「・・・というわけで、合宿所内の水道や電気系統の設備の点検のため、明日から二日間
は合宿所を閉鎖します。三日後には合宿所は使えるようになりますが、ひとまず休日とし
ておきましょう。合宿所内のトイレや水回り、部分的に電気も使えなくなるので、一時的
にお家に帰るなりして、英気を養って下さいね。」
合宿所にいる高校生と中学生を集め、齋藤はそんな連絡をする。電気系統でちょっとした
不具合が見つかり、急遽総点検することになったのだ。通常の休日であれば、基本的には
合宿所で過ごし、各々買い物に行ったり、部屋で過ごしたり、トレーニングをしたりする
のだが、今回は合宿所自体が使えなくなるため、合宿所に残るということは出来ない。
「三連休で家に一旦帰っておけってことか。」
「まあ、三連休やったら、多少遠くても戻れるしな。」
「月光さんも家帰ります?」
「一応、そのつもりだ。お前はどうする?」
「俺もとりあえず家帰ります。せやけど、神奈川と東京やったら、どこか遊びに行けるか
もしれんね。月光さん、どこか出かけません?」
「構わない。後でどこへ行くか話し合おう。」
「はい!」
高校が氷帝の越知と立海の毛利は、家に帰ったとしても東京と神奈川なので、電車を使え
ばすぐに会える。この二人は相変わらずだなと思いながら、大曲と種ヶ島も自分の部屋へ
向かって歩き出す。
「竜次も実家帰るん?」
「ああ。そこまで遠くねぇしな。」
「俺はどないしようかなー。飛行機やったら帰れる距離やけど、飛行機乗りたないしな。
せやけど、船で行ったら三連休じゃ足りんし・・・」
沖縄だろうと北海道であろうと、飛行機を使えば三日の休みがあれば十分帰れる。しかし、
種ヶ島は飛行機が苦手なゆえに、移動手段が電車か船に限定されてしまう。そうなると、
移動時間が長すぎて帰るのが億劫になってしまう。
「なあなあ、竜次。俺、帰るの大変やから、竜次んち泊めてくれへん?」
断られること前提に、種ヶ島は冗談じみた口調でそんなことを言ってみる。
「別に構わねぇし。」
「せやなあ、そんな急に言われてもなあ・・・って、ええっ!?」
「一応、家族に聞いてみるからちょっと待っとけ。」
そう言いながら、大曲はスマホを出して電話をかけ始める。まさかいいと言われるとは思
っていなかったので、種ヶ島はただただ驚くしかなかった。
「もしもし?ああ、うん、俺だけど・・・・」
大曲が電話しているのを種ヶ島はドキドキしながら黙って眺める。
「えっ?ああ、それは別に構わねぇけど・・・うん、分かった。じゃあ、適当に何とかし
とくわ。」
通話を済ませ、スマホをしまうと大曲は種ヶ島に話しかける。
「泊まるのは問題ないってよ。ただ、俺以外の家族で旅行行く予定だったらしくて、ちょ
うど明日から家に誰もいなくなるみてぇだし。」
「えっ、ホンマに竜次んち行ってええの!?」
「別にダメな理由はねぇだろ。船で無理矢理帰るよりは疲れねぇだろうし。」
まさか本当に大曲の家に泊まれるとは思っていなかったので、種ヶ島の心臓はばくばくと
高鳴る。
(えー、竜次の家泊まれるとかどないしよ。冗談やったのに、ホンマに泊まれることにな
るなんて思わんかった。メッチャドキドキするわ。)
「部屋帰ったら、帰る準備するか。まあ、一泊くらいだし、そんなに持ってくものもねぇ
けどよ。」
「お、おん。」
大曲の家に行けるということがまだ信じられず、種ヶ島はふわふわした気分で寮の部屋へ
と向かった。
次の日、大曲と種ヶ島は大曲の実家へと向かう。かなりのんびりな予定で帰ったので、大
曲の家の近くに来る頃には日が傾いていた。北関東ということもあり、この季節はかなり
冷える。
「家に帰る前に、夕飯の材料買ってくか。」
「夕飯、竜次が作るん?」
「せっかく実家に帰るんだし、外食よりは家で食べたいと思ってよ。何か食いたいものあ
るか?」
「今、結構寒いし、鍋とか食べたいわー。」
「おー、いいんじゃね?スープ買っちまえば、そこまで面倒じゃねぇし。」
夕飯は鍋にしようと、二人はスーパーに寄ることにした。この季節、鍋用のスープは豊富
にそろっており、様々な味のスープがずらりと並んでいる。
「結構いろんな味あるな。どれにするよ?」
「豆乳担々鍋なんてええんちゃう?竜次、担々麺好きやし。」
「俺は全然構わねぇけど、お前はそれでいいのかよ?」
「もちろんやで。ちょいピリ辛であったまりそうやん。」
「なら、それにするか。」
豆乳担々鍋のスープをかごに入れると、今度は中に入れる具材を探しに行く。豆腐や白菜
など王道なものを入れながら、大曲は普段はあまり使わないちょっと変わった食材をこっ
そりとかごの中に入れた。飲み物など他に必要そうなものも合わせて買うと、二人は少し
大き目の買い物袋を下げ、今度こそ大曲の家へと向かう。
「はあー、やっぱ、外は寒いなぁ。」
「まあ、この季節じゃしゃあねーだろ。今日はあんまり天気もよくねぇみてぇだし。」
「確かに曇ってるなあ。何や雪でも降りそうな雰囲気やな。」
真っ白な息を吐きながら、大曲と種ヶ島はそんな会話を交わす。スーパーを離れると、だ
いぶ人通りの少ない道になっていく。街灯に照らされた二人の影が歩道に伸びる。薄暗い
夕闇を歩きながら、種ヶ島は思いついたように大曲の手を握った。
「うわ、竜次の手ぇ冷たっ!!」
「何してるんだし。」
「あんまり人いないし、薄暗いからちょっとくらいなら平気かなあと思て。」
「勘弁しろし。」
呆れたようにそう言うが、大曲は種ヶ島の手を振り払おうとも離させようともしない。そ
れもそのはず、こんなにも寒い気温ではあるが、種ヶ島の手は何故か温かかった。その温
かさがすっかり冷えた大曲の手には非常に心地が良かった。
「お前、手あったけぇな。」
「竜次が冷たすぎるんちゃう?」
「こんな寒さだったらこうなるし。」
「竜次と一緒やからな。」
「何だし、その理由。」
「好きな奴とおったら体温上がるやん?」
冗談っぽい口調ではあるが、その顔はほのかに赤く染まっている。そんな種ヶ島を可愛い
と思ってしまい、大曲は思わず握られてる手を握り返す。
「えっ・・・!?」
「寒さのせいだし。」
「・・・せやな。」
「おら、さっさと帰るぞ。」
大曲が手を握り返してくれたのが嬉しくて、種ヶ島はうつむきながら顔を緩ませる。恥ず
かしくて種ヶ島の顔は見れないが、大曲はぎゅっと種ヶ島の手を握ったまま、手を引くよ
うにして自宅へと足を進めた。
自宅に到着すると、大曲はひとまず自分の部屋へと種ヶ島を通す。
「竜次の部屋やあ。自分の部屋にコタツがあるとかええな。」
「冬は寒みぃからな。とりあえず、コタツつけといてやるから、ちょっとくつろいでろし。」
「竜次は?」
「鍋作ってくるからよ。何か飯は俺達が来るタイミングに合わせて、炊いといてくれたみ
てぇだから、そんなに時間はかからねぇと思うし。」
「さよか。手伝わなくてもええの?」
「ああ。本棚に漫画とかもあるから、適当に読んで待ってろし。」
「ちゃい☆」
種ヶ島を部屋に残し、大曲は一人台所へと鍋を作りに行く。平静を装ってはいるが、初め
て入る大曲の部屋に種ヶ島はかなりテンションが上がり、胸がドキドキしていた。
(竜次の部屋にいるとかホンマ信じられへんわ。嬉しすぎてテンション上がるな。何やそ
わそわして落ち着かないわー。)
漫画を読む気になれないので、種ヶ島は大曲に怒られない程度に部屋の中を探索してみる。
本棚には難しそうな本から小説、エッセイや漫画本など様々なジャンルの本が並んでいた。
こっそりとタンスやクローゼットも開けてみて、どんな服があるかをチェックしていると、
種ヶ島の目にとても魅力的なものが映る。
「あっ。」
それはあって当然のものなのだが、種ヶ島自身はそれを着た大曲を見たことがなかった。
(うわー、これ着た竜次メッチャ見たいわー。後で頼んでみよかなー。)
そんなこと考えながら、種ヶ島はその服をしばらく眺めていた。少し寒くなってきたので、
机の上にあった雑誌を手に取り、コタツに入る。パラパラと雑誌のページをめくっている
とドアの外から大曲の声がする。
「修二、ちょっとドア開けてくれねぇか?」
「おー、ちょい待ち。」
ドアを開けると、鍋敷きやご飯の盛られた茶碗、取り皿やおたまをおぼんに乗せた大曲が
立っていた。持ってきたものをコタツの上に並べると、メインの鍋を取りに大曲は再び部
屋を出ていく。ドアが開いていると、鍋の良い匂いが廊下の先からして、空腹感を刺激す
る。
「メッチャええ匂いや。急に腹減ってきたなあ。」
「待たせたな。」
ぐつぐつと煮立っている鍋を鍋敷きの上に置き、コタツに入るようにして大曲は座る。鍋
から立ち上る湯気と美味しそうな匂いが部屋の雰囲気を一気に暖かくしていく。
「おーきに☆竜次の手料理食べるんメッチャ楽しみや。」
「手料理っつっても、市販のスープ使ってっから大したもんじゃねぇけどな。」
「けど、ホンマ美味そうやで☆」
「よそってやるから、ちょっと待ってろし。」
持ってきた取り皿に赤と白の混じったスープとたくさんの具を盛る。種ヶ島の方にはとあ
る具を多めに入れてやった。
「じゃあ、食べるか。」
「せやな。いただきます!」
「いただきます。」
熱々の鍋を食べ始めると、種ヶ島は鍋の具としてあるものが入っていることに気づく。見
た目はまさにそれなのだが、大曲が買っていることに気づかなかったので、間違いではな
いかと思いながら、それを口にする。口の中でとろける柔らかさと、ピリ辛のスープとマ
ッチした大好きな味。あまりの嬉しさに感動しながら、種ヶ島は大曲を見る。
「竜次!」
「どうしたよ?」
「この鍋、てびち入っとる!」
「ああ、入れたからな。」
「うわあ、メッチャ美味い〜!!最高やぁ☆」
本当に嬉しそうにこっそり用意したてびちを食べる種ヶ島を見て、大曲はふっと笑う。こ
んなにも喜んでくれるなら、買って調理した甲斐があったと大曲自身も嬉しくなる。
「竜次も食べてみ。」
「お前がたくさん食べればいいし。」
「自分の好きなもんは、一緒に食べた方が美味しいんやで。ほら、あーん。」
「勘弁しろし。」
そう言いながらも大曲は口を開ける。種ヶ島に食べさせてもらったてびちは自分の好きな
ピリ辛な味で、大曲にとってもかなり美味しいと感じられた。
「美味いな。」
「せやろー?竜次、おおきにな!」
「まあ、鍋の味選ぶとき俺好みの味にしてくれたからな。お前の好きなもんも入れてやり
たいと思ってよ。」
「ほなら、この鍋は竜次の好きなもんと俺の好きなもんがぎょうさん入ってるってことや
な☆こないな鍋食べれて、心も体もポカポカやわー。」
「どっかで聞いたことあるセリフだし。」
「そうやったっけ?まあ、ともかく今日はこの鍋にして大正解やな!」
「そうだな。思ったよりうまく出来たし。」
大曲の作った鍋は大曲も種ヶ島も大満足の出来であった。大好きな味を存分に堪能して、
二人は鍋を綺麗に平らげる。
「はあー、メッチャ美味かったー。」
「この時期、やっぱ鍋はいいな。」
「せやな。満腹で体もあったまってええ気分やわ。」
「鍋とか食器とか片付けてくるからよ、またちょっと待ってろし。」
「片付けなら、俺も行く。二人でやった方が早いやろ?」
それもそうかと大曲は種ヶ島と一緒に台所へ向かった。種ヶ島の言った通り、二人で片付
けると思ったより時間をかけずに片付けることが出来た。洗った食器や鍋をあるべき場所
へ戻すと二人は再び大曲の部屋へと戻る。
「あんな竜次。ちょっと頼みたいことがあるんやけど・・・」
「何だし?」
部屋に入るやいなや、種ヶ島はそう口にする。あらたまってそんなことを言われることは
あまりないので、大曲は少しドキドキする。
「竜次の学校の制服姿見たいねん。せやから、学校の制服着てみせてや。」
「はあ?制服?」
「少しでええから。」
何故そんなに制服姿を見たいのか分からないが、少し着替えるのが面倒なだけで、これと
いって断る理由もない。
「しゃあねーなあ。」
コタツに入る前に着替えてしまおうと、大曲はタンスの中から制服を出し、学校に行く日
のように着替える。大曲は制服をきちっと着るタイプではなく、ワイシャツはズボンの外
に出し、ネクタイはだいぶ緩く結んでいる。その上にブレザーを羽織るが、ボタンを留め
ることはしない。実に大曲らしい着こなしに、種ヶ島は目を輝かせる。
「うわあ、竜次の制服姿やー。かっこええな☆」
「別に普通だし。」
「なあなあ、夏服でもええからもう一着ズボンとかワイシャツとかあったりせぇへん?ベ
ストかカーディガンなんかあるとよりええんやけど。」
「あるけど、何すんだ?」
ワイシャツは何枚かあり、ズボンも予備としてもう一着持っている。冬はかなり寒くなる
ので、カーディガンも何枚か持っていた。それらを種ヶ島に渡すと、種ヶ島は迷いなく今
着ている服を脱ぎ、大曲に渡された服に着替える。種ヶ島の方がいくらか身長は高いが、
それほど差があるわけではないので、何の問題もなく大曲の制服を着ることが出来た。
「見てみぃ、竜次。竜次の制服着たったで☆どや?」
ブレザーはさすがに二着はないので、ワイシャツの上にカーディガンを着て、何となく制
服っぽく見せる。教室内ではそのような着こなしをしているものも少なからずいるので、
普通に高校の同級生が目の前にいるような気分になる。
「お前の着こなし方が上手いってのもあるけど、普通に似合ってるし。」
「ホンマ?竜次にそう言われると嬉しいわー。」
「すぐに着替えるのも何だから、とりあえずこのままコタツ入っとくか。結構寒いし。」
「せやな。」
コタツの外で立っていると寒いので、二人はそのままの格好でコタツに入る。コタツに入
れば暖かく、ポカポカとした気分になる。
「なあ、竜次。ちょっとこっち来て。」
「何でだし?そこに二人で入ったらかなり狭いだろうが。」
「せっかく制服着とるんやし、一緒に写メ撮りたいなあと思て。竜次、後ろからぎゅうっ
てするみたいにして。」
「はあ?しゃあねーなあ。」
制服姿の種ヶ島が思ったよりも可愛く、大曲はついつい種ヶ島の言うことを聞いてしまう。
種ヶ島の後ろに座り、足だけコタツに入れるようにして、種ヶ島を抱きしめる。種ヶ島は
そんな大曲に寄りかかるようにして、スマホのインカメラを起動し腕を持ち上げる。
「撮るでー、竜次。」
カシャ
「わりとええんちゃう?竜次、もうちょっと笑ってや。」
「勘弁しろし。」
「まあ、これはこれで竜次らしくてええけどな。もう何パターンか撮っとこか。」
前に回されている大曲の腕に自分の腕を絡めたり、大曲の頬にキスをしようとしたりする
ような構図で種ヶ島は何枚か写真を撮る。制服でイチャイチャしているような写真がたく
さん撮れたと、種ヶ島は撮った写真を確認しながら満足気に笑った。
「何や同じ学校通ってる感あってええなあ。」
「そうだな。」
「制服着てコタツ一緒に入ってると、ちょっと試験前の勉強会感あるな。」
「ああ、確かにな。」
「ほなら、一緒に勉強しよか?」
「何の勉強だし?」
「んー、保健体育とか?」
「ふっ、あからさまかよ。」
「なあ、教えて?竜次。」
「しゃあねーなあ。」
学校の制服という普段とは一味違った格好で、かなり密着していることもあり、二人はそ
ういう気分になってしまう。種ヶ島が振り向き加減で上を向くと、大曲は目の前にある唇
に自分の唇を重ねた。
「ハァ・・・んっ・・・ああっ・・・」
コタツの中に足を入れたまま、大曲にズボンと下着を脱がされ、既に大きくなっているそ
こを弄られる。大曲の手が直接触れている感覚に種ヶ島はすっかり乱れていた。
「はぁ・・・竜次ぃ・・・・」
「随分よさそうだし。」
「竜次に擦られんの・・・メッチャ気持ちええ・・・」
気持ちよさそうな吐息を漏らしながら、種ヶ島はそう呟く。種ヶ島が着ているカーディガ
ンはゆるめに着るためにわざと大きめのサイズを買ったものである。そのため、種ヶ島が
着ても若干袖が余り、手の甲を隠すような状態になっている。そんな状態で、種ヶ島は手
を口元へ持っていき、大曲に与えられる快感に耐えていた。
(袖が余ってるせいか、いつもより可愛く見えるし。)
「んっ・・・あぁ・・・・」
「何かアレだし。」
「なんや・・・?」
「制服悪くねぇな。いつもより可愛いし。」
顔が触れるくらいの至近距離でそんなことを言われ、種ヶ島の顔はぶわっと赤く染まる。
「なっ・・あ・・・・そないなこと・・・・」
「お前、可愛いって言われると反応よくなるよな。」
コタツに隠れているそこを少し強い力で擦ってやると、種ヶ島の身体はビクンと跳ねる。
「やっ・・・あん・・・竜次っ・・・・」
「こういうふうにされんの好きだろ?」
「あっ・・・ひあっ・・・そないにされたら・・・ああぁっ・・・!!」
ビクビクとその身を震わせ、コタツの中にある大曲の手を掴もうとする。しかし、種ヶ島
の手が大曲の手に触れる前に、種ヶ島の熱は大曲の掌に蜜を放ってしまう。
「ああぁんっ・・・!!」
「コタツの中ってのもあるけど、お前が出したのかなり熱いし。」
手を濡らしている種ヶ島の精液を指に絡めると、そのままその手を後ろの方へと持ってい
く。達した余韻がまだ残っているにも関わらず、入口に触れられ、種ヶ島は体をよじろう
とする。
「やっ・・・竜次・・・・まだ・・・アカンっ・・・」
「イったばっかの方が早くよくなれるだろ。」
「うあっ・・・あ・・んっ・・・んんっ・・・!!」
達したことで敏感になっている身体は、ほんの少しそこを弄られるだけでも感じてしまう。
種ヶ島の出したものでそこは十分にトロトロになり、大曲の指を数本飲み込んでいく。
「いい感じにほぐれてんじゃね?」
「ハァ・・・竜次ぃ・・・も・・・指じゃ足りひん・・・」
大曲の服をぎゅっと掴みながら、種ヶ島はそう口にする。紅潮した頬に乱れた呼吸、いつ
もより少し高い声に大曲もそろそろ限界だった。
「座ったままだと動きづらいからよ、ちょっと横になれるか?」
コタツに足は入れた状態で、種ヶ島を横にさせる。横向きに寝ているような状態の種ヶ島
の背中を抱くようにして大曲も横になる。コタツがあるがゆえに、かなり密着しなければ
同じ場所には横になれない。コタツ布団で見えない部分の服は脱ぎ去ったが、上半身はさ
すがに服を着ていないと寒すぎるので、上着はそのままで、大曲は種ヶ島を抱きしめた。
「入れるぞ。」
「・・・・ん。」
種ヶ島の足を左右で少しずらし、軽く開かせるようにすると、大曲はぴったりと密着して
いる双丘の中心に自身を押し当てる。腰を支えてやりながら、ぐっと腰を進めると、ゆっ
くりと入口を押し開くようにして、熱い楔が種ヶ島の中へと入っていく。
「ああっ・・・うあっ・・・んんっ・・・!」
大曲の熱が全て入ると、種ヶ島は自らも腰を大曲の下肢に押しつけるように動かし、中の
熱の感触をじっくりと味わう。種ヶ島のその動きも中の熱さも大曲にとっては、心地よく
て仕方のないものでしかない。
「ハァ・・・竜次の・・・気持ちええ・・・・」
「お前の中もな。」
「体の中も・・・外も・・・メッチャあったかいで・・・・」
「そうだな。お前と繋がってんと、どこもかしこも熱くてたまんねぇし。」
今が冬だということを忘れるくらいに二人の身体はポカポカしていた。もっと気持ちよく
暖かくなろうと、大曲も種ヶ島も腰を動かす。敏感な粘膜と熱が擦れ合う感覚にどちらも
夢中になる。
「はぁ・・んっ・・・竜次・・・竜次っ・・・」
「修二っ・・・」
「竜次・・・手ぇ、ぎゅうってして・・・」
「ああ。」
(この状況でそういうこと言うのは反則だろ。)
差し出された手を大曲は指を絡めるようにして、ぎゅっと握ってやる。大曲に手を握って
もらい、種ヶ島は嬉しそうな笑みをこぼす。そんな種ヶ島の表情にぐっときた大曲は、よ
り深いところを熱の先で擦る。
「ひあっ・・・ああぁっ・・・!!」
「ああ、そろそろヤベェかも・・・」
「竜次っ・・・あんっ・・・・俺も・・・イクっ・・・・」
「・・・っ」
互いの手を強く握りながら、二人はほぼ同時に果てる。種ヶ島の中で熱が混じり合い、た
だひたすらに心地よい感覚が身体と心を満たしていく。絡み合う指から伝わる想い。互い
のぬくもりを全身で感じながら、二人はしばらく甘い余韻を味わった。
事が終わると二人はそろって入浴し、汗を流した。あとはくつろぐだけなので、制服は脱
ぎ、スウェットのようなラフな格好に着替える。自宅に帰るということで、着替えなどは
特に持ってきていない。そのため、種ヶ島は大曲の服を借りた。
「今日は竜次の服ぎょうさん着れてええな。」
「持ってきてねぇんだから、そうするしかねぇだろ。」
「せやな。あっ!」
「どうしたよ?」
コタツに入りながら窓を見ていた種ヶ島が何かに気づいたような声を上げる。種ヶ島の視
線の先に目をやると、種ヶ島が声を上げた理由を理解した。
「竜次、雪降ってるで!」
「ああ、そうだな。」
「何や雪降ってるとテンション上がるな。積もるとええな。」
「積もるんじゃね?ここらへん、降り出すと結構積もるからな。」
「そうなんや。楽しみやな☆」
「別に雪遊びとかしねぇし。」
「えー、雪遊びしようやー。」
「デカ勘弁しろし。」
寒がりな大曲は雪の日はなるべく外には出たくないタイプだ。しかし、種ヶ島は雪が降っ
たら子供のようにはしゃぎ、積もるとなれば全力で雪遊びをする。明日はどうするかと思
いながら、大曲は小さく溜め息をついた。
「なあ、竜次。」
「何だし。」
「今日は竜次んち連れてきてくれておおきにな☆竜次んちで竜次と一緒におれるとか、ホ
ンマ嬉しいで。」
「そんなあらためて言うことかよ。」
「制服着て同じ学校感味わえたし、一緒に買い物して、一緒に夕飯食べて、一緒に風呂入
って・・・何や一緒に住んでるみたいな感じして最高の一日やったわ☆」
嬉しそうにそう言う種ヶ島の言葉を聞いて、大曲の胸はときめく。しかし、何故か種ヶ島
はその後少し寂しそうな表情を見せる。
「けど、こういうん出来るんも合宿所にいる間だけなんやもんなー。そう考えるとちょっ
と寂しくなってまうな。」
確かにそうかと大曲も少し感傷的な気分になるが、ふとその解決策を思いつく。それは別
に夢のような話ではなく、今後どうするかをきちんと決めて行動すれば実現可能なもので
あった。
「別に同じ学校になりたきゃ、同じ大学受験して受かればいいし、今後も一緒にいたきゃ
高校卒業してからルームシェアなりして、同じとこに住めばいいんじゃねぇ?俺もお前も
そこまで成績悪くねぇし、今から勉強したって十分間に合うだろ。高校卒業までは、あと
数ヶ月だし、その後どうするかなんて自分らで決めればいいことだし。」
さも当たり前のようにそんなことを言ってくる大曲に、種ヶ島は驚いたような顔を見せる。
そして、何故だかボロボロと涙を流し始めた。急に泣き出す種ヶ島を見て、大曲はぎょっ
とし、心配するような言葉をかける。
「おいおい、急にどうしたよ?俺、何か変なこと言ったか?」
「ちゃうねん・・・別に泣きたくなんか・・・ないんやけど・・・・」
「がっつり泣いてるじゃねぇか。マジでどうしたし?」
「竜次が今言ったこと・・・ずっとそうしたいと思ってたことやねん。せやけど、そこま
でして一緒にいたいみたいなこと言うたら、ちょっと重い思われて・・・竜次に嫌われて
まうかも・・・と思っとって・・・」
ひっくひっくと嗚咽を漏らしながら、種ヶ島は自分の胸の内を話す。
「竜次の恋愛観は尊重するし、俺以外の誰か好きになったって別に構へん。せやけど、俺
が竜次に嫌われて、竜次に近づけんようになるのは耐えられへん。せやから、束縛するよ
うなことしたないし、あんまり重いと思われたないねん。」
「思わねぇし。」
「えっ・・・?」
「確かに俺の恋愛観は少し特殊かもしれねぇけど、好きな奴と一緒にいたいと思ったり、
同じ時間や空間を共有して楽しみたいと思ったりするのは同じだし。何なら、そいつのこ
とで、頭も心もいっぱいになって、どうしようもなくそいつが欲しいって思えるような恋
愛がしたいって言っても間違ってないくらいだし。」
「はは、そんなん俺と同じやん。」
泣きながらも笑顔になって、種ヶ島はそう返す。涙で濡れた顔を指で拭ってやると、大曲
はちゅっと種ヶ島の唇にキスをする。
「少なくとも今はわりとそういうふうな恋愛してる自覚はあるんだけどよ。」
「へぇ、そうなん?誰と?」
「はあ?お前とに決まってるし。」
大曲の言葉に種ヶ島の胸は言葉では言い表せないくらいの嬉しさと幸せな気持ちでいっぱ
いになる。もう先程まで感じていた寂しさなど、綺麗さっぱりなくなっていた。
「ほなら、俺と竜次の行きたい学部があるいい感じの大学探さんとやな。」
「あと、どこらへんに住むかも決めないとだし。」
「うわー、何や急にいろいろ楽しみになってきたわ☆」
「テニスもちゃんとして、勉強もちゃんとやれよ?」
「当然!本気出した俺はすごいで☆」
「知ってるし。」
先程までの少ししんみりした雰囲気はどこかへ消え去ってしまった。外ではしんしんと雪
が降り続いているが、大曲の部屋の中はまるで春が来たような暖かさで、二人に笑顔をも
たらしていた。
END.