触れたい、触れられたい(ジロー×樺地)

(うーん・・・あれ?何かあったかい・・・)
いつも通り適当な場所で眠ってしまったジローは、心地のよい温かさを感じ、目を覚ます。
パチっと目を開けると、普段とは違う高さの景色が目に入った。
「あれぇ?俺・・・どうしてたんだっけ?」
「ウス。」
「あー、樺地〜。」
しっかりと目を開けると、自分が樺地におぶわれていることに気がつく。
「俺、また寝てた?」
「ウス。」
「そっかぁ。今、何時?」
「もう・・・放課後です。」
てくてくと部室の方へ歩きながら、樺地はそう答える。目を覚ましてもジローは樺地の背
中から下りようとせず、樺地に掴まっている腕に力を込めて、よりしっかりと樺地にくっ
つく。
「ジローさん・・・?」
「樺地ってさー。」
「?」
「跡部と一緒にいる時、こんなふうにくっついたりすることってあるの?」
「おんぶしたり・・・という意味ですか?」
「うん。」
ジローをおぶうことはしょっちゅうあるが、跡部をそういうふうにすることなどほぼ皆無
だ。樺地は首を振って、そんなことはないと答える。
「ありません・・・」
「そっか。そうだよね〜。」
ないということを聞き、ジローは嬉しそうな声色でそんなことを口にする。急にどうした
のだろうと、樺地は不思議に思い、その真意を問おうとする。
「どうして、そんなこと・・・聞くんですか・・・?」
「別に大した意味はないよ〜。ただ、樺地と一番いっぱいくっついているのは、俺だった
らいいなあと思ってさ。」
それは間違いないだろうなあと、樺地は思う。しかし、樺地はそれを口にせず、ただいつ
ものように黙って、ジローをおぶったまま歩き続ける。
「樺地は俺をおんぶするの嫌じゃない?」
「ウス。」
「俺はねー、樺地におんぶされるのすごい好きだよ〜。」
「・・・・」
「あったかくて気持ちE〜し、樺地にくっついてるとすごい幸せな気分になれるからね。」
全く嘘偽りのないジローの言葉に、樺地は嬉しくなる。自分もそうだと伝えたかったが、
普段そんなことを口にすることがないため、どう言葉にしたらいいか分からない。どうし
ようかなあと悩んでいると、ジローがさらに言葉を続けてきた。
「樺地もそう思っててくれたら、超うれC〜んだけどなぁ。なあなあ、樺地。樺地も俺と
くっついてるの嬉しい?」
(あ、これならすぐに答えられる・・・)
「ウス。」
「本当!?」
「ウス。」
「うわあ、超うれC〜!!じゃあじゃあ、樺地は俺とくっついてると幸せな感じする?て
か、俺のこと好き?」
テンションの上がったジローは矢継ぎ早に質問を重ねる。イエスかノーかで答えられる質
問であれば、樺地にとって答えるのは容易であった。
「ウス。」
思ったより即答で肯定するような返事をする樺地に、ジローのテンションはこの上なくハ
イになる。満面の笑顔で樺地に後ろから抱きつき、大好きだという気持ちを素直に口にす
る。
「樺地、超大好き!!俺、もうずっと樺地とくっついてる!!」
「それじゃ・・・テニスが出来ないです・・・・」
もっともな樺地のつっこみに、ジローは笑いながらその意見に賛同する。
「あはは、本当だー。テニス出来ないのは困るなー。なら、今日は俺、樺地と一緒に練習
する!」
そんな話をしてる頃には、もう部室のかなり近くまでやってきていた。さすがにそろそろ
下りないと、テニスの練習が出来ないと、ジローは樺地の背中から下りた。
「今日も運んでくれてありがとな、樺地!」
「ウス。」
「よーし、じゃあ、今日もいっぱい練習するぞー!」
いつも途中で眠くなってしまい、他のメンバーよりも練習時間が短くなりがちなジローで
あるが、今日ばかりはやる気満々だ。そんなジローを見て、いつもより明るい気分になり
ながら、樺地も負けていられないと思うのであった。

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