タカ久々 テーマ:恥じらい

「今日は午後の授業ないし、何して遊ぼうかなあ?」
午前中で授業が終わってしまったタカ丸は、自分の部屋でまったりとくつろいでいた。こ
の後、どうしようかを考えていると、閉じた障子の向こうから、聞き慣れた声が聞こえる。
「タカ丸さん、居ます?」
「久々知くんだよね。居るよ〜。」
「ちょっと入っていいですか?」
「うん。全然構わないよ。」
タカ丸がそう答えると、ほんの少しだけ障子が開く。入っていいかと聞いてきたわりには、
なかなか久々知は部屋の中に入って来ようとしない。
「どうしたの?久々知くん。入っていいよ。」
「いや、分かってるんですけど・・・」
障子の隙間から部屋を覗くような形で、久々知は顔を見せる。そして、頬を桜色に染めな
がら、ゆっくりと部屋の中に入ってきた。部屋に入ってきた久々知を見て、タカ丸は目を
みはる。
「わあ、何その格好!!可愛い〜!」
「午後の授業が、五年合同の女装の授業で・・・自分じゃどんな髪型にしたらいいか分か
らないから、タカ丸さんに結ってもらおうと思って・・・」
いつもとは全く雰囲気の違う久々知を前にし、タカ丸は胸を高鳴らせる。恥ずかしがって
いる態度がまたツボだと、可愛らしい女の子の格好している久々知の姿にタカ丸は萌えま
くっていた。
「そういうことなら、任せて!!うんと可愛くしてあげる!!」
これはもう腕をふるって髪を結うしかないと、タカ丸はやる気満々で、髪結い道具を出す。
もともとの可愛らしさを残しつつ、タカ丸は久々知がどこからどう見ても女の子に見える
ように、髪を結っていった。
「でーきた。ほら、どう?ちゃんと女の子に見えるでしょ?」
出来上がりを見せるため、タカ丸は久々知に鏡を渡す。鏡の中を覗き込んで、久々知はあ
まりの別人さに驚いた。
「うわあ・・・自分じゃないみたい。」
「久々知くんは、もともと睫毛とかも長いし、可愛い顔してるから、こういう髪型も似合
うんだよ。」
「か、可愛い顔なんかしてないです・・・」
可愛いと言われ、久々知は顔を真っ赤にして否定する。その態度がまた女の子らしさを助
長し、タカ丸の目を楽しませた。
「これなら、五年生の誰よりも可愛い女装だと思うよ。女装するっていう課題だとしたら、
間違いなく合格だね。」
へらっと笑って、そんなことを言ってくるタカ丸の顔を、何故だか久々知はじっと見つめ
た。そして、ふと視線を外し、ぼそっと何かを呟く。
「・・・課題、ただ女装するだけじゃないんです。」
「えっ?」
「誰でもいいから、知っている人を誘って町に出て、全く怪しまれずに女物の小物や着物
を買ってくるというのが課題なんです。」
「へぇ。結構大変なんだね。」
「とりあえず、男の格好した誰かと出かけるんだったら、恋人同士に見えなきゃダメなん
です。だから・・・その・・・」
そこまで言って、久々知は口ごもる。ハテナを頭に浮かべて、タカ丸は久々知の次の言葉
を待った。しばらくもじもじしていた久々知だったが、意を決したように、タカ丸の手を
掴む。
「お、俺と一緒に、町に行ってくれませんか・・・?」
相当恥ずかしいようで、その顔は耳まで赤く染まり、若干瞳は潤んでいた。女の子の格好
をしながら、そんな顔でそんなことを言われれば、断ることなど不可能に近い。むしろ、
そんなオイシイ状況を逃すわけにはいかないと、タカ丸はその誘いに二つ返事で頷いた。
「こんな可愛い子のお願い断れないよー。行く行く!!」
「あ、ありがとうございます・・・三郎と雷蔵は女の子同士として行くとか言ってて、俺、
どうしようかと思ってたんですよ。」
「竹谷くんは?」
「あいつはいつの間にかどこかに行っちゃって、見つからなかったんですよね。」
「ふーん、そっか。でも、よかった。それで久々知くんはぼくのところに来てくれたんだ
もんね。」
「この格好で一緒に出かけられるのなんて、タカ丸さんくらいしか思いつかなくて。」
いまだに頬を染めながら、そう語る久々知に、タカ丸はすっかりやられていた。こんなチ
ャンスは滅多にないと、タカ丸はこの後のデートを存分に楽しもうと考える。
「嬉しいなぁ。久々知くん、絶対恋人同士に見えるように、ぼく頑張るから!!」
「タカ丸さんはあんまり頑張らなくてもいいです。お、俺が・・・頑張るんで。」
(うわあ、もう久々知くん可愛すぎだよ!!こんな格好した兵助くんと町でデート出来る
なんて、本当夢みたいだ。)
ニヤニヤと顔が緩んでくるのを抑えられず、緩んだ顔のまま、タカ丸は恥じらいたっぷり
の可愛い久々知を存分に堪能するのであった。

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