触れたい、触れられたい(滝×鳳)

「うわあ、これ全部滝さんが活けたんですか?すごいですね。」
滝の家に遊びに来た鳳は、滝の活けた花々を見ていた。生け花が趣味の滝の家には、滝の
手によって作られた生け花が、様々なところに飾られている。
「ふふ、ありがとう。興味があるなら、長太郎もやってみる?」
「生け花をですか?」
「うん。教えてあげるよ。」
「えっと、じゃあ、やってみたいです。」
滝の提案で、鳳は生け花に挑戦してみることにする。とりあえず、部屋に行こうと滝は鳳
を連れて自分の部屋へ向かった。
「それじゃあ、ちょっと準備してくるから、ここで待ってて。」
「はい。」
生け花をするには準備が必要なので、鳳を部屋に残し、滝は必要な道具を取りに行く。滝
の部屋で待ちながら、鳳はふと棚の上に置かれている生け花に目をとめる。
「これ、すごい綺麗。切った花をこんなふうに出来るなんて、さすが滝さんだなあ。」
しばらくその花を眺めていると、滝が戻ってくる。
「おまたせ、長太郎。」
「あ、おかえりなさい。」
「何見てるの?」
「ああ、ここにある生け花がすごく綺麗だなあと思って。」
「あー、それか。それはね、長太郎をイメージしていけたんだ。」
「えっ!?そうなんですか!?」
「うん。長太郎にそれが気に入ってもらえたなら、活けた甲斐があるよ。」
ニコニコしながらそんなことを言う滝の言葉に、鳳は軽く頬を染める。他のところに飾っ
てある生け花も綺麗だと思ったが、鳳が一番綺麗だと思ったのは、滝の部屋にあるこの生
け花だった。それが自分をイメージして活けられたと言われれば、多少恥ずかしくもなる
ものだ。
「俺って、こんなイメージなんですか?」
「そうだよ。真面目で純粋な長太郎には、白がピッタリだと思うんだよね。」
その生け花は白を基調として活けられており、白系の色が好きな鳳にとっては、それがひ
どく魅力的に見えた。確かに白は自分のイメージカラーであるのかもしれないなあと、滝
の言葉に納得する。
「えっと、何ていうか・・・俺をイメージした生け花で、こんなに綺麗なものを作ってく
れて、ありがとうございます。」
「ふふ、どういたしまして。それじゃ、早速生け花始めようか。」
折角用意してきたことだしということで、滝は鳳を手招いて生け花を始める。使いたい花
を用意した花から鳳に選んでもらい、その切り方、活け方を丁寧に教える。
「ここはこういうふうに持って・・・そう、この辺りに活けるといいかな。」
鳳の手に手を重ねるようにして、滝は鳳と一緒に花を活けていく。手を重ねているという
ことで、体はかなり密着し、そんな状況に鳳の鼓動は速いリズムを刻んでいた。
「あ、あの・・・滝さん。」
「ん?何?」
「少し・・・近くないですか?」
「気になる?」
「少し・・・それに手も・・・・」
明らかにドギマギしている鳳を見て、滝は楽しげに笑う。そう言われても、体を離すこと
はせず、手も重ねたままでいた。
「こういうふうにした方が教えやすいからね。」
「そう・・・ですか。」
自分の言ったことに素直に納得する鳳が可愛いなあと、滝は胸をときめかせる。そのまま
の体勢のままある程度花を生けると、花を掴む前に滝は鳳の手に自分の手を絡めた。
「長太郎の手、やっぱ大きいなあ。」
「た、滝さんっ・・・」
「ねぇ、こんなふうに手重ねながら活け花するのって、本当にやりやすいからだと思う?」
「えっ?」
「手重ねたまま、花取るのは取りにくいに決まってるじゃない。こうしてるのは、俺が長
太郎に触れてたいから。それなのに、長太郎本気で信じて文句一つ言わないんだもん。本
当可愛いよね。」
楽しげな口調でそんなことを言う滝に、鳳の顔はさらに真っ赤になる。こういうところも
本当にツボだと思いながら、滝はふっと笑った。
「ま、せっかくここまで一緒に活けたんだし、このまま最後までやって完成させちゃおう
か。」
「・・・はい。」
滝の言葉に鳳は素直に頷く。結局手を重ねたままの状態で、滝と鳳は生け花としての一つ
の作品を完成させるのであった。

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