「跡部、跡部!」
「あーん?何だよ?」
「来週のテスト、マジやべぇんだけど。」
「そんなのテメェが授業サボってんのがいけねぇんだろ。俺の知ったこっちゃねぇ。」
定期テストを控えた金曜日、宍戸は慌てた様子で跡部に声をかける。来週の一番初めにあ
る英語のテスト範囲の内容が全く分からないことに気づき、跡部に助けを求めたのだ。
「この前のテストも赤点でよ、今回も赤点だと補習で部活が出来なくなっちまうんだ。」
「そんなの自分の行いが悪いからだろーが。」
「なあ、マジでお願い跡部。英語、教えてくれよ。」
「そんな面倒なこと、どうして俺が・・・」
断るつもり満々だったのだが、これはもしかしたらいいチャンスかもしれない。テスト前
ということもあり、最近は放課後デートやお泊りを控えていた。つまり、宍戸と一緒にい
ることがいつもより少なくなっていたということになる。勉強を教えることを口実にそれ
以外のことも出来るかもしれないと、跡部の頭の中でこの後のプランが一気に作られた。
「跡部、本当に本当にお願い。」
「そこまで言うなら、教えてやってもいいぜ。」
「本当か!?」
「ただし、ただでとは言わないぜ。そこらへんは分かってるよな?」
「うっ、そりゃ分かってるけど・・・今は赤点を取らないってことの方が大事だ。」
「それだけの覚悟がありゃあいい。それじゃあ早速図書館に行くぜ。」
「おう!」
跡部に教えてもらえるなら何とか赤点は免れるだろうと、宍戸はひとまずホッとする。閉
館一時間前の図書館でどれだけ勉強出来るか分からないが、やるだけのことはやろうと宍
戸は気合を入れた。
図書館に行くと様々な生徒が静かにテスト勉強を進めている。跡部と宍戸も図書準備室に
近い席に座った。
「まずは範囲の確認からだな。それぐらいは分かってんだろ?」
「お、おう。確かLesson5〜Lesson7だったよな?」
「そうだ。で、文法事項としては何がポイントか分かるか?」
「え、えっとぉ・・・・」
範囲は分かっているが、授業をまともに受けていなかったために内容までは分かっていな
い。まずはそこからチェックしなければならないと跡部は自分のノートと教科書を広げ、
ポイントを説明してやった。
「今回の範囲のポイントは、分詞と前置詞だ。そんな難しいもんじゃねぇからポイントだ
け覚えちまえば、平均点以上は取れんだろ。」
「分詞?分詞って何だ?前置詞っつーのは、あれだろ?inとかatとか。」
「分詞はっつーのは、現在分詞と過去分詞ってのがあって、〜ingとか〜edとか過去
形を使ったりする奴だ。前置詞はまあそんなもんだな。」
基本的なところから入り、跡部は教科書の内容と合わせながらポイントと暗記するべき部
分を宍戸に説明してゆく。Lesson6の途中まで説明したところで、図書準備室から
司書さんが出てきた。
「そろそろ閉館の時間ですよ。皆さん帰る支度をしてくださいね。」
「司書さん。ちょっとお願いがあるんですけど・・・」
他の生徒が帰り支度を始めている中、跡部は司書さんにあることをお願いする。そんな様
子を宍戸はあくびをしながら眺める。
「あら、そうなの。それなら仕方ないわね。まあ、跡部君なら任せても大丈夫そうだし、
今回だけは特別よ。」
「ありがとうございます。」
丁寧に頭を下げ、お礼を言うと跡部は司書さんから図書室の鍵を受け取る。他の生徒が出
て行くのを見ると、司書さんは跡部と宍戸がいる場所以外の電気を消し、戸締りをし始め
る。
「跡部、俺達も帰った方がいいんじゃねぇ?」
「いや、その必要はねぇぜ。終わるまでここ使っていいってよ。」
「は?マジで?」
「ああ。教えるんだったら徹底的に教えてやらねぇとな。」
「それじゃあ跡部君。ここの戸締りお願いね。」
「はい。ありがとうございます。」
閉館の時間になると、司書さんはにこっと頭を下げて帰って行った。図書館の鍵を平気で
預けてもらえる跡部を宍戸はさすがだなあと思う。
「よし、じゃあ、続きいくぞ。」
「あっ、おう。」
特に図書館の鍵を閉めておくということはせず、跡部は勉強の続きを始める。
跡部と宍戸が図書館で勉強しているちょうどその頃、滝と鳳は交友棟で他愛も無い話をし
て盛り上がっていた。話が一段落つき、そろそろ帰ろうかとなった時、鳳がふとあること
に気がつく。
「あっ!」
「どうしたの、長太郎?」
「今日図書館で借りた楽譜を返さなきゃいけない日だったんですよ。すっかり忘れてて。」
「あっ、俺も今日が確か借りてる本の返却日だった。あー、もうきっと閉まっちゃってる
よね。」
「ですよね。でも、返却はBOXに置くだけなんで、ダメもとで行ってみます?」
「そうだね。万が一ってこともあるかもしれないし。」
とっくに閉館時間が過ぎているので、開いてはいないと思うがもしかしたらということで、
二人は図書館へ向かって歩き出した。交友棟から図書館まではかなり距離があるので、移
動時間だけでだいぶ時間を使ってしまう。
「あー、やっぱり閉まってる。中真っ暗だもん。」
「やっぱり、間に合いませんでしたね。鍵も閉まって・・・あれ?」
扉のガラス部分から見える中の様子がどう見ても閉館している状態だったので、二人は諦
めようと思った。しかし、扉に手をかけてみると何故か鍵が開いている。不思議に思いな
がらもラッキーと二人はそこから暗い図書館の中に入った。
「真っ暗なのに何で鍵開いてるんでしょうね?」
「さあ。司書さん、閉め忘れちゃったんじゃない。あれ?」
カウンターの横にあるBOXに本を返して、あたりを見回してみると一部分だけ電気がつ
いている。やはりまだ司書さんが残っているのかと思い、様子をうかがいに行くと、聞き
慣れた声が聞こえる。
「となるんだが、分かったか?」
「お前の説明やっぱ分かりやすいな。バッチリ分かったぜ!」
「じゃあ聞くが、『私は時間通りにその場所に着いた』っつー文を英訳した時、time
の前につく前置詞は、inとonどっちだ?」
「えっと・・・inが何かの範囲の中で、onが接触だから、onか?inだったら、時
間内にってなるはずだもんな。」
「正解だ。なかなか覚えがいいじゃねぇか。」
電気がついている場所にいたのは、司書さんではなく跡部と宍戸であった。見たところ英
語の勉強をしているようである。
「跡部と宍戸じゃん。こんなとこで何してんだろ?もうとっくに閉館時間過ぎてんのに。」
「テスト勉強してるみたいですよね。でも、司書さんはいないみたいですよ。」
「跡部のことだから、適当なこと言って司書さんに使ってもいいって許しをもらったんじ
ゃないの?」
「跡部さんならありえますね。」
そんな話をしていると、二人は机の上を片付け始めた。どうやらやるべきところまでの勉
強が終わったようだ。
「あー、跡部のおかげで何とか赤点は免れそうだぜ。マジサンキューな。」
「俺様が教えてやったんだから当然だ。ところで、今日の手間賃ここで払ってもらいたい
んだが、いいよな?」
「は?俺、今日そんなに金持ってきてねぇよ。明日じゃダメか?」
「明日は休みじゃねぇか。それに俺が欲しいのは金じゃねぇよ。」
「えっ・・・?」
「こういうことだ。」
ガタンと椅子から立ち上がり、跡部は不意に宍戸の唇を奪う。驚く宍戸は目を見開いて、
抵抗するのも忘れてしまう。
「うわあ、やるねー、跡部。」
「どうしましょう。俺達帰った方がいいんじゃないッスか滝さん。」
「えー、せっかく面白いもの見れるんだからさ、ちょっと見ていこうよ。こんなチャンス
滅多にないって。」
暗がりの本棚の陰から滝と鳳は二人の様子をうかがう。わくわくしている滝にドキドキし
ている鳳。この後どうなるのかと期待をしながら、息をひそめてじっと光の当たっている
部分を見つめた。
「ん・・・ふはっ・・・・いきなり何すんだよ!?」
「ただでは教えねぇっつったろ?聞いてなかったのかよ?」
「う〜、でも・・・」
「俺はちゃんと教えてやったぜ。御代はちゃーんと払ってもらわなくちゃなあ。」
「くそっ、分かったよ!!」
勉強を教えて欲しいと頼んだのは自分の方だし、跡部はしっかりと自分が分かるまで教え
てくれた。今の自分は文句を言える立場ではないのは十分分かっている。しかし、こんな
場所で、跡部が考えているようなことをするのにはやはり抵抗があった。
「でも、声はそんなに出さねぇからな!」
「あーん?何でだよ?」
「だ、誰かに聞かれたら困るじゃねぇか・・・」
「もう誰もいねぇよ。司書さんも帰っちまったし、図書館も閉まってんのに、テスト前に
そこまで学校残ってるバカもそうそういねぇだろ。」
跡部の言葉を聞き、滝と鳳はグサッとくる。自分達はまさにそれだと思うが、せっかく面
白いものが見れそうなのだ。こんなところでみすみす帰るわけにはいかない。
「言われちゃいましたね。」
「いいよ。気にしないでおこう。明日と明後日休みなんだし、そこで勉強すれば問題ない
って。」
「まあ、確かにそうですけどね。」
プラス思考な滝に合わせるように鳳も頷く。ここまできたならもう見るしかない。二人の
動向を観察するべく、滝と鳳は再び跡部と宍戸に視線を移した。
「うっ・・・ん・・・ふぅ・・・」
椅子に座っている宍戸の足の間に顔を埋め、跡部はぴちゃぴちゃと音を立てながら、宍戸
の熱を舐めている。声を出すまいと必死で堪えている宍戸だが、どうしても吐く息に混じ
り、小さな喘ぎが漏れてしまう。
「宍戸、今日やったとこの復習するぜ。」
「はぁ?・・・こんな状況で何言ってんだよ・・・?」
「今の状況を現在分詞を使って英訳しろ。俺が主語でな。」
「ひゃっ・・・む、無理っ・・・単語分かんねぇし・・・・」
「舐めるは“lick”だ。」
無茶なことを言うなとつっこむ宍戸だが、跡部は本気でさせようとしている。仕方なく宍
戸は働かなくなりかけている頭をフル回転させ、英文を考えた。
「あ、Atobe・・・is・・licking・・・me・・・」
「出来るじゃねぇか。それじゃあ、次はテメェを主語にして、過去分詞を使って今の文を
言いかえろ。」
「あっ・・・や・・ん・・・えっと・・・・」
咥えられながらなので、どう変えればいいのかそう簡単に頭に浮かんでこない。考えよう
としても跡部に与えられる刺激が意識の先頭にたってしまう。
「ふっ・・・跡部・・・ヒント・・・・」
「受動態を使うんだ。『俺は〜されてる』みてぇにな。」
ヒントを出され、宍戸はどんな文を作ればいいかに気づく。息を乱しながら、自分がされ
ていることを説明する英文を口にした。
「I・・am・・・licked・・・by・・Atobe・・・・」
「いいぜ。ちゃんと覚えてるじゃねぇか。褒美に俺様の美技でイカせてやるよ。」
「ふあっ・・あっ・・・跡部っ・・・!」
宍戸が自分の教えたことをしっかり理解していることを確認すると、跡部はニヤリと笑っ
て溢れ出てくる蜜を舐め取り、一際深く口に含んでやる。そして、軽く歯を立てるように
して、思いきり先端の部分を吸ってやった。
「ひぁっ・・・ああ――っ!」
堪らず宍戸は跡部の口の中に熱を放つ。口の端を伝う白い蜜を跡部をぺろっと舐め取った。
「さてと、先に進むぜ。」
「えっ!?マジで最後までやんのかよ!?」
「当然だろ?まだ英語の復習も全部済んでねぇぜ。」
「こんなことしながら復習したくねぇし。」
ぐだぐだと文句ばかり言う宍戸に跡部は少々カチンとくる。ぶすっとした顔で無理矢理ズ
ボンと下着を剥ぎ取ってしまい、すぐには届かないようなところへポイっと投げてしまっ
た。
「あっ!!何してんだよ!?」
「うるせー、手間賃、あれだけで足りると思うなよ。」
「うわっ!・・・ちょ、ちょっと待っ・・・あっ・・・ああ・・・」
思わず立ち上がった宍戸を机の上に押し倒し、後ろの蕾を慣らし始める。机の上で脚を開
かされ、宍戸は羞恥心から腕で顔を覆った。
「おら、顔隠すんじゃねぇ。」
「いやだっ・・・テメェはいつも無理矢理すぎんだよ!」
「あーん?無理矢理してもテメェはいつも俺のすることなすこと、何だかんだ言って全部
受け入れてんじゃねぇか。今だって、俺様の指を咥えこんでヒクヒク言ってるぜ。」
自分が一番分かっていることを指摘され、宍戸の身体は羞恥の色に染まる。頭ではいくら
嫌だと思っていても跡部に慣らされた身体は嫌がってくれないのだ。
「っるせ・・・仕方ねぇだろっ・・・!」
「俺の指で感じてんだろ?素直にそう言えばいいじゃねぇか。」
「言えるわけねぇだろっ!!・・・んっ・・あぁ・・・」
文句を言いつつもだんだんと開いていく蕾に跡部は口を緩ませる。そろそろいいだろうと
いうところで、また英語の問題を出した。
「宍戸、これから俺の言う英文を和訳しろ。」
「はぁ・・・今度は何だよ・・・?」
「I want something to hot.」
「ふっ・・ぁ・・・えっと・・・」
「ちなみに一人称は“俺”でな。」
「俺は・・・何か・・・熱いモノが・・・欲しい・・・」
特に何も疑いもせず、宍戸は跡部の言った英文を素直に和訳した。それを聞いて、跡部は
妖しげな笑みを浮かべる。
「それならお望み通りくれてやるよ。」
「へっ・・・?」
次の瞬間、宍戸の身体に衝撃が走る。突きつけられた楔がズブズブと自分の中に入ってゆ
く。そうされて、今自分が言った言葉の意味を理解した。
「ひっ・・あ・・・跡部、それ反則っ・・・」
「あーん?何のことだよ?」
「くっ・・・もういいっ!・・・あっ・・・あ・・・」
もうここまでされたらどうでもよくなってしまう。跡部の熱の塊を受け入れ、宍戸は抑え
切れない声を漏らす。
「あっ・・・ひぅ・・ん・・・やぁ・・・」
宍戸の中の熱さと声に酔いながら跡部は、ちゅっと唇を触れさせるだけのキスを何度か繰
り返す。
「んっ・・・跡部・・・・」
「宍戸、今の状況英訳しろよ。今度は前置詞を使ってだ。」
「そんな・・・こんな状況じゃ・・・頭、回んねぇよ・・・」
「テメェなら出来る。何でもいいからよ、やれるだけやってみろ。」
「Atobe・・・is・・・in・・my・・・body・・・・」
「俺様がテメェの身体の中にいるって?確かに間違ってねぇな。」
「あと・・・Your・・・lip・・・is・・・on・・my・・・lip・・・あ
ってるよな?」
「ああ、あってるぜ。やるじゃねぇの。」
英語であっても跡部の頭の中では、しっかり日本語に変換されている。普段は分かってい
ても言葉にはしないようなことを言葉にされ、跡部は興奮する。
「んぁっ・・・跡部っ・・・」
「悪ぃな。今の言葉聞いてたら、興奮しちまって。」
「何だよ・・・それ?」
「なあ、次は和訳しろよ。俺がこれから英文言うからよ。」
「も・・・マジで余裕ないから・・・これで最後にしろよ・・・」
「ああ。」
もう少し様々なこと言わせてみたかったが、余裕がないのは自分も同じだ。跡部はすっと
息を吸って、低い声で宍戸の耳元で少し長めの英文を囁いた。
「I like spend free time playing with you.」
「playingって・・・遊ぶってこと?」
「違ぇーよ。こういうことをするってことだ。」
頭の中でほとんど和訳が出来ていたため、宍戸はそれを聞いて顔を真っ赤に染める。言う
のを躊躇していると、跡部が弱いところをズクンと攻める。
「ひっ・・あぁっ・・・何・・だよっ・・・!?」
「早く言えよ。俺だって、そんなに余裕ないんだぜ?」
「う〜・・・お、俺は、暇な時間をテメェとこういうことして過ごすのが好きだ・・・」
「ふっ、俺もだぜ、宍戸。」
恥ずかしさを含みつつもハッキリとそう言う宍戸の言葉に、跡部は何とも言えない満足感
を感じる。ニッと笑うと最後の一突きだと言わんばかりに宍戸の最奥を穿つ。奥の奥が濡
れていくのを感じ、宍戸は背中を仰け反らせながら、真っ白な熱を放った。
「うっわあ、ホントにこんなとこで最後までやってるし。さすが跡部。」
「何かドキドキしちゃいますよね。って、滝さんさっきから、何ノートに書いてるんです
か?」
「んー、宍戸とか跡部とかが言ってた英語。面白いなあと思って。これネタにからかって
やれそうじゃん。」
「それ、ちょっと可哀想じゃないですか?跡部さんも宍戸さんも俺達がいること気づいて
ないでしょうし。」
「だから面白いんじゃない。跡部には効果ないと思うけど、宍戸は十分に効果あると思う
んだよね。」
ガタン、ガタン・・・
椅子や机が動く音がするのを聞いて、二人はドキっとして息をひそめる。恐る恐る跡部と
宍戸がいるあたりを見てみると、跡部が終わった後の処理をしていた。
「派手に飛ばしやがって。そんなによかったのかよ?」
「ウルセー。これで、今日教えてもらった代はチャラだからな!」
「ああ。よし、机はこんなもんだな。」
「跡部、ズボンと下着どこやった?」
「ああ、あそこだ。ちょっと待ってろ、今取ってきてやるから。」
跡部が動くのを見て、滝と鳳は焦る。宍戸のズボンと下着は今自分達の手が届くほど、近
い場所にある。
「ヤバっ・・・」
「わっ、ちょっと滝さんっ!?」
ドン、バサバサバサ・・・
慌てて隠れようとしたために、二人は本棚に体をぶつけ、しっかりと入っていなかった本
を落としてしまう。当然それに跡部は気づく。しかし、宍戸に気づかれると厄介なことに
なるので、それほど大きなリアクションは取らなかった。
「何やってんだ、テメーら。」
ギクッ!!
「あ、あはは、閉館後に図書館に本返しに来たらたまたまドアが開いてて・・・」
「宍戸に気づかれねぇうちにさっさと帰れ。あいつにバレたら大変だぜ。」
「う、うん。でも、今の音で宍戸にバレちゃったんじゃない?」
「そこは俺が適当に誤魔化す。ほら、さっさと行け。」
「分かった。」
思ってもみない跡部の反応に少々戸惑いながらも、二人はなるべく音を立てないように図
書館を出てゆく。宍戸のズボンと下着を手に取ると、跡部は何事もなかったかのように宍
戸のもとへ戻った。
「今、何かすげぇ音したけど何?」
「あー、何かいたみたいだぜ。ここ以外は真っ暗だからなあ。」
「えっ、何だよそれ!?ここ出んのか!?」
「冗談だ。どこかから猫がまぎれ込んだみたいでよ、本棚にぶつかって本を落としていっ
たみてぇだぜ。」
「何だよ、おどかすな。」
もし、宍戸に滝や鳳が見ていたということがバレたら、こんなとこでするのがいけないん
だと、キレられるに違いない。それは避けたいと跡部はこんな嘘をついたのだ。
「ほらよ。」
「あー、サンキュー。んしょ・・・」
下着とズボンを穿くと宍戸は机から下りる。しかし、足に力が入らずへなへなと椅子に座
り込んでしまった。
「あー、やべぇ。足に力入んねぇ。」
「おぶっていってやろうか?」
「いや、そこまでしなくていい。でも、肩は貸して欲しいかも。」
すっかり脱力してしまった宍戸は跡部の肩を借りて立ち上がる。何とか勉強も終わったし、
余計なこともしてしまったが、まあ、それはそれで楽しかったからいいかとひとまずホッ
とする。
「よし、じゃあ帰るか。」
「休まなくて大丈夫か?」
「ちょっとキツイけど、へーき。跡部がついてるしな。」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇの。じゃあ、帰るか。」
「おう。」
荷物を持ち、二人はゆっくりと図書館を出る。放課後の勉強会はとんだことに発展してし
まったが、やるべきことは全て終わった。あとはテストの日を待つだけだ。
そして、英語のテスト当日。宍戸はテストの問題を見て驚く。問題の出され方が、跡部と
そういうことをしている時に出されたものとそっくりだったのだ。
『問1 次の日本語を英訳しなさい。
� “爐歪�食を食べています。 �◆〇笋枠爐飽Δ気譴討い泙后�・・・・・・・』
『問2 次の( )に入る前置詞を下から選び、入れなさい。
� 。廝紂。鵤遙�dy ( ) the library.
私達は図書館で勉強をした。
�◆。鼻。瓧鬘鬘蕋�ed ( ) time.
私は時間通りに着いた。 ・・・・・・・・』
『問5 次の英文を日本語に直しなさい。
� 。鼻。�ant to spend free time sleeping.
・・・・・・』
あんなことをしながら答えた英文や和訳は、印象深すぎて頭の中にしっかりと残っている。
宍戸は簡単に解けることを嬉しく思いながらも、その時のことをまざまざと思い出してし
まい、顔が勝手に赤くなる。
(跡部すげぇ。出し方までほとんど同じだぜ。でも・・・これじゃあ、余計なことまで思
い出しちまう・・・。)
「宍戸。」
「うわ、はい!!」
「顔が真っ赤だが、熱でもあるのか?」
「だ、大丈夫です!!」
担任に顔が赤いことを指摘され、宍戸はさらに恥ずかしくなる。それでも何とか問題を解
き進めていって、終了10分前くらいにはシャーペンを置いた。
(すげぇ、こんなにスラスラ解けたの初めてかも。これも跡部のおかげだな。)
赤点を免れるどころか、今までで最高の得点が取れそうだと宍戸はくすっと笑う。そんな
宍戸の様子を跡部は数列離れた席から眺めていた。
(出来たみてぇだな。ま、俺様が教えてやったんだから当然だけどよ。)
宍戸につられるかのように跡部もふっと笑う。それからしばらくして、試験終了を告げる
チャイムが鳴る。今日の試験はこれで終わりなので、解答用紙の回収が終わると宍戸はか
なり御機嫌な様子で跡部の席に向かった。
「あーとべ♪」
「どうした?随分御機嫌じゃねぇか。」
「へへへー、今日のテストバッチリだったぜ。跡部、本当すげぇよな。ポイントの部分の
出し方がアレしてる時に出された問題とほとんど同じなんだもんよ。」
「当然だろ?何だったら、これからやる教科も俺様が教えてやろうか。」
「マジで!?それじゃあ、教えてもらおうかな。」
調子に乗った跡部はそんなことを言い、それに宍戸も乗ってきている。そんな会話をして
いるとHRを終えた滝と岳人と忍足が二人のもとへやってきた。
「跡部、やっぱさすがだよな。」
「俺もそないに勉強してなかったから助かったわ。よくもまあ、あないに似たような問題
考えられるなあ。」
「本当、本当。俺も超助かっちゃった。」
「あーん?何言ってんだ、テメーら?」
「これ、跡部に返しておくよ。宍戸をからかうネタにしようかと思ったけど、違う方面で
役に立ったからね。それ以外には使わないでおく。あと、あの勉強法、長太郎にも使わせ
てもらっちゃった。」
滝は何枚かのルーズリーフを跡部の机に置いていくと、岳人と忍足を連れてそそくさと教
室を出て行ってしまう。首を傾げながら、そのルーズリーフを見ると、自分が最中に宍戸
に出した問題と、宍戸が答えた答えがしっかりとメモされていた。
「っ!?」
これは宍戸にバレたらヤバイと跡部は、慌ててそのルーズリーフを隠す。さっきの会話と
跡部の行動を不審に思い、宍戸は跡部に問いつめる。
「何隠したんだよ、跡部?」
「べ、別に何でもねぇよ。あっ、あいつらにも昨日テメェに出したような問題を前に教え
てて、それで・・・」
どう考えても言い訳にしか聞こえない言葉を宍戸は怪しみ、ふとした隙をついてそのルー
ズリーフを取り上げる。
「あっ!!」
「何々・・・?」
一ページ目を読んだところで、宍戸の顔は羞恥と怒りから真っ赤に染まる。滝の言葉と金
曜日に終わった後に聞いた物音、それが宍戸の中で繋がった。
「あ、あいつ、見てたのか!?」
「・・・ああ、ちなみに鳳もな。」
「ちょ、長太郎まで!?マジかよ・・・あー、長太郎に合わせる顔がねぇ。跡部っ!!だ
から、あんなとこではしたくねぇって言ったんだ!!」
「俺だって気づかなかったんだ。仕方ねぇだろ。文句ならデバガメしてた滝と鳳に言え。」
「う〜、もう絶対図書館では、テメェと勉強しねぇ!!どうしよう、もう、すっげぇ恥ず
かしい。あの様子だと岳人と忍足も分かってんだよな・・・。あーもう!!」
「でも、テストは出来たんだろ?だったらそれで、いいじゃねぇか。今日は俺んちで勉強
しようぜ。」
跡部と勉強するとまたあーいうことになるのではないかと不安もあるが、今日のテストの
出来っぷりを考えると跡部との勉強はかなり魅力的だ。どうしようか考えた結果、宍戸は
する方を選んでしまう。
「跡部んちだったら、まあいいかな・・・」
「今度は絶対に二人きりだからこんな心配はねぇよ。な、しようぜ。」
「勉強をだからな!!誤解すんじゃねぇぞ。」
「分かってんよ。何期待してんだ?あーん?」
「別に何も期待してねーよ!!」
「じゃあ、早速行くか。さっさと勉強なんて終わらしちまった方がいいからな。」
やはり勉強とは違うことも考えてるだろうなあと思いながらも、宍戸は跡部についていく。
御機嫌な気分と不機嫌な気分。これからどちらが優位に立つのか。それは跡部の力量しだ
いなのだ。
END.