チョコレート −茶色−(タカ丸×久々知)

火薬委員会の仕事を終え、伊助と三郎次が帰った後、タカ丸は久々知を呼び止める。
「久々知くん。」
「何ですか?タカ丸さん。」
「この前、家に帰ったときにお土産もらったから、久々知くんにも分けてあげようと思っ
て。」
そう言いながら、タカ丸は懐から小さな袋を取り出す。その袋を受け取り、久々知はその
袋の中身を一つ取り出してみた。
「食べ物ですか?」
「うん、そうだよー。」
取り出したそれは、濃い茶色でまるで忍者食のような丸い形をしていた。パッと見それほ
ど美味しそうには見えない球体をまじまじと見つめ、久々知は何だろうなあと観察する。
「何だか忍者食みたいですね。美味しいんですか?」
「それは食べてみてからのお楽しみ。」
にこにことしながら、タカ丸は久々知がそれを食べるのを待つ。この反応を見る限り、こ
れが何か分かっていないので、食べたらどんな反応をしてくれるのだろうと、わくわくし
ていた。
「ちょっと食べるのに勇気がいりますけど、せっかくもらったんで食べますね。いただき
ます。」
手に持っていたそれを久々知は思いきって、口の中に放り込む。かりっと噛むと、予想だ
にしていなかった味が口の中いっぱいに広がり、久々知は驚いたような顔になる。
「すごく甘い!けど、あんことかそういう感じでもなくて、ちょっと苦味もある感じ?何
にせよ、美味しいですコレ。」
ほんの少しの苦味とコクのある甘いその食べ物に、久々知は感動する。今まで食べたこと
のない味だとタカ丸に伝えると、タカ丸はそれが何かを話し出した。
「それはね、チョコレートって言うんだ。南蛮のお菓子なんだけど、この前帰ったときに
南蛮から来たってお客さんが来て、お土産にくれたんだ。美味しいから、火薬委員会のみ
んなにも分けてあげたいと思って、忍術学園に持ってきたんだよ。」
「確かにすごく美味しいです。あ、でも、三郎次とか伊助にはあげなくてよかったんで
すか?」
「二人には久々知くんが来る前にあげたよー。まだ、あげてなかったのは久々知くんだけ
だったから。」
「そっか。それにしても美味しいなあ。もう一個食べちゃおう。」
タカ丸からもらったチョコレートをいたく気に入った久々知は、袋の中に入っているそれ
を口の中に入れる。久々知があまりにも美味しそうに食べているので、タカ丸も自分用に
と取っておいたチョコレートをパクッと食べた。
「うん、やっぱり甘くて美味しいね。」
「うんうん、こんな美味しいもの分けてくれてありがとございます、タカ丸さん。」
「喜んでもらえてよかったよ。」
「何かお礼したいんですけど、俺が作れるのなんて豆腐くらいですし。」
「兵助くんの作った豆腐、ぼく好きだよ。あ、でも、今すぐにもらえるお礼もあるかも。」
「えっ?何ですか?」
そんなすぐに用意出来るものなどないと、久々知が不思議そうな顔でタカ丸を見ると、タ
カ丸は悪戯に笑って、ちゅっと久々知の唇を奪った。
「っ!!??」
「今だと、久々知くんの唇チョコレート味だね。チョコレート味のキスってなかなかもら
えるお礼じゃないよ?」
「・・・こ、こんなのがお礼になるんですか?」
「え?うん、もちろん。」
「じゃあ・・・」
タカ丸の制服の襟をぐいっと引っ張り、今度は久々知からタカ丸にキスをする。思っても
みない久々知の行動に、タカ丸の心臓はドキドキと高鳴った。
「えっ・・・久々知くん!?」
「チョコレート、たくさんもらったし・・・すごく美味しかったから一回だけじゃお礼足
りないなーと思って・・・」
「あ、うん・・・ありがとう。」
「あと・・・」
「何?」
「タカ丸さんの唇も・・・チョコレート味でした・・・」
耳まで真っ赤になって、久々知はそんなことを言う。そんな久々知を見て、タカ丸の顔も
真っ赤になった。
(久々知くん、可愛すぎ!!)
もうどうしてくれようかと思っていると、久々知はくるっとタカ丸に背を向け、出口に向
かおうとする。
「そ、そろそろ戻りましょう!委員会は終わってるんで。」
「う、うん。」
「それから・・・」
ほんの少しだけ、タカ丸の方を振り返り、久々知は言葉を続ける。
「さっきのお礼のことは、他の奴らには内緒ですからね!」
「はーい。」
最初から最後まで可愛すぎだと、タカ丸は顔を緩ませる。また、変わったお土産をもらっ
たら久々知には絶対分けてあげようと思いつつ、硝煙蔵を出ようとする久々知を追いかけ
た。

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