種ヶ島が大曲の手を引いて泳ぎながら辿り着いた場所は、完全に陸というよりは海に浮い
ている洞窟のような場所であった。そんな洞窟の入口から中に入ると、少し奥に平らな岩
場が現れる。その場所の真上はちょうど穴があいており、そこから光が差し込んでいた。
「陸っちゅーかって場所だけど、なかなかええ場所やろ?」
「こんなところ初めて来たし。」
「まあ、魚族以外はあんまり来れへん場所やから。」
平らな岩場の部分に種ヶ島はザバッと上がる。岩場に上がると、種ヶ島は鯛モードからヒ
トデモードへと変化する。岩場から大曲に向かって手を差し出すと、海の中から引き上げ
た。
「見てみぃ竜次。」
「何だし?」
「海の中。綺麗やろ?」
海の中に足をつけながら、種ヶ島はそんなことを言う。種ヶ島が示す先に目をやると、そ
こには色とりどりの珊瑚が広がっていた。
「すごいな・・・」
「せやろ?この景色メッチャ好きやねん。」
「確かにいい場所だな。」
大曲のその言葉を聞いて、種ヶ島は嬉しそうに笑う。そんな種ヶ島を見て、大曲は若干ム
ラっとしてしまう。水に濡れて重くなった翼を一旦小さくしてしまい、インコモードの羽
をバサッと広げる。海の色のように真っ青になった大曲の羽に種ヶ島の胸はドキンと高鳴
る。
「わあ、インコモードの竜次やぁ。」
「羽が濡れて重かったからな。モード変えれば、すぐに乾くし。」
「そりゃ便利やな。俺、ウミネコモードの白い羽も好きやけど、インコモードの青い羽も
メッチャ好きやで☆」
「なら、このまましてやろうか?」
種ヶ島の頬に手を添え、大曲はそんなことを囁く。やる気満々の大曲にきゅんとしながら、
種ヶ島は大曲の首に腕を回して頷いた。
「して、竜次。」
もともとそういうことをするためにここへ来たので、種ヶ島もやる気は十分だった。どち
らからともなく顔を近づけると、そのまま唇を重ねる。まだ少し海の味が残る口づけに二
人の鼓動は速くなっていった。
「なあ、竜次。」
「何だし?」
「今日は竜次の、手でしてもええ?」
「・・・別に構わねぇけど。」
向かい合い大曲の顔をじっと見つめながら種ヶ島はそう尋ねる。大曲から許可がもらえた
ので、早速と言わんばかりに勃ち始めている大曲の熱を出し、種ヶ島は利き手でそれを握
る。そして、悪戯っ子のような笑みを浮かべ、手を動かし始めた。
「ぅあっ・・・!!」
今まで感じたことのない感覚に大曲は思わず声を上げる。手でされている感覚とは全く異
なる未知の快感。まるで無数の細かい触手で熱全体を包まれ、その一つ一つが敏感な表面
を撫でるようなそんな感覚が大曲を襲う。
「お前っ・・・何して・・・」
「何って、普通に手でしてるだけやけど?」
「これが手のわけねぇだろ。ちゃんと説明しろし。」
全身が粟立つような快感に息を乱しながら、大曲は説明を求める。余裕のなくなっている
大曲の顔を見て、ご機嫌な様子で種ヶ島は大曲の質問に答える。
「竜次、ヒトデってどうやって動くか知っとる?」
「はあ?何でそんなこと・・・」
「ヒトデは裏側に管足っちゅー触手みたいなのがぎょうさんあって、それを動かして歩く
んやで☆」
「だから、それが何・・・っ!!」
「コレ、手じゃなくて触手でされてるみたいやろ?魚族の魚っぽくないモードはこういう
ことも出来るんやで。」
ヒトデモードである種ヶ島は、大曲に触れている掌にヒトデの管足のようなものを出し、
それを使って大曲の熱に刺激を与えていた。その掌がどうなっているのかは見えないがお
そらく想像以上のことになっているのであろう。魚族は半端ないなと思いながら、大曲は
種ヶ島の与える快感に声が出そうになるのを堪える。自分だけ翻弄されているのが悔しく
て、大曲は何か種ヶ島に仕返しが出来ないか考える。
「なあ・・・」
「ん?何?」
「お前、自分でするときもこの手でしたりすんのか?」
「ふえっ!?」
思ってもみない大曲の言葉に種ヶ島は顔を真っ赤にしてひどく動揺したような反応を見せ
る。これはビンゴだと、大曲は口元を緩ませる。
「毎度こんなのでしてるなんて、やらしいな。」
「ちゃ、ちゃう・・・毎度はしてないし・・・・」
「俺だけ気持ちよくなるってのも不公平だし。お前も一緒によくなろうや。」
そう言いながら、大曲は今しがたの言葉で反応してしまっている種ヶ島の熱を出し、一旦
種ヶ島の手を退けた後、自分のモノと擦り合わせる。そして、種ヶ島の手を取り、その両
方を包み込ませるように握らせた。
「なっ・・・竜次っ・・・・」
「こうすれば、俺もお前も気持ちよくなれて一石二鳥だろ?」
「こんなん・・・アカンて・・・」
「ほら、早くしろし。」
種ヶ島の耳元で大曲は妖しく囁く。その言葉に抗えず、種ヶ島は息を乱しながらゆっくり
と手を動かし始める。大曲の言う通り、自分でするときも時々その手を使ってすることも
あるが、今回は大曲の熱とピッタリ触れている。それだけでももう興奮してしまうのにこ
のまま手を動かしたらどうなってしまうのだろうと、種ヶ島の心臓は激しく高鳴る。
「ハァ・・・あっ・・・!!」
「いつもしてるみたいにしてみろし。」
「やっ・・・竜次っ・・・んぁ・・・・っ!!」
大曲の言葉には逆らえず、種ヶ島は管足を出した掌で重なり合う二つの熱を擦る。手では
なく、細い触手が熱全体を撫でまわすような感覚に種ヶ島も大曲も下肢が蕩けてしまいそ
うな快感を覚える。
「あっ・・・ひあっ・・・あ・・んっ・・・・!!」
「ハァ・・・マジでこれはヤバイし・・・」
「んんっ・・・竜次ぃ・・・コレ、よすぎて・・・すぐにイキそ・・・」
「分かるし・・・まあ、すぐにイクかもう少し楽しむかはお前次第だし・・・」
手を動かしているのは種ヶ島なので、種ヶ島の塩梅でどうとでもなる。しかし、興奮と快
感ですっかり頭が回らなくなっている種ヶ島は、細かい調整を行うことなど不可能だった。
自分も大曲も気持ちいいと思うように手を動かし、ほどなくして達してしまう。
「ああぁっ・・・竜次っ・・・―――っ!!」
「・・・・っ!!」
二人分の精液を受け止め、種ヶ島の右手は白濁の液体まみれになる。脈打つ熱から手を離
すとその手は普通の手に戻る。
「ハァ・・・メッチャ気持ちよかった。」
「あんな技持ってるなんて知らなかったし。」
「すごいやろ?見てみぃ、竜次。俺の手、竜次と俺のが混じってメッチャエロいで。」
雫を滴らせる右手を口元に持っていきながら、種ヶ島はニッと笑う。
(エロいのは手じゃねーだろうが。)
種ヶ島自身がエロいと思いながら、口元に持っていっている右手の手首を掴み、顔の方を
近づける形で、種ヶ島の手についた雫を舐め取る。かなり近い距離に大曲の顔がある状態
と掌を舐められている感覚に種ヶ島はドキドキぞくぞくしてしまう。
「ちょっ・・・竜次。」
「今は普通の手なんだな。」
「そういうときにしか出さへんからな。てか、舐めるのやめや・・・」
「あー?何でだし?手舐められて感じてんのか?」
掌に舌を這わせるたびに種ヶ島の肩がビクッと震えるので、大曲はからかうようにそんな
ことを言う。図星を指された種ヶ島は顔を赤く染め、うつむいて黙ってしまう。
(可愛いし。)
種ヶ島の手が綺麗になるまで舐めていると、種ヶ島は軽く呼吸を乱し、すっかり上気した
顔になっていた。
「ほら、綺麗になったし。」
「・・・おおきに。」
「そろそろこっちも弄ってやらねぇとな。」
ぎゅっと種ヶ島の体を抱き締め、少し持ち上げるようにして膝を立たせる。むき出しにな
っている双丘の間に手を持っていくと、その中心に指を這わせる。これから何をされるか
に気づいて、種ヶ島は大曲の背中に縋りつく。
「今更そんな緊張することでもねぇだろ。」
「んー、せやけど、こうしてた方が安心するし。」
「まあ、それならいいんじゃね?」
抱き合ったままの状態で、大曲は種ヶ島の中をほぐしていく。身体と重ねるのはこれが初
めてというわけでもないので、種ヶ島のそこはそれほど時間をかけずに柔らかくなってい
く。内側を弄られながら、種ヶ島は大曲の耳元で甘い声を漏らす。
「んんっ・・・ぁ・・・竜次ぃ・・・」
「もう少しって感じだな。」
「ハァ・・・気持ちええ・・・指でこんなに気持ちええんやったら・・・竜次の挿れられ
たらヤバイやん・・・」
(勘弁しろし。)
心の中で思っていればいいようなことを種ヶ島は素直に口に出すので、大曲はドキドキし
てしまう。もう大丈夫であろうというところまで慣らすと、岩の壁に種ヶ島を寄りかから
せるようにして足を開かせる。
「全部丸見えだし。」
「竜次はエッチやなあ。」
「恥ずかしがるとかしねぇのかよ?」
「今更やん。そんなことより・・・」
大曲に向けて両手を伸ばしながら、種ヶ島は色気たっぷりの表情で微笑う。
「早く挿れて。」
あまりに率直な誘い文句に大曲の熱はあからさまに反応してしまう。熱いモノで中を埋め
て欲しいとひくつく入口にそれをあてがうと、大曲は一気に腰を進める。
「んあっ・・・ああぁっ!!」
柔らかな粘膜が熱く濡れた楔で擦られる。じんじんと痺れるような快感に、種ヶ島は腰を
揺らす。
「ハァ・・・ん・・・やっぱ、竜次の・・・メッチャ気持ちええ・・・」
「お前の中もいい感じに絡みついてきて、悪くねぇし。」
「ほんなら・・・もっと気持ちよくさせてやろか?」
そう言いながら、種ヶ島は自分の内側を先程の掌と同じように変化させる。その状態で中
にある熱を動かすと、今までに感じたことのない快感が大曲を襲う。
「うあっ・・・・」
「どや?さっきよりもええやろ・・・?」
「これはヤバすぎだし。」
「竜次がよくなれるんやったらよかったわ。」
気持ちよさそうな顔で嬉しそうに笑う種ヶ島を見て、大曲ももっと種ヶ島をよくさせたい
という気持ちになる。どうしたらよいかと考えていると、ここに来る前に種ヶ島が放った
言葉が頭をよぎる。
「おい。」
「ハァ・・・何?竜次。」
「さっき俺に食べられたいとか言ってたよな?」
「へっ!?・・・言うたけど。」
「実際に食うのは出来ねぇけど、食う真似はしてやるよ。」
どういうことか全く分からないが、そんな大曲の言葉に種ヶ島の鼓動は速くなる。大曲の
口が首元に近づき、ガブっと噛むような仕草を見せる。しかし、次の瞬間感じたのは噛ま
れるとは全く異なる感覚だった。
「ひっ・・・あん・・・っ!?」
歯が立てられているはずなのだが、そんな感じは全くなく、まるで尖った嘴でついばまれ
ているような感覚が種ヶ島の首を震わせる。
「えっ・・・なっ・・・!?」
「鳥に食われてるみてぇだろ?」
「キスしたときは普通やったのに、何でっ・・・?」
「お前の手とか中とかと同じだし。こんなの出来たって何の役にも立たねぇと思ってたけ
ど、こんなことで役に立つなんてな。」
鳥族は見た目は変えずに嘴で触れるような感覚を作り出すことが出来る。それを応用して
種ヶ島の首元をついばんでみせたのだ。
(ホンマに鳥についばまれてるみたいで、メッチャドキドキする!)
「竜次・・・」
「何だし?」
「今の・・・ぎょうさんして。食べられてる感あって、メッチャドキドキして・・・たま
らん・・・」
「構わねぇし。食べられてると思いながら、イけばいいし。」
どちらも自分の種族の特性を使って相手を気持ちよくさせる。大曲は種ヶ島の中の感覚を
存分に味わいながら激しくその中を犯し、種ヶ島の首元に何度も噛みつく。種ヶ島は捕食
され、内側を犯される感覚に震えながら、被食者としての快感を存分に楽しむ。
「んあっ・・・竜次っ・・・あっ・・ああぁっ・・・!!」
「ハァ・・・修二っ・・・」
「あっ・・・竜次っ・・・竜次っ・・・―――っ!!」
何度も大曲の名前を繰り返しながら、種ヶ島は果てる。果てると同時に大きく内側が収縮
し、ほどなくして大曲も達した。絶頂の余韻に呼吸を乱しながら、お互いの顔を見る。い
つの間にかオレンジ色に染まった日の光が洞窟の入口と二人の真上にある穴から差し込み、
二人を照らしていた。
(竜次の青い羽、夕日に照らされてメッチャ綺麗やぁ。)
(ああ、この顔たまんねぇし。夕日が差し込んですげぇハッキリ見えるしな。)
夕焼けに照らされたお互いの姿にうっとりと見惚れながら、二人はそんなことを考える。
太陽が沈むまでの間、もう少しこの心地よさの余韻を楽しもうと二人はしばらく体を重ね
たままでいた。
完全に日が沈み、太陽の代わりに大きな満月が昇る。二人の上に空いている穴からも月が
見えるくらいの時分になると、種ヶ島がすっと立ち上がり、波のよせるところまで移動す
る。
「どうした?」
「そろそろ時間やなーと思て。」
「時間?何のだし?」
「竜次もこっちに来てみぃ。」
よく分からないが、種ヶ島に誘われるまま大曲は種ヶ島の隣へと移動する。岩場によせる
波を足にかぶりながら種ヶ島は海の中を眺める。大曲も同じように海を眺めていると、月
明かりにほのかに照らされた海中にちらりと何か小さな粒が見えた気がした。
「始まったみたいや。」
「始まったって何がだし?」
「今日は満月やろ?魚族は何となくそういうのが分かるんやけど、今日は珊瑚の産卵が見
られる日やねん。」
「珊瑚の産卵?」
大曲がそう口にした瞬間、目の前の海の様子が一変する。大量の小さな粒が海の底から浮
かんでくる。真っ暗な海に色とりどりに輝くの珊瑚の卵が放たれている様は、まるで宇宙
に無数の星が浮かんでいるようなそんな光景であった。
「すごいな・・・」
「一度竜次に見せたかってん。ただ珊瑚の産卵は一年に一度だけやから、なかなかその機
会がなくて。」
そんなに珍しい光景なのかと、大曲は素直に感動する。満月の夜に美しい珊瑚が命を繋ぐ
ために見せる神秘的な光景。そんな光景を今大曲と見ていることが嬉しくて、種ヶ島はキ
ラキラとした瞳で星空のような海を見つめる。
「綺麗やな。」
「ああ。」
「俺は何度かこの光景見てるんやけどな、毎度感動してしまうねん。命が紡がれてるって
感じがすごくてなぁ。」
「そうだな。分かるし。もしかして、俺をここに連れて来たのはこのためでもあるのか?」
「せやで。竜次と一緒に見たくて。まあ、俺らは命を紡ぐってのは出来ないんやけどな。」
ほんの少し寂しそうな表情で笑いながら、種ヶ島はそんなことを言う。確かに命を紡ぐと
いうことは出来ないが、出来ないだけではないと大曲は種ヶ島の手を握った。
「確かに俺らは命を紡ぐことは出来ないかもしれねぇけど、他に紡げるもんはいくらでも
あんだろ。幸せを紡いでいくことだって出来るし、愛を紡ぐってことも出来んだろ。俺は
それでいいと思ってるし、お前とそういうもんを紡いでいければいいと思ってる。」
「竜次・・・」
思ってもみない大曲の言葉に種ヶ島は感動してしまう。照れくささもあるが、圧倒的に嬉
しさが勝る。
「あー、どないしよ・・・メッチャ嬉しい。何で竜次、パッとそういうこと言えるん?」
「お前があまりにも微妙な顔で笑うからよ・・・」
言った後で恥ずかしくなり、大曲はがしがしと頭をかく。さらっと言っておきながら、後
になってそういう反応するのは実に大曲らしいなあと種ヶ島はくすくす笑う。
「やっぱ、竜次のこと好きやわー。」
「そうかよ。」
「竜次のこと好きになってよかった。俺、竜次の全部が大好きやで!」
目を細め、ニッコリと笑いながら種ヶ島はそんなことを大曲に伝える。『好き』という言
葉はしょっちゅう聞くが『好きになってよかった』は初めて聞いた。単純に好きと言われ
るより、なかなか心に響く言葉だなあと大曲はその言葉を反芻する。
「修二。」
「何?」
種ヶ島の名前を呼び、自分の方を向いたところで大曲は種ヶ島の唇にキスをする。決して
激しくはないが、想いの込められた優しい口づけ。言葉で伝えることはあまり多くはない
が、こんなふうに素直に行動で示してくれるところは大曲らしくて大好きだと思いながら、
種ヶ島は胸をときめかせる。唇が離れると、ひらりと何かが落ちるのが目に入った。
「竜次、何か落ちたで。」
「ん?ああ、羽根が一本落ちたみてぇだな。」
「ホンマ?あっ、ホンマや。」
落ちた先に目をやると大曲の青い羽根が一本落ちていた。翼から抜けても美しい青さを保
っているその羽根を種ヶ島は拾い上げる。
「竜次の羽根、やっぱ綺麗やなー。なあなあ、この羽根もらってもええ?」
「別に構わねぇけど、そんなもんどうすんだよ?」
「お守り的な?それでなくても綺麗だし、竜次の一部やから竜次が守ってくれる感じにな
るやん。それに、青い鳥の羽根って、何や幸せ運んでくれそうやん。」
「青い鳥はたぶんインコではねぇと思うけどな。まあ、欲しいなら持ってればいいんじゃ
ねぇ?」
自分の一部を所持されるのは少々くすぐったい気分になるが、種ヶ島がそうしたいのであ
ればと大曲はそう言う。大曲の羽根がもらえるということで、種ヶ島は嬉しそうにその羽
根を眺めている。
「まあ、でも、俺は竜次と一緒におればそれだけで幸せやから、それで十分やけどな☆」
「勘弁しろし。」
種ヶ島の言葉が嬉しくて照れくさくて、大曲はそう口にする。大曲がどう思っているのか
は言葉よりもその態度で分かるので、種ヶ島は口元を緩ませたまま大曲を見た。
「せっかくこんな綺麗な景色なんやし、もうちょい一緒に見てよか。」
「ああ。」
二人は再び珊瑚の命が輝く海の中へと視線を移す。明るく輝く満月に照らされた青い水面
に浮かぶ海の星。波に混じる命の音を聞きながら、二人は幸せな時間を紡いでいくのであ
った。
END.