Sweet Valentine 〜その2〜

「今回はこのへんでお開きにするか。」
「こんなに豪華に祝ってもらっちゃってありがとうございました。」
バレンタインデー当日、氷帝テニス部レギュラーメンバーは鳳の家で誕生日会をしていた。
午前中から始めた誕生日会は実に盛り上がり、今の今まで全員で騒ぎまくりだった。そろ
そろ日が沈む時間なので、お開きにしようと声をかけたのは宍戸だった。今日は鳳の誕生
日でもあるが、バレンタインデーでもあるのだ。このままみんなで騒ぐのも楽しいがやは
り夜はそれぞれの相手と二人きりで過ごしたい。そんな気持ちを汲んで、いつもより少し
早めに帰ることを促した。
「なあ、もうそろそろ夕方やん?今、公園行ったら、夕焼けでえらいキレイだと思うで。
これからみんなで行ってみいひん?」
「いいね。夕方の公園。」
「ま、悪くはないんじゃねぇ?」
「それじゃあ、みんなで行きましょうか。」
忍足はこの前、宍戸や鳳と交わした勝負の約束をしっかり覚えていた。このままだと、み
んなバラバラに帰ってしまい、勝負をすることが出来なくなってしまう。そんな危機感を
覚えた忍足はみんなで公園へ行くことを提案したのだ。
「それじゃ、そのまま帰れるように帰る用意してから行こうぜ。」
「そうだな。」
それぞれ帰るための用意をし、出かける準備をする。どの鞄にも自分の相手へのプレゼン
トがひっそりと姿を隠していた。その鞄を持った瞬間、そこにいるメンバー全員に軽い緊
張感が走る。しかし、それを周りに特に自分の相手には気づかれてはいけないと、平静を
装い、いつも通りな態度でいられるようそれぞれ努めているのだった。

近くの公園に到着すると、辺りは夕焼けに照らされ全てが真っ赤に染まっていた。バレン
タインのプレゼントを渡すには絶好の景色と雰囲気だ。
「すっげぇ!!赤いサングラスかけてるみてぇ。」
「赤っつーより、ワインレッドって感じだよな。」
「キレイだねー。」
それぞれその景色に感動しながら、感嘆の声をあげる。そんな様子を見つつ、忍足だけは
他のメンバーとは少々違うことを考えていた。
(この雰囲気最高やん。これなら全員、最高レベルの喜び方狙えるんちゃうん?こりゃ、
楽しみやな。)
「なーに、ニヤついてんだよ侑士。」
「えっ、別に何でもあらへんよ?」
思わず口元が緩んでしまい、岳人につっこまれる。しかし、そんなことは全く気にせず、
まずは誰からやらせるかなあと宍戸と鳳を見ながら考えていた。自分は後回しでいいよう
だ。
「宍戸。」
忍足はまず宍戸にやらせてみようと声をかけた。跡部が宍戸にしか見せない笑顔も気にな
るし、それ以上に宍戸がどんなことをして跡部を喜ばせるか興味津々だった。
「何だよ忍足?」
「今、チャンスやないの?」
「えっ・・・?あ、そっか・・・」
宍戸もこの前の約束を思い出し、みんなの前で跡部にプレゼントを渡さなければいけない
ということを思い出す。いざしようと思うと心臓がバクバク高鳴る。顔が自然と赤くなっ
ていくのが分かった。しかし、今は周りのもの全てが赤く染まっている。それは宍戸にと
って、ある意味好都合なことであった。
「あ、あのさ・・・跡部・・・」
「どうした?宍戸。」
「きょ、今日はその・・・バレンタイン・・・だろ?」
「ああ。そうだな。」
緊張から声が裏返る。こんなに緊張していたら、怪しまれるとは思っていてもどうするこ
とも出来ない。宍戸が緊張しながら跡部に話しかけていることに他のメンバーも気づき、
何が起こるのかと視線をすっと跡部と宍戸の二人に移した。
「まずは宍戸さんからですか?」
「せや。どのくらい跡部が喜ぶか見物やな。」
勝負をしている鳳と忍足は特にこの二人に注目する。跡部の喜び方の段階は、さらっとお
礼を言う。キスしたり、抱きしめたりする。見たこともないような笑顔で宍戸に好きだと
言う。という順番であった。跡部がどのような喜び方をするのかは、宍戸の行動次第。そ
の宍戸の行動も注目すべき点だと二人は宍戸の動きを見守った。
「だから・・・俺、お前に・・・プレゼント用意してきた・・・」
「へぇ、そりゃ嬉しいな。やっぱりチョコレートか?」
プレゼントやチョコをもらうのは毎年のことなので、跡部はいつものような笑い方で宍戸
を見る。しかし、宍戸はいつもの倍以上は恥ずかしがり、緊張している。今年はいつもと
は違うと跡部は何となく悟った。
「チョコレートは山ほどもらってて、もういらねぇだろ?だから、まずこれ・・・」
宍戸は鞄の中からブルーの包装紙でラッピングされた長方形の箱を取り出し、跡部に渡し
た。外見だけでは何が入っているかは全く見当がつかない。
「開けてみてもいいか?」
「おう。」
中身を確かめないことには反応が出来ないと跡部はその場で包みを開ける。中には豪華な
造りの鍵のペンダントとその鍵を差し込む錠の形をしたペンダントのペアネックレスが入
っていた。
「鍵がついてる方がお前ので、錠がついてる方が俺の。意味は・・・言わなくても分かる
だろ?」
跡部と目を合わせるのが恥ずかしいとうつむきながら宍戸は言う。意外なプレゼントに跡
部はしばし唖然。まさか宍戸からペアネックレスをもらえるとは思っていなかった。
「意味ねぇ。・・・やらしい意味か?」
「ア、アホっ!!そんなわけねぇだろ!!」
「冗談だ。いいデザインだぜ、気に入った。」
「本当か!?」
「ああ。これで宍戸の手作りチョコなんてのがついてきたら、もっとよかったかもしれね
ぇのになあ。」
冗談じみた口調で跡部がそういうと、宍戸は一瞬悔しそうな顔をするが、ここで何もしな
い俺じゃねぇと言わんばかりに笑いながら跡部の顔を見た。
「あー、チョコレート用意しなくて悪かったな。でも、さっきも言ったみたいにチョコな
ら山ほどもらってるだろ?」
「まあな。でも、やっぱり宍戸からもらいたかったなあ。」
「そんなに欲しいならくれてやるよ。でも、今はチョコねぇから俺の唇で勘弁な。」
そう言いながら宍戸は自ら跡部の唇にちゅっと軽くキスをした。これもまた跡部にとって
は予想外の出来事だ。柄にもなく赤くなり、思わず口元を押さえてしまう。
「やっぱ、チョコのがいいか・・・?」
した後で恥ずかしくなり、宍戸はおずおず跡部に尋ねる。跡部はもう感動して何も言えな
い状態だ。
「宍戸、思ったより大胆なことしよるで。」
「跡部さん、見たまんま嬉しすぎて言葉が出ないって感じですよね。」
「これは最高レベルいくんちゃうか?」
勝負相手ではあるが、やはり見てる分にはおもしろい。この後跡部がどんな反応をするの
かとわくわくしながら、また二人に視線を向ける。
「跡部?」
「少し目つぶって待ってろ。」
「えっ・・・おう。」
何をされるか分からないが、素直に跡部の言う通りにしてみる。しばらく目をつぶったま
までいると口に何かが当たった。それは跡部の唇とは少し違うもっと固形の形をしたもの
だ。それを押し込められるように口に入れられ、その後で跡部の唇が触れる。
「?」
「お返しだ。まだまだたくさんあるけど、まずは一個な。」
口に入ったものを意識して味わってみる。その瞬間口の中に広がったチョコレートの甘さ
とミントの爽やかさ。そう跡部が口移しで渡したのは、宍戸の大好きなミントの入ったミ
ントチョコレートだったのだ。
「これ、ミントチョコ!!」
「ああ。お前好きだろ?俺からのバレンタインチョコだ。」
「わあ、マジで!?激嬉しー。サンキュー跡部!!」
宍戸の嬉しそうな笑顔を見て、跡部はふっと微笑んだ。それは、普段は宍戸にしか見せな
い笑顔で、その笑顔を見て周りにいるメンバーは唖然となる。
「あれか。宍戸が言ってた跡部の笑顔ってのは。」
「あんなに優しい顔で笑った跡部さん、初めて見ましたよ。」
「宍戸じゃないとあんな顔させられないよね。」
「何か跡部じゃないみてぇ。」
そんなメンバーを全く無視して、すっかり二人の世界に入ってしまった跡部と宍戸はさら
にラブラブな雰囲気を辺りにまき散らす。
「俺はもうチョコはいらねぇ。お前だけで十分だ。今日の夜、楽しみにしてるぜ。」
「そ、そんなん楽しみにしなくていい!!」
「素直じゃねぇなあ。」
いつもの笑い方に近いがやっぱりどこか違う雰囲気を持った跡部の顔を見て、忍足は一言
放つ。
「宍戸はどう見ても第三段階まで喜ばせたやろ。」
「そうですね。」
「もうあの二人は放っておいてもええな。次は鳳の番やで。」
「えっ!?俺ですか!?」
「せや。ほら、早くせんと夕日、完全に沈んでまうで。」
「わ、分かりましたよ。」
一番いい雰囲気の時にやらせてやろうと忍足は鳳を促す。さっきまでは傍観者だった自分
が今度は見られる方にならなければいけない。しかし、せっかく用意したプレゼントを渡
すには確かに今が一番良いタイミングなのだ。
「あの・・・滝さん。」
「何?長太郎。」
「俺も・・・滝さんにバレンタインのプレゼント用意してきたんです。」
「本当に?」
「はい。受け取ってもらえますか?」
実に控えめな感じで、鳳はコートのポケットからプレゼントを出す。鳳もプレゼントはチ
ョコレートではないようだ。
「中身、何かな?」
「開けてください。」
鳳からプレゼントをもらい、ご機嫌の滝はニコニコしながらその包みを開ける。小さな箱
の中からは、エメラルドグリーンに輝く綺麗な蝶々が姿を現した。
「うわあ、キレイ。」
「これ、髪飾りなんです。ちょっと女の子っぽいかなあとも思ったんですけど、滝さんな
ら似合うと思って・・・・」
「つけてもらってもいいかな?」
「はい。」
エメラルドグリーンの蝶を手に取ると鳳は滝の髪にパチンとつける。
「似合うかな?」
「はい!とっても似合いますよ。買ってよかったです。」
そう言いながら鳳はニッコリと笑う。そんな鳳の笑顔にくらっときて、滝は思わず鳳の頬
に手を伸ばした。
「おっ、鳳も三段階目いくか?」
「さっきから、何言ってんだよ侑士?」
「それは後で教えたるわ。今はあいつら見とき。」
「おう。ちゃんと教えろよな。」
鳳も最高レベルの喜び方をされるのかと忍足はじっと見守る。しかし、もう少しのところ
で滝は手を離してしまった。
「こんなところでキスしちゃったら、長太郎恥ずかしいよね?」
「い、いえっ、そんなこと・・・・」
鳳のことを考え、滝は嬉しさからキスをするのを抑えた。今の状況だと、鳳はして欲しく
てしょうがない。しかし、わざわざそれを自分から言えるほどの勇気を鳳は持ち合わせて
いなかった。
「髪飾りありがとう。すごく嬉しいよ。」
いつもの笑顔で滝は鳳にお礼を言う。これは鳳の考える滝の喜びレベルでは、一段階目だ。
ここで終わらせたくない。鳳は心の中でそう強く思った。
「あ、あのっ・・・滝さんっ!!」
「何?長太郎。」
「俺・・・滝さんにキスして欲しいです。」
「えっ・・・?」
顔を真っ赤に染めて鳳は言い放った。それを聞いて滝は驚きながらも、内心は髪飾りを受
け取ったときよりも嬉しいと感じる。鳳からキスして欲しいと言われたのだ。それも二人
きりではないこんな状況で。もうすぐにでも深い深いキスをしてあげたかったが、やはり
まだ自制心が働く。聞き間違いかもしれないと思い、滝はもう一度冷静さを装って、鳳に
聞き返す。
「みんな見てるけど、いいの?俺は全然構わないんだけど。」
「はい。今、ここでして欲しいです。」
ここまで言われたらもう自制心も何も必要ない。滝の心臓は嬉しさでドキドキと激しく高
鳴っていた。鳳の首に腕を回し、顔をそっと近づける。鳳は反射的に瞳を閉じた。キスさ
れるのを待つようなその表情は、滝にとってはものすごくツボな表情だ。
(どうしよ・・・こんな顔みせられちゃホント我慢きかなくなっちゃう。)
忍足や岳人も見ているということで、軽いフレンチキスで済ませようと考えていた滝だっ
たが、鳳のこんな顔を見てしまってはセーブが利かなくなってしまう。舌は入れないもの
の普通では考えられないほどの長い長い口づけを鳳にしてあげた。
「うわあ、メッチャラブシーンって感じやわ。」
「滝って、人前じゃあーいうことしない奴に見えるけど意外とするんだな。」
「鳳が結構うまいこと言ってたからなあ。鳳も最高レベルの喜ばれ方やな。」
「だからそれは何なんだよ?」
「岳人は気にせんでもええよ。それより、俺からも岳人にプレゼントあるんやけど。」
「マジで!?今年は何々?おいしーもん?」
「せやなあ。それは食べてからのお楽しみやな。でも、ここではすぐには食べられないも
んやで。」
意味ありげな笑みを浮かべて忍足は言った。忍足は宍戸や鳳のように何かラッピングされ
た箱に入っているようなプレゼントは持ってきていない。鞄に入っているのは、一枚の板
チョコと真っ赤なリボンだけだ。
「たぶん、岳人なら喜んでくれると思うけど。」
「本当か?もったいぶらないで早く出せよー。」
忍足のプレゼントに大きな期待を寄せ、岳人はキラキラと瞳を輝かせる。忍足は鞄からリ
ボンを取り出し、自分の髪に軽く結んだ。そして、板チョコを取り出して、それにキスす
るような仕草を見せる。
「今年のプレゼントは俺や。チョコはおまけやな。今日はチョコレート味の俺で試してみ
いひん?」
半分冗談半分本気で忍足は岳人に向かってそう言った。忍足が岳人に期待していた反応は
二つ。一つは冗談ととられ、爆笑されること。関西出身の忍足にとって笑いをとれること
は嬉しいことの一つなのだ。もう一つは宍戸や鳳と同じように自分の考えた喜び度数の高
い反応をされること。どちらでもいいから、忍足は岳人にそんな反応をして欲しかった。
「・・・・・・。」
しかし、岳人は驚きからか何の反応もせずに硬直している。いきなりあんなことを言われ
れば、こうなってしまうのもまあ当然のことであろう。
「岳人?俺がプレゼントじゃ嬉しないん?」
少しかがむような体勢で忍足は岳人の顔をのぞきこんで尋ねる。その言葉にハッとし、岳
人はぶんぶんと首を振った。
「ううん!!嬉しくないわけないじゃん!!侑士がそんなこと言うとは思わなかったから
ちょっとビックリして固まっちゃったぜ。今の本気ととらえていいの?」
「それは岳人の自由やで。冗談でとらえて笑ってくれてもええし、本気ととらえて俺をお
持ち帰りしてもオッケーやで。」
「そんなん本気にとらえるに決まってんじゃん!!チョコレート味の侑士かぁ。うわあ、
マジ試してみてぇし。ホントにいいのか侑士?俺、本気にしたらマジでやるぜ。」
「ええよ。俺かてそのつもりで言ったんやし?それじゃ、今年のバレンタインのプレゼン
ト受け取ってもらえるんやな。」
「おう!!当たり前じゃん。俺ってば、超幸せ者〜♪」
嬉しそうにそう言いながら岳人は忍足に抱きついた。これは忍足の考えた喜びレベルの中
では一応第三段階に入るであろう。結局、三人とも最高レベルの喜び方をそれぞれの相手
にしてもらうことが出来た。勝負は引き分けになってしまったが、結果としては大満足だ
った。

そんなこんなですっかり日は暮れてしまい、辺りは一気に暗くなる。バレンタインのお楽
しみはこれからだとラブモード全開になったメンバーはそれぞれペアを組んで帰ってゆく。
しかし、樺地とジローだけは他のメンバーが帰ってしまってもこの薄暗い公園にとどまっ
た。
「ふあ〜、よく寝た。あれ?みんなは?」
「もう・・・帰りました・・・・」
「マジで!?まーた、おいてけぼりかよ。樺地もしかして俺が起きるの待ってたの?」
「ウス。」
「ゴメンなあ。いっつも、俺、樺地に迷惑かけてばっかだよな。」
「気にしないで・・・ください・・・」
ジローは公園に来たと同時に眠ってしまっていたのだ。なので、ここで起こったことは何
一つ分かってはいない。
「しっかし、何もおいてくことはねぇよな?せめて帰る前に起こしてくれりゃいいのに。」
「それは・・・無理ですよ・・・・」
「何で?」
「いろいろあったんです。」
「そうなの?まあ、いいや。もう遅いし、俺達も帰ろうぜ、樺地。」
すくっと立ち上がって伸びをするとジローは樺地の方を向いてそんなことを言う。しかし、
樺地はそうすぐには帰れなかった。まだ、ジローにプレゼントを渡していないのだ。
「あの・・・ジローさん・・・・」
「んあ?何、樺地?」
「・・・・これ・・・プレゼントです。」
「プレゼント?俺に?何で?」
「今日は・・・・バレンタインですから・・・・」
プレゼントは今日が誕生日である鳳に渡すべきだろうと思ったジローだったが、バレンタ
インと聞いて頷いた。
「あー、そっか。それじゃあ、これはバレンタインチョコのかわりってわけだな。」
「ウス。」
「サンキュー、樺地。開けてみていい?」
「ウス。」
ジローも樺地には毎年何かをもらっているので、何の抵抗もなくそれを受け取った。ピン
ク色をした可愛らしい紙袋の中には、実に温かそうなオレンジ色のセーターが入っている。
袋から出して広げてみると、左の胸の部分に『J・A』と筆記体のような字体で格好よく
刺繍が施されている。
「うわあ、カッコE〜!!これ、もしかして樺地が編んでくれたの?」
「・・・ウス。」
照れながらも樺地は頷く。樺地が自分のために編んでくれたのだということが分かると、
ジローはさっきよりももっと大きく喜びを表した。
「マジマジすっげー!!マジサンキュー、樺地!!俺、このデザインも色も超気に入った。
ホントあんがとな。」
「どういたしまして。」
満面の笑みで喜ぶジローを見て、樺地も嬉しくなる。ふっと微笑んだような顔をすると、
ジローはそれを見逃さなかった。
「樺地、笑ってるー。なあなあ、今日この後、俺んち来ない?二人でバレンタインパーテ
ィーしようぜ!!」
「バレンタイン・・・パーティー・・・?」
「うん!!そんな大したことはしないけど、チョコレートつまんだり、ジュース飲んだり
して二人で話すんだ。どう?楽しそうじゃねぇ?」
「ウス。」
「じゃあ、決まり♪それじゃ、うちに向かって出っ発〜!!」
樺地からセーターがもらえたことではしゃぎまくりのジローは、元気いっぱいの声をあげ
て歩き出した。その後を追うようにして、樺地もゆっくり歩き始める。樺地はポケットか
ら携帯を取り出し、妹にメールを送った。
『プレゼントのセーター喜んでもらえたよ。ラッピングの袋買ってきてくれて、ありがと
う。これからジローさんちに行くから、帰るのはちょっと遅くなるかも。もしかしたら、
泊まるかもしれない。バレンタインパーティーをするんだ。』
妹に状況を送っておけば、自然に親にも伝わる。連絡をしたからもう安心だと、樺地は何
の気兼ねもなしにジローについてゆく。今日は楽しいバレンタインデーになりそうだと樺
地の顔は自然に笑顔になった。

いつもとは違うバレンタインデー。どのペアも甘い甘いチョコレートの香りいっぱいの夜
を迎えるのであった。

                                END.

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