雷の昼 (甲斐×平古場)

バシャバシャバシャっ!!
大きな水音を立てながら、甲斐と平古場は浜辺を走り、少し奥まったところにある洞穴に
入る。突然のスコールと激しい雷。沖縄ではよくあることだが、今回は何の対処のしよう
もなくどちらも全身がずぶ濡れになってしまった。
「はぁー、完全にやられたー。」
「今日のは一段と激しいさー。」
海辺の洞窟で雨宿りしながら、甲斐と平古場はポタポタと水を滴らせる。洞窟の入口から
外を見てみると、明るい光を放ちながら稲妻が海に落ちていた。
「雷もすごいし、おさまるまで少しここで休むか。」
「だなー。」
ゴツゴツした岩の中でもまだ平らで座れそうなところに二人は腰かける。雷の音を聞きな
がら一息つき、何気なく平古場を見ていると甲斐はあることに気がつく。
「凛。」
「何か?」
「凛のワイシャツ、スッケスケやし。肌も胸のところも全部透けてて、でーじエロい。」
「なっ!?」
ニヤニヤとした顔でそんなことを指摘され、平古場はバッと自分の上半身を確認する。雨
に濡れた所為で、夏用の薄いワイシャツはピッタリと肌に張り付いており、甲斐の指摘す
るようにかなり肌が透けていた。
「こ、これは、しょーがないだろー!!雨に濡れたんだから!!」
「なかなかこういう感じのは見れないから、じっくり見とこう。」
「やめろし。」
「見とかないともったいないだろー?」
「もったいなくない!」
甲斐がじっと見つめてくるのに耐えられず、平古場は何を思ったか濡れたワイシャツを脱
ぎ出す。中途半端に透けているのを見られるくらいなら、普段海に入っているときにして
いる格好になった方がまだマシだと考えてのことだった。
「こ、これなら、泳ぐときと同じだからな!」
「素で見せてくれるなんて、サービス精神旺盛だなー。」
「そういうつもりじゃないし。」
「スケスケのも悪くないけど、生で見れるならそれはそれで俺は嬉しいぜ。」
どんな格好をしてもそういうことを言ってくるのかと、平古場は赤くなりながらプイッと
甲斐から目をそらす。海の沖の方に落ちる雷に目をやっていると、甲斐がべたっとくっつ
いてくる。
「ひゃっ・・・!!」
雨で濡れた手でむき出しのお腹に触れられ、平古場は思わず声を上げる。ほんの少し怒っ
たような声で平古場は甲斐に文句を言う。
「何かよ!?裕次郎。」
「雷鳴ってるんだぜ。」
「だから、何よ?」
「凛のおへそが取られちゃ困ると思って、凛のおへそを守ってやってるばぁよ。」
冗談っぽくそんなことを言う甲斐の言葉に、平古場少々呆れつつももうどうでもいいやと
思ってしまう。
「本当は俺に触りたいだけだろ?」
「そんなことないさー。ほら、ちゃんと凛のおへそを・・・」
「ちょっ・・・くすぐったいから、手ぇ動かすなし!!」
「凛はくすぐったがりだからなー。」
平古場の反応を見て、甲斐はケラケラと笑う。多少腹が立つものの甲斐に触れられること
自体はそれほど嫌ではない。お腹の中心に手を当てている甲斐の手に自分の手を重ね、平
古場はボソっと呟く。
「・・・・雷が止むまでだからな。」
「雷が止むまでなら、好きなことしていいってコト?」
「くすぐったりするのはなしだからな!」
「しないしない。」
「そう言いながら、裕次郎はいつも・・・・」
「大丈夫さー。今日は凛の嫌がることはしないから。」
平古場の言葉を遮るように甲斐は平古場の耳元で囁く。頭の中に直接響くようなその声に
平古場は、ドキッとして何も言えなくなってしまう。ピッタリとくっついている所為で、
お互いにどれだけドキドキしているかが嫌でも伝わり、さらにドキドキしてしまう。
「・・・何で裕次郎、そんなどんどんしてるかよ?」
「凛が可愛いから?」
「どんな理由やし。」
「それ以外にないだろ。」
照れもせずにハッキリと断言する甲斐の言葉に平古場の方が恥ずかしくなってしまう。顔
が熱くなるのを抑えられず、いつの間にか耳まで真っ赤になっていた。
「凛、耳まで赤くなってるぜ。」
「う、うるさい!」
「じゅんに凛は可愛いなー。雷ずっと止まなきゃいいのに。」
「雷止まないとうちに帰れないだろー。」
「はは、まあそうだな。俺はずっと凛とこうしててもいいけど。」
笑いながらそう言う甲斐の言葉に平古場は頷きはしないものの、平古場も似たようなこと
を思っていた。洞穴の外ではまだまだ雷が鳴り響いている。もう少しこの場所でイチャイ
チャしていたいと思いつつ、二人は海の上にいくつも走る稲妻を眺めていた。

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