夜這い合い

(今日はスケジュールが立て込んでいて、さすがに疲れたな。)
ベッドに仰向けになりながら、君島はぐったりとしていた。今日は朝から生放送の出演が
あり、それが終わった後すぐに合宿所へ帰りいつも通りの練習、不本意ながらも遠野の練
習に付き合った後、朝練が出来なかった遅れを取り戻すため、少し前まで自主練をし、入
浴を済ませて戻ってきたところであった。
(こんなに疲れているのに、微妙にムラムラしてる。まあ、しばらく放っておいたら治ま
るだろう。)
もう動きたくないほど疲れているのに、何故だかムラムラしてしまい、君島のそこは少し
勃っていた。しかし、それを処理するほどの元気はないと君島はそのまま放置する。
「君島ぁ!!明日休みだろ?明日の予定を・・・」
と、突然部屋のドアが開き、遠野が部屋に入ってくる。遠慮のない遠野の行動に君島は顔
をしかめて注意をする。
「遠野くん、部屋に入るときはノックをしてからと何度も言っているでしょう。」
まだ寝るには少し早い時間にも関わらず、ベッドに横になっている君島を見て、遠野は少
し心配になる。
「どうした?体調でも悪いのか?」
「別に体調が悪いわけではないですが、今日は少し疲れてまして。なので、アナタに構っ
てる余裕はないです。」
「確かに今日は朝から仕事だったみてぇだしな。けど、この程度でヘバるなんて、スタミ
ナ足りてねぇんじゃねーか?」
「うるさいですよ。とにかく出て行ってください。」
今日は本当に勘弁して欲しいと、君島は冷たくそう言い放つ。君島に構って欲しいと思っ
てやってきた遠野は、不満気な表情を見せる。しかし、本当に疲れていそうな君島を見て、
引き下がろうとしたそのとき、遠野はあることに気がつく。
「疲れてるって言ってるわりには、随分と元気なところがあるじゃねぇか。」
「・・・放っておいたら治まると思うので、気にしなくていいです。」
ほんの少し恥ずかしさを感じながらも、今は相手にしたくないと、迷惑そうに君島はそう
言う。しかし、これなら君島に構う理由が出来たと言わんばかりに遠野は嬉しそうに口を
緩ませる。
「フッ、ちょうど今、いい処刑法を思いついたぜ!」
「遠野くん、さっきから何度も言っていますが、私は疲れているんです。」
「お前はそのまま寝てりゃいいからよ。俺に任せておきな。」
そう言いながら、遠野は君島の寝ているベッドに乗り上げ、君島のズボンに手をかける。
「ちょっと遠野くん!!本当に怒りますよ!」
「うるせー、黙ってろ。」
君島のズボンと下着を少し下ろすと、あらわになった熱に遠野はちゅっと口づける。
「うあっ・・・」
君島の熱がしっかり反応するのを確認すると、遠野は大きく口を開け、君島の熱を根本ま
で口に含む。遠野の口の中のぬるりとした感触に、君島の腰はビクンと跳ねる。
「んっ・・・!」
文句を言わなくなった君島に気をよくし、遠野はゆっくりと口を動かし、君島のそれを舐
め上げる。疲れて抵抗する気力がないのはその通りだが、それ以上に遠野の口の中が気持
ちよく、君島はもうどうにでもなれといった気分になっていた。
「ハァ・・・んっ、遠野くん・・・」
「気持ちイイだろ?イキたかったら、いつでもイッていいからな。」
(全く遠野くんは本当に人の話を聞かず好き勝手して・・・ただ、自分で出来ないところ、
こうしてもらえるのは悪くはないかもしれないな。)
もともとムラムラしていたこともあり、遠野がその処理を担ってくれているのは、君島に
とって有り難いことであった。君島が疲れているのを気遣ってか、遠野は穏やかに昇りつ
めていくような刺激をじっくりと与える。
「ハァ・・・んむっ・・・」
(やっぱ、君島のしてるとこっちもその気になってきちまうな。一回出させて、まだ治ま
りそうになかったら、最後まで付き合ってもらおう。)
君島のモノを咥えながら、遠野自身も興奮してきてしまっていた。そんなことを考えなが
ら、遠野は君島の熱を舐め続ける。
(気持ちイイ・・・ゆっくり高まっていく感じがたまらない・・・)
遠野が与えてくれる快感に、君島はすっかり心を奪われていた。緩やかではあるが、快感
は次第に高まっていき、一際大きな波が訪れようとしていることに君島は気づく。
「ハァ・・・遠野くん、そろそろイキそうです。」
「いいぜ。俺の口の中に出せよ。」
嬉しそうにそう口にした後、遠野は一際深く君島の熱を咥える。
「んっ・・・イクっ・・・!!」
「んんっ・・・!!」
遠野の希望通り、君島は遠野の口の中に自身の熱を放つ。自分でするときとは全く別の心
地よさに君島はふわふわとした気分で呼吸を乱す。
「ハァ、ハァ・・・ハァ・・・」
「んっ・・・ハァ・・・おっ、結構出したのにまだ治まってねぇみてぇだな。」
君島が出したものをしっかり飲み込んだ後、遠野はご機嫌な様子でそんなことを言う。治
まっていないのならと、遠野はシャツのボタンを全て外し、下に穿いていたものを全て脱
ぎ去る。
「ちょっ、遠野くん!何してるんですか!?」
「お前は何もしなくていいからよ、新しい処刑法の実験台になりやがれ。」
「実験台って何を・・・」
仰向けに寝ている君島の腰のあたりを跨いで膝をつき、遠野はまだ十分に硬い君島の熱を
自分の中に挿れるように腰を落とす。
「ぐっ・・・!」
「あああぁっ!!」
君島の熱を根本まで受け入れた遠野のそこは、ぎゅうぎゅうと嬉しそうに君島の熱を締め
つける。
「ハァ・・・遠野くんっ・・・」
「これからお前に受けてもらうのは、強制せーえき搾り取りの刑だ。一滴残らず、搾り取
ってやるから覚悟しとけよなぁ!」
「なっ!?」
どんな処刑法だと思いながらも、疲れと先程達した余韻で頭が回らず、君島は思うように
文句を言うことが出来なかった。そうこうしているうちに、遠野が動き出す。奥まで入っ
ている熱の根本がきゅっと締めつけられ、君島は思わず声を上げる。
「んあっ・・・!」
「ふあっ・・・さあ、処刑の始まりだ!」
そう言い放った後、遠野は締めつけを保ったまま、ゆっくりと君島の熱を抜いていく。先
程遠野が言っていた通り、搾り取られるような感覚に君島はゾクゾクしてしまう。抜けて
しまうギリギリのところで、遠野は再び腰を落とし、君島のそれを一気に自分の中へ戻す。
「ああっ!!」
「んああぁんっ!!」
「と、遠野くんっ・・・!」
「ハァ・・・んあっ・・・ん・・・!!」
自分もビクビクとその身を震わせながら、遠野はゆっくりと搾り取るようなピストンを繰
り返す。
(さっきのと同じで、急激にじゃなくゆっくり高まっていく感じが気持ちいい。それに、
騎乗位で一生懸命私の上で動いてる遠野くん、すごくやらしくて可愛いな・・・)
小さく呼吸を乱しながら、君島は自分の上で腰を揺らして喘いでいる遠野を眺める。その
視線に気づいて、遠野は艶やかな笑みを浮かべて君島に話しかける。
「ハァ・・・何だぁ?何か言いたげだな。何か文句でもあるのか?」
「いえ、別に。文句はないですが、遠野くんにして欲しいことはあります。」
「へぇ、何だよ?」
「今日は私は何も出来ないので、自分で乳首を弄りながら動いてください。」
「はあ!?」
思ってもみない君島の言葉に驚きながらも、それは意外とありなのではないかと、遠野は
ゾクゾクしてしまう。
「まあ、別にどっちでもいいですけどね。」
「チッ、仕方ねぇなあ。」
そうぼやきながらも、遠野は自分の両手を両方の胸に持っていく。そして、その突起を指
先で軽く擦る。
「んあっ・・・あんっ!!」
「くっ・・・少し触れただけで感じすぎじゃないですか?」
遠野が感じると内側が締まるので、君島は口元を緩ませながら文句を言う。
「う、うるせー!お前がやれって言ったんだろ!」
「ダメだなんて言ってないじゃないですか。遠野くんが感じていると私も気持ちいいので、
もっとしてください。」
そう言われてしまってはしないわけにはいかないと、遠野は自分で胸を弄りながら、先程
の搾り取るようなピストンを続ける。
(ヤバイ・・・これ、俺の方がたくさん気持ちよくなっちまう・・・)
「はぁ・・・んあっ・・・あああぁんっ!!」
「ハァ・・・気持ちイイ・・・」
「んっ・・・だろぉ?もっと俺で気持ちよくなっとけ。」
君島が思わず呟いた言葉に、遠野は嬉しそうにそう返す。していることも口にする言葉も
エロすぎると、君島は困惑と興奮とときめきで、感度が更によくなってしまう。
(気持ちよすぎてヤバイな。このままだと、そんな時間かけずにイッてしまうかも。)
「んやっ・・・ああぁんっ!!」
「んんっ・・・!」
「ハァ・・・君島っ・・・んんんっ!!」
もともとぎゅっと締めつけられたまま抜かれるという動きに、胸の突起を弄っていること
による予想出来ない収縮が加わり、君島の快感は限界近くまで高まっていた。
「と、遠野くん・・・もう・・・」
「あんっ・・・俺もっ・・・!!」
イキそうになり、遠野は一番深いところまで腰を落とし、ぎゅうっと強く胸の突起を抓む。
それと同時に自分の中にある君島の熱がビクビクと震えるのを感じる。
「君島っ・・・あああぁ――っ!!」
「んあっ・・・!!」
どちらも激しく達し、しばらくその極上の快感に身を震わせる。絶頂と同時に君島は目を
閉じ、その多幸感に身を任せたまま、意識を失うように夢の中へ落ちていった。
「ハァ、ハァ・・・君島?・・・ふっ、寝ちまったか。」
もともとひどく疲れているのに無理矢理してしまったので、こうなってしまうことを遠野
はある程度予想していた。
「ちゃんと綺麗にして、俺も部屋に戻るか。」
君島を起こさないようにゆっくり自分の中から君島の熱を抜くと、軽く汚れてしまってい
る下腹部を丁寧に拭いてやり、下着とズボンを戻す。自分も服を着ると、つけたままの眼
鏡を外してやり、布団をかける。
「おやすみ。また、明日な。」
ご機嫌な様子でそう呟くと、遠野は部屋の電気を消し、自分の部屋へと戻って行った。

また別の日、今日は遠野が疲れてベッドの上でぐったりしていた。
(今日はトレーニングのメインが嫌いな長距離のマラソンだったし、ちょっとリハビリし
すぎたな。それに君島が自主練だって言って結構遅い時間まで打ち合いしてたからなあ。)
「動きたくねー・・・」
そんなことをぼやきながら、遠野は枕に突っ伏すようにその身をベッドに預けていた。も
う疲れきっているはずなのに、少しムラムラしてしまいそこが疼く。
「こんなに疲れてんのにどうなってんだよ、ったく。あっ、もしかするとこの前の君島も
こんな感じだったのか?」
そんな気づきを得るものの、君島と同じく自分でどうにかする元気はない。モヤモヤしな
がら、ベッドにうつ伏せになっているとノックの音が聞こえる。
(誰だかは分かんねぇが、面倒くせぇから無視しとこう。)
ノックに答えず、ベッドに突っ伏したままでいると、ガチャっとドアが開く。
「おや、遠野くん。寝ているのですか?」
ドアを開けたのは君島であった。部屋に入りドアを閉めると、君島は遠野に声をかける。
「寝てはねぇ。勝手に入って来んな。」
「それを遠野くんが言います?今日は随分お疲れのようですね。」
「・・・・・・」
何も答えない遠野に、君島はフッと笑って遠野が突っ伏しているベッドのすぐ側まで移動
する。
「この前、私がひどく疲れていたときに、遠野くん好き勝手してくれたじゃないですか。
なので今日は、その仕返し・・・いえ、お返しに来ました。」
まるで遠野がこうなっていることを知っていたような口振りに、遠野は怪訝な顔で君島を
見る。
「限界近くまで疲れていると、何故かムラムラしてしまいますよね。」
「・・・さあな。」
遠野がいるベッドに乗り上げると、君島は楽しげな笑みを浮かべ、遠野の臀部をゆるりと
撫でる。
「んっ・・・」
「遠野くんはそのままうつ伏せで寝ていて構わないので、私に任せてください。」
この前の自分と同じようなことを言っている君島に、本当に仕返しに来たのだなと遠野は
軽く舌打ちをする。しかし、ひどく疲れていながらもムラムラしてしまっているため、君
島のしようとすることを止めさせるという選択肢はなかった。
「少し腰を上げてください。」
「・・・・。」
君島に言われるまま、遠野は軽く腰を上げる。後処理が楽になるようにと君島は遠野の下
腹部の下にタオルを敷く。そして、そのまま遠野のズボンと下着を脱がしてしまう。
「もう下ろしてもらって構わないですよ。」
すっと腰を下ろすと、心もとなくなった下半身の状態に遠野はドキドキしてしまう。遠野
の息が荒くなっていることに気づきながら、君島はむき出しになった双丘を優しく撫でる。
「んあっ・・・!」
「この前遠野くんがとても気持ちのよい処刑の実験台にしてくれたじゃないですか。あま
りに疲れていたので、そのまま眠ってしまいましたが、次の日起きたとき、いつも以上に
寝覚めがよくてとてもいい気分だったんですよね。」
柔らかな肌に指を滑らせ、君島はこの前のことを上機嫌に話す。そんな話は今日まで聞い
ていなかったので、遠野は素直に言葉を返す。
「そ、そりゃよかったな・・・」
「ですから、その心地よさを遠野くんにも味わってもらいたいと思いまして。」
そう言いながら、君島は遠野の双丘の割れ目にローションを垂らし、自分の指にも十分す
ぎるほどローションを絡める。すっかりヌルヌルになっている指を同じようにヌルヌルに
なっている蕾に君島はつぷっと挿れる。
「ああぁんっ・・・!!」
「しっかり慣らした後、私のモノで十分に中を擦ってあげますからね。」
「ハァ・・・君島ぁ・・・」
宣言通り、君島はたっぷりのローションを使って遠野のそこをほぐしていく。無理矢理抉
じ開けるようなことはせず、ゆっくりと広がっていくその感覚に遠野の心は蕩けていく。
(何か・・・じっくり慣らされてるの、今の状態だとスゲェ気持ちイイ・・・)
「んあっ・・・ふぅ・・・あっ・・・あんっ・・・」
君島が中で指を動かすたび、遠野の双丘はピクピクと震える。そんな遠野の反応を心から
愛らしいと思いながら、君島は存分にそこを弄る。そろそろ挿れても大丈夫だろうという
状態までほぐすと、中に挿れていた指をすっと抜く。
「あっ・・・あんっ!!」
「そろそろ私のモノを遠野くんの中に挿れてあげますね。」
「んっ・・・君島ぁ・・・」
枕をぎゅうっと抱えながら、遠野は期待感に胸を高鳴らせる。ピタリと遠野の入口に自身
を押しつけると、君島はそのまま一気に腰を進める。
「んあああぁんっ!!」
「十分に慣らしたおかげで、すんなり奥まで入りましたね。」
寝バックなので、君島は遠野に覆いかぶさるような体勢で遠野の顔の横あたりに手をつく。
君島の声が急に近くなったことに遠野はドキドキしてしまう。
「今日は遠野くんが疲れているようですので、激しくはせずゆっくり奥の奥を突いてあげ
ますね。」
遠野の耳元でそう囁きながら、君島はゆっくりと腰を動かす。トントンとリズムよく奥を
突かれる感覚に、遠野は体の奥がきゅんきゅんと甘く痺れるのを感じる。
「ふあっ・・・あっ・・・あん・・・」
「気持ちいいですか?」
「んんっ・・・腹の奥・・・気持ちイイ・・・」
「そうですか。それなら、しばらく続けてあげますね。」
疲れた身体に緩やかな快感を断続的に与えられている状況に、遠野の心と身体は蕩けてい
く。じわじわとであるが、君島の熱が奥まで入っているという状況と耳元で感じる君島の
吐息や声に興奮し、遠野の快感は次第に大きくなっていく。
(そんなに激しくされてねぇのに、気持ちいい感じがどんどん大きくなってる。早く中に
君島のが欲しい・・・)
ゆっくりと動いているが、遠野が感じる快感によって中の感じが変わるので、君島が感じ
る心地よさも大きくなっていた。
(もう少し時間をかけられるかと思ったけど、予想以上に遠野くんの中気持ちよくて、思
ったよりはもたないかもしれないな。)
「ハァ・・・んっ・・・君島ぁ・・・」
「どうしました?」
「あっ・・・早く、君島のが中に欲しい・・・」
あまり動かせない腰を揺らしながら、遠野はそう呟く。そんな遠野の言葉にドキドキしな
がら、君島は気を遣うような言葉と見せかけて意地悪な口調で言葉を返す。
「今日は遠野くん随分と疲れているみたいじゃないですか。だから、外に出す予定でした
が・・・」
「ダメだ!!俺は平気だから・・・」
「だったら、ちゃんとおねだりしてください。」
思ったよりも必死な遠野の様子に君島は口元を緩ませる。どうしても中に出して欲しい遠
野は、君島のそんな言葉に素直に従う。
「き、君島のせーえき・・・俺の中に、たくさん出してくれ・・・」
(ああ、思ったよりこれは・・・)
予想以上に興奮してしまうと、君島は遠野の中にある熱が反応するのを感じる。
「仕方ないですね。私の精液、遠野くんの中にたくさん出してあげます。」
遠野の言葉を繰り返すように、いつもより低い声でそう囁くと、君島は遠野の希望を叶え
るために、先程よりも少しだけ激しく遠野の中を穿つ。先程までがかなり緩やかな動きだ
ったため、遠野の内側はそれだけでも大きな快感を感じてしまう。
「ああっ・・・んあんっ・・・君島っ・・・!!」
「ハァ・・・くっ、遠野くん!!」
きゅんきゅんと先端から根本までを絶妙な力で締めつけられ、君島はドクドクと熱い雫を
遠野の奥を濡らすように放つ。君島の蜜が欲しいところに注がれ、遠野も甘く深い絶頂を
迎える。
「き、君島っ・・・あああぁんっ!!」
(スゲェ気持ちいい・・・君島の、熱い・・・)
全身で君島を感じながら、遠野はそのまま目を閉じる。自分の下でビクビクと震えながら、
すーすーと寝息を立て始めた遠野を見て、君島は満足気に笑う。
「一番気持ちいい状態で眠りに落ちるの、とても心地いいんですよね。遠野くんにも味わ
ってもらえてよかった。さてと、後はきちんと後処理をしてあげないとですね。」
遠野があんなことを言い出さなければ、もともと外に出す予定だったので、まずは遠野の
中に出してしまったものを優しく掻き出す。眠っていてもある程度感じるようで、ピクン
と体を震わせながら遠野は君島の名を口にする。
「んぁっ・・・君島ぁ・・・」
「ふっ、寝言で名前を呼ばれるのも悪くないですね。」
遠野の可愛さに思わずニヤけながら、君島はローションや出したモノで汚れている下肢を
もう一枚持って来ていたまっさらなタオルで丁寧に拭く。下着とズボンを元通りに穿かせ、
下に敷いていたタオルを回収すると、気持ちよさそうに眠っているその身体にふわっと布
団をかけてやる。
「おやすみなさい、遠野くん。」
慈しむような声色で眠っている遠野にそう言葉をかけた後、君島は遠野の部屋の電気を消
し、自分の部屋へと戻って行った。

また別の日、この日は君島は朝から撮影があり、合宿所に帰って来たのは夕方過ぎであっ
た。芸能人の仕事があったとしてもテニスは疎かに出来ないので、夕食を食べた後、一人
自主練をこなす。遠野は君島と一緒に練習出来ないモヤモヤ感から、通常のメニューをこ
なした後、筋トレやリハビリに精を出す。消灯時間近くになり、どちらも自分の部屋へ戻
ろうとする。
(さすがに今日は疲れたな。撮影もいつもよりはアクションが多くてハードだったもんな。)
(君島がいねぇから、ちょっと無理しすぎちまったかもな。ま、それくらいがちょうどい
いか。)
どちらもかなりの疲労感を感じながら離れの廊下を歩いていると、部屋の前で鉢合わせる。
「お、君島じゃねーか。今、帰って来たのかよ?」
「いえ、夕食前には帰って来てましたが、自主練をしていまして。」
「自主練するんだったら俺に声かけろよな。」
「そうは言われても、遠野くんの姿が見当たらなかったので。」
君島がいたら一緒に練習出来たのにと、遠野は少し不満気な顔を見せる。疲れているので、
今日はすぐ部屋に戻って眠ろうと思っていたが、君島と会い、遠野はもう少し君島と一緒
にいたくなる。
「なあ。」
「何です?」
「ちょっとだけお前の部屋に行っていいか?」
「今日は疲れているので、遠慮して欲しいのですが・・・」
そう言うと遠野の顔は明らかにしょんぼりしたような表情になる。そんな表情とこの前の
ことを思い出したことで、何だか断るのは勿体ない気がしてしまう。
「・・・まあ、少しだけなら構いませんよ。」
その言葉を聞いて、遠野の顔は途端に嬉しそうな表情に変わる。何も言葉を発していない
のに分かりやすすぎると、君島は口元が緩みそうになるのを抑える。
「入るのであれば、さっさと入ってください。」
「お、おう。」
自室のドアを開けると、君島は遠野を部屋に招き入れる。君島の部屋に入ると、遠野は迷
わず君島のベッドに向かい、ボスっと布団の上に寝転がる。
「ちょっと遠野くん!!何故ベッドに直行するんですか!?」
「いや、俺も今日は結構疲れててよ。」
「だったら、自分の部屋で寝たらいいでしょう。」
呆れたようにそう言う君島に、遠野は少し恥ずかしそうな表情を浮かべ答える。
「・・・今日は君島仕事でずっといなかったじゃねぇか。だから、ちょっとでも一緒にい
たいと思ってよ。」
もそもそと布団に入りながらそんなことを言ってくる遠野に、君島は図らずもときめいて
しまう。
「全く、本当に仕方のない人ですね。」
そう言いながら、君島は部屋の電気を消し、眼鏡を外してテーブルに置き、遠野の隣に横
になる。
「き、君島・・・?」
「先程言ったように、今日もだいぶ疲れているんです。最悪そのまま眠ってしまってもい
いようにと思いまして。」
「で、でもよ・・・」
このままでは自分も眠ってしまうかもしれないと、遠野は困惑するような反応を見せる。
「満足したら自分の部屋に戻ってくださいよ。」
「おう。」
言っていることはいつもの君島であるが、距離の詰め方はいつもよりも積極的だ。そんな
君島の態度にドキドキしながら、遠野は目の前にある君島の顔を見る。
「今日はお互いに疲れているので、この前のようなことは出来ませんが、これくらいはし
てもいいですよね?」
すぐ側にある遠野の顔に触れると、君島はすっと顔を近づける。
(あ、キスされる。)
そのことに気づいて、遠野はぎゅっと目を瞑る。唇同士が触れ合うと、遠野はビクっとそ
の身を震わせる。
(ただ触れただけなのに、この反応は可愛いな。)
すっと唇を話すと、触れ合うギリギリの距離で君島は遠野の名を口にする。
「遠野くん。」
「んっ・・・君島・・・」
遠野の口を開かせるように指で下顎を下げると、君島はより深い口づけをする。
「んむっ・・・んん・・・」
(別にここまでするつもりはなかったんだけどな。まあ、君島がその気ならそれでいいか。)
今日は本当にただ君島と一緒にいれればいいと思っていた遠野だが、君島にこういうこと
をされるのは嫌いではないので、そのまま君島の好きにさせる。
「ハァ・・・遠野くん・・・」
「んぁ・・・んっ・・・」
お互いに舌を絡ませ、君島も遠野も蕩けるような口づけを堪能する。
(君島とキスするのやっぱ気持ちイイ。頭ん中ふわふわしてきた。)
(ああ、やっぱりこうしていると、すごくいい気分だ。)
キスをしていることで興奮しているものの、今日は疲労感もあいまって、心と身体が非常
に心地よい状態になっていくのを感じる。しばらくの間、その何とも言えない充足感に身
を任せた後、二人はゆっくりと唇を離す。
「はぁ・・・君島・・・」
「遠野くん・・・」
(スゲェいい気分。あー、このまま寝ちまいてぇ。)
(この前、遠野くんにしてもらったのに近い満足感があるな。すごく眠くなってきた。)
この感覚をもう少し味わっていたいと、君島は遠野の手をぎゅっと握る。
「もう少しここにいてもいいですよ?」
「・・・ああ。」
手を握られているため、遠野の意思では好きなように動けないのだが、君島はあくまでも
遠野に選ばせるような言葉を口にする。それならばこのまま寝てしまっても構わないだろ
うと、遠野はその瞳を閉じる。そんな遠野を見てふっと微笑み、君島も目を閉じた。

次の日、同じベッドで目を覚ました君島と遠野はかなり寝覚めがよいと感じていた。その
おかげか、この日の練習はどちらもかなり調子のよいプレイをすることが出来ていた。
「何や今日のサンサンとアツ、メッチャ調子よさそうやん。」
「確かにいつもより息が合ってる気がするし。」
休憩時間に大曲と種ヶ島にそう言われ、君島と遠野は一瞬目を合わせた後、ふっと笑う。
「昨日から今日にかけての睡眠の質がよかったからかもしれませんね。」
「へぇ、確かに睡眠の質は大事ですもんね。ええ睡眠取る秘訣とかあります?」
「しょっちゅう眠ってるお前がそれを聞くのかよ?」
睡眠テニスが出来るほどの毛利の言葉に、遠野は思わずつっこむ。
「たくさん寝るんと質のええ睡眠はちょっとちゃうやないですか。」
「確かに何か秘訣があるなら、聞いておきたいものだな。」
「おっ、ツッキーがさし興せずに聞くっちゅーことは、大事なことやな。」
越知にも毛利にも尋ねられ、君島はどう答えようか考える。
「そうですね・・・ほどよい疲労感と心と身体の高い充足感といったところでしょうか。」
「何やそれっぽいですね!」
「確かにそうだな。」
「具体的には?そこが結構重要やと思うんやけど。」
何となくは分かるものの、具体的に何をすればいいかよく分からないと種ヶ島はさらに質
問を重ねる。
「それは人それぞれじゃないですか。何に充足感や満足感を感じるかは、人によって違う
でしょうし。」
「そりゃそうか。分かっちゃいるが、実行するとなると難しいってやつだな。」
「はあ?お前らは簡単だろ。隣にいるやつとベッドでちょっとハードな運動でもすればい
いんじゃねーの?」
大曲の言葉に遠野はからかうような口調でそう返す。遠野の言わんとしていることを理解
すると、君島と遠野以外の四人は赤くなる。
「ほどよい疲労感と心と身体の高い充足感・・・なるほどー、確かにアツの言う通りかも
しれへんな!」
「いや、納得すんなし。」
「えっ、キミさん、そういうことやったんですか!?」
「違いますよ。ちょっと遠野くん、誤解されるようなこと言わないでください。」
「間違ってはねーだろ。」
ほとんど遠野の言う通りだが、少なくとも昨日はそういうことはしていないと君島は遠野
に注意するような言葉をかける。
「なるほど、それは一理あるな。試してみるか?」
「月光さん!?」
「冗談だ。そろそろ休憩が終わる。準備するぞ。」
本気か冗談か分からない越知の言葉に、毛利を始めそこにいるメンバーは驚く。休憩時間
が終わるので、それぞれダブルスのペアで次の練習の準備を始める。
「心と身体の高い充足感・・・ねぇ。なかなかいい表現するじゃねぇか。」
「間違ってはいないでしょう?」
「そうだな。まあ、俺も昨日はよく眠れたし寝覚めもよかったし、その通りかもな。」
「たまにであれば、昨日のようなこと、してあげてもよいですよ?」
「へぇ、だったらお前がもっと満足出来るような処刑法考えておいてやるぜ。」
この場合の処刑法はこの前のようなものなのではと、君島は少しドキドキしてしまう。処
刑と聞いて胸が高鳴ってしまうのを少し悔しく思いながら、君島はラケットを持つ。
「サンサンー、アツー、次は俺らとの試合やで。」
「早く準備しろし。」
「行きますか。今日はあの二人にも負ける気がしませんね。」
「俺の処刑とお前の交渉で、打ちのめしてやろうぜ。」
どちらもご機嫌な様子でラケットを手にし、大曲と種ヶ島が待つコートへ向かう。多少無
理矢理であろうと、そんなつもりがなかろうと、肌を合わせれば自然と心と身体は満たさ
れる。そんな絶妙な関係を調子のよさに変えて、二人はいつもよりやる気に満ちた様子で
練習に臨むのであった。

                                END.

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