夜半の月

いつもより少しハードな練習の後、毛利は大浴場で汗を流し、133号室に戻ってくる。
「はあー、今日も疲れましたわ。」
「今日は頑張っていたようだな。」
「月光さんは読書ですか?」
机の前で椅子に座り、本を広げているので毛利はそんなことを問う。読んでいた本を一旦
閉じながら、毛利の方へ視線を移し頷く。
「ああ。」
「月光さん、ちょっとこのジャージ借りてもええですか?」
「別に構わないが、まだ洗濯していないぞ。」
「その方が都合がええです。」
洗濯する用に分けておいたジャージを手に取り、毛利は二段ベッドの下に入る。そしてそ
のまま、越知のジャージを抱き締めるようにして横になった。
「まだ寝るには早い時間ですけど、ちょっと仮眠とりますわ。」
「仮眠をとるのにそのジャージは必要なのか?」
「こうして寝たら、月光さんと寝てるみたいで落ち着くんです。読書してる月光さんの邪
魔したないし。」
ジャージを抱き締めながら恥ずかしそうにそう言う毛利に、越知はきゅんとしてしまう。
読書を止めて添い寝をしてやりたいくらいだが、せっかくの毛利の気遣いを無駄にするこ
とは出来ない。
「ほんなら、ちょっとだけおやすみなさい。」
「ああ。」
そう言って毛利は越知のジャージに顔を埋め、目を閉じる。しばらくすると寝息が聞こえ
てくる。
(さすがの寝つきのよさだな。もう少しだけ読書をすることにしよう。)
小一時間ほどして越知は本を読み終え、読み終えた本を机に置く。仮眠ということであっ
たが毛利はまだぐっすりと眠っていた。
(本も読み終えてしまったし、消灯時間まではまだもう少しあるな。)
少し暇になってしまい何をしようか考えていると、もにょもにょと毛利が寝言を言ってい
るのが耳に入る。
「ん・・・月光さん・・・」
越知の匂いがするジャージを抱えているため、越知の夢を見ているのか毛利は越知の名前
を呼ぶ。寝ながら名前を呼ばれ、越知は毛利の方に目をやる。気持ちよさそうに眠ってい
る毛利の寝顔をもっと近くで見たいと、越知は毛利の眠っている二段ベッドに腰かけた。
(本当に愛らしい顔で眠っているな。少しの間、この寝顔を眺めることにするか。)
しばらくの間、毛利の寝顔を眺めていた越知であったが、ほんの少し視線をずらしたこと
であることに気がつく。特に布団をかけて眠っているわけではないので、シャツがめくれ、
脇腹がのぞいていた。そんな毛利の姿に越知は図らずもムラっとしてしまう。
(せっかくこんなにも気持ちよさそうに眠っているのに邪魔するのはよくない。ここは直
しておいてやるのが得策だろう。)
脇腹を隠すようにシャツを引っ張るが、長い指が脇腹に触れてしまい、毛利はピクンと身
体を震わせ小さく声を上げる。
「んっ・・ぅ・・・」
その声にドキッとし、起こしてしまったかと焦る越知だが、毛利は目を覚ましてはいなか
った。毛利が起きていないことにホッとする越知であったが、毛利のそのような反応を見
て、先程よりも更にムラムラしてしまう。
(これ以上触れるのはよくないことは分かっているのだが・・・)
直したシャツの裾より下の方に視線を移せば、ハーフパンツの裾から長い脚が伸びている。
いけないとは理解しつつも、どうしても毛利に触れたくなってしまう。起こさない程度に
と、むき出しになっている毛利の太腿にそっと指を触れ、ゆっくりと指を滑らせる。
「んっ・・ぁ・・・」
くすぐったさに身をよじらせるようにして、毛利はぎゅっと越知のジャージを掴む手に力
を入れる。そんな反応を見せる毛利にドキドキしながら、越知は太腿から膝、膝からふく
らはぎと毛利の脚をなぞっていく。越知の指が肌に触れるたび、毛利は小さくその身を震
わせ、甘い声を上げる。
(もっと触れていたいが、これ以上はいろいろ我慢出来なくなりそうだ。一旦、心を落ち
着かせるとしよう。)
眠っている毛利に悪戯をするのはこれくらいにしておこうと、越知はベッドから離れ、先
程まで座っていた椅子に座り直す。毛利から視線を外し、速いリズムを刻んでいる鼓動を
落ち着かせようと大きく深呼吸をする。越知が椅子の方へ戻ったと同時に毛利は目を覚ま
す。まだしっかりとは覚醒していないが、寝ぼけ眼でうっすらと目を開けると、寝ていた
とは思えないほど心臓がドキドキしており、体が熱くなっている。
(あれ?なんやろ?寝てたはずやのになんやちょっとムラムラしよる。月光さんのジャー
ジ抱えて寝てたからやろか。)
ゆっくりと体を起こし目を開けると、眠ったときと同じように越知は椅子に座っている。
越知の姿を見ると、余計に心臓がドキドキと高鳴る。困ったなあと思いつつも、毛利は越
知に声をかける。
「月光さん。」
毛利に声をかけられ、越知はドキっとする。内心動揺しているのを隠しながら、越知はい
つも通りを装い、毛利の方を振り返る。
「起きたのか。」
「はい。結構よく寝れたと思うんやけど、なんやちょっと・・・」
「どうした?」
「えーと、あの・・・ちょっと月光さんのこと困らせてまうこと言ってもええですか?」
恥ずかしそうにもじもじしながら、毛利はそんなことを言う。そんな毛利の姿も可愛らし
いと思いながら、越知は椅子から立ち上がり毛利の側まで移動する。先程と同じように二
段ベッドの下の段に腰かけると、くしゃっと毛利の頭を撫でる。
「構わない。言ってみろ。」
「なんや起きたらえらいムラムラしとって・・・せやから、その・・・月光さんと、えっ
ちしたいなぁなんて・・・」
恥ずかしがりつつも、きちんと自分の要望を伝える毛利に越知の胸は高鳴る。毛利がそう
なっているのは、先程悪戯に触れていたのが原因だろうと分かってはいるが、そのことは
明かさずに毛利の言葉に頷く。
「分かった。」
「えっ!?ええんですか?」
「したいのだろう?明日は休日だ。そこまで問題もあるまい。」
毛利よりも先に越知の方がそういう気分になっていたので、断る理由は何もなかった。こ
んなに簡単に越知が頷いてくれるとは思っていなかったので、毛利は驚きつつも嬉しくな
る。
「ありがとうございます!」
「そこで礼を言われるのはなかなか気恥ずかしいがな。」
「あっはは、確かにそうかもしれんね。」
「少し準備をするから、お前も準備をして待っていろ。」
「はい!」
越知とそいうことが出来るのが嬉しくて、毛利はうきうきとした様子で準備をする。越知
は越知で、今日はどんなふうに毛利を気持ちよくさせてやろうかと考えながら準備を始め
た。

腰のあたりに大きめのタオルを敷き、毛利を後ろから抱えるように横になる。どちらも下
に穿いていたものは脱ぎ去り、既に熱を帯びている部分にローションを絡める。
「こないなことあんまりしたことないんでちょっとドキドキしますね。」
「そうだな。」
どちらも横向きに寝て、越知は利き手で毛利の熱を包む。逆の手で毛利のシャツは捲り上
げられ、指先が胸の突起に触れる。普段はあまりしないが、ローションに塗れた越知の熱
は毛利の太腿の間に挟まれ、毛利のモノに触れるか触れないかの場所で大きな存在感を示
している。
(どこもかしこも月光さんに触れられてる感じでアカン・・・)
「毛利。」
「・・・!!は、はい。」
「始めてもよいだろうか。」
「はい・・・お願いします。」
あまりにドキドキしすぎて毛利の声は上擦っている。ヌルヌルした手で敏感な熱を擦られ、
器用な指先が突起を弄る。少し手を動かされただけで、どうしようもない快感が毛利を襲
う。
「ふあっ・・・あんっ・・・!」
ビクビクと下肢が震え、堪えきれない声が口から漏れる。下肢が震えることで、越知の熱
にもそれなりな刺激が与えられ、思わず熱い吐息が漏れる。
「ハァ・・・毛利。」
「あっ・・・月光さ・・ん・・・これ、メッチャ気持ちええ・・・」
「ああ。そうだな。」
越知が喋るとその低い声が熱い息が毛利の耳を刺激する。ゾクゾクと頭の奥が痺れるのを
感じ、毛利はひっきりなしに声を上げる。
「ふあっ・・・ああっ・・・月光さ・・んっ・・ああっ・・・!!」
もっと毛利を気持ちよくさせてやりたいと、越知はその手を大きく動かす。ヌルヌルとし
た状態で擦られるその感触は、毛利の思考を奪っていく。
「あっ・・気持ちええ・・・ひぅっ・・あっ・・・あぁっ・・・!!」
「随分とよさそうだな。」
「ハァ・・・月光さんっ・・・コレ、ホンマよすぎて、アカンっ・・・」
激しく息を乱し甘い声を上げながら毛利はその気持ちよさを越知に伝える。毛利が気持ち
よさそうなのは間違いないので、自分ももう少しよくなりたいと越知は毛利の脚に挟まれ
ている熱を動かす。
「ひあっ・・・!?」
腿の内側を熱いモノで擦られ、その大きさゆえに毛利の蜜の入った袋も揺らされる。一瞬、
中を突かれていると錯覚し、毛利の絶頂感は一気に高まる。
「あぁんっ・・・月光さん、や・・・もぉ・・・アカン、イクっ・・・!!」
一際大きく越知の腕の中で震え、毛利は越知の手に熱い雫を迸らせる。毛利が達するのを
見て、越知の熱は更に大きさを増す。
「ハァ・・・はっ・・・ハァ・・・」
「毛利、俺も・・・」
「ふ・・えっ・・!?ちょお、今、そんなんされたら・・・っ!!」
濡れた手で毛利の腹を押さえ、毛利の脚の間を激しく擦り上げる。達したばかりの敏感な
熱にもその衝撃は伝わる。
「やっ・・・あぁんっ・・・月光さんっ・・・あっ・・・ああっ・・・!!」
「毛利・・・」
「はっ・・・やっ・・・そないに激しくされたら、またっ・・・」
「――――っ!!」
「んっ・・・ああっ・・・―――っ!!」
ローションとは別のもので内腿が濡れるのを感じ、毛利は再び達してしまう。所謂素股で
あるが、こんなにも気持ちいいとは思っていなかったと言わんばかりに、どちらもそのま
ましばらく絶頂の余韻に浸り、荒い息を吐く。
(メッチャ気持ちよかった。よすぎて2回もイってもうたわ・・・)
(初めて試してみたが、思ったよりも悪くなかったな。ただやはり・・・)
「大丈夫か?毛利。」
「ハァ・・・はい。気持ちよすぎて、まだ頭ん中ふわふわしとります。」
「確かに気持ちよかったな。ただ、やはりこれでは物足りないというか・・・お前が満足
しているなら悪いと思うのだが・・・」
「やっぱ、ちゃんと繋がりたいですよね。」
越知が言わんとしていることを、毛利はハッキリと言葉にする。恥ずかしそうに笑ってい
る毛利を前に越知の胸はひどく高鳴る。そのまま進めたくなる気持ちを必死で抑えながら、
毛利に進めてよいかを尋ねる。
「それならば、繋がる準備をしてよいだろうか?」
「はい、もちろんええです!」
笑顔でそう返す毛利に越知は我慢ならなくなる。毛利を仰向けにさせると、指をローショ
ンで濡らし、既にある程度濡れている双丘の中心に指を這わせる。越知に触れられる期待
感に胸を高鳴らせ、毛利は潤んだ目で越知を見つめる。
「そんな目で見られると、手加減出来なくなってしまいそうだが。」
「別にそんなんせんでもええですよ。月光さんの好きなようにしてください。」
本当に毛利には敵わないと思いながら、なるべく痛くないように越知は毛利のそこを慣ら
し始める。丁寧でありつつ、的確に気持ちいい場所を探ってくる越知の指に、毛利はビク
ビクとその身を震わせる。
「んあっ・・・あ・・・んん・・・」
「この調子なら、そこまで時間をかけなくても問題なさそうだ。」
「月光さんの指・・・ぬるぬるしとって、メッチャ気持ちええ・・・・」
「お前の声でそういう言葉を聞くと、なんというか・・・」
「興奮しちゃいます?」
「・・・まあ、間違ってはいない。」
冗談じみた口調でそう問う毛利の言葉に越知は素直に頷く。まさかそう返されるとは思っ
ていなかったので、毛利はドキドキしながらも嬉しそうに口元を緩ませる。
「月光さん・・・」
「どうした?」
「もう平気なんで、月光さんの・・・挿れてください。」
越知の様子を見ていて我慢出来なくなった毛利はそんなことを口にする。あまりの毛利の
可愛さに一瞬固まりつつ、越知は黙って頷き、柔らかくなっている毛利の入口に自身を押
しつける。
(月光さんのやっぱデカぁ・・・アカン、メッチャドキドキして、きゅんきゅんしてまう。)
「月光さ・・・っ、ひあっ・・・ああぁ――っ!!」
「ハァ・・・毛利・・・」
越知が入ってくる快感に毛利は堪えきれない声を上げる。さしていつもと変わらない表情
の越知も実は余裕がなく、性急に毛利の中に全てを埋めてしまう。
「ハァ・・・月光さんの・・・すご・・・」
「すまない。少し急ぎすぎた・・・」
「全然平気です・・・せやから、もっといっぱい気持ちよくなりましょ・・・」
嬉しそうな笑みを浮かべて、毛利は越知に向かって手を伸ばす。そんな毛利に応えるかの
ように越知が頭を少しさげると、毛利は越知の首にしがみつくように腕を回す。触れそう
なほどに顔を近づけ、自分も毛利も気持ちよくなれるように中を大きく穿つ。
「ひあっ・・・ああぁんっ・・・!」
「・・・・っ!!」
「あっ・・・月光さんっ・・・あんっ・・・ああ・・・っ!!」
越知と交わっている快感に毛利はひっきりなしに声を上げる。そんな毛利の声を心地よく
感じながら、越知も高まる快感に身を委ねる。
「毛利・・・」
「ハァ・・・月光さ・・ん・・・」
「キスしてもよいか?」
「はい・・・してください・・・」
目の前にあるとろけるような表情の毛利に、越知は無性に口づけたくなる。もちろんそん
な越知の提案を毛利が断るはずがない。甘い吐息を漏らす毛利の唇を自分の唇で塞ぎ、舌
を食むように捉える。
「んむっ・・・んんっ・・・」
(月光さんとのキス、ほんまたまらん。)
越知とのキスに夢中になる毛利であるが、越知としても毛利とのキスがあまりにも心地よ
く止められなくなっていた。深い口づけを交わしたまま、越知はより深く毛利と繋がろう
とする。奥の奥で越知の熱を感じ、毛利の絶頂感は一気に高まる。
「んんっ・・・ぁ・・・んっ・・・んんぅ・・・!」
ビクビクと下肢も中も痙攣し、越知は毛利がそろそろ限界であることを悟る。このまま自
分も達きたいと、口づけをしたまま一際大きく毛利の内側を擦り上げる。
「――――っ!!」
「・・・・っ!!」
越知が中で達すると同時に、毛利も大きな絶頂を迎える。唇を離すとしばらく抱き合った
まま、お互いの鼓動を触れ合う肌で感じ合った。

タオルを敷いていたために布団やシーツはほとんど汚れてはいなかったが、いつもより多
めにローションを使ったため、拭き取ったもののまだ残っている感じがして、どちらもあ
ることを考えていた。
「んー、こないな時間ですけど、風呂行きたいですね。」
「同感だ。タオルや服を洗濯するついでに入りに行くか。」
「この時間やったら、貸し切りみたいに入れるかもしれんですね。」
「そうだな。」
消灯時間は過ぎ、日付が変わるくらいの時間になっている。夜の自主練をするものや早朝
の練習をするものもいるので、大浴場は清掃の時間を除いては基本的にいつでも入れるよ
うになっている。汗や残っているローションを流したいと、二人は洗濯物をコインランド
リーにかけると、大浴場へと向かった。
「やっぱ、誰も入ってないですね。」
「さすがにこの時間だしな。」
脱衣所で服を脱ぎ、大浴場へ入るとさすがに遅い時間ということもあり誰もいなかった。
「今日は少し無理をさせてしまったし、俺が洗ってやろうと思うのだがよいだろうか。」
「全然平気ですけど、洗ってもらえるならお言葉に甘えさせてもらいますわ。」
越知に洗ってもらえるのは嬉しいと、毛利はそう返す。毛利の背中を流していると、扉が
開く音が聞こえる。
「あっれー?ツッキーと毛利やん。」
「こんな時間に風呂だなんて珍しいな。」
扉の方に視線を向けると、裸の大曲と種ヶ島がタオルを持って入ってきていた。
「大曲と種ヶ島か。」
「こないな時間に風呂で会うなんて偶然ですね。」
「偶然ちゃう気がするけどなー。なあ、竜次。」
「うるせーし。ほら、さっさと洗っちまうぞ。」
「ちゃーい☆」
越知と毛利の隣に座り、大曲と種ヶ島も髪や体を洗い始める。毛利は先に洗っていたため、
一足早く洗い終える。
「先に湯船につかっておくといい。」
「はい、月光さんも洗ったら来てくださいね。」
「ああ。」
毛利が湯船に向かおうとしたと同時に、再び扉が開く。
「ああ?こんな時間に随分と人がいるじゃねーか。」
「おや、本当ですね。それは想定外でした。」
「おっ、サンサンとアツも来たんやな。はは、今日はみんな遅い時間に入るんやなー。」
入って来たのは、君島と遠野であった。他のメンバーと並ぶように座り、君島と遠野も洗
い始める。ささっと洗うのを済ませた種ヶ島は湯船にいる毛利のところへ行き話しかける。
「お疲れさん。」
「お疲れ様です。」
「ツッキーと二人でこないな時間に風呂に入っとるってことは、さっきまでお楽しみやっ
たん?」
「えっ!?えっと・・・あの・・・」
種ヶ島にそんなことを聞かれ、毛利はあからさまに動揺し、顔が赤くなる。
「はは、その反応やと図星みたいやな。」
「そんなお前もそうなんだろ?」
体を洗い終えた遠野が長い髪を頭の上の方でまとめ、種ヶ島にそう話しかけながら湯船に
入ってくる。
「アツ、洗い終わるの速いなあ。どうやと思う?」
「お前、色黒いのにそれでも分かるくらい、首元に跡ついてんぞ。それで誤魔化そうとす
るって無理があるだろ。」
「えー、ホンマに?全く竜次はしゃーないなあー。」
多少照れながらもむしろ嬉しそうな表情で種ヶ島はそんなことを言う。そんなに恥ずかし
がらずにそう返せる種ヶ島は流石だなーと思いつつ、毛利は遠野が指摘した首元に思わず
目を向けてしまう。
(確かに結構跡ついとるなあ。・・・って、遠野さんの肩!!)
「遠野さん、その肩どうしたんですか!?」
「ああ?あー、君島のやつが調子に乗ってよ。」
「ケンカでもしたんですか?こないに歯型がつくくらい噛まれるなんて・・・」
遠野の肩にくっきりとした歯型がついているのを見て、毛利は心配そうに尋ねる。もちろ
んケンカでついた跡などではない。それを察した種ヶ島は毛利に心配しないでもいいと教
える。
「大丈夫やで、毛利。ケンカなんてしてへんもんなあ。むしろ、仲良くしとったんやろ?
みんなに愛されとるアイドル様に愛されてるのも大変やなー、アツ。」
「うるせー。」
からかうようにそう言う種ヶ島にそっぽを向きながら遠野はそう返す。種ヶ島、遠野、毛
利が湯船でそんな会話をしている間、洗い場で相方の面々も話をしていた。
「こんな時間に風呂がかぶるとかどんなだし。」
「この時間なら誰もいないと思ったのですがね。」
「同感だ。」
そんなことを言った後、しばらく黙って体を洗っていたが、大曲がぼそっとあることを呟
く。
「やっぱ、毛利のやつすげぇし。」
「それはどういう意味だ?」
大曲の言葉を聞き逃さず、越知はそう聞き返す。
「その身長も規格外だけどよ、まあ、何だ・・・他の部分も規格外だなーと思ってよ。」
大曲の視線がどこにあるかで、越知は大曲の言わんとしていることを理解する。どう返し
たらよいか分からず何も言えないでいると、横から君島が割り込む。
「おや、それを言うなら、あなたの持久力についていける種ヶ島くんもなかなかだと思い
ますが。」
「別にそんなに長くはしねぇし。・・・たまにはするかもだけどよ。」
ほんの少し戸惑っている大曲を見て、これは自分も何か言った方がよいと越知も気づいた
ことを口にする。
「俺は、遠野がすごいと思うが。」
「何故です?私は別にお二人のように突出した何かはありませんが。」
「ああ、それは俺も思う。お前、遠野に対しての愛情表現屈折してるもんな。」
「そんなことはありません。」
「遠野のあの肩の噛み傷、お前がやったのだろう。普段もかなり邪険に扱っているように
見えるが、それでも遠野はお前のことを全て受け入れて好いているようだしな。」
越知や大曲の言うことがそこまで間違ってはいないので、君島は否定出来ないでいた。
「ま、何だかんだでそれぞれ相性は悪くないんじゃねーの?」
「そうかもしれないな。」
「遠野くんと相性がよいと言われても嬉しくないのですが・・・」
「そういうとこだし。」
話ながらも洗った体を流し終え、湯船に向かおうとすると、先に入っていた種ヶ島達に呼
ばれる。
「竜次、遅いでー!」
「月光さん、まだ来おへんですか?」
「君島ぁ、先に出ちまうぞ!」
パートナーに呼ばれ、越知、大曲、君島の三人はくすっと笑う。
「呼ばれてるし、行ってやるか。」
「ああ。」
「仕方ないですね。」
今まで湯船に浸かっていたメンバーはへりに座り、後から来たメンバーは湯船に浸かる。
そのまま少し話をしながら温まる。普段は静かな夜更けの大浴場。今日はいつもよりほん
の少しだけ騒がしい声が響いているのであった。

                                END.

戻る