触れたい、触れられたい(甲斐×平古場)

穏やかな波が寄せたり引いたりしている海の中、甲斐と平古場はその身を浮かせていた。
テニスの特訓では海に入るのが辛いこともあるが、こんなふうにただ遊ぶだけであれば、
全くそんなことはない。
「裕次郎、ちょっと沖の方まで競争しようぜ。」
「いいぜ。」
「んじゃ、よーい、どん!」
バシャっ
大きな水音を立て、二人は沖に向かって泳ぎ出す。前へ出たのは平古場の方であった。平
古場の少し後ろを泳ぎながら、甲斐は平古場の泳いでる様を眺めていた。
(凛って、本当細くてキレーだよな。何か無性に触りたくなってきた。)
そんなことを考えながら泳いでいる甲斐は、少しスピードを上げる。そして、平古場に追
いつくと、後ろから抱きつくようにその身を捉えた。
「〜〜〜〜っ!!??」
いきなり抱きつかれ、驚いた平古場は溜めていた息を全て吐き出してしまう。それに気づ
いた甲斐は、平古場を腕に抱えたまま、水面に上がった。
「ゲホっ・・・な、何するかー!?裕次郎!!」
「あはは、悪い悪い。何か凛の裸見てたら、無性に抱きつきたくなって。」
「海の中でいきなりあんなことしたら、危ないだろー!!」
溺れかかったと、平古場は怒りながら甲斐に文句をぶつける。ゴメンゴメンと謝りながら、
甲斐は顔にぺったりとくっついている髪の毛をのけてやった。
「全く裕次郎はぁ・・・・」
「泳ぎながら見てて思ったんだけどさー、凛って本当線が細くて肌も綺麗で可愛いよな。」
「なっ!?いきなり何言い出すば!?裕次郎。」
「いや、本当のことやっし。だからさー、そんな凛のことぎゅうってしたくなってよ。」
「・・・・そんなこと言われても、嬉しくないし。」
甲斐の素直な言葉に、平古場はほんの少し顔を赤らめそっぽを向く。本当は嬉しいのだが、
それをハッキリ態度に表すのは恥ずかしいと思っていた。
「なあ、凛。」
「何かよ?」
「ちゅうしたい。」
「はあ!?こ、こんなところで何言ってるかよ!!」
「一回だけでいいから。てか、周りに誰もいないし、いーじゃん。」
「ダメに決まって・・・・」
そう言いかける平古場であったが、確かに周りを見回しても広い海が広がるだけで、誰も
いない。陸からはだいぶ離れているので、そこにいる人から見えるはずがない。一回くら
いなら許してやってもいいかという気分になり、平古場は甲斐の頼みを承諾した。
「一回だけなら・・・してもいい。」
「さっすが、凛。話分かるさー。」
許しをもらえたなら早速と、甲斐は平古場の体を抱きよせ、ちゅっとその唇に口づける。
一回だけと言われたが、一度してしまうと止まらなくなってしまう。何度も何度も角度を
変え、甲斐は満足いくまで、平古場に口づけを施した。
(一回って言ったのにぃー!!裕次郎の嘘つきっ!!)
海の中であるが故に、下手に抵抗は出来ない。しかも、今は甲斐にしっかりと抱きしめら
れているという状況だ。甲斐の為すがままになって、平古場は何だかいろいろどうでもよ
くなってしまう。
「ふはっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「凛があんまりにも可愛いから止められなくなっちゃった。」
「もぉ・・・一回って言っただろー。」
「ごめんちゃい。」
「疲れたから、裕次郎が陸まで連れてけ!!」
もっと怒られると思ったが、意外に怒られなかった甲斐は少しふざけた調子で謝る。続け
て平古場が放った言葉を聞いて、甲斐は平古場の体をぐるっと自分の後ろに回した。
「わぁーった、わぁーった。ちゃんと連れてってやるから、しっかり掴まってろよ?」
「お、おう。」
まさか本当に連れていってもらえるとは思っていなかったので、平古場は少し戸惑いなが
ら甲斐の首に腕を回す。
「んじゃ、陸に向かって出発ー!」
「わわ、ちょっ・・・いきなりすぎやし!!」
「落ちないように掴まってろよなー。」
平古場にしがみつかれた形になっているので、多少の泳ぎにくさを感じるが、テニス部の
特訓に比べてたらへでもない。むしろ、平古場と触れ合っていることが嬉しくて、甲斐は
いつもより早いスピードで陸に向かって泳ぐのであった。

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