跡部の家に泊まりに来ている宍戸は、跡部の部屋のソファでくつろぎながら雑誌を読んで
いた。そんな宍戸の隣に跡部は腰かけ、二つの小瓶をソファの前のテーブルに置いた。
「そろそろいい時間だぜ、宍戸。」
「あー、そろそろ寝る時間か。」
雑誌を閉じると、宍戸はそれをテーブルに置く。それと同時に跡部は小瓶の一つを手に取
り、中に入っている液体を自身にかける。宍戸が顔を上げると、そこには信じがたい光景
が広がっていた。
「っ!!??」
「この間、これでお前を二人にしてやっただろ?」
「今度は俺が二人になってしてみたいと思ってな。」
宍戸の目の前には二人になった跡部がいた。自分のときは、片方は長髪の状態だったが、
跡部の場合は双子であるかのように、全く同じ状態の跡部が二人いる。
「せっかくだから、ちょっと違った見た目にしてやるよ。」
「少しは見分けついた方がいいだろ?まあ、どっちも俺なのは変わんねぇんだけどな。」
そう言いながら、一方の跡部は制服を身につけ、もう一方の跡部は部屋着を身につける。
『どうよ?』
「どうよと言われても・・・お前が二人もいたら、戸惑うに決まってんだろ。」
「二倍愛してもらえるんだぜ?」
「もっと喜べよ、宍戸。」
二人の跡部に囲まれ、そんなことを囁かれると、宍戸の心臓はバクバクと高鳴る。いつの
間にかその体は捕らえられ、ベッドの方へ導かれていた。
(どうしよう・・・二人の跡部にされるとか、ドキドキしすぎて耐えられる気がしねぇ。)
そんな宍戸の心の声を知ってか知らずか、部屋着の跡部は宍戸を後ろから抱く形で腕を掴
み、制服の跡部が宍戸の服を脱がしていく。
「ちょ、ちょっと待てっ!!」
「アーン?何だよ?」
「二人相手にするとか、心の準備が出来てねぇ!」
「今更だろ?もうここまで来たら心の準備とかどうでもいいだろ。」
嫌ではないのだが、さすがに二人の跡部を相手にするとなるといつもより緊張してしまう。
しかし、二人の跡部はそんなことはお構いなしに自分のしたいことを進めていく。宍戸の
前に座っている制服の跡部は宍戸の唇にキスをし、後ろに座っている部屋着の跡部は宍戸
のうなじに噛みつくようにキスをする。
「んんっ・・・んんー・・・!」
キスをされながら首筋を吸われるという普段ならありえない状況に、宍戸はゾクゾクして
しまい、抵抗するのも忘れてしまう。跡部の舌が自分の舌と絡み、濡れた唇が触れ合う。
それと同時に首と肩の間に歯が立てられ、後ろから回されている跡部の手が胸や脇腹をな
ぞる。
「ふっ・・・ぁんっ・・・んっ・・・んんぅ・・・」
(ヤバイ・・・すげぇ気持ちいい・・・)
制服の跡部が唇を離すと、宍戸はもうすっかりその気になっていた。そんな宍戸の表情を
見て、制服の跡部はすっと手を臍の下に持っていく。跡部とのキスですっかり勃ち上がっ
ているそれに触れると、それを覆っているズボンと下着を取り去ってしまう。
「心の準備が出来てねぇとか言いながら、キスだけでこんなになってるじゃねぇか。」
「・・・るせ、仕方ねぇだろ。」
「せっかく二人になってるんだから、二人じゃなきゃ出来ねぇ感じでするか。」
そう言いながら、制服の跡部は宍戸の足の間に顔を埋め、既に勃っているその熱を口に含
む。宍戸の後ろに座っている部屋着の跡部はそのままの体勢で、宍戸の胸に手を回し、両
方の胸の飾りをきゅっと抓んだ。
「んあっ・・・やっ・・・!!」
「二人になってても感覚は共有されるっぽいな。お前もそうだったのか?」
「んっ・・・知らねぇし・・・・」
「ココを弄ってやると、口の中でビクビクしてるのが分かるぜ。片方が口でし続けたまま
で、思ってることを口に出来るのは悪くねぇな。」
「ああっ・・・そんなに強くすんなっ・・・」
制服の跡部が宍戸の熱を咥えたままで、部屋着の跡部が思っていることを口にする。もっ
と二人でないと出来ないことがしたいと、制服の跡部は熱を口にしたまま宍戸の内腿をそ
っと指でなぞる。
「ひゃっ・・・ん・・・跡部っ、足触んなっ・・・!」
「アーン?感じてるんだからいいだろ?ココ弄りながら、脚も撫でてやってるんだ。一人
じゃ出来ないことだから、その感覚存分に味わっとけ。」
「そんなにいろんなとこ・・・いっぺんに弄られたらっ・・・あぁっ・・・」
二人がかりで体のいたるところを弄られ、宍戸はビクビクとその身を震わせる。制服の跡
部の口での愛撫も激しくなり、宍戸は首を振って甘い悲鳴を上げる。
「やっ・・・あぁんっ・・・跡部っ・・・ああっ・・・!!」
「どこ触ってもビクビクして可愛いじゃねぇの。そろそろイキそうなんだろ?」
「は・・あっ・・・もっ・・・ダメ・・・イクっ・・・んんっ・・・ああぁ――っ!!」
宍戸の熱いミルクが口の中に放たれる感覚に、跡部は胸を高鳴らせる。そのミルクを飲み
込みながら宍戸を見上げると、実に艶やかな表情でもう一人の自分に寄りかかっている。
感覚は共有されるので、本来そのままの位置では感じられない宍戸の熱い吐息が顔にかか
るのを感じて、どちらの跡部も更に興奮する。
「よかっただろ?宍戸。」
「んっ・・・耳元で喋んなぁ・・・」
「どこもかしこも感じやすくなってるな。可愛いぜ。さてと・・・」
暑くなってきたので、体を起こしながら、制服の跡部はネクタイを緩め、ワイシャツのボ
タンを外す。そして、何かを取りに一旦ベッドを下りた。制服の跡部が何かを取りに行っ
ている間も部屋着の跡部は宍戸を腕に抱いたままなので、ちゅっちゅっと耳を食んだり舐
めたりして、宍戸を休ませるということをしない。
「今日はこれを使ってやるよ。」
そう言いながら制服の跡部が手にしていたのは、ローションであった。部屋着の跡部は宍
戸の体を反転させ、自分の方を向かせる。すっかり腰は抜けてしまっているが、宍戸は軽
く足は広げるように膝をつき、部屋着の跡部に抱きつくように体を起こした。
「ちゃんとやりやすい体勢になってえらいぜ。」
「べ、別にそういうわけじゃ・・・・」
「これをたっぷり使って、存分に気持ちよくなるように慣らしてやるよ。」
前と後ろから交互に聞こえる跡部の声に、宍戸の胸はどうしようもなく高鳴る。制服の跡
部の手が腰に触れたのを感じると、次の瞬間、ぬるりとした感触とともに指が中に入って
くるのを感じる。
「んんっ・・・」
たっぷりと指に絡められたローションのおかげで、痛みも異物感もほとんどなく宍戸のそ
こは跡部の指を受け入れる。何度か抜き差しをしていると、そこはもっと弄ってくれと言
わんばかりに収縮し出す。
「ハァ・・・あっ・・・んん・・・」
「イイ感じに柔らかくなってきてるぜ。ほら、もう軽々二本入っちまう。」
「んんっ・・・!!やっ・・・跡部ぇ・・・」
部屋着の跡部にしがみつきながら、制服の跡部が中を弄る快感に宍戸は震える。呼吸を乱
しながら、喘ぎ声を漏らす宍戸の顔を目の前で眺め、部屋着の跡部は非常にいい気分にな
る。もちろんその感覚は制服の跡部にも共有される。
「見てるだけじゃつまらねぇな。」
「せっかく二人になってるんだから、二人で宍戸をよくしてやらなきゃなぁ?」
「えっ・・・?」
部屋着の跡部が右手を伸ばすと、制服の跡部がその手にローションを垂らす。ぬるぬると
した手が軽く双丘を撫でた後、制服の跡部の指が二本入っているその穴に部屋着の跡部の
指も二本ねじ込まれる。
「ひっ・・・ああっ・・・・!!」
「何だ、余裕で入るじゃねぇか。」
「さすが普段俺様のを受け入れてるだけあるな。」
「ああっ・・・跡部っ・・・ひぅっ・・・ああぁっ・・・!!」
「四本も俺らの指を咥え込んで、お前のココは欲張りだなぁ?」
ローションでぐちゃぐちゃに濡れているそこを二人の跡部はそれぞれ好きなように弄ぶ。
四本の指が好き勝手に動き、入口と内側が掻き回される。
「ああっ・・・やだっ・・・ひぅ・・・そんな激しくされたらっ・・・ああぁっ・・・」
「嫌だって言ってるわりには、随分イイ顔してるじゃねぇの。」
「ほら、こんなのはどうよ?」
制服の跡部の指は腹側の壁を押すように、部屋着の跡部の指は双丘側の壁を押すように力
を込められる。それぞれ逆方向に力を加えられ、入口を無理矢理広げられているような感
覚に宍戸の体はビクンと跳ねる。
「ひあっ・・・ああぁっ・・・・!!」
「これで擦ったらよりイイんじゃねぇの?」
「やっ・・・やめっ・・・」
「試してみないとだろ?」
宍戸の言葉には耳を貸さず、どちらの跡部もそのまま指を動かす。いつもならありえない
刺激に宍戸は声にならない声を上げ、ぎゅうぎゅうと二人の指を締めつけながら達する。
「―――――っ!!」
「ほら、よかっただろ?」
「こんなすぐにイっちまうくらいだもんな。」
実に楽しげな表情で、どちらの跡部も宍戸に声をかける。宍戸の中から指を抜くと、二人
の跡部は顔を見合わせる。
「さてと、ここからが本番だぜ。宍戸。」
「楽しませてもらうぜ。」
絶頂の余韻にぼーっとしている宍戸を四つん這いにさせると、制服の跡部はズボンのベル
トを外し、宍戸の腰を捉える。部屋着の跡部も自身の熱を出すと、宍戸の口元に持ってい
く。
「っ!!」
「分かるだろ?何をすればいいか。」
目の前の跡部の熱にドキドキしながら、宍戸はおずおずと口を開ける。熱が入るくらいに
口が開かれると、もう一人の跡部と示しを合わせ、上の口と下の口、同時に熱い楔を入れ
てやる。
「んぐっ・・・――――っ!!」
一瞬で上も下も跡部でいっぱいになり、宍戸は敏感な内側を熱い楔で埋め尽くされる快感
にぎゅっとシーツを掴む。ただ入れられているだけでも、たまらなく気持ちいいのだが、
それでは当然のことながら跡部は満足出来ない。制服の跡部は宍戸の腰をしっかりと掴み、
部屋着の跡部は宍戸の頭を押さえて、中の熱を大きく動かし始める。
「んっ・・・ぐ・・・んんっ・・・んんっ・・・!!」
(跡部ので中擦られるの激気持ちイイ・・・口の中犯されるのもたまんねぇ。)
「十分に慣らしてやったから、中ぐちゃぐちゃで最高に気持ちいいぜ。」
「口の中も熱くて濡れててイイ感じだぜ。」
どちらの跡部も口元を緩ませ、軽く息を乱しながら、思うがままに宍戸を犯す。始めこそ
戸惑ったが、二人の跡部にされるのが気持ちよすぎて、宍戸はもうすっかりこの状況に夢
中になっていた。
(跡部二人相手なんて冗談じゃねぇって思ってたけど、全然そんなことねぇな。むしろ最
高じゃね?)
じゅぷじゅぷと上からも下からも卑猥な音が響くのを聞きながら、宍戸はうっとりとした
表情でそんなことを考える。宍戸の中と口を存分に堪能すると、どちらの跡部も少し動き
を激しくし、高みへと昇っていく。
「そろそろイキそうだ。」
「今日は中にも口にも出してやる。存分に味わえよ?」
二人の跡部のその言葉に、宍戸の胸は期待感と果てしなく続く快感にキュンキュンととき
めく。跡部の呼吸が一層荒くなり、一際大きなストロークがあった後、最奥の到達した瞬
間動きが止まる。それと同時にドクンドクンと熱く濃いミルクが宍戸の中に注がれる。
(腹ん中も口の奥も跡部のでいっぱいになってる・・・すげぇゾクゾクして気持ちいい。)
全てが跡部で埋め尽くされる多幸感に、宍戸も何度目かの絶頂を迎える。ずるりと内側か
らも口からも跡部の熱が抜ける感覚にふるりとその身を震わせ、少し自分より上にある跡
部の顔を見上げた。
「ハァ・・・あっ・・・跡部・・・」
「よかったぜ。宍戸。」
「俺も・・・すげぇ気持ちよかった・・・」
「ふっ、お前のココ、まだひくひくしてるぜ?」
熱を抜いたそこに軽く指を触れながら、制服の跡部はそんなことを呟く。その言葉を聞い
て、部屋着の跡部はニヤリと笑った。
「だったら、今度は俺がそこを楽しませてもらう番だな。」
「・・・マジかよ。」
そう言いながらも宍戸は嫌だという素振りは見せなかった。ゆっくりと身体を起こし、部
屋着の跡部に背中を向けるような形で、軽く足を開き膝で立つ。
「んっ・・・さっき中で出されたのが溢れそう・・・・」
「どうして欲しいか言ってみな。」
「今度はお前のを・・・俺の中に挿れて。」
「ふっ、望み通り俺様のを挿れてやるよ。たーんと味わいな。」
「あっ・・・ああぁんっ・・・!!」
制服の跡部が出したもので中はすっかり濡れているため、部屋着の跡部の熱をいとも簡単
に奥まで受け入れる。内側への刺激に宍戸の熱も再び勃ち始め、そんな宍戸の様子を見て、
制服の跡部もまたしたくなってしまう。
「俺はこっちの方を弄ってやるか。」
向かい合わせで宍戸との距離をつめ、まだその硬さを失っていない熱を宍戸の熱と擦り合
わせる。自分のモノと宍戸のモノをまとめて拳の中に収め、その手を上下に動かし始めた。
「ひっ・・ぅ・・・あっ・・・ああぁっ・・・!!」
「これはこれで悪くねぇな。」
「あっ・・・跡部っ・・・んっ・・・ああ・・・・」
「お前の中とコレの感触が俺のに絡んでくる感じがたまんねぇな。」
前も後ろも跡部の熱で擦られ、宍戸は極上の快感に身体も心も支配される。この感じは二
人の跡部相手ではないと味わえないと、宍戸はこの状況を心から楽しむ。
「ハァ・・・あっ・・・ああっ・・・・」
「随分よさそうだな。気持ちいいか?」
「ん・・・すげぇ・・イイ・・・・」
「イイ顔してるもんな。せっかくだから、キスしてやるよ。後ろから犯されながらキスさ
れるってのは、今じゃなきゃ出来ねぇだろ?」
「ん・・・」
跡部のその言葉に宍戸は目の前にいる制服の跡部に腕を伸ばし、目を閉じて跡部からのキ
スを待つ。その表情と仕草に跡部の胸はときめき、どうしようもなく愛おしく思う。跡部
自身は瞳を閉じず、その愛らしい宍戸の表情を堪能しながら唇を重ねる。身体のいたると
ころが跡部と触れ合い、甘くとろけるような快感が身体の内側からわき上がる。
「宍戸。」
「んっ・・・んぅ・・・」
「愛してるぜ。体が二つあっても伝えきれねぇくらい、愛してる。」
制服の跡部に深く激しい口づけを受けたまま、部屋着の跡部に耳元でそう囁かれる。言葉
と行動で同時に表されたその想いを受け取り、宍戸は再び絶頂と言う名の甘い甘い頂に導
かれる。
「んんっ・・・んん――っ!!」
「・・・・っ!!」
「くっ・・・宍戸っ・・・・!!」
宍戸が達するのと同時に二人の跡部も達する。二人の跡部を相手にいつもより多くしたこ
ともあり、二人の跡部の腕の中で宍戸は心地よい眠りに落ちていった。
次の日の朝、宍戸が目を覚ますと目の前に跡部の顔があり、ドキッとしてしまう。宍戸が
目を覚ました気配に気づいた跡部も目を覚まし、ゆっくりと目を開けた。
「何そんな驚いた顔してやがる。」
「い、いや、跡部の顔が思ったより近くにあったからよ。」
「一緒に寝てるんだから当然だろ?それとも、俺が一人に戻ってて残念だとか思ってんの
か?」
跡部のその言葉に昨夜のことを思い出し、宍戸の顔はぶわっと赤く染まる。
「そ、そんなことねぇ!!」
「初めはあんまりノリ気じゃなかったくせに、随分楽しんでたじゃねぇか。」
「それは・・・思ったより跡部二人にされるのが気持ちよかったから・・・って、何言わ
せんだよ!!」
「テメェが勝手に話したんだろ。まあ、俺もかなりよかったからな。昨日のアレはやって
よかったと思うぜ。」
(そんなに嬉しそうに笑うのずりぃ・・・)
整った顔で心底嬉しそうな笑顔を浮かべる跡部に、宍戸は図らずもときめいてしまう。赤
くなる顔を布団で隠そうとすると、跡部の手が頬に触れ、顔を隠すことは阻止された。
「昨日はお前の顔がたくさん見れてよかった。一人に戻っても記憶とか感覚はどっちも残
ってるみてぇだからな。」
「確かに・・・そんなだった気がする。」
「本当お前はどんな顔をしてても、俺好みの顔してるぜ?今の顔もすげぇ可愛いと思って
るし。」
「っ!!」
「眺めてるとキスしたくなるな。」
跡部の顔は近づいてくるのに気づいて宍戸はぎゅっと目をつぶる。と、次の瞬間、ベッド
の横にある電話が鳴る。広い屋敷であるため、何か用事があれば執事からかかってくるよ
うになっているのだ。
「俺だ。どうした?」
一旦宍戸から離れ、跡部は電話に出る。少しの会話の後、跡部は電話を置いた。
「飯が出来てるってよ。朝食にしては少し遅い時間になっちまったが食べに行くか。」
「お、おう。」
朝食を食べに行くには着替えないとと宍戸がベッドが下りようとすると、跡部は宍戸の腕
を引いて、ちゅっと触れるだけのキスをした。
「しようとしたら、電話で邪魔されちまったからな。朝起きてお前とキス出来るのはやっ
ぱりいい。」
「い、いきなりするなよ・・・」
「けど、嫌じゃねぇんだろ?」
唇を手の甲で覆いながらそんなことを言う宍戸に、跡部はニヤリと笑いながらそう返す。
図星をさされた宍戸はふいっと跡部から目をそらし、黙ってベッドを下りた。
「宍戸。」
「・・・何だよ?」
「首のところ、すげぇ跡ついてるぜ。」
自分では見ることは出来ないが、昨晩のことを考えるとついていてもおかしくない。首元
を手で押さえながら跡部を睨むが、跡部は楽しそうな表情でニヤニヤと笑っている。
「俺のモノって感じがして悪くねぇな。」
「動物じゃねぇんだから、マーキングすんなし。」
「本当はちょっと嬉しいんだろ?」
「そ、そんなことねぇ!!」
「素直じゃねぇなあ。」
首元を隠すように服を着て、宍戸は跡部より一足早く準備を終える。跡部が服を着るのを
待ち、跡部が部屋のドアを開けようとすると、宍戸はぎゅっと跡部の服の裾を掴む。
「どうした?」
「昨日のアレ・・・」
「ああ。」
「・・・今度またして欲しい。」
恥ずかしさから真っ赤になってうつむいてはいるものの、その言葉はハッキリと跡部の耳
に届いた。思ってもみない宍戸の言葉に跡部の胸はドキドキと高鳴り、ほんの少しだけ動
揺してしまう。
「お前からそんなこと言ってくれるなんてな。だが、お前がして欲しいっつーんなら、喜
んでしてやるよ。」
期待していた通りの跡部の言葉に、宍戸は嬉しくてたまらない気分になる。しかし、それ
を素直に態度に出すのは照れくさく、いつものようにツンデレな態度をとる。
「べ、別に今の聞いて嬉しいとか思ってないんだからな!」
「ふっ、メチャクチャ嬉しいと思ってるじゃねぇか。」
あまりに分かりやすいツンデレセリフに跡部は吹き出してしまう。本当に可愛らしいなあ
と思いながら、跡部はご機嫌な様子で部屋を出て、未だに顔の赤い宍戸を連れて食堂へと
向かって歩き出した。
END.