雪の昼 (ジロー×樺地)

雪がちらつく休日の午後、樺地は買い物がてら散歩をしていた。昨日から降り続いていた
雪は、今になってだいぶ降る量は少なくなったものの、一面を真っ白にさせるくらい積も
っている。買い物を終え、商店街の近くにある公園を通り過ぎようとした時、樺地の目に
思ってもみない光景が映る。
(あれ?ジローさん・・・?)
雪が一面に積もっている公園の木の下で、ジローがいつものように眠っているのだ。雪が
降り続いているため、気温はかなり低い。そんな状況で、屋外で眠るというのは下手をす
れば凍死してしまう。慌てて樺地はジローに駆け寄った。
「ジローさん・・・起きて下さい。」
「Zzzz・・・」
少し声をかけただけでは、ジローは目を覚まさない。しかし、しっかり寝息が聞こえてい
るので、特に問題ないということは分かった。
「起きて下さい・・・」
先程より少し大きな声で、もう少し大きく揺らしながら樺地は再度声をかける。その声に
気づいたのか、ジローは眠そうに目を開ける。
「んー・・・あれ?樺ちゃん?」
「雪が降ってるときに外で寝ないで下さい・・・凍死しちゃいます。」
「あー、それは大丈夫。母ちゃんが外で寝たら危ないからって、ほら。」
もこもこのダウンの前を開くと、そこにはたくさんのホッカイロが入っていた。確かにこ
れなら大丈夫そうであるが、やはり危ないと樺地は注意する。
「それでも、危ないので・・・やめて下さい。」
「分かったぁ。樺ちゃんがそう言うなら、そうするー。」
まだ眠そうな表情で、ジローはそう答える。ジローの頭やダウンに軽く積もっている雪を
そっと払うと、樺地はジローの周りに中途半端に集められた雪に気がつく。
「あー、それ、雪だるまみたいの作ろうと思ってたんだけどー、途中で眠くなっちゃって。」
「雪だるま・・・ですか?」
「うん。本当はもっとカッコイイ雪像みたいなの作りたかったんだけどねー。俺には難し
くて無理だった。」
「雪像って例えば・・・」
「こんなの!」
そう言いながら、ジローは携帯に入った画像を見せる。そこにはジョジョのスタンドの画
像がいくつもあった。その携帯を受け取って、樺地はすっと立ち上がる。そして、ジロー
がある程度集めた雪を使って何かを作り始めた。その姿を見て、ジローはしっかり目を覚
ます。
「作ってくれんの!?」
「ウス。」
樺地が自分の代わりに作ってくれるということで、ジローはテンション高くわくわくした
様子で、樺地の作業を見守った。樺地のコピー能力を持ってすれば、スタンドの雪像を作
ることなど容易であった。次々に出来上がる雪で出来たスタンドを見て、ジローは寒さを
忘れてはしゃぐ。
「うわー、マジマジすっげー!!スタプラにワールドに、キラークイーンにキンクリも!
超リアルだし!!やっぱ、樺ちゃんすげー!!」
樺地が作った雪像をいろいろな角度から写メを撮る。どれもかなり完成度が高く、ジロー
を夢中にさせるには十分であった。
「こんなん見れるとは思わなかった。ありがとー、樺ちゃん♪」
「ウス。」
「明日、岳人とか宍戸に自慢してやろーっと。」
たくさん撮った写メを見ながら、ジローはそんなことを言う。しばらくはキラキラとした
目で、雪像を眺めていたジローであったが、急に大人しくなる。
「あー、何か・・・たくさんはしゃいだから眠くなってきた。」
「そろそろ帰りますか?」
「うん・・・でも、もう眠くて・・・」
「ここで寝ちゃダメです・・・」
「分かってる〜・・・分かってるよー。」
そう言いつつ、ジローの目は閉じかけていた。このままでは、また雪の降っている中で眠
ってしまうと、樺地はすっとしゃがみジローに背中を向ける。
「家まで・・・送ります。」
「いいの〜?」
「ジローさん・・・寝ちゃいそうですから・・・」
「ゴメンねー。ありがとー。」
もう立っていられなくなりそうだったので、ジローは樺地の言葉に甘え、その身を樺地の
背中に預ける。いつも通り、ジローの腕がぎゅっと方から首にかけて回されると、樺地は
しっかりジローをおぶい立ち上がった。
「今日樺ちゃんに会えてよかったぁ・・・いっぱい作ってくれてありがとぉ・・・・」
「ウス。」
実に嬉しそうな声でそう言った後、ジローはぐっすり寝入ってしまう。
(よかった・・・喜んでもらえて。それにしても、ジローさん。雪の中にずっといたのに、
すごく温かい・・・)
たくさんのカイロが服の中に入っていることもあり、ジローの体はとても温かかった。長
いこと雪に触れていた樺地の体はだいぶ冷えていたが、背中から伝わるぬくもりで次第に
温まっていく。雪の日に散歩も悪くないなあと思いつつ、樺地はジローの家に向かって歩
き出した。

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