「・・・しど、宍戸、ねぇ、宍戸ってば!」
コートの外のベンチでぼーっとしている宍戸に、滝は声をかける。何度か名前を呼ばれ、
耳元で大声で叫ばれ、やっと宍戸は自分が呼ばれていることに気づいた。
「あっ、悪ぃ・・・何?」
「どうしちゃったの?ぼーっとしてさ。長太郎がダブルスの練習したいって言ってるよ。
話しかけたのに無視されるって、俺のところに来たからさ。」
「あー、そうなんだ。悪いな長太郎。」
滝の横にいた鳳に宍戸は素直に謝る。しかし、まだどこかうわの空だ。
「体調でも悪いんですか?」
「いや、別にそんなことはねぇんだけどよ・・・」
体調が悪いなんてことはない。しかし、少しだけ体の様子が変であるのは確かだった。ち
らっとコートに目を移すとその感じは何となく強くなる。宍戸が見ているコートでは、跡
部がジローと練習試合を行っていた。
「跡部絡み?」
唐突に滝がそんなことを言ってくる。図星を指され、宍戸は動揺してしまう。
「えっ!な、何が?」
「やっぱりそうか。何?またケンカでもしたの?」
「いや、全然そんなことねぇよ。跡部との関係っていうか・・・俺個人のことだし。」
『???』
跡部が絡んでいるのは確かなのに、宍戸は自分個人のことだと言う。さっぱり意味が分か
らないと、滝と鳳は顔を見合わせて、首を傾げた。もう少し詳しく聞こうと滝が口を開き
かけた瞬間、宍戸の方が先に言葉を発した。
「滝、部活終わってからでいいからよ、ちょっと相談に乗ってくれねぇ?」
「へっ?」
「すっげぇどうしようもないことかもしれねぇけど、これが俺にとっては重大な問題でよ、
誰かに相談しねぇと身がもたねぇかも。」
「それってどうしようもないことじゃないと思うけど。」
「俺はいない方がいいですか?」
「うーん、出来ればその方がいいな。あんまりいろんな奴らに相談出来る内容でもねぇし。」
「分かりました。それじゃ、俺は素直に帰りますね。」
何故鳳より自分の方が相談相手として選ばれたのか分からないが、とりあえずそこまで悩
んでいるのであれば、乗らないわけにはいかないだろうと、滝は宍戸の頼みを承諾する。
「分かった。どんなことで悩んでるのか知らないけど、結構重症みたいだからね。」
「サンキュー、滝。あと、ゴメンな長太郎。練習もまともにしてやれねぇで。」
「いえ、たまには調子が悪いこともありますよ。」
申し訳なさそうにそんなことを言ってくる宍戸に、鳳は笑顔で返す。いい奴らだなあと思
ってるところに、練習試合を終えた跡部がやってきた。そして、何の気なしに、宍戸の首
にかかっていたタオルで汗を拭く。
「どわっ、何してやがる!!」
「ちょうどいいところにタオルがあったから、ちょっと借りただけだぜ。」
「じ、自分の使えばいいだろ!!」
「取りに行くのが面倒くせぇ。」
いつも通りのやりとりにも見えるが、滝はその違和感に何となく気づいた。跡部は確かに
いつも通りなのだが、宍戸の方がいつもとは少し違う。跡部を意識しすぎている。滝には
そんなふうに見えた。その証拠にタオルを握っている宍戸の手が、わずかに震えている。
(ふーん、何か宍戸が悩んでること予想ついてきたかも。)
もし自分の予想通りだとしたら、なかなか面白いことだと滝は心の中でニヤリと笑った。
どんな答えを用意しておこうかと、頭の中でその考えを巡らせる。
「いつも通りに見えますけどね。どうしちゃったんでしょう?宍戸さん。」
「そうだね。」
どうやら鳳には、二人のやりとりがいつも通りに見えているらしい。確かにこれは、鳳に
相談出来る部類ではないと滝は直感的に分かった。
(これは、なかなか面白いことが聞けるかもな。)
宍戸の相談内容がどんなものかを楽しみにしつつ、滝は跡部と宍戸のやりとりを黙って眺
めていた。
部活終了後、他のメンバーが帰るのを見送ると、宍戸と滝は部室に残った。ロッカールー
ムの低いテーブルを挟み、二人は向かい合わせに座る。
「で、相談って何?宍戸。」
「その・・・えっと・・・」
「そんなに言いにくいことなの?」
「・・・まあな。」
どんなふうに言葉にしたらいいだろうと、宍戸は必死で頭を働かせる。しかし、考えれば
考えるほど、だんだん恥ずかしくなっていき、余計に言葉に出来なくなってしまう。
「えっと、何つーか・・・」
「跡部見てるとどんな気持ちになるの?」
「へっ・・・?」
宍戸がもっと言葉にしてくれるのを促すために、滝はそんなことを尋ねた。自分の予想が
あっていれば、この質問から入っても何ら問題がないはずなのだ。
「そんな感じのこと、今、相談しようとしてるんじゃない?」
「お、おう・・・」
自分の心を見透かされたようで、宍戸は驚いたような顔を見せる。
「で、質問の答えは?」
「なんかな・・・すげぇ体がうずうずしてきて、跡部に触って欲しいっつーか・・・その、
そういうことして欲しくなるっていうか・・・・」
自分がすごいことを言っていると、宍戸の顔は次第に赤く染まってゆく。やっぱりそうか
と滝は確信の笑みを浮かべながら、宍戸の話をさらに促す。
「ふーん、で、宍戸はどうしたいの?」
「ど、どうしたいって・・・それが分かってりゃこんなに悩んでねぇんだけど。」
「別に相手は跡部なんだからさぁ、普通にそういうことしたいって言えばいいじゃん。最
近は跡部がそれほど忙しいってこともないだろうに。」
「でもよ、いきなりそんなこと言ったら変に思われるかもしれねぇし・・・つーか、恥ず
かしくて、んなこと言えねぇ。」
あの跡部と付き合っておいて、まだこういうことを言えるとは宍戸もなかなかピュアだと
滝は感心してしまう。しかし、そのままでは何も面白くないし、宍戸にとってもあまりよ
ろしくない。ここはどーんと当たって砕けろと言わんばかりのアドバイスを滝は口にする。
「まあ、宍戸がどう思ってるかは知らないけど、その悩みを解消するためには、跡部にし
てもらうしかないっしょ。今の宍戸はきっと発情期なんだよ。」
「なっ・・・は、発情期って・・・」
人間にはそんなものはないと言い返したかったが、如何せんことがことなために認めざる
を得ない。ぷしゅーっと真っ赤になって、宍戸は頭を抱えてしまった。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、宍戸。宍戸からそんなこと言ってきたら、跡部、
絶対喜ぶと思うけどな。」
「・・・それはよく分かってる。」
「じゃあ、いいじゃん。跡部にも喜んでもらえて、宍戸の悩みも解消される。一石二鳥じ
ゃん?とにかくやってみなきゃ。」
「マジで、そんなんでいいのかなあ・・・」
「だって、このままだと宍戸辛いままでしょ。こういうのは早めに対処した方がいいって。」
「うーん・・・」
何だか腑に落ちない部分はたくさんあるが、それ以外の方法はどう知恵を絞り出しても出
てきそうにはない。どういう状況でそういうことを言えばいいのかは分からないが、とり
あえずそういう方向で考えてみようと、宍戸はそれ以上うだうだと悩むのをやめた。
「まあ、出来そうだったらやってみる。」
「宍戸なら出来るって。相手は跡部だしね。問題ない問題ない。」
「他人事だと思って〜。うーん、でも、まあ、話聞いてくれてあんがとな。どうすればい
いか分かって、ちょっと楽になったし。」
「してもらえれば、もっと楽になると思うけど。」
「だ、だから、それは今ここじゃ試せねぇだろ!!とりあえず、今日はもう帰ろうぜ。」
「うん。」
いいアドバイスが出来たと滝は上機嫌だが、宍戸はドキドキしっぱなしだ。やっぱりそう
いう方法しか解決法がないのかと少し残念に思いながらも、逆に迷っていた心がしっかり
定まった感もある。明日から跡部に会うのが、余計に緊張すると思いつつ、宍戸は鞄を持
って部室を後にした。
次の日、宍戸は跡部と一緒に帰る約束をした。その帰り道に何とか今の自分に起こってい
ることを伝えようと考えてのことだ。しかし、この日跡部は生徒会の仕事があり、放課後
少し待っていなければならなかった。放課後になり、跡部を待っている間、宍戸の心拍数
はいつもとは比べ物にならないほど上がっていた。
「はあー、何かもうこのまま帰っちまいてぇ・・・。でも、跡部と一緒に帰るって約束し
ちまったしなあ・・・」
机の上に突っ伏していると、ゴロゴロと外で雷の音が聞こえた。顔を上げて窓の外を見て
みると、黒い雲が空一面に立ち込め、いまにも雨が降ってきそうな状態であった。
「うわ、激雨降りそうだし。今日傘持ってきてねぇよ。」
天気予報をちゃんと見ておけばよかったと多少後悔しつつ、そのまま窓の外を眺めている
と、大粒の雨が降り出す。あっという間にその雨はザーザーと音を立てて降るほどになっ
た。
ガラッ・・・
「待たせたな宍戸。」
雨に気を取られていると、後ろから跡部に声をかけられる。あまりにも突然のことだった
ので、宍戸は心臓が止まるのではないかと思うほど驚いた。
「あ、跡部、おかえり。」
「あー、やっぱり降ってきちまったか。折りたたみ傘、持ってきて正解だったな。」
ドキドキしているのを気づかれないようにと、宍戸は必死で平静を装う。そのおかげで、
跡部は宍戸の様子がいつもと違うということにはまだ気づいていないようだ。
「これ以上雨がひどくなってもあれだからな。さっさと帰るか、宍戸。」
「お、おう。」
ドキドキしすぎて跡部の姿がまともに見れないと、宍戸は跡部から目をそらしながら頷い
た。そんな宍戸のことなど気にせず、跡部は鞄を持って教室を出て、昇降口に向かって歩
き出した。その少し後を、宍戸は追いかけるように歩いてゆく。昇降口までくると、宍戸
は自分が傘を持ってきていないことを思い出し、それを跡部に伝えた。
「あっ・・・跡部、俺、傘持ってきてねぇ。」
「何だよ?天気予報見てなかったのか?ったく、しょうがねぇヤツだなあ。今日は俺様の
傘に入れてやる。光栄に思えよ?」
いつもならここで反抗的なセリフが出てくるはずなのだが、そんなことを言える余裕など
今の宍戸にはなかった。素直に跡部の差す傘に入り、黙って歩き出した。さすがにこれに
は跡部も宍戸の様子がおかしいと気がつく。
「どうした、宍戸?気分でも悪いのか?」
宍戸を気遣うように跡部は宍戸の肩を抱いた。跡部に触れられ、宍戸はビクッと体を震わ
せる。
「ハァ・・・」
小さく息を吐き、宍戸は顔を上げ跡部を見る。その顔は何とも言えぬ色気を放っていて、
跡部でなくともドキッとしてしまいそうな表情であった。
「あ、あのな・・・」
「おう・・・」
「最近、跡部見てると体がうずうずしてきて・・・いつも跡部がしたがるようなことをし
たくなるっつーか・・・それで、今も相当・・・」
思っていることを伝えようと宍戸は必死で言葉を紡ぐ。と、次の瞬間、まぶしい程の光と
鼓膜が破れるかと思うほど大きな音が同時に生ずる。校門を出てすぐの電柱に雷が落ちた
らしい。
「うわっ!!」
「おっと。」
その音に驚き、宍戸は思わず跡部に抱きついてしまう。雷に驚いたのと、跡部に抱きつい
てしまったことで、宍戸の心臓は飛び出てしまいそうなほど激しく高鳴っている。
「あ・・・ゴメン・・・」
「この中を帰るのはちょっと危なそうだな。」
「えっ・・・?」
「宍戸、教室に戻るぞ。雨と雷がおさまるまでそこで避難だ。」
「お、おう。」
確かに雨は先程よりもひどくなり、まだ近い場所で雷鳴が轟いている。そんな中での跡部
のこの判断は妥当だろうと、宍戸は素直に従うことにした。
「さっきので、停電しちまってるみてぇだな。」
「本当だ。全然電気つかねぇや。」
学校内に戻ると廊下もどの教室も真っ暗であった。もともと下校時間をとっくに過ぎてお
り、教師達もほとんど帰ってしまっている時間だったので、電気がついてないのは当然な
のだが、電気をつけようと思っても全くつく気配がない。とりあえず二人は、自分達の教
室まで戻ることにした。
「やっぱ、ここもつかねぇや。」
蛍光灯のスイッチをかちかちと動かすが、やはり電気はつきそうにない。完全に停電状態
になっているようだ。もう日が沈んでるような時間なので、その部屋はほとんど真っ暗闇
に近いような状態であった。稲光が差し込むことでかろうじて教室の中の様子が分かるく
らいだ。
「宍戸。」
「な、何っ?跡部。」
「今の状況、かなりいいシチュエーションだと思うぜ。」
「へ?何が?」
「宍戸、俺にそういうことして欲しいんだろ?だったら、ココで存分にしてやるぜ。」
跡部がわざわざ教室へ戻ろうと言い出した本当の理由はこれだった。ほとんど誰もいない
学校内で、しかも今は停電している。そんな中で、この教室に誰かがやってくるという可
能性はないに等しい。これほどいい状況はないと、跡部はここでそういうことをしようと
宍戸に持ちかけた。
「で、でもよっ・・・」
「テメェに感化されて、俺もしたくなっちまった。」
いったんは否定しようとしたが、耳元でそんなことを囁かれ、宍戸の体の疼きは最高点に
達する。ゴクリと唾を飲み込むと、宍戸はハッキリと同意の言葉を口にした。
「したい・・・跡部。」
その言葉を聞いて、跡部はニヤリと笑う。その妖しげな笑みを雷光が照らし出し、宍戸は
さらに跡部に堕ちていった。
外では雨の音と雷鳴が響く中、教室では宍戸の濡れた声と跡部の囁き声が響いている。
「んっ・・はぁ・・・あっ・・・」
「今日はいつも以上に感度がいいみてぇだな。」
何度もキスを重ねながら、跡部は宍戸の熱を掌で弄っている。少し手を動かすだけで、宍
戸はビクンと身体を震わせ、甘い喘ぎ声を上げた。そんな宍戸の反応を楽しみつつ、跡部
は宍戸の首筋を噛みつくように舐める。
「ひあっ・・ん・・・!」
「もう溢れちまいそうだな。ほら、どう触って欲しいか言ってみろよ。今の宍戸は、俺に
触られたくてしょうがねぇんだろ?」
「そんな・・・こと・・・言えね・・・」
「アーン?素直に言わねぇと・・・」
お仕置きだと言わんばかりに、跡部は宍戸の熱の先端に爪を立て、小さな穴をぐりぐりと
擦る。若干の痛みとそれを上回る快感がその部分から全身へと回る。そんな感覚に宍戸は
今までになく大きな声を上げた。
「ああぁっ・・・い、あっ・・・ひぃんっ!!」
「何だよ?こんなのでも感じるのか?」
「あっ・・ぅ・・・だってぇ・・・・」
「テメェはMだもんな。ちょっとぐらい痛い方が気持ちイイんだろ?」
弄る手を止めずに跡部は言葉で宍戸を攻める。断続的に続く刺激に宍戸の熱は限界近くま
で高まっていた。
「あっ・・・んっ・・・跡部っ・・・もう出っ・・・」
もう限界だということを宍戸が口にした瞬間、跡部は宍戸のそれから手を離した。達する
直前の状態で刺激を与えられるのを止められ、宍戸はひくっと身体を震わせる。
「な、何で・・・?」
「次に俺がテメェに何かしたら、テメェは確実にイっちまうよなあ?ただ普通にイカせる
だけじゃ面白くねぇと思ってよ。」
「そん・・な・・・」
限界ギリギリのところで何もされないというのは、ひどく切ない疼きを伴う。とにかく跡
部に触って欲しいと宍戸は、涙で潤んだ瞳で跡部を見た。しかし、跡部は全く手を出そう
としない。
「さあ、どうしてやろうか?」
「あっ・・・何でもいいから・・・・早く・・・」
「よし、だったらそのまま四つん這いになれよ、宍戸。」
早くイカせて欲しいと震えている宍戸を跡部は四つん這いにさせる。下には何も身につけ
ていないので、そんな格好をすれば、嫌でも跡部に双丘を晒すことになる。目の前に晒さ
れた双丘を、跡部はサディスティックな笑みを浮かべながら、容赦なく平手で叩いた。そ
の痛みが、限界間際の宍戸にとっては達するための決定的な刺激になった。
「いっ・・・ああぁぁ――っ!!」
ビクビクと身体を痙攣させて、宍戸は教室の床に白濁の蜜を放つ。そんな宍戸の姿を見て、
跡部はどうしようもなく興奮し、体が熱くなる。
「ケツ叩かれてイっちまうなんて、どんだけ淫乱なんだよ、テメェの身体は?」
「あぅっ・・・だって・・・」
「マジで最高だぜ。こんな興奮、テメェとじゃなきゃ味わえねぇ。」
稲光に照らされる跡部の顔には、恍惚とした笑みが浮かんでいた。それを見て、宍戸はゾ
クッとする。もっともっといろいろなことをして欲しい。そんな欲求が宍戸の中で、次第
に高まってゆく。
「あ・・・跡部・・・」
「ん?何だ?」
「後ろも・・・して欲しい・・・」
「テメェにしては、上手なおねだりだぜ。このままの格好で慣らすか?」
宍戸はいまだに四つん這いのままだ。どうしようかと少し悩んだ宍戸だったが、自分でも
跡部のモノをしてやろうということを思いつき、そのまましてもらうことにした。
「別にこのままでもいい・・・この体勢なら跡部のも出来るし・・・」
そう言って宍戸は跡部のズボンに手をかけ、ある程度の強度を持った跡部の熱をぱくっと
咥える。ここまで積極的に宍戸からしてくれることは、そう滅多にないので跡部はその快
感に身を委ねた。そして、指を十分に濡らすと宍戸の蕾を慣らし始める。
「すげぇ柔らかくなってるぜ、テメェのココ。早く入れて欲しいって言ってるみてぇに指
に絡み付いてくる。」
「んぅ・・・はっ・・・指、もっと動かして・・・」
「へぇ、テメェの方からそんなこと言ってくるなんて珍しいじゃねぇか。いいぜ。存分に
慣らして、ぐちゃぐちゃにしてから今テメェが咥えてるヤツを入れてやるよ。」
宍戸からのリクエストを聞き、跡部は指を増やして内側を掻き回すかのように動かす。中
を探られる感覚がたまらないと宍戸は自ら腰を揺らしていた。
「んぁっ・・・んん・・・ぅ・・・あっ・・・」
「気持ちイイか?宍戸。」
「んんっ・・・んっ・・・」
跡部の問いかけに宍戸は首を縦に振って答える。もう十分に熱は濡れているし、宍戸の入
り口の具合もよさそうだと、跡部は宍戸の頭を上げさせる。
「そろそろいいだろ。」
「ハァ・・・んっ・・・」
「今日はテメェが上に乗れよ。テメェの方からしたいって言い始めたんだから、それくら
い出来んだろ?」
「・・・・おう。」
疼く体を起こしつつ、宍戸は跡部の言うことに頷く。跡部を窓の下の壁に寄りかからせて
座らせると、その足を跨ぎ、右手で軽く蕾を広げながら跡部の楔に押し当てた。そして、
ゆっくりそれを中に埋めてゆく。
「あっ・・・ん・・・あふっ・・・・」
「いいぜ。ちゃんと入っていってる。」
「ハァ・・・んっ・・・ああぁっ・・・!」
「もう少しだ。ああ・・・やっぱたまんねぇな、この感覚。すげぇイイぜ。」
跡部の全てが自分の中に入ると、宍戸は跡部の首に腕を絡めながら、呼吸と整えようと熱
い息を吐く。
「全部・・・入った・・・」
「ああ、そうだな。どうだ?動けそうか?」
「なん・・とか・・・あぅっ・・・!」
少しでも動いて跡部をよくさせようとする宍戸だが、ほんの少し内側が擦れるだけで、イ
ってしまうのではないかと思うほど感じてしまう。それでも宍戸は懸命に腰を動かし、何
とか跡部の期待に応えようとした。
「あっ・・ひ・・ん・・・あっ・・あぁ・・・」
「ハァ・・・すごいぜ。テメェが動くたびにテメェのココ、俺のを締めつけてきやがる。」
「跡部も・・・ちゃんと、気持ち・・・イイ・・・?」
真っ赤な顔でそんなことを尋ねてくる宍戸に、跡部はドキッとさせられる。そんな宍戸の
体をぎゅっと抱きしめ、跡部はその質問に答えてやった。
「ああ。すげぇ気持ちイイぜ。」
「へへ・・・よかった・・・」
にっこり笑いながら宍戸はそんなことを言う。その表情に跡部はもう完全に堕ちていた。
上に乗っている宍戸を半ば強制的に床へ押し倒し、跡部はさらに深く繋がろうと自分の腰
を激しく宍戸の中へと打ちつける。
「ひあっ・・・ああぁっ!!」
「今のは相当キたぜ、宍戸。」
「んっ・・あ・・・待っ・・・跡部っ・・・」
「それは無理な注文だな。こんな状況で待つなんて出来ねぇ。」
「あんっ・・あっ・・・深っ・・・あっ・・・」
ギリギリまで引き抜かれ、一気に奥の奥まで貫かれる感覚は宍戸にとってたまらなく気持
ちのよいものであった。今まで溜まっていた何かが解消されていくのがハッキリ分かる。
そんなことを思いながら、宍戸は跡部が与えてくれる快感を享受する。
「ハァ・・・跡部っ・・・・あっ・・・ああっ・・・!」
「マジでよすぎだぜ、テメェの中。くっ・・・そろそろイっちまいそうだ・・・」
「俺・・も・・・・気持ちよすぎて・・・あっ・・・んっ・・・」
「中に出してぇ・・・いいか、宍戸・・・?」
「いいぜ。出して・・・いっぱい俺ん中に・・・・」
そんな宍戸の言葉を聞き、跡部は自分自身を宍戸の中に全て埋め込むと、ぶるりと身体を
震わせて、宍戸の中に熱い蜜を放った。自分の中が跡部でいっぱいになる感覚に宍戸は、
この上ない恍惚感を感じる。意識が飛んでしまうのではないかと思うほどの快感の中で、
宍戸は一際大きな絶頂を迎えた。
服を着て、ある程度周りを掃除し終えると、ぐったりとした様子で宍戸は跡部に寄りかっ
ていた。外ではまだ雨が降り続いているが、先程よりかはだいぶ弱くなり、雷ももうほと
んどおさまっている。
「雨、だいぶやんできたみてぇだな。」
「そうだな。」
「どうだ?まだ動けなさそうか?」
「いや、平気。ちょっと腰がだるいくらいだから。」
「まあ、そんなに急ぐこともねぇし、もう少しだけ休んでくか。」
宍戸の体を気遣って、跡部はそうすぐに帰ろうとは言い出さない。そんなさりげない優し
さが嬉しいと宍戸は甘えるように跡部の肩に頭を預けた。
「なあ。」
「どうした?」
「人間にも発情期ってあんのかな?」
いきなり何を言い出すんだと思いつつ、跡部はさらっとその質問に答える。
「さあ、どうだろうな。特定の時期ってのはなさそうだけどよ。」
「そっか。」
「何だよ?いきなり。」
「いや、滝にな・・・跡部見てるとしたくなるんだって話したら、宍戸は今発情期なんだ
よって言われてさ。」
「ははは、あいつらしいな。俺はテメェ相手だったら、いつでもそうなれるぜ。」
「跡部は冗談抜きで万年発情期じゃねぇか。」
「別にいいだろ。誰に迷惑かけてるわけでもねぇし。」
「俺にかけてるじゃねぇか。」
「テメェは数に入んねぇよ。そのおかげで、イイ思いが出来んだからよ。」
「うー、何か納得いかねぇ。」
跡部の言うことは間違ってはいないが、何だか納得いかない気分になる。そんな宍戸の機
嫌を取るかのように、跡部は宍戸の唇に優しく自分の唇に重ねる。
「っ!」
「俺はこういうことするのは全く悪いことだと思ってねぇからな。むしろ、いいことだと
思ってるくらいだ。」
「な、何で?」
「お互いのこと想い合って、一緒に気持ちよくなって、さらにお互いのことが好きになる。
それっていいことなんじゃねぇの?」
「た、確かに。」
「だからよ、テメェもしたいと思ったら遠慮せずに言えよ。俺様はいつでも大歓迎だぜ。」
「うーん、気が向いたらな。そんなしょっちゅうはないと思うけど。」
頷きたい気持ちもあったが、それがまた恥ずかしくて宍戸はそんな言葉を返す。跡部的に
はもっと肯定的な答えが欲しかったが、宍戸だから仕方ないかと苦笑する。
「あ、でもよ・・・」
「何だ?」
「跡部がしたいって言ってきたら、出来るだけ嫌がらないようにはしてやるよ。」
これが宍戸の精一杯であった。肯定的な答えを素直に言えないが、跡部とするのが嫌では
ないということを伝える最大限の譲歩であった。まさか宍戸の口からこんな言葉が聞ける
とは思わなかったので、跡部は顔が自然とニヤけてくるのを抑えられないでいた。
「フッ、可愛いこと言ってくれるじゃねぇか。」
「べ、別にそんなつもりで言ったんじゃ・・・・」
「嬉しいぜ、宍戸。また、しような。」
「・・・・おう。」
嬉しいと言われ、結局最後は素直に頷いてしまう。二人がそんなやりとりをしているうち
に、外では雨がすっかりやんでいた。それはまるで、身体と心が満たされ晴れ晴れとした
二人の気分を表しているようであった。
END.