあげるものだよな。でも、くれるっていうんならもらっておこう。
「・・・ありがとう・・・ございます・・・。」
「受け取ってくれて、ありがとー。俺達は高校行っちゃうけど、たまには一緒にテニスし
ような!」
「ウス。」
そうだよな。卒業って言っても永遠の別れじゃないんだし、そんなに悲しむことないよな。
よ〜し、じゃあ、これから樺地と放課後デートだ!
「樺地、これから街の方行こうぜ。」
「ウス。」

それから、一ヶ月後・・・・
「おーい、樺地。ジローの奴がどっか行っちまって見つからねぇんだ。探してきてくれね
ーか?」
「ウス。」
「滝さーん、今日も頑張ってください!!」
「うん。長太郎も頑張ってね。」
「先輩達、なんでわざわざフェンス隔てた俺達にそういうこと頼むんですか。もう、同じ
学園内じゃないんですよ。」
「いいじゃん。どうせ同じ敷地なんだし。」
そう、氷帝学園の中学校と高校はフェンスで隔てられているだけで、ほぼ同じ敷地内にあ
る。フェンスで囲まれてはいるが、このメンバーは中学校の時と変わらず、仲良く毎日テ
ニスをするのであった。

                                END.

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