委員会が終わった後、そのまま風呂に入ったタカ丸と久々知は、久々知の部屋でくつろい
でいた。
「久々知くんは、今日は宿題出てないの?」
「今日は出てないです。明日は野外実習の予定なので。」
「そうなんだ。頑張ってね。」
「タカ丸さんは、宿題出てないんですか?」
「うん、今日は出てないよ。だから、もう少し久々知くんとゆっくりお話していられるん
だ。」
にこにこした様子で、タカ丸はそんなことを言う。こういうことを素直に言ってくるのは
ずるいよなあと思いながら、久々知はタカ丸を見た。
(普段はあんまり気にとめないけど、タカ丸さんの髪って本当綺麗な色してるよなあ。)
風呂に入って来てそのままだったので、普段は頭の高い位置で一つにまとめられているタ
カ丸の髪は肩にかかるように下ろされていた。そんなタカ丸の髪に、久々知は無意識に手
を伸ばす。
「久々知くん?」
「えっ?あっ・・・」
いつの間にかタカ丸の髪に手を触れていることに気づいて、久々知はハッとする。思わず
パッと手を引き、タカ丸から視線を外した。
「別に触られても気にしないよ〜。普段ぼくの方がたくさん触らせてもらってるんだし。」
「いや、別に深い意味があって触っていたわけじゃなくて・・・・」
「うん、分かってるよ。でも、ぼくの髪に触りたいんでしょ?いいよ、いくらでも触って。」
「じゃ、じゃあ・・・」
触れたいと思っていたのは事実なので、久々知は改めてタカ丸の髪に触れる。一見硬そう
に見えるその髪も、触ってみると予想以上に柔らかく、久々知は驚きと感動の合わさった
ような表情を見せる。
(うわあ、やっぱちゃんと手入れされてるんだなあ。)
「タカ丸さんの髪って綺麗ですよね。」
「そう?久々知くんにそう言ってもらえると、嬉しいなあ。」
「色も綺麗だし、触り心地もいいし、さすが髪結いって感じです。」
タカ丸の髪を指でなぞりながら、久々知はそんなことを言う。人に髪を弄られることはほ
とんどないタカ丸であるが、久々知に触れられ、とても気持ちいいと感じた。
「ぼくは久々知くんの髪の方が、色も綺麗で、触り心地もいいと思うけどな。」
「えっ?」
「黒くて、ふわふわさらさらで、ボリュームも満点。こんなに綺麗な髪を弄らせてもらえ
るんだから、本当にぼくは幸せ者だなあって思うよ。」
「そ、そんなこと・・・」
「髪結いのぼくが言うんだから、嘘じゃないよ。」
タカ丸も久々知の髪に触れ、久々知の髪をこれ以上なく褒める。その言葉が嬉しくて、久
々知は照れた様子で、少しうつむく。
「ねぇ、今日も久々知くんの髪、お手入れしていいかな?というか、お手入れさせて。」
「は、はい。お願いします。」
「ありがとう。」
もっとしっかり久々知の髪に触れたくなったタカ丸は、久々知にそんなことを頼む。もち
ろん久々知もタカ丸に触れられることは好きなので、その頼みを断ることはしない。
「タカ丸さん。」
「ん?何?」
「タカ丸さんなら、俺の髪の毛いくらでも触っていいですから。」
「他の人には触らせないの?」
「他の人達は・・・タカ丸さんみたいに俺の髪の毛が好きって言って触ってくるわけじゃ
ないんで・・・」
「そっか。ありがとう、久々知くん。なら、いっぱい久々知くんの髪に触って、めいいっ
ぱい綺麗にしてあげるからね!」
思ってもみない久々知の嬉しい言葉に、タカ丸は上機嫌になりながら、髪の手入れをする。
櫛で丁寧に久々知の髪を梳くと、タカ丸は後ろからぎゅっと久々知を抱きしめ、嬉しそう
な声で話しかける。
「髪のお手入れ終了〜。」
「あ、ありがとうございます。」
「ぼくはね、久々知くんの髪の毛も大好きだけど、久々知くんのこともすっごくすっごく
大好きだよ。」
「・・・知ってます。」
「えへへ、そっかぁ。でも、ぼくは言いたいからいっぱい言ってあげる。」
タカ丸の好き好き攻撃を受けて、久々知は真っ赤になりながらも受け流そうと頑張る。お
互いの髪に触れることで伝わる想い。そんな想いを感じながら、タカ丸と久々知は二人き
りの甘い時間を満喫するのであった。